【連載】全日本女子学生剣道優勝大会直前特集『雲外蒼天』  最終回 横山舞香×矢野ひかる×鈴木小萩

剣道

 最終回は横山舞香主将(スポ4=京都・日吉ヶ丘)と矢野ひかる(社2=京都・日吉ヶ丘)と鈴木小萩(社1=京都・日吉ヶ丘)の同じ高校出身の3名にお話を伺った。高校時代から築かれた先輩後輩関係がうかがえた。

※この対談は10月11日に対面で行われました。

「自慢の後輩です」(横山)

残心を取る横山

――他己紹介をお願いします

横山 矢野さんはとにかく明るくて元気で、どんな人にでも、同じように接してて、一言でいい子です。今、高校生の時から、1年生と3年生で1年間しか被ってないのですが、何事にも一生懸命で、絶対に人の悪口は言わないし、そういう部分見てても一番信頼できる後輩です。私が4年生で引退していなくなる中で、信頼できる存在なので、この子は来年以降も期待できる、名前の通りひかるっていう輝かしい人材だと思うので、このまま突っ走ってもらいたいと思います。鈴木さんは、私は(代が)被ってないんですけど、同じ高校出身で、ほんとに矢野さんと一緒で、明るくて素直で、可愛げのある後輩です。この子(矢野)と一緒なんですけど、どんな人にでも同じように接してて、みんな元気もらえる、そういうところが私はとても好きです。(高校の)代は被ってなくても自慢の後輩です。1年間この大学で被れて良かったなって思うぐらい1年生を任せられる存在です。この子が一番周りを見てるなって思いますし、その部分で言うと一番信頼していて、剣道にも真っ直ぐで努力家です。この2人は剣道に素直で努力している姿が、みんなにとっていい影響を与える存在だと思います。この1年間一緒に頑張ってきて良かったなって思います。

矢野 横山主将は一言で表すと、マジで部のお母さんみたいな感じです(笑)。去年のインタビューの時にも言ったんですけど、誰かが辛い時とかしんどい時とかによく気づいてくれて、優しい言葉をかけてくれたりというところで、私が高校の時から助けてもらってます。でも同じ関西なので、部の中では関西(出身の人)が少ないので、話のノリが合うというかそんな感じです。キャプテンですけど、良い意味で近い距離で接してくださって、私の悩みとかもよく聞いてくださるのでお母さん的存在です。鈴木は私は高校では2年間被ってて、今は1年被ってるのですが、高校の時からしんどいとかをあんまり顔には出さないで、ひたむきに努力するタイプです。私は大学で女子の同級生がいないんで、その分いい話し相手になってて、ある意味同期みたいな感じで接してて、着心許せる後輩です。

鈴木 横山主将は高校の時は被ってなかったので、噂には聞いてる横山さんという存在でした。最初は正直ちょっと怖かったんですけど、結果も残されてる先輩なんで、ちょっと、あ、怖いなっていうので入学したんですけど、めっちゃ優しくて、4年生ですけど、壁を感じさせずに優しく接してくださるので、居心地の良い部を作ってくださる存在だなと思います。で、矢野先輩は今年3年目の先輩なんですけど、家が近くて私が体調崩すとご飯を作ってくださったりするんで、私にとっては、実家は関西なんですけど、東京の母みたいな感じです(笑)。

矢野 そんな歳とってへんわ(笑)。

鈴木 すごく面倒見の良い先輩です(笑)。

――矢野選手と鈴木選手は高校時代どんな関係性でしたか

矢野 私の代4人と鈴木がスタメンで出てました。1人で大変だったと思うんですけど、でも、 良い意味で図々しいので、ズカズカ来て、私の代の先輩を言いより、おだてておだてて猫かぶってっていうのは冗談ですけど(笑)。でも、ちゃんとその輪に入って、後輩だけど、私の代の最後の決勝のスコアとか見ると、鈴木がとってて(勝った)ていう試合が多くて、鈴木にずっと助けられてたチームであるかなと思います。

鈴木 今のやつ(矢野の発言)で分かるように、他の先輩には、こう「お願いしますお願いします」言ってたんですけど、全部(矢野には)バレるので、良い意味で素を出せました(笑)。キャプテン同士だったので、相談も乗ってくださいました。私が前のポジションで矢野先輩が後ろのポジションで、回ってきた時は、かかってきた時にこそ勝つみたいな、頼もしい大将だったなっていう印象があります。

――横山選手から見ててお二人の関係性をどのように感じましたか

横山 姉妹みたいな感じで私は見てます。それこそ、さっき矢野さんが同期みたいな感じで(鈴木を)見てるみたいなのも、私も見てて(2人の関係性が)そう思います。最初は、この子(矢野)が同期いなくて1人だった のでめちゃくちゃ心配してたんですけど、同じ高校の子が入ってきて、器用だしあんまりどっちも顔に出さないんですけど、それを2人で補いやってるなっていうのが、頼もしいというか、良い関係だなと思ってます。

「絶対私が活躍する」(矢野)

メンを打ちに行く矢野

――今年度の大会の振り返りをさせていただきます。5月に行われた関東女子学生選手権大会では、横山選手と矢野選手が出場されて惜しくも全日本出場とはなりませんでしたが、試合を振り返っていかがですか。

横山 その時は自分の剣道っていうのが安定してなくて、一言で言えば悔しかったです。もう二度と出ることはない全日本なので、最後のチャンスだったので、もう一言で悔しいって気持ちでした。でも、悔しい気持ちがあったからこそもっと努力しようと思ったきっかけではありました。後輩が強い分、一人全日に行って、ほっとした分焦るというか、そういうバネにもなった試合だったなと思います。

矢野 笑いが出ちゃうような結果なんですけど、1回戦敗退で、相手も同級生だったんで、その(トーナメントの)先を見すぎてたかなっていうのがありました。勝ち上がったところに強い選手がいて、そこばっかり見てしまってた感じだったので、足元救われたなと。個人戦めちゃくちゃ苦手なんですけど、3年生になったら克服して、あと2回、出れたとしたらあと2回チャンスがあるんで、そこのチャンスを無駄にしないように。今はもう団体戦のシーズンなんですけど、個人戦でも活かせるような技とかを磨いていきたいなって思います。

――鈴木選手はお二人の試合を見てていかがでしたか

鈴木 えっとー。

矢野 覚えてないやろ(笑)。

鈴木 覚えてる(笑)。初めて私が関東の大会を生で見る機会で、高校の直属の先輩っていうこともあって強いっていうイメージがあったんですけど、 もちろんそうなんですけど、やっぱり関東の壁は厚いなと感じました。

――出場選手はどのように決めましたか

横山 新入生が強いっていうのも分かっていましたし、そこの辺は指導陣と私が相談して決めたことだったんですけど、平等にくじで決めました。

――8月には夏合宿が行われましたが、一番記憶に残っている練習はありますか

横山 私は最後の千本跳躍素振りです。

矢野 私は2年生元立ちで、普通は女子は立たないんですけど、立たしていただいて、先輩方に愛ある指導、ぼっこぼこにやられたことがすっごい記憶に残ってますね。

鈴木 私は追い込みです。久しぶりに吐きそうみたいな稽古をしたなっていうのが印象に残ってます。

――練習以外で合宿の思い出はありますか

横山 1年生と仲良く宿舎で話せたことです。

矢野 去年の合宿も2年生だけで、最終日の早朝に、川行って遊ぶみたいなのをして、私は今年はもう寝れるやろと思ってたんですけど、同期の男の子たちが誘ってくれて、みんなで遊びに行ったことです。

鈴木 私は夏合宿が厳しいって聞いてて、どんなものか分からなかったので、1年生でテーマソングを決めて毎朝仕事行く時と帰りにテーマソングを歌って、道場と宿舎を行き来してた道のりが思い出深いです。

――どんな曲を流しましたか

鈴木 「明日はきっといい日になる」です。6日間あるのに(笑)。明日はきっといい日になる、みんなで大合唱です(笑)。

――9月の関東女子学生優勝大会ではお三方ともメンバーに選ばれました。部内戦はいかがでしたか

横山 3人制のチームを組んで団体戦で勝負して、勝ったからいいとかではなくて団体戦で(団体戦らしい)そういう戦い方ができるかという。例えば、1本取ってきた人がいて、次自分は引き分けで後ろに回せるか、勝って後ろに回せるかとか、そういうところをしっかり考えられる人かというのを見極めるための選考を合宿中に行いました。

――矢野さんと鈴木さんは2試合ずつ出場されました。ベスト8での全日出場を決めましたが、試合を振り返っていかがですか

矢野 関東の団体の大会は全日の出場権をとることがまず第1の目標であって。私は(前半の)2試合には出場していないのですが、前半の2試合で鈴木や先輩方が勝ち切ってくれたおかげで、私が出場することができたので、そこから3試合4試合目はどこまで早稲田の実力があるかっていうところで、のびのびとした試合ができたなと思います。

鈴木 初めての関東大会で、空気にのまれたというのが一番大きく印象に残っています。結果を見れば良くもなく悪くもなくみたいですけど、個人の内容で言ったら、自分の持っている技、持ち味が出せないままズルズル試合が終わってしまった印象なので、メンタル面で(剣道を)考え直すきっかけになったなと思います。だいぶ考えました。

――横山さんは関東大会では出場がありませんでしたが、お二人の試合を見ていかがでしたか

横山 (鈴木選手に関しては)1発目から1年生で先鋒として出るというのはハードルが高くて。簡単に勝ってきたように見えるんですけど、すごいプレッシャーの中で戦ったなという印象で。私的には先鋒も昨年の早慶戦とかで経験があるので、すごいプレッシャーの中、関東という大きな大会で一発目に出されて、頑張ってチームのために1本取ってきた、勝ってきたというのはすごいなと思います。矢野さんは、勝つたびにレベルが上がる中で、急に出されるという覚悟も準備もしっかりできていたと思いますし、そういう面では舞台度胸があるなというか本当に心が強いという印象で。個人戦苦手って本人言っていましたけど、団体戦ではめちゃくちゃ強いので、そこは自信もって全日に向けても頑張ってほしいなと思います。

「気持ちでのまれず楽しんで」(鈴木)

メンを打った鈴木

――10月の早慶戦では見事19連覇を達成し、横山さんは大将、矢野さんは五将として出場されました。試合を振り返っていかがですか

横山 大将はあんまり人生で経験がなくて、いつもやるとしたら先鋒・次鋒・中堅あたりで、後ろをやることはほとんどなくて。関東の時に自分が出られなかった分、絶対チームのために勝ちたい、貢献したい意欲がすごくあったので、キャプテンだからこそ出させてもらう機会をもらえたんですけど、出させてもらえるという感謝とチームのために勝ててよかったなという印象です。

矢野 私は昨年の早慶戦でも戦った相手で、昨年も負けて今年も負けたんですけど。相手の印象としては私のことをめちゃくちゃ研究しているなという感じで。序盤は結構有利に進めていけたかなと思っているんですけど、やっぱり最後の詰めの甘さがでて打たれて。でも、次に生きる負けだったんじゃないかなと。落ち込んでもしょうがないんで、次は勝てるようにするしかないなと。横山主将のメンに早稲田全員感動して、師範とかもめちゃくちゃ感動されてて、私自身も執念の1本だったなという感じがするような最後は気持ちで勝った、気持ちが入った一1本だったので、後輩の立場からすると、そういう技を出せるように全日では頑張りたいなと思いました。

――鈴木さんはお二人の試合を見ていかがでしたか

鈴木 見ていてすごく楽しかったです。安心して見られるというか、どうしようと思う場面も焦るような気持ちもなく、安心して応援できました。

――応援など会場の雰囲気はいかがでしたか

横山 私は基本的に応援来てもらえればもらえるほどうれしいタイプなので、プレッシャーもありますけどうれしい気持ちが勝っちゃうので、そういう部分では自分の舞台だなと思って戦えました。

矢野 今回の早慶戦は久しぶりに(早大)道場で開催されて、真後ろに応援の学生がいてくれたので、試合中も声が届くのと、会場がそんなに広くないところなので、慶應の応援も早稲田の応援も聞こえて、早慶戦ならではの違った雰囲気を感じることができました。

――慶應の選手と話す機会はありましたか

横山 氏名交換会というのがあって、お互いの選手を発表というか、名前を書いた紙を交換する会があって。普通の大会だったら誰が来るかわからないんですけど、早慶戦は相手が誰かを事前に知ることができて、しゃべるというわけではないんですけど、挨拶会みたいなものはありました。

――11月には全日本女子学生優勝大会が開催されます。ご自身に期待される役割はどのようなものだと思いますか

横山 私は選手以前にキャプテンなので、まずはチームをまとめて、誰が出るかわからないので、誰が調子良い悪いではなくて、その子自身の一番の力が発揮できるように土台をつくってあげるのと、自分が出るってなったら、その時は自分の実力を100パーセント発揮できるように、それまでの努力を積み重ねて、勝っていきたいなと思います。

矢野 私は昨年もメンバーで会場にいさせてもらって、でもレギュラーとして出場することはなかったので、昨年は選手を支えるというポディションにまわっていたんですけど、今回はまだ決まってないですけど、もし出してもらう機会があれば、2年生ということもあって、2年生って難しいんですけど、前のポディションが多いので、前のポディションだったらチームに流れを持ってこれるような自分らしい剣道をして、一貫して1年間学んだ最後まで抜かない、集中してやるというのを意識したいと思います。

鈴木 私は出させてもらえるなら前のポディションですし、1年生ということもあって後ろに頼もしい先輩がたくさんいるので、しっかり元気出して盛り上げる試合をすることが役割かなと思っています。

――トーナメントが発表されていますが、対戦校についての印象はありますか

横山 2回戦目に昨年優勝した鹿屋体育大学が待ち構えていて、私が思うに勝っても次に中央大学という関東一番の強豪校が待っていて、日本一を目指すにあたっては本当に簡単な道ではなくて、鹿屋ばかりを見すぎて、1発目の札幌大学でつまずくという未来も見えなくないなと思っているので、第1回戦を確実に突破できるくらいの、実力うんぬんというよりもチーム力を固めなきゃいけないなと思っていて、着実に勝つというくらいのチーム力で鹿屋に挑んで、着実に1戦1戦勝っていきたいなと思います。

矢野 以下同文という感じです(笑)。(横山主将に)言われたとおり1戦1戦というところと、鹿屋は九州の大学なので、あんまりやったことがないというところで。やったことがないからこそ相手だって分からないし、変に怖気づくことなく挑戦者の気持ちでしっかり少ないチャンスをものにできるようにしていきたいなと思っています。

鈴木 1人でトーナメントを見た時は厳しいなと思ったんですけど、部室に行って先輩方と喋った時に、2回戦目ぐらいの体力あるときに強い相手とあったっといた方がしっかり勝てるじゃんみたいな話を聞いて楽しみだなと思います。

――最後に全日に向けて意気込みをお願いします

横山 まずは自分が活躍というよりかはキャプテンとして選手がやりやすいようにチームを整えて、自分が出たときは多分前だと思うので、前でどれだけチームを勢いづかせるかが自分の使命だと思っているんで、個人的な勝利よりもチームがどうやったら盛り上がって勝つ方向に流れをつくれるかが大事だと思うので、そこをしっかりやりたいと思います。

矢野 全日は4学年で戦う最後の試合なので、今まで横山主将だったり4年生には結構かわいがってきてもらったので、その分の恩返しをできるように、絶対私が活躍するという気持ちで恩返しするという気持ちで、全日までの間できることはすべてやって後悔ないように試合で活躍したいと思います。

鈴木 同じです。

一同 (笑)。

鈴木 まずは気持ちでのまれず楽しんで、1年生らしい雰囲気ある試合をして、チームに流れをもってこられるように頑張りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集・写真 小島大典、佐藤結)

◆横山舞香(よこやま・まいか)

京都府・日吉ケ丘高出身。スポーツ科学部4年。Netflixで映画を観ることにハマっているという横山選手。アクション系や推理系を観るそうです!

◆矢野ひかる(やの・ひかる)

京都府・日吉ケ丘高出身。社会科学部2年。バイト先でドリンクを作るのにハマっているという矢野選手。店長に「キッザニアみたいで楽しい」と言ったら怒られたそうです!

◆鈴木小萩(すずき・こはぎ)

京都府・日吉ケ丘高出身。社会科学部1年。秋学期になってから毎日お弁当を作るという目標を立てた鈴木選手。インタビューの当日は作っていなかったそうです!