11月13日に開催される全日本女子学生優勝大会(全日)に向けて行ってきたこの特集も、いよいよ最終回。ラストを飾るのは1年間部を引っ張ってきた佐藤桃佳主将(社4=山形・左沢)、松下夏生副将(スポ4=静岡・磐田西)の二人だ。団結力の強いチームをつくりあげ、2年連続の全日出場に大きく貢献した二人が、最後の試合を前に語ることとは――。
※この取材は、11月7日にオンラインで行われました。
これまでの4年間、今年度を振り返って
早慶戦のメダルや賞状を手に、微笑む松下(左)と佐藤
――ここまでの剣道部での4年間を振り返っていかがですか
佐藤 どこから喋っていいか分からないくらい、本当に内容が濃かったです。ちょうど昨日女子全体でミーティングをして、1年間をみんなで振り返ったんですけど、1年間を振り返るにも何時間あっても足りないくらい。みんなが泣きながら喋るくらいに内容が濃かったので、自分自身それを1年生の時からって考えたら…。剣道とずっと向き合っていたんですけど、自分の心の成長が一番大きかったかなと思います。
松下 私も本当に楽しかったなというか、毎日剣道部で良かったなと日々思いながら過ごしました。他の大学の剣道部もあるんですけど、本当に早稲田の剣道部でいられて、このメンバーでやれて良かったなっていう気持ちが一番大きいです。それは自分が今4年になってからじゃなくて、先輩も後輩もどっちも含めて、関わってくださった方みんなのおかげで自分がいるなっていうのを感じられた4年間でした。
――それでは今年度を振り返っていきたいと思います。5月の関東女子学生選手権(関東個人)では、佐藤選手は5回戦敗退となりますが全日本女子学生選手権(全日個人)出場を決め、松下選手は2回戦敗退という結果でした
松下 佐藤と中原(中原菜月、社2=愛媛・帝京五)が全日に出られたっていうのは剣道部の中ですごく大きなことでした。今まであまり個人戦で全日に出場することができなかったので、二人が出られたっていうのは本当に良かったしうれしかったなと思ってるんですけど、個人的な結果としては全日に行けなくて。全日に出たかったですし、出て勢いづけられたらなという気持ちがすごくあったので、それができずに悔しい結果でした。
佐藤 代が始まって初めての大会が個人戦だったので、どういうかたちになるのかなという不安と、楽しみもありながら大会に出ました。個人戦ではあったんですけど、チームのためにみんなのために、さっきも言ってくれたように勢いづけるために勝ちたいなって気持ちが一番強くて。関東は通過点ではあったんですけど、それが全日出場という形になった気がしました。関東個人のインタビューの時にもお話させてもらったんですけど、中原と私は部内の選考の時点で昨年の個人戦では負けてしまって「頑張って来年こそは出よう」って言ってた中で全日に出場することができて、個人的にも感慨深かったですし、チームとしてやっていくためにも勢いづけられたかなということで、すごくうれしかったです。
――佐藤選手は全日個人の試合を振り返っていかがですか
佐藤 やっぱり(関東個人は)通過点であると分かっていながらも、全日に出られたってことで少し満足してしまって。そこからやってやるぞっていう気持ちがもっとあったら結果が変わったのかなっていうのはあるんですけど、でもあの負けがあったからこそ夏の期間に自分を追い込んで、高めることができたかなと思います。
――松下選手は全日個人の試合をご覧になっていかがでしたか
松下 二人の試合だけじゃなくて他の試合も見ていたんですけど、(自分たちは)日本一を目指している中でも日本一になる選手とはレベルが違うなというか、まだもう一段階自分たちも強くならないと勝っていく選手たちの中には入れないなというのは実感しました。それでも二人の試合の感じを見ていて、これからまだまだもっと仕上げていって、強くなっていけば食い込む可能性も全然あるなというのは感じました。
――9月の関東女子学生優勝大会(関東団体)ではお二人ともメンバー入りを果たしています。合宿中に行った選手選考を振り返っていかがですか
佐藤 今までは総当たりの個人戦で決めていたのですが、今回はみんなの疲労が溜まっている合宿の中日ということで少し不安な部分もありました。ただその分、団体戦形式で(選手の枠を争う)敵ではあるんですけどチームとして戦うというところで、そこは女子の持ち味であるチームワークだったり、結果の一本で貢献するだけじゃなくて、自分がチームのこのポジションに置かれた時どういう役割をするっていうのを自分で考える課題を投げかけて、それに対してみんなが応えてくれたので、選考方式としてはすごく良かったのかなと思っています。
――個人として選考の内容を振り返っていかがですか
松下 勝つことを目標にはやってたんですけど、それよりはチームとしてどう戦うかとか、自分の試合内容を重視してやりました。他の子がそうかはあまり分からないんですけど、いい意味で選考っていう概念にこだわりすぎず、楽にではないですけど、楽しんでできたんじゃないかなと思っています。
佐藤 疲労が溜まっている中だったのでどういう動きになるのか分からなかったんですけど、自分としてはそっちの方が何も考えずに試合ができました。松下と私が試合する場面もあって、久々にがっつりした試合を二人でするのはシンプルに楽しかったなという思い出もあります(笑)。
松下 試合前から「楽しみだね」みたいな話を二人でしながらやりました。4年生が二人ということもあって、上に行くにつれてお互いに試合をやることはあまりなかったんですけど、久々に試合ができて私も楽しかったです(笑)。
――実際の関東の試合では、チームはベスト16で全日本女子学生優勝大会(全日)出場を決めました。振り返っていかがですか
佐藤 今になって思うのは関東大会前のプレッシャーは半端じゃなかったなというのはあります。みんなに楽しんでほしいという気持ちもあったんですけど、やっぱりチームを引っ張るというか、みんなの力を出させなきゃという気持ちが一番強くて。日本一日本一って1年間言ってきて、ここで負けてしまったら元も子もないっていうところでみんなのガチガチ感とかもありました。大会当日は初戦が一番危ない試合で、未だに一番ヒヤヒヤしたっていうのも言っています。そこは早稲田女子の一生の課題で、スロースターターなところが克服できていないのかなって思ったんですけど、試合を積んでいくに連れていい試合になっていたのはすごく良かったです。でもいつもベスト16とか、そこらへんで止まってしまう壁を壊したいなというのはまだあります。
松下 最初の2試合は同じような印象だったんですけど、最後の試合は私が追いかける場面で。その前の試合からずっと、練習試合も含めてみんなに助けてもらっていたところがたくさんあったので、あそこで私が勝てていたらなあってすごく後悔は残りました。でもチームで戦う楽しさというか、本当にこのチームで試合ができて、結果的に関東は抜けて全日への切符がもらえたところまではうれしかったので、あと全日に向けて自分自身強くなっていられたら、チームを勝たせてあげられるかなという気持ちになりました。
――10月の早慶対抗女子剣道試合(早慶戦)では、松下選手が副将、佐藤選手が大将を務め、見事に18連覇を飾りました
松下 早慶戦は勝ててすごくホッとしました。私の前でもう勝負が決まっていて、勝ってくれたっていうのが後輩たちの頑張りというか、私たちの力がなくても勝てる実力というか、あの緊張した場面で、他の試合とは違って独特で、プレッシャーも大きいと思うんですけど、その中で全員が力を発揮してくれて、しっかり勝ちを取ってきてくれたことがうれしかったです。個人的には早慶戦も負けてしまって、でもみんなの応援は感じられて、それに応えられる選手でいたかったなあという気持ちは残りました。
佐藤 17連覇で昨年わたってきて、18連覇は気にしないでいいよと言われてもやっぱりみんな気にしているなって思いました。関東大会から2週間ごとにいろいろな種類の大会があって、まったく気の抜けない状況でみんな気の持ちようが大変だったと思うんですけど、よく照準合わせてきてくれたな、ありがとうございましたっていうのが一番で(笑)。個人的には男子も合わせて同期でミーティングする時に、今年こそ男女でアベック優勝したいというのをずっと言っていて、個人的にもずっとかなえたいなって思っていたことだったので、その後の男子も(早慶戦で)勝ってくれて本当に良かったなと思いますし、来年も19連覇が懸かっていると思うんですけど、気負わずプレッシャーに負けず、のびのびとやってほしいなと思います。
「(松下が)やりきってくれればそれでいい」(佐藤)
コテの残心をとる佐藤
――ここからは全日本女子学生優勝大会(全日)について伺っていきます。全日まであとわずかとなっていますが、現在の心境はいかがですか
佐藤 残り1週間ではあるんですけど、本当に楽しみが強いというか。関東の時からずっと全日の前に何を思うんだろうと思いながらずっと剣道をやってきて、個人的に不安なところもないわけじゃないんですけど、みんなでできる最後の試合って思っただけで、出し切るしかないなという印象が一番強いです。
松下 昨日女子全体で全日に向けてのミーティングをしました。それも踏まえて、やっぱり本当に最後やり切りたい、全員が自分の力を出し切れたらいいなという気持ちと、あとは結果はついてはしまうんですけど、最後楽しんで終わりたいなという気持ちが強くあります。
――10月30日の全日本学生優勝大会では、男子が2回戦敗退という結果に終わりました。これを受けていかがですか
佐藤 一番毎日一緒に練習してきて、一番応援していたからこそ、みんなの頑張りを見てたからこそ悔しい気持ちと、よく頑張ったって上からになっちゃうんですけど、出し切ってくれたんだなってみんな帰ってきてから思いました。複雑な気持ちではあったんですけど、男子の結果も受けて、女子はみんなで結果を出して、うれし涙を流したいなと思います。
松下 ほぼ同じにはなるんですけど、やっぱり男子に今まで助けてもらったところもたくさんあるので、最後は女子がちゃんといい締めくくりで終われるように。この大会が男女4年生が引退する試合になるので、最後いいところを見せられたらなと思っています。
――全日で、ご自身が期待されている役割はどのようなものだと思いますか
佐藤 期待されているかは分からないんですけど、後輩たちが「4年生に回せば大丈夫、4年生がいるから伸び伸び私たちは力を出し切っていきます」ぐらいの、伸び伸びした試合をできるような頼られ方をしたいなとは思っています。
松下 やっぱり最後本当に強いチームが集まっている大会なので、勝負も厳しくなってきて、一本二本の差になってくると思うんですけど、そこでしっかり勝ち切れるように、それこそ期待してもらえるような選手でいたいなと思っています。
――では、佐藤選手が松下選手に期待している役割はどのようなものですか
佐藤 松下は今年1年すごく苦しんできたというか、頑張ってきたのを側で見てきました。彼女が結果にこだわっているからこそのつらさがあったと思うので、最後結果にこだわってほしい気持ちもあるんですけど、やってきたことを悔いなく出し切ってくれればその他には何もいらないと、同期だからこそそう思うので。そこはもう彼女がやり切ってくれればそれでいいと思っています。
松下 すごくうれしいです。みんながそう思ってくれているという気持ちもすごく伝わるので、最後自分らしい試合ができたらいいなと思います。
――松下選手が佐藤選手に期待している役割はどのようなものですか
松下 多分、最後の最後まで自分のことよりもみんなのことを、みんなが力を出し切れるようにというところを考えていると思うんですけど、多分みんなそれを返したい気持ちというか。後輩たちも引き出してもらってというよりも、ここまでやってきてくれたキャプテンにちゃんと自立した、成長した姿を見せたいという気持ちがあると思うので、私とも一緒になるんですけど、最後自分が出し切って終われるようにやってくれたらいいなという気持ちがあります。でも多分最後まで頼りっぱなしというか、キャプテンのパワーはあるのかなと思います。
佐藤 ずっと4年間一緒にやってきたからこそ言ってもらえる言葉だなって、染みました(笑)。
「全員が1年間本当に頑張ってきてくれた」(松下)
メンに飛び込む松下
――現在の部の雰囲気はいかがですか
佐藤 最高に高まっていると思います。
松下 そうですね。何があっても最後の試合なので、みんな気持ちが入ってきているんじゃないかなと思います。
――トーナメントも発表されていますが、トーナメントの印象はいかがですか
佐藤 正直ここじゃない山の方が良かったなというのはあったんですけど、相手がどうこうよりも自分たちが今できる最大限のことを出すというのをみんな考えているので、戦略とかも大事だとは思うんですけど、それよりもみんなで自分の力を最大限に出すというのを稽古でもミーティングでもたくさん話してきましたし、それを後はやるだけというかたちにはなっています。
松下 どこも地方の予選を勝ち抜いてきたチームなので、どこと当たっても正直もう変わらないのかなと言う気持ちはあります。それこそあとはもう自分たちがどれだけ準備して力を発揮できるかかなと思います。
――今年度の取材や今回の対談を通して、チームの団結力の強さを感じます。その秘けつについて教えてください
佐藤 本当に松下と私がキャプテンと副キャプテンになるってなった時から、1年間でこういうチームにしたいっていうゴールを先に作って細かくスケジューリングしていって、剣道の技術面、チームマネジメントに対してもすごく細かく決めて言って、それを指導陣の方も一緒に真剣に考えてくださって、みんなも本当に純粋についてきてくれて、それが合致したのが良かったです。それから(4年生が)二人しかいない分、女子がそもそも少人数なので、みんなが学年関係なく、プライベートと稽古とメリハリのあるチームをつくろうってやってきたのが、今回1年間を通してかたちになったのかなと思っています。
松下 チームづくりもあったと思うんですけど、多分根本的にというか、みんなすごく素直で一生懸命な子が多くて、だから結果としてチームもいい方向にまとまったんじゃないかなと感じています。
――後輩たちに4年生として、今だから伝えたいことはありますか
佐藤 昨日のミーティングでもすごくいろいろなことを後輩の子たちに話させてもらったんですけど、今年1年、私と松下は支えられてすごく楽しかったです。早稲田のいいところは上辺とかじゃなく楽しめるところで。上辺でもどうにかなるとは思うんですけど、そこを一回乗り越えたからこそ今年の楽しさがあったと思っています。後輩はエネルギーがたくさんある子たちだと思っているので、今年だけが良かったとは考えないで、来年は横山主将中心となって絶対にいいチームがつくれるって二人はずっと信じているし、心配していないので伸び伸びとやってほしいなと思います。
松下 本当に今年と変わらずというか、二人いなくなるだけなので、そんなに気負う必要もなく、みんながそのまま楽しんでやってくれたらいいなという気持ちです。
――最後に、全日への意気込みをお願いします
佐藤 私たちは日本一を目指してとにかく1年間頑張ってきたので、結果を出すこともそうですし、最後まで早稲田らしく、ちょっとうるさいくらいに元気良く、楽しんでみんなで試合ができたらいいなと。今回は有観客ということで女子の(選手以外の)部員も見に来てくれるので、最後にまた一丸となって、今年一年のいいまとめができればなと思っています。
松下 自分も含めて出し切りたいなという気持ちが一番強いです。それぞれ一人一人、選手でも選手じゃなくても変わらず全員が1年間本当に頑張ってきてくれたと思うので、それが最後にしっかり全部出せればなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集、写真 荒井結月)
◆佐藤桃佳(さとう・ももか)
2000(平12)年6月3日生まれ。山形・左沢高出身。社会科学部4年。女子部主将。最近部員の皆さんとタルト食べ放題に行ったという佐藤選手。7個のタルトを食べたそうです!
◆松下夏生(まつした・なつは)
2000(平12)年7月28日生まれ。静岡・磐田西高出身。スポーツ科学部4年。女子部副将。最近、試合のために気合を入れて髪を切ったそうです!