昨季、慶大を破り念願の1部昇格を果たした早大。新体制発足からしばらく経ち、本拠地・東伏見にその因縁のライバルを迎えた。立ち上がりに苦しみ序盤から引き離されると、最後までリードを奪うことはできず。最終的中111-126で敗れ、慶大に入れ替え戦のリベンジを許すかたちとなった。
「序盤から崩れてしまったことが大きな敗因」(倉持洵主将、スポ4=東京・国学院久我山)。倉持の言葉通り、試合を決定付けたのは2立目の射だった。初立が大きく崩れまさかの7中。一方の慶大は14中をたたき出し、ここでの本差が最後まで響いてしまった。それでも、3立目以降はメンバーを変更し立て直す。途中出場の3人はいずれも4年生。中でもチームに勢いをもたらしたのは、1部昇格の立役者となった鈴木智貴(法4=東京・早実)だ。代わった3立目から2立連続で皆中を出すと、同じく最上級生の髙橋真人副将(先理4=東京・早大学院)も皆中を続ける。主将の倉持を含む4年生のプレーが、これからのシーズンでもチームの雰囲気を左右することとなるだろう。
チームをけん引する鈴木
3年生には経験豊富な実力者がそろう。この日最も安定していたのは、チームトップの18中をマークした志岐伊織(スポ3=群馬・前橋西)。大学入学後初めて務めている大落のポジションで、落ち着いた射を披露した。5立目でようやく皆中を決めた幸明千尋(スポ3=東京・城北)、大貫真央(教3=東京・帝京大高)ら層の厚い同期と共に、早大の核となる。下級生では、今季から団体戦のメンバーに入っている栗原健太(文構2=東京・国学院久我山)がフル出場を果たした。全ての立で1本だけ抜き悔いも残ったが、15中は及第点。「『栗原でいこう』とメンバーに選んでもらいたい」と強気な姿勢を見せており、若い力のさらなる台頭にも期待したい。試合には敗れたが、それぞれが実戦を積む上で確かな収穫を得た。
安定して好的中を出す志岐
2立目で開いた本差を詰め切れず、1部校らしからぬ数字に終わった早大。今季最初の大一番である全関東学生選手権は約1カ月後に迫っている。目指すのは「部員全員で勝ちにいこうとするチーム」(倉持)。個々人に圧倒的な実力があるわけではないが、1部昇格を勝ち取った団結力の強さは折り紙つきだ。最大の目標である『日本一』へ――。昨季を超えるメークドラマを実現させる。
(記事 川浪康太郎、写真 田々楽智理)
結果
初立
大前 中谷透(基理3=東京・早実) 8射3中
久保木宣喬(創理4=東京・早大学院) 12射6中
弐的 栗原健太(文構2=東京・国学院久我山) 20射15中
落前 西原剛志(スポ2=東京・城北) 8射4中
鈴木智貴(法4=東京・早実) 12射10中
幸明千尋(スポ3=東京・城北) 20射14中
弐ノ立
大前 山田雄一郎(スポ2=東京・国学院久我山) 8射3中
倉持洵(スポ4=東京・国学院久我山) 12射7中
弐的 大貫真央(教3=東京・帝京大高) 20射15中
落前 髙橋真人(先理4=東京・早大学院) 20射16中
志岐伊織(スポ3=群馬・前橋西) 20射18中
コメント
倉持洵主将(スポ4=東京・国学院久我山)
――今日の試合を振り返っていかがでしたか
なかなか全体として調子が上がらない中で、序盤から崩れてしまったことが大きな敗因だと思うので、改善すべき点が明確になったかなと思います。
――今年のチームの様子はいかがですか
初めの方はすごくまとまっていたのですが、授業が始まったことに加えて、第二道場が取り壊しということになり、女子と練習場所の兼ね合いがうまくいかず、少しごたついている部分があります。なので今はもっとまとまるべきだと思っています。
――新入生が入ってきましたが
実力を持っている子も多いのですが、まだ大学という環境の中で活かし切れていない部分が多いと思います。
――主将としてどんなことを意識していますか
チームに対して疎外感を感じる人を出したくないと思っています。上手い人がメインになるというチームではなく、部員全員で勝ちに行こうとするチームを作ろうと思ってやっています。
――主将として試合に出場するのにプレッシャーはありますか
そうですね、なかなか調子が上がらなくて、スタメンになれずという結果だったんですけど。もっと本来の調子に戻していって、大黒柱になることが大事かなと思います。
――チームや個人としての課題などは見つかりましたか
チームとしてはなかなか一定して高い的中を出し続けるのが難しく、どこかで崩れてしまうところがあるので安定した的中を重ねることが目標だと思います。個人としては、プレッシャーで潰れてしまうことが多いので、打ち勝つ方法を考えながら練習していきたいと思います。
――今年度の目標を教えてください
今までアリーナの試合、全関(全関東学生選手権)やインカレ(全日本学生選手権)が予選落ちだったので、そこは確実に予選を通過して上位を目指す。そして、ひいては優勝できるように、と思っています。また、一番の目標としては今年1部(リーグ)に上がったので優勝して、王座に出場して勝ち切り、日本一になりたいと思っています。
志岐伊織(スポ3=群馬・前橋西)
――早慶戦ということで特別な思いはありましたか
特別思うことはなく、いつも通りの試合という感覚でした。
――ことしから入っている落というポジションはいかがですか
高校の頃は落でしたし、自分は前よりも後ろの方でゆっくり準備してから引く方が得意なので、落をやることで落ち着いて引く環境を与えてもらったと考えています。多少の緊張はあったのですが、落ち着いて引けました。
――18中という高的中が出ましたが
2本抜いたのですが、最初の1本はいい抜き方で、そこまで気にはしていませんでした。ですが、最後に抜いてしまったのはミスだったので、そこが反省点です。まだあと2本詰められるので、これから気を引き締めて頑張りたいです。
――最近の個人としての調子はいかがですか
当たりは出るのですが、技術面としてはいまいちかなというところなので、もう少し技術面を高めていければ的中にもつながると思っています。
――3年生になって意識の変化はありますか
仕事をしなくなった分、引くことに集中できていると思います。
――新チームの雰囲気はいかがですか
今はみんなあまり中たっていないので、後ろから見ていてもう少し中ててくれればうれしいかなと思うのですが、そこはこれから伸ばせる部分なので、これからチームとして伸ばしていきたいです。
――今季の目標はなんですか
とりあえず全関(全関東学生選手権)、選抜(全国大学選抜大会)、インカレ(全日本学生選手権)で予選通過して行けるところまで行くことです。あとはリーグ戦(東京都学生連盟リーグ戦)で、1部に上がったばかりでいきなり優勝は難しいかもしれませんが、できるだけ上の順位にいきたいです。
――一番近い大会である全関へ向けた意気込みをお願いします
今あまり技術面の調子がよくないので、そこを全関に向けてしっかり調整して、的中も伸ばしていきたいです。
栗原健太(文構2=東京・国学院久我山)
――きょうの試合を振り返るといかがですか
チームとしては、序盤にいい立で入ることができなかったのが、敗因に影響していると思います。
――後半は早大に流れがきたかなという印象がありましたが
後半は上がってはきていたんですが、もう少し上がらないといけないなと思います。最初からうまい立をできていれば良かったです。
――個人としてはいかがですか
最初の1本目を外してしまいました。緊張してたというのもありますが、思いきりが良くなかったかなと思います。中盤でも、3本中てて1本外すというのが3立続いてしまいました。自分のやっていることを信じ、最初から最後まで引ければ良かったです。
――全ての立で3中という結果については
最初の1本は緊張をしていましたが、2立目以降は、試合前にこう引くんだというのを決めていたのを意識しすぎてしまいました。
――慶大戦ということで、特別意識はしていましたか
昨年の早慶戦も、リーグ戦も出場していなかったので、久しぶりの大きな大会ということで意識はしていました。
――2年生になり団体戦へ出場してみて、心境の変化はありましたか
1年生の時に大きな大会に出場することができなくて、悔しい思いと同時に、自分に対して甘いと思いました。2年生になり、その部分をどうやって払拭していくかを少しずつ考えるようになりました。
――新入生に対してはどのような印象を持ちましたか
元気で個性的な子が、入ってきてくれました。自分たちの代に比べたら少ないのですが、人数もとても多いです。部にも、今まで以上に活気が出たと思います。
――最後に、自身の今季の目標を教えてください
去年出場することができなかった大きな大会、特にリーグ戦に出場したいです。誰かの代わりではなく、「栗原でいこう」とメンバーに選んでもらいたいです。