ことしも一射に懸ける夏がくる。全国の精鋭が集い腕を競う全国大学選抜大会(選抜)。強豪校の圧倒的な実力を前に男子団体の挑戦は予選で幕を閉じる。しかし、見事な集中力を発揮した女子団体は決勝トーナメントへと駒を進めた。迎えた1回戦では安定した射を披露。2回戦進出を決めると、昨年の全日本学生弓道女子王座決定戦(王座決定戦)で優勝を果たした甲南大との一戦に臨んだ。同中競射にまでもつれ込む接戦となったが、関西のカベは厚く、惜しくも悲願の初優勝とはならなかった。
まずは男子団体予選で大前を務める中村浩太郎(創理3=東京・芝浦工大高)が落ち着いて的を射抜いた。その後もテンポ良く行射を進めていきたいところであったが、思うように的中を重ねることができない。おととしは準優勝、きょねんも決勝トーナメント進出を決めているだけに全体での好的中が期待されていた。最後に落の大久保侑主将(スポ4=岩手・福岡)が留め矢を的中させ後味の悪さを無くすも、無念の予選敗退という結果に終わった。
初矢をしっかり詰めた中村
先日の全関東学生選手権(全関)で3年ぶりの優勝を果たした女子団体は、勢いに乗っているだけにこの日も勝負強さが光った。同中競射の末、重圧のかかる場面を落の森みのり(商4=東京・頌栄女学院)が収め、決勝トーナメント進出を射止める。迎えた1回戦では、明学大と対戦。3人全員が初矢をしっかり詰め、順調な立ち上がりを見せた。全関の個人戦でも活躍を見せた小田代采夏(人2=福岡・西南学院)が4射皆中とチームに貢献し、森川未和子(スポ2=岐阜総合学園)と森も的中を重ね、10-6と危なげなく1回戦を突破する。続く2回戦は昨年の王座決定戦の覇者・甲南大。1回戦で唯一、全員皆中と確かな実力を誇る強豪を相手に早大は冷静かつテンポのよい射を展開する。予選同様、同中競射にまでもつれこむ接戦となったが、2-3で惜しくも一歩及ばず。悔し涙を飲むこととなった。
立の流れを引き寄せた森川
入賞は果たせなかったものの「自分の弱みが見つかった」(小田代)、「悔しさをバネに」(森川)など全日本学生選手権(インカレ)に向け、選手たちはすでに前を見つめている。同中競射になることの多かった今大会は一射の重要性を再認識させるとともに、チームの団結力を高める要因となったことだろう。早大弓道部の挑戦はまだまだ始まったばかりだ。
(記事 八木美織、写真 三佐川唯、黒田菜々子)
結果
▽男子
中村、志岐伊織(スポ1=群馬・前橋西)、髙橋真人(先理2=東京・早大学院)、廣瀬智紀(人3=静岡・清水東)、大久保
予選
中村 3中
志岐 3中
髙橋 2中
廣瀬 2中
大久保 2中
20射12中
▽女子
森川、小田代、森
予選
森川 3中
小田代 2中
森 3中
12射8中
1回戦
○早大10―6明学大
2回戦
早大9―9甲南大
同中競射
●早大2―3甲南大
コメント
予選
中村浩太郎(創理3=東京・芝浦工大高)
――全関東学生選手権から今大会までにどのように調整してきましたか
やはり、4本だけの勝負だと緊張してしまっていつも通りの射をできないというのがあったので、緊張した際でもいつも通り引けるかどうかというのを普段の練習からしっかりプレッシャーをかけてやってきました。
――全体的な立の流れとしてはいかがでしたか
普段の練習と比べると全体的にためてしまった矢が多く、そこで「あれ?」という流れになってしまったのでそこはもう少し(改善していきたい)。緊張によって、普段の立のペースとかも乱してしまったので反省点として持ちたいです。インカレ(全日本学生選手権)がこういった少ない矢数の形式として控えるので、そこに向けて生かしていきたいなと思いました。
――大前として心掛けていることは
ペースですかね。やはり普段のペースで引くというのを心掛けていて、自分がペースを崩してしまうと他の選手に少なからず影響を与えてしまうと思うので、とにかくいつも通りのように淡々と引くというのを意識しています。
――本日はその落ち着いたペースは作り出せましたか
自分の感触としてはいい感じだったのですが、緊張で若干他の人から見てどうだったか分からないので、帰ってからしっかりビデオを見て参考にして練習していきたいです。
――本日見つかった課題は
やはり緊張してしまうと縮こまってしまう場面があるので、練習から大きくというのを意識するだけでなく練習試合でその意識したところができているかという確認を積み重ねていってそれを自信にして次からはこのようにならないようにやっていきたいです。
――試合後、監督からはどのような言葉がありましたか
練習通りに引けていた矢もあれば、引けていなかった矢もあると。練習通りにはいっていなかったというように言われたので、練習通りに必ずしもいくわけではありませんが、練習と本番の差をどんどん埋めていければというのがことしの最初からずっと課題として残っているので、そこを詰めていきたいなと思います。
――それでは最後に全日本学生選手権に向けての目標を個人としてとチームとしての両方の観点からお願いします
個人としては大前でチームを引っ張っていくかつしっかりと的中させて勝利に貢献できるように、また全体としては3、4年生がチームの全体を占めているので下級生のこともしっかり見てあげてチーム全体の的中を伸ばすことで層が厚くなるようにした上で、高い的中率を生み出していきたいです。
森みのり(商4=東京・頌栄女学院)
――全関東学生選手権(全関)から全国大学選抜大会(選抜)に向けてどのような調整を行いましたか
全関と並行して練習をしていかなければならなかったのですが、全関と選抜となるべくメンバーを分けて全関で気持ちが途切れないようにというメンバー選考をしていきました。それで、選抜本番に向けては少し重めのノルマをかけてみたり、メンバー外の部員たちと対戦形式にしてみたりとかなり試合に近い緊張感が出せる練習メニューを組んでいました。
――予選での立の流れはいかがですか
いつも通りでしたね。練習だとどうしても試合ほど緊張したりしないので、もっと中るのですけど、この環境で8中が出せたのはいつも通りの力が出たのかなと思います。
――競射の前に話し合われたことなどありますか
特に話し合ったことはないのですが、なるべくいつも通り、変な緊張感は出さずにいこうと思いました。いつも通りの空気でいこうと無駄話をずっとして(笑)。なるべく変な緊張をしないように心掛けていました。
――あすへの収穫はありますか
初日だったので緊張して空気にのまれてしまう部分もあったと思うのですが、あしたは2日目なのできょうの反省点を確認して、あしたはやらないようにして良い結果がつかめたらなと思います。
――決勝トーナメントに向けて意気込みをお願いします
自分たちの力を出し切ってベストを尽くしたいと思います!
決勝トーナメント
森川未和子(スポ2=岐阜総合学園)
――全関(全関東学生選手権)とはまた違った雰囲気での選抜でしたがいかがでしたか
選抜は会場が静かだったので、全関よりも正直緊張しました。
――ご自身のきょうの調子はいかがでしたか
今週はチーム的にも調子が安定していなかったので焦りも少しありましたし、実際私も皆中がなかなか出なかったので厳しいなと思っていました。でも最後にはしっかり調子が戻ってきたのでよかったです。
――2回戦では甲南大と競射までもつれ込む熱戦を繰り広げましたが、緊張などはされましたか
四ツ矢はそんなに緊張はしなかったのですが、やはり一本の戦いということで競射は緊張しました。
――結果2回戦敗退となりましたが、この結果はどのように捉えていらっしゃいますか
先ほども話した通り今週はチーム全体が好的中ではなかったので全員に不安があったのですが、本番では練習よりも安定した的中が予選から出せたことはよかったと思っています。結果的には負けてしまいましたがこの悔しさをバネにインカレ(全日本学生選手権)にもつなげていけるので、いい経験になったと思います。
――お話しにも出てきた通り夏にはインカレが控えていらっしゃいます。全日の意気込みをお願いします。
今週末にインカレの個人予選があるのでそこはまずしっかり通過することと、団体のメンバーにしっかり入ってきょう抜いてしまった矢をもっと追求して中てられるようにしたいです。
小田代采夏(人2=福岡・西南学院)
――予選から調整した部分はありますか
きのうは試合の前の練習ではよくて、試合のとき緊張感などで押されてしまう部分があったのでその後しっかり練習をして自分が今週やってきたことをもう一度おさらいして、きょうは強気で臨んでいきました。
――明学戦では皆中を出されていましたが、ご自身の調子はいかがですか
技術的な調子は良かったのですが緊張感という大きなものに押しつぶされそうにもなったのですが、自分の気持ちを抑えてしっかり落ち着いて引くことができました。
――競射に入る前に何か意識されたことはありますか
競射は練習でもずっとやってきて、そこで3中や2中を出すのができていたのでチームのみんなでは私たちはできるという厚い信頼感をもって臨みました。
――精神面はどのように調整していきましたか
今まで自分が努力してきたことは間違いじゃないと思って、自分の練習量を自信に臨んでいきました。
――今大会を通して収穫はありますか
自分の弱みが見つかったのでしっかりそこを来週はインカレ(全日本学生選手権)個人予選、そのあとはインカレ、リーグ(東京都学生連盟リーグ戦)と続くので、きょう見つかった課題を一つずつ地道にゆっくり焦らずつぶしていこうと思います。
森みのり(商4=東京・頌栄女学院)
――きょうの試合を振り返っていかがでしたか
――1回戦はきのうのいいところが出たかなと思ったのですが、2回戦は私が止めなければいけなかったところで止められなかったところが悔しかったです。
――きのうから修正した点はありますか
大きく変えたところはありませんが、自分がやってきたことをしっかり再確認したということはあります。
――甲南大にはどのような気持ちで臨みましたか
変に意識してもしょうがないので、自分のできることをやったという感じです。ただあれは勝てたかなという気持ちもあり、悔しさは残ります。
――落を務められましたがなにか意識したことは
競射になってしまった原因が自分の止め矢だったので、やることを一通り再確認したり、絶対にという気持ちがありました。
――全日本学生選手権(インカレ)に向けて意気込みは
メンバー全員が成長できた一カ月間だと思うので、さらにパワーアップしてインカレにつなげていきたいと思います。