厳しい暑さの中、今年も学生の頂点を決める全日本学生選手権(インカレ)が日本武道館で開催された。全国から男女共に200を超える強豪校が集まるこの大会。全出場校の中から団体戦予選を通過できるのは上位24校のみという厳しい戦いだ。早大男子部は序盤からうまく流れに乗ることができず、20射9中と悔しい予選敗退となった。一方女子部は12射11中と圧巻の的中で予選を勝ち抜く。シードを獲得し、決勝トーナメント2回戦からの出場となった。対するのは天理大。両校一歩も譲らず、同中競射にもつれこむも、全国のカベは厚く、涙の惜敗となった。
初日に行われた男子団体戦予選。男子部は、練習を重ね自信を持ってアリーナに足を踏み入れた。しかし、初矢を大前の幸明千尋(スポ2=東京・城北)が抜くと、続く2人も自分の射を見せることができず、焦りと不安が広がる試合展開になる。落前の志岐伊織(スポ2=群馬・前橋西)の的中により嫌な流れを断ち切ったかのように思われたが、2本目、3本目も的中率を伸ばせない。15射5中で迎えた4本目。気持ちをしっかりと切り替えた選手たちは的中を重ね、早大弓道部の底力を発揮した。最終20射目、落の中村浩太郎主将(創理4=東京・芝浦工大高)が詰めきれず結果は9中。決勝進出には至らなかった。「(練習の様子が良くて)油断している部分があった」と、試合を振り返った中村主将。無念にも男子団体戦の夏はここで幕を閉じた。
チームで唯一皆中をたたき出した志岐
インカレ2日目は女子団体戦予選から行われた。練習では調子が悪かったという女子部だが、予選ではそれを全く感じさせない引きを見せる。安定した的中率を誇る森川未和子(スポ3=岐阜総合学園)が初矢を詰めると、中を務める小田代采夏(人3=福岡・西南学院)も後に続く。流れを引き寄せた早大は着実に的中を重ね、12射11中という高的中をたたき出し予選を危なげなく通過した。この結果、シードを獲得し決勝トーナメント2回戦に挑んだ早大は天理大と対戦。最初は固さが見られたものの、徐々に早大らしい伸び伸びとした引きで的中を伸ばしていく。9中と崩れることなく行射を終えた早大に対し、粘りを見せた天理大も同じく9中。同中競射によって決着をつけることになった。緊迫した雰囲気の中、全員が1本に集中し、先に終えた早大は6射4中。相手は中の留矢が離された時点で5射3中。落の留矢に全てが懸けられていたが、相手も勝利への執念は強く留矢は見事に的へ吸い込まれていき、またも同中となってしまう。一本競射までもつれこんだ接戦は、1-1で落を迎えるという展開に。プレッシャーがかかる中、落を務めた光明英夏女子主将(法4=東京・桜修館)から離された矢は惜しくも外れてしまう。対して、相手は最後にしっかりとまとめ、最終結果は1-2。あと1本、わずかに及ばず悔しい結果となった。
最後のインカレ団体戦に挑んだ光明女子主将
日本一を目指す早大弓道部にとって、男女共に悔しい結果に終わった団体戦。あすは厳しい予選を通過した者のみが出場できる個人戦の決勝が行われる。「同じことをしないようにする」と森川が語るよう、団体戦で得た課題をどこまで修正して挑めるかが勝利を導くカギとなるだろう。この悔しさをバネに、今こそ雪辱を果たし、早大の強さを証明する時だ。
(記事 秦絵里香、黒田菜々子 写真 川浪康太郎、比留田孟徳)
結果
▽男子団体
幸明、倉持(スポ3=東京・国学院久我山)、牧山千莉(スポ1=千葉)志岐伊織、中村
予選
幸明 2中
倉持 1中
牧山 2中
志岐 皆中
中村 0中
20射9中
▽女子団体
森川、小田代、光明
予選
森川 皆中
小田代 皆中
光明 3中
12射11中
決勝トーナメント2回戦
早大9-9天理大
同中競射
早大4-4天理大
●早大1-2天理大
コメント
中村浩太郎主将(創理4=東京・芝浦工大高)
――きょうの試合を振り返っていかがでしたか
詰めきれず、今はただ悔しいです。
――チーム全体の流れとしてはどのように感じましたか
試合前はいつもの練習と同じ雰囲気のように感じていましたが、3射連続で中らずに順がまわってきて、落前の志岐の流れに乗って的中で返せなかったところから嫌な雰囲気になってしまいました。
――前回の選抜大会から約一ヶ月間どのような練習をされてきましたか
テスト明けからインカレに向けて、練習試合を多めに練習してきました。
――去年の日本選手権との違いはありましたか
去年と的中数はあまり変わらなかったと思います。練習の様子からは今日のような結果にはならないと思っていました。選手全員この結果に驚いている面があるので、振り返ると、どこか油断している部分があったと思います。
――落としてのプレッシャーはありましたか
今までは前で引いていたので、少し慣れない部分もありました。しかし練習ではうまく引けていたので、落として影響を受けたというよりは雰囲気に飲まれてしまったところが大きいと思います。
――個人戦での目標をお願いします
しっかり反省を活かし、できるだけ詰めて日本一を取りたいです。
光明英夏女子主将(法4=東京・桜修館)
――最後のインカレ団体戦にどのような意気込みで臨みましたか
優勝を目指していました。個人的には試合の前まですごく調子が悪かったので、自分らしい射を1本でも多く出して、1本でも多く中てることを目標にやっていました。
――練習で意識していたことはなんですか
練習でも目の前の1本を中てることを意識していました。
――6月に開催された全国大学選抜でも悔しい思いをされたと思いますが、きょうの大会までにどのようなことをしましたか
自分のやるべきことに、自分の実力がついていけてないというのを全関では感じました。それを埋めようときょうの大会まで取り組んでいました。
――予選は11中という高的中でしたが練習の成果がでましたか
練習以上の結果が出たなというのが率直な感想です。
――決勝トーナメントにはどのような気持ちで臨みましたか
決勝トーナメントは相手のことを考えても仕方ないと全員で言っていたので、自分との戦いでした。自分の今やるべきことをしっかりやろうと考えて臨みました。
――9中という結果は手応えとしてはありましたか
練習では10中を一つの目標にしていたので、一つ足りないという感じではあったのですが、大崩れすることがなかったので良かったです。
――同中競射になったとわかった時はどうでしたか
自分が引いている時は同中に気づいていなくて、終わってから気付きました。目の前の1本をやるしかないという気持ちで臨みました
――同中競射では落というプレッシャーも大きいですか
競射になってからは引いている人数が少ないのもあって、相手の的中が気になってしまいました。それが自分が崩れてしまった原因かなと思います。
――明日の個人戦に向けての目標を教えてください
自分のことだけなので、今まで自分がやってきたことを一本一本大切に、慎重になりすぎずにやりたいです。
森川未和子(スポ3=岐阜総合学園)
――全国大学選抜大会以降、どのような調整をしてきましたか
選抜までは会が短くて、緊張したら簡単にぶれることが多かったので、なるべく会を長く持つようにしたのですが、ほかは特に変えていないです。
――11中と好成績を残した予選を振り返って
11中は先週まであまり出ていなくて、今週ようやく10中以上が出るくらいだったので、全員がきょうに向けて調子が上がってきたのはよかったです。
――決勝トーナメント2回戦では、二度の同中競射がありましたが、心境はいかがでしたか
緊張しました。
――大前としてのプレッシャーはありましたか
とりあえずやることは決まっていて、中てるよりもそれをやることを意識していたので、それをやってこういう結果になったのは練習不足かなと思います。
――アリーナ独特の雰囲気は感じましたか
トーナメントになってくると、去年はここまで来てなかったので、上は上なりの恐ろしさがあるなと思いました。
――去年と違うと感じたのはどのような部分でしょうか
去年は全然調子がよくなくて、中てることを必死にやっていました。今回はそれとは違ってやることをやれば中たるという自信はあったので、そういう意味ではやり切れたという感じはあります。
――あすの個人戦に向けた意気込みを聞かせてください
去年は最初の2中だけしてあとは詰めることができなかったので、入賞することと、きょう失敗したことがあったので、あした同じことをしないようにしたいと思います。
小田代采夏(人3=福岡・西南学院)
――きょうまで意識して取り組んだ練習はありますか
伸びあいを意識しました。試験期間はお休みだったのですが自主練習などで練習量を人一倍かけてしっかり伸びあいと離れを強くして、的中を伸ばすことを重点的に取り組みました。
――アリーナの雰囲気は普段の道場とは違うと思いますがどう感じられますか
いつもの道場とは違って応援の声やスポットライトの強さも違うのですが、やはり引くとなると自分に集中しているので引くという点ではあまり自分の中では違いはないです。ですが声援の大きさには感謝しています。
――予選は11中と高的中を出し、ご自身も皆中でしたがいかがですか
朝の練習ではあまり上手くいかない点もあり不安だったのですが、今まで練習をしてきたことで自分のやるべきことは分かっていたのでそれだけは絶対にやり切ろうという思いで臨みました。
――一本競射までもつれた決勝トーナメント2回戦はプレッシャーもあったと思いますが、振り返っていかがでしょうか
3本目が終わって相手といい勝負ということが分かって、自分が決めなければいけない状態だということは分かっていたのですが最後の最後で緊張のあまり自分が離したいところよりも早いところで離してしまって、すごく悔いの残る1本になってしまいました。
――決勝トーナメント2回戦に入る前に3人で声掛けしたことはありますか
楽しんでいこうということを女子責任者の光明さん(英夏、法4=東京・桜修館)が言ってくださいました。場を楽しむというか、インカレという会場を楽しもうという声を掛けてもらいました。
――きょうの試合で見つかった課題はありますか
きょう抜いた矢は練習のときから出ていた矢で、甘かった2本は同じところで抜いてしまいました。あすは個人戦もあり今後は定期戦やリーグ戦(東京都学生連盟女子リーグ戦)も待っているので、同じところで抜かないようにしっかり練習で見直していきたいと思います。
――あすの個人戦に向けて意気込みをお願いします
しっかり全部中ていって、優勝したいと思います。