66回目を迎えた全日本学生選手権大会。大学弓道界の頂点を決める大会は、今年は名古屋の地で開催された。猛暑に見舞われている名古屋の地で、全国から集まった大学が熱い戦いを繰り広げている。決戦の舞台となったアリーナには、全国から多くの選手、観客が集まり、張り詰めた空気の中に選手たちの行射の音と観客の感嘆が漏れ聞こえる異様な雰囲気となった。早大は、男子部・女子部共に、たった24校しか進むことが許されない決勝トーナメントへの進出を決めた。
大会1日目に行われた男子団体予選。早大は過去数年に渡って決勝トーナメント進出を逃しているため、悲願の決勝トーナメント進出権を取りにいった。6月に行われた全関東学生選手権で準優勝した実績と自信を引っ提げ臨んだ予選は、時折矢を抜いてしまう場面も見られたが、お互いがカバーし合い、危なげなく決勝トーナメント進出を決める。そして悲願であった決勝トーナメントの1回戦で迎えた相手は東洋大。1本目は5射3中と流れに乗り切れなかったが、2本目は嫌な流れを断ち切る5射皆中。そのまま早大は20射15中で東洋大を下し、2回戦へと駒を進める。ここで早大の前に立ちはだかったのは明大。次に進むためには絶対に倒さなければいけない相手を前に、早大はこれまでより良い立ち上がりを見せる。大前の牧山千莉(スポ3=千葉)が初矢を確実に決めると、1本目は5射4中で終える。この時点で明大と同数であり、勝利を手にするためさらに的中を重ねていきたいところであった。しかし、2本目、4本目ともに3中で終わり、結果は14-17。躍進を見せた男子部団体の夏はここで終わった。
悲願の決勝トーナメント進出を果たした男子部団体
女子の団体戦は2日目に行われた。同じ立の中で誰よりも早く矢を放った、大前の森田梨穂子(文3=大阪・北野)が初矢を詰めると、中の渋谷有希乃(文構1=東京・早実)もそれに続く。全員が3射終えた時点で、9射7中と順調に的中を重ねていたが、緊張から留矢を森田、渋谷が連抜きしてしまう。この時点で、12射8中以上を出していた大学は23校。僅か24校しか出場できない決勝トーナメントに進出するためには、必ず決めなければならない最後の1本は落の武藤香帆(文構3=東京・青山)に委ねられる。部員だけでなく、既に7中を出し結果を待っている他校が固唾(かたず)を呑んで見守る中、武藤はそのプレッシャーを跳ね除け、的を射抜いた。その後出場した群馬大も8中を出し、一手競射を行うこととなったが、練習通りの射を見せ圧巻の6射皆中で決勝へと駒を進める。続く1回戦の相手は、同じく一手競射で勝ち上がった名城大。予選の勢いそのままにまとめたいところであったが、地元の勢いもあり、僅かに及ばず敗戦となった。
皆の思いと共に決勝トーナメントを戦った女子部団体
「気持ちで中てた1本でした」(武藤)。決勝に繋げる的中を出すことができたのは、お世話になった監督、そして4年生に思いを込めたと武藤は語った。昨年までは卒業した4年生が主体となり、団体戦を率いていたことで、今期は多くの部員が団体戦に未出場の状態でスタートした女子部。全関(全関東学生選手権)、選抜(全国大学選抜)では、予選は通過して当たり前という『名門』の重圧と戦ってきた。今回もそのプレッシャーを感じながらも、予選を通過してみせた。その結果、男女揃っての予選通過は5年ぶりとなった。入賞には届かなかったが、大健闘だ。そして、明日の最終日には個人戦が行われる。きょうのような活躍を期待したい。
(記事・写真 秦絵里香、廣瀨智優)
結果
▽男子団体戦
牧山、阿部悠里(教2=宮城・仙台一)、志岐伊織(スポ4=群馬・前橋西)、宮川晃弥(スポ1=茨城・清真学園)、幸明千尋(スポ4=東京・城北)
予選
牧山 3中
阿部 4中
志岐 3中
宮川 3中
幸明 3中
20射16中
決勝トーナメント1回戦
○早大15-11東洋大
決勝トーナメント2回戦
●早大14-17明大
▽女子団体戦
森田梨穂子(文3=大阪・北野)、渋谷有希乃(文構1=東京・早実)、武藤香帆(文構3=東京・青山)
予選
森田 2中
渋谷 3中
武藤 3中
12射8中
同中競射
森田 〇〇
渋谷 〇〇
武藤 〇〇
決勝トーナメント1回戦
●早大7-9名城大
コメント
幸明千尋(スポ4=東京・城北)
――2日間の試合を振り返っていかがですか
正直もうすこし行けるかなと思っていたのですが、僕がちょっと敗因になってしまった点については悔しいです。でも2日間通してみたら、5年ぶりに予選通過できたので、独特の緊張感の中でも、予選通過できることを証明できた良い大会だったとは思います。
――最後のインカレでしたがいかがでしたか
なかなか予選通過できずにいたのを見てきて、自分たちの時に通過できるのかという不安はあったんですけど、落として前の4人を見ていたら、すごい安心感があったので、その4人に助けられて、本当にいい大会になったと思います。
――緊張はありましたか
緊張はすごくありました。
――最後にリーグ戦への意気込みをお願いします
今まで4人、5人での立だったので、これから8人というもっと大人数の立でいかないといけないし、四ッ矢だけじゃなくて20射と数も多くなるので、まずはチームとしての安定感、全員が8割、9割決められるようなチーム作りをしっかりしていきたいと思います。
志岐伊織(スポ4=群馬・前橋西)
——二日間の団体戦お疲れ様でした。振り返っていかがですか
個人的には、初矢を入れることを目標にしていて、チームとしては予選通過ということで、取り合えず自分は思っていた目標は達成できたと思うんですけど、明治戦は相手が強かったですね。もしかしたら勝てるかもしれないっていうのがあったので、ちょっと残念ですけど、例年に比べては良いインカレだったと思います。
——大会1日目の出来はいかがでしたか
一番最初の初矢を入れられたというのが、自分の中ですごい大きいことだったんですけど、2本がちょっと浮いてしまって、それもいつも通り引いて抜いてしまったのではなくて、割と失敗して抜いてしまったというのがあったので、もう少しいけたかなというのが個人的にはありました。
——アリーナの試合での緊張感もあったのでしょうか
そうですね。初矢が入って安心して、少し気が抜けてしまったっていうことだったり、アリーナ独特の緊張感もあっていつも通り引けなかったのかなと思います。
——2日目の今日は、緊張感はいかがですか
今日も一回目の立は緊張して、変な射が出てしまったので。やっぱり慣れないですね。
——最後のインカレでしたが、いかがでしたか
4年間、アリーナの大会で予選を通ったことの方が少ない中で、今回4年生として最後の大会、最後のアリーナで予選通過出来たことはすごく嬉しくて、でもその中で勝てる試合で負けてしまったのでちょっと悔しい気持ちはあるんですけど、チームとして徐々に徐々に強くなっていくその第一歩を踏み出せたのかなと思います。
——今年の強さの要因は何でしょうか
選抜で良い結果を残せて、自信もつけられたのもありますし、宮川(晃弥、スポ1=茨城・清真学園)の安定感であったり、牧山(千莉、スポ3=千葉)の安心感がチームの中で出てきているので、自分もその安心感に乗って引けたのかなと思います。
——秋のリーグ戦に向けて
まだまだ厳しい部分はありますけれど、これから合宿があるのでそこで8人、補欠含めて12人、しっかり揃えられるように、そしてリーグでも周りは強いですけど、そこに負けないようにしっかり、一戦一戦大事に勝ちを取りに行きたいと思います。
武藤香帆(文構3=東京・青山)
――きょうの試合を振り返っていかがですか
前回の全関(全関東学生選手権)の試合をふまえたら、チームの雰囲気も良くて、楽しめる試合もあったので、その部分は良かったと思います。チーム一体となって引くことができた試合だったと思っています。最後の試合は、自分自身では皆中は出たんですけど、みんなを安心させる1本が全然引けなくて、少しギリギリに当たった矢だったりという部分でチームに影響を与えてしまったのかなとすごい後悔しています。
――団体としては今年が初めてのインカレでしたが、いかがでしたか
今まで個人戦で出ていたんですけど、自分はずっと団体に出たくて。みんながいるから引ける1本があったり、練習とかでも自分が失敗してしまっても周りが助けてたり、やっぱりみんなで引く1本というのは絶対違うんだなと思いました。
――予選突破のボーダーは今回8本でしたが、その8本目を前が外していた中で決められました。絶対に中てるという思いがあったのですか。
はい。正木主将(さくら、法3=東京・吉祥女)が会場についてきてくれたんですけど、正木さんにとってインカレは最後でしたし、丸田綾希女子部監督(平19教卒)も9月で大阪に転勤されるので、ずっと指導して下さった中でも今回で最後だったので、そこで決めなかったら後悔すると思って、気持ちで中てた1本でした。我武者羅でした。
――決勝トーナメント進出をかけた同中競射では全員皆中を出しました。その時のお気持ちはいかがでしたか
みんながリラックスして試合を楽しめたので、良かったと思います。大前の森田(梨穂子、文2=大阪・北野)は、結構苦しい試合しか経験しなかったのかなと思っていて、その中で試合を楽しむという経験ができたことは良かったのかなと思いますし、私も渋谷(有希乃、文構1=東京・早実)も集中して1本詰めれたので良かったと思います。
――昨年までは4年生主体のチームでしたが、メンバーが大きく変わりました。今回の結果をどう感じていますか
個人としては、予選でワセダが落ちるというのは今までありえないことだったのに、選抜(全国大学選抜)では落ちてしまって、先輩たちに申し訳ない気持ちでいっぱいでした。なので、低い目標かもしれないですけど、今回予選を通過できたことは良かったと思います。でも、やっぱり緊張した場面でも、良い状態に自分を持っていくことができれば、みんな普段のような良い状態を出せるのかなと思います。去年までは4年生が主体だったので、試合に出ている人が少なくて、自分も団体でアリーナ出させてもらうのは初めてだったので、そういう部分でまだ成長できる部分はあると思います。
――今後の意気込みをお願いします
やっぱり(東京都学生連盟リーグ戦)で1部に上がること。去年、2部に落ちてしまったので、なんとしても1部に正木さんを上らせたいし、丸田さんにも良い報告ができるように、2部から昇格したいです。明日はまだ個人戦がありますし、渋谷とか普段はもっと中るので明日楽しみにしています。福島(遥華、文1=埼玉・所沢北)も出るので楽しみにしています。