最後まで目を離せない戦いだった。大幅に延期されたものの、全日本弓道選手権大会は今年も無事に実施された。当初は神戸アリーナで行われる予定だったが、感染症対策の観点から各大学の弓道場をズームでつなぐオンライン形式での開催を余儀なくされた。早大は1回戦から一手競射が行われる緊張感漂う展開となったが、最後まで見事な戦いぶりを見せた。安定した的中を重ね、1回戦、2回戦を順調に勝ち進んだ早大。3回戦の一手競射で惜敗を喫したが、ベスト8入りを果たした。
1回戦の相手は桃山学院大。上級生の渋谷有希乃(文構3=東京・早実)、山野桃果(先理2=東京・吉祥女)が安定した射を披露し合計8中。しかし、まさかの1回戦から一手競射となる。道場に緊張感が走ったが、選手たちが動じることはなかった。1年生として唯一の出場となる内藤碧(商2=東京・桜修館中教校)が皆中。無事に1回戦を突破した。2回戦の相手は天理大。ここでは全員が皆中。「本番の試合でも練習通り出せたということは彼女たちの強さ」。女子主将の川西舞奈(スポ4=埼玉・春日部女)は語る。全員が目の前の一本に真剣に取り組む姿勢が確かな結果に結びついた。早大は実力を発揮し、3回戦へ弾みをつけた。
2回戦で皆中の内藤
3回戦でも早大は安定した射を見せた。渋谷は皆中。山野、内藤も3中と全体で10中と高的中を記録した。しかし、対戦相手の東北学院大も10中。ここでその日2度目の一手競射が行われた。どうにか勝ち進みたい早大だったが、「集中力を保てなかった」と渋谷。3人で合計3中。東北学院大に1中差で惜敗を喫した。早大は3回戦敗退。準決勝に進むことはできなかったが、実力を出し切った選手たちは清々しい表情でシーズン最後の試合を終えた。
落でチームをけん引した渋谷
「選手一人一人が頑張った。これに尽きる」と川西は振り返る。練習時間が十分に取れない中でも、部員たちは真摯に弓道に向き合い続けた。昨年度は予選敗退という悔しい結果となった今大会。今年度のベスト8という結果は部の目標である『日本一』も手に届く場所にあるということを印象付けた。今大会で得た自信を糧に、早大弓道部はこれからも『日本一』への道を歩み続けるだろう。次のシーズンも選手たちの活躍から目が離せない。
(記事、写真 宮崎円花)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません
結果
決勝トーナメント1回戦 ◯早大8中-4中-桃山学院大8中-3中
決勝トーナメント2回戦 ◯早大12中-天理大4中
決勝トーナメント3回戦 ●早大10中-3中-東北学院大10中-4中
コメント
川西舞奈(スポ4=埼玉・春日部女)
――主将として一年間振り返っていかがでしたか
私が四年生一人で本当に下の子たちに助けてもらった一年間だったと思います。
――今日の試合を振り返っていかがでしたか
選手一人一人が頑張りました。これに尽きると思います。
――2回戦では全員が皆中しました
今まで練習でも皆中が出ていて、本番の試合でも練習通り出せたということは彼女たちの強さですし、成長したと思います。
――チームの良かった点はどんなところですか
一丸となって日本一という同じ目標に向かって目の前の一本を真剣に引いていたところだと思います。
――課題は見つかりましたか
破れてしまうということは、これからも練習を積み重ねていかなければいけないと思います。
――早大弓道部女子部はどんなチームですか
個性が強いですが、練習中は素直に真面目に稽古をしている印象です。
――振り返ってどんな一年でしたか
大きく成長した一年でした。練習試合でも勝利を重ねていましたし、技術、メンタルともに強くなったと思います。
渋谷有希乃(文構3=東京・早実)
――今シーズンを振り返っていかがでしたか
去年はいい結果を残せていないので、ベスト8という少し悔しい結果にはなりましたが実力を出せたかなと思えるいいシーズンでした。
――試合を振り返っていかがでしたか
緊張しましたが、2,3回戦で皆中を連続で出せて、最後は残念を出してしまったんですけど自分の射ができたことは合格点だと思います。
――同中競射が多かったですがいかがでしたか
前の二人を信頼しているのでなにかあったときは前の二人を頼って、自分もやるべきことをやって頑張ろうという気持ちで臨みました。
――課題は見つかりましたか
勝ち進んでいく中で自分のやることに集中して相手のことを気にせずに100パーセントを出せるように練習しなければいけないなと思いました。
――落というポジションはいかがでしたか
一番後ろでチームのことをよく見ることができるので、前の人を信頼して自分のやるべきことを最低限やるという気持ちでずっと挑んできました。すごいポジションだと言われることもありますが、やるべきことをやっているだけです。
――成長した点はどんなところだと思いますか
去年の的中が4割程でスタメンにも入れなかった自分が団体戦で落として出られるようになったということです。自分を褒めてあげたいなと思います。
――次のシーズンに向けて意気込みをお願いします
来年は主将という立場になるのでそういった点からも的中面でも落として引っ張っていきたいです。
内藤碧(商1=東京・桜修館中教校)
――試合を振り返っていかがですか
今日はこれまでの試合では一番成長した試合だと思います。自分をコントロールできたと思います。
――一年を振り返っていかがでしたか
最初のリーグ戦の時はメンバーに入らないくらい下手だったんですけど、シーズンの中で成長してスタメンに入ることができたので成長したシーズンだったなと思います
――唯一の一年生として出場でした
前と後ろにいる先輩方に安心感があって中で引きやすかったので感謝しています。
――同中競射が多かったですがいかがでしたか
四矢の一本も一手の一本も同じ一本なので、目の前の一本に集中しようと思って引いていました。
――一年間で成長した点はどこですか
入学直後は弓を引くのが2年ぶりくらいで部活に来ることさえも慣れていなかったので体力がついたと思います。弓も技術も以前の流派から変わったけれど慣れたと思います。
――今回の試合で課題は見つかりましたか
緊張するときだけに出る癖を確認できました。狙いをつけるときに右の手がふわふわしてしまうことを改善したいです。
――今後の意気込みを教えてください
次の大会は新人戦なので同期と一緒に絶対優勝したいです。
山野桃果(先理2=東京・吉祥女)
――今シーズンを振り返ってお願いします
夏に練習再開ということになってから、すごく練習して自分の射を決めて、ということをやってきました。普段だと試合があったはずが、全く試合がなかったので、(射が)当たらなくても形を変えるという部分に集中できました。そこは弓道一本に集中できて、実際に試合が始まったときは、これをやれば良いということを確立した状態で臨めたので、的中もだせました。自分が頑張った分だけ試合に出させてもらい、周りも自分を信じてくれたので、良かったです。今シーズンは全ての試合に出させてもらったのでよくがんばったなと思います。
――今日の試合の振り返りをお願いします
今週は調子が本当に悪くて…。今日の朝まで自分ではない人が出るかもしれないと言われていたくらい調子が悪かったです。それでも監督が自分のことを、信じて試合に出させてくれて、そうしていただいたからには悔いのない最大限のないことをやり切るということを目標にやりました。今日はそれを達成できたのでよかったです。
――同中競射が今日は多かったですが、それに関してはいかがですか
集中力が一度切れてからすぐ一度(集中を)入れ直さなくてはいけないというのは、自分も他のメンバーも大変だったと思いますが、(他の)二人なら絶対に当ててくれるという信頼はあったし不安要素はなかったので、自分だけに集中して同中競射に集中することができました。
――大前というポジションに関してはいかがでしょうか
今シーズンの試合は全て大前で出させてもらったので、お気に入りのポジションです。早稲田の大前は自分と胸を張って言えるようにこれからがんばっていきたいです。
――次のシーズンへの意気込みをお願いします
オフがいつもより短いので、そこだけで射の調整ができるのか不安ですけど、逆にその調整が大きく他の人たちも含めて大きく変わることはないだろうと思います。今シーズンの反省点はそれぞれ自覚していると思うし、チームとしての反省点も見つかったので、それを自覚して克服できるようにもっと練習をして自分に自信をつけて、大事な場面で実力を発揮できるように頑張ります。