「普段通りの射」できず予選敗退

弓道

 暑い名古屋の地で、熱い戦いが繰り広げられた。学生弓道の頂点を競う大会である全日本学生選手権(インカレ)。初日は男子団体予選が行われた。出場校195校のうち、決勝トーナメントへ駒を進めることができるのはわずか24校。厳しい戦いのなか、早大はまさかの20射中7中と大苦戦を強いられる。予選敗退と本来の力を発揮することはできず、男子団体の夏は終わりを告げた。

 序盤から、ペースが乱れた。緊張の面持ちで射場へ向かった5人。アリーナ特有の独特な緊張感のなか、大前の中村浩太郎(創理3=東京・芝浦工大高)が初矢を抜いてしまう。全体的に動きが早く、流れをつかむことができない不安な立ち上がりとなってしまった。期待のルーキー志岐伊織(スポ1=群馬・前橋西)の的中で流れを取り戻したかのように見えたが、そのあとも的中を重ねることはできない。全員が2射目を終えた時点で10射中2中と苦しい展開に。決勝トーナメント進出に黄信号が灯った。

1年生ながら活躍した志岐

 嫌な流れを断ち切ったのは、落を務める大久保侑主将(スポ4=岩手・福岡)だった。初矢、2射目共に惜しくも外してしまうも、3射目、そして留矢は確実に的を射抜く。自身最後となるインカレで主将としての意地を見せつけた。「他のみんなのことを信じていました」という大久保の思いに応えるべく、チーム全員が『奇跡』に挑む。中村が3射目でようやく決め、個人戦を控える志岐も留矢を詰めるなど、終盤はおのおのが調子を取り戻したが、結果は7中。普段の実力とはかけ離れた成績で、早大の予選敗退が決まった。

落として意地を見せた大久保主将

 「アリーナの雰囲気にのまれてしまった」――。中村と志岐は、口をそろえて今大会をこう振り返った。早大の課題は、大舞台で普段通りの射を行うことである。通常の練習場に比べ広く、観客も多いアリーナを中村は「集中しにくい環境」と表現した。ただ、その環境のなかで本来の実力を発揮してこそ、真の実力の持ち主と言えるだろう。9月からは、東京都学生連盟リーグ戦が開幕する。「最後のスタートダッシュをしっかりと切って、きょうの反省点を踏まえてリーグ戦に向かいたいと思います」(大久保)。この夏得た課題と収穫を糧に、栄光の秋へ向けた新たな戦いが幕を開けようとしている。

(記事 川浪康太郎、写真 桝田大暉)

結果

▽男子

中村、竹沢剛(社1=北海道・札幌第一)、志岐、髙橋真人(先理2=東京・早大学院)、大久保

予選

中村  1中

竹沢  1中

志岐  2中

髙橋  1中

大久保 2中

20射7中

コメント

大久保侑主将(スポ4=岩手・福岡)

――ご自身にとって最後となる全日本学生選手権(インカレ)にどのようなお気持ちで臨まれましたか

毎年優勝したいという気持ちは変わらなかったので、最後だから特別に何かを意識するということはなく、しっかり弓を引くことができたと思っています。

――今日の試合に関してはいかがですか

きょねんと比べてチームの実力が劣るところもあったので、きょねんほどの安心感を持って臨むことはできませんでしたが、自分たちが普段通り実力を出し切っていれば、予選は通過できたと思います。自分たちの悪いところが、一人一本ずつ出てしまったという感じだと思います。

――主将として心がけていたことは何かありますか

とにかくこういった緊張が大きくなる大会では、自分たちが練習通りできるような声掛けをすることを意識しています。

――なかなか流れに乗れないなかでも最後の二本をきっちりと的中されました。どのようなことを考えてこの二本に臨まれましたか

他のみんなのことを信じていましたし、合計的中も最終的に分かったことだったので、少し緊張していた最初の二本のようにはならないように、しっかり詰めようと思って引きました。

――東京都学生連盟リーグ戦(リーグ戦)に向けての意気込みをお願いします

予選を通過したチームとそうでないチームがあるなかで、リーグ戦に向けてのスタートラインはどのチームも同じだと思います。最後のスタートダッシュをしっかりと切って、今日の反省点を踏まえてリーグ戦に向かいたいと思います。

中村浩太郎(創理3=東京・芝浦工大高)

――全日本学生選手権(インカレ)に向けてどのようなお気持ちで臨まれましたか

あまり調子が良くはなかったのですが、メンバーの選ばれた3年生が僕しかいなかったので、そのなかでも上の学年としてしっかりと的中でチームを引っ張っていけたらと思っていました。

――大前として流れをつくるプレッシャーなどは感じていましたか

最近はそうではなかったのですが全体を通して初矢を抜いてしまったり留矢を抜いてしまったりで後ろがぽつぽつと抜いてしまったということが多かったので、練習でもそこまで詰められはしなかったのですが詰めたいところで詰められるというところを意識していました。

――きょうの立の流れや雰囲気はどのように感じられましたか

直前で高校の道場を借りて練習したのですが、そのときには結構いい的中がでていたのでその通りにいくのかなと思っていました。ですが、全体的にアリーナの雰囲気にのまれてしまって後ろがどのような感じなのかは分からなかったのですがワセダらしさが出ていなかったのかなと思います。

――アリーナはやはり独特の緊張感があるのでしょうか

天井がまず広くて、普段はないところに応援席があるのでどうしても色んなところに意識がいってしまって集中しにくい環境だと思います。

――きょうの試合を通して見つかった課題はありますか

きょねんに比べて緊張した場面で弱いっていうところがいまのチームの弱さだと思うので、長所を伸ばしつつ緊張したなかでも中てられるような選手をどんどん増やしていかないと今後のリーグ戦(東京都学生連盟リーグ戦)だったり、入れ替え戦(1部入れ替え戦)でいつも通りの力を出して勝つということができないと思うのでいかに緊張したなかでいつも通りの射ができるかというところが大事だと思います。

――リーグ戦に向けて意気込みをお願いします

きょねんは入れ替え戦でだんだん回数を重ねるごとに的中が落ちていってしまったので、ことしはそうならないようにしっかりと常に1カ月半ぐらいの長い間なのですがその期間ずっと安定して高い的中を出していきたいなと思います。

志岐伊織(スポ1=群馬・前橋西)

――今日の試合を振り返って

流れが悪かったかなと思います。練習では中てていた人がどんどん抜いちゃってたので、悪い流れかなと思いました。

――大学に入って初めての全日本大学選手権(インカレ)の雰囲気はいかがでしたか

思っていたよりは緊張しなくて、高校のときも全国で出ていたので、それくらいかなと。

――最初の射は2人続けて抜いたあとでしたが、プレッシャーはありましたか

いや、それはないです。練習でもそういう場面はあったのですが、本番だったのでどうにかしてこの流れを止めないとと思っていました。

――個人の結果はどうお考えですか

練習では普通に中ってたのですが、アリーナの空気にのまれて悪いリズムに乗ってしまったので、もう少し自分をしっかり持たないといけないと痛感させられました。

――個人戦に向けて見つかった課題はありますか

いつも通りやれば中るので、いつも通りを心がけていきたいと思います。