全日本女子学生優勝大会(全日)直前特集の第2回は、榎本凜香(社2=茨城・守谷)、栗山一花(社2=大分国際情報)、中原菜月(社2=愛媛・帝京五)の2年生トリオ。初対談の三人だったが、終始笑顔の絶えない対談となった。
※この取材は、11月6日にオンラインで行われました。
「(栗山は)決めたことはちゃんとやる」(中原)
――他己紹介をお願いします。まずは榎本選手の紹介をお願いします
栗山 榎本さんは、面を着けたらめっちゃ強いんですけど、面を外すと彼女はお姫様になりたいようで、私服とかインスタとかもすごくおしゃれです。剣道になると強いのもあるし、作戦立てとかも上手です。
中原 一花とかぶるんですけど、面を着けたら人が変わりますね。面取ったら早稲田のおしゃれ番長で、ご飯とかも見かけによらずめっちゃ食べて、そこがギャップでかわいいです。
榎本 めっちゃ褒められたので気分いいです(笑)。
――続いて中原選手の紹介をお願いします
栗山 中原さんはとにかく顔がかわいいっていうのがあって、剣道は強いんですけど、普段はちょっと天然でめっちゃ面白いです。でも榎本さんと一緒で剣道のことになるとめっちゃ頭が切れます。
榎本 菜月は見た目と中身とのギャップがあります(笑)。それがめっちゃ面白くて、一緒にいて楽しいなって思うし、剣道面ではめっちゃかっこいいです。一番かっこいいって思います。
中原 恥ずかしいです(笑)。
――では栗山選手の紹介をお願いします
榎本 剣道はめっちゃ勝気だけどうまいなって思ってて、性格は常に元気です。もうずっと大きい声出してチームを盛り上げてくれて、一花がいるとずっと笑えます(笑)。
中原 一花はめっちゃ面白いです。一緒にいて楽しいです。あと決めたことはちゃんとやるところがすごいなあって思います、剣道面とか。今回剣道だけじゃなくて勉強も頑張るって言って、前期はフル単も取ったので、ちゃんとそこ書いておいてください。お願いします(笑)。
栗山 うれしいです(笑)。
「納得いく結果が全員出ていない」(榎本)
試合後、拍手で迎えられる榎本
――今年度の振り返りをしていきたいと思います。5月にあった関東女子学生選手権(関東個人)では、栗山選手が3回戦敗退、中原選手はベスト8で全日進出を決めました
栗山 私はすぐ負けちゃって、目標にはまったく届きませんでした。出ていない人もたくさんいる中で、自分が出て申し訳ないなという気持ちが終わった後は強かったんですけど、中原とキャプテンの佐藤桃佳さん(佐藤桃佳主将、社4=山形・左沢)が勝ち上がって。ずっと個人の全日に女子が出られてなかったんですけど、今年は二人頑張って出てくれて、そこで一気に早稲田の知名度が上がったっていうか、「あー早稲田やるじゃん」みたいな。周りの早稲田の見方が変わったなって思いました。
中原 私は昨年関東個人に出ていなかったので、今年初めて出られて、とりあえず全日行けるように頑張ろうと思っていました。私の横のコートでキャプテンが試合していて、全日決めたので、感動して勇気付けられました。なので思い切った試合ができました。
――中原選手は初出場となった全日本女子学生選手権(全日個人)では2回戦敗退となりました。振り返っていかがですか
中原 全日はすぐ負けてしまって、全国の高いレベルを思い知らされた感じで。でもいい経験ができたなと思っています。
――9月には関東女子学生優勝大会(関東団体)がありました。お三方全員がメンバー入りを果たしましたが、まず合宿中に行われた選手選考について教えてください
栗山 選考はみんなで個人戦して順番を決めるっていうよりも、団体戦で試合をして、4年生と指導陣が(選手を)決めたっていう感じでした。合宿中というのもあって、体力と気力が強かった人がやっぱり勝ち上がっていったのかなと思いました。
中原 合宿が結構きつくて、その中での選考というのもあって、試合でもきつい状況で勝たないといけない時があるので、この選考方法はめっちゃいいなと思いました。
榎本 合宿中だったので、きついことやってみんな体とかも痛かったんですけど、私はそれが良かったのか、体が動いている中でやってたり、いい意味で体が痛かったりしたから力が抜けてできたかなと思っていて。それが選手に選ばれるっていうのにつながって、今は良かったかなと思います。
――本番の試合では榎本選手、中原選手がそれぞれ次鋒、中堅として3試合すべてに出場。4回戦敗退となりましたが、全日出場を決めました
榎本 日本一っていう目標を掲げているので、関東で全日出場っていうかたちは取れたものの、納得いく結果が全員出ていなくて。私としては次鋒で、先鋒がどんな試合をしてきても後ろにいい状態で回すっていう意味で、どんな状況でも自分の剣道を貫こうっていう課題を立てて試合に臨んで、それはできたので良かったかなとは思っています。ただ、3回戦目で一本負けしてしまって、そこからチームの流れが崩れてしまったっていう反省もあって。全日では常にチームの流れが良くなるような戦い方をしなきゃいけないなって思っています。
中原 私は後ろ二つ(のポジション)が4年生で、4年生二人にどうにか勝って回そうって思って頑張ったんですけど、全日(出場が)決まった後(4回戦)は私が負けてしまって、不利な状況で後ろに回してしまったので、そこを後悔しています。最後打たれたところは私のミスなので、全日ではまだ試合に出られるかは分からないんですけど、出られた時はミスで打たれないようにしたいなと思っています。
――栗山選手はメンバー入りを果たしたものの、出場機会はありませんでした。チームメートの戦いぶりを見ていていかがでしたか
栗山 やっぱり今年の早稲田のメンバーはすごく力があって、私は練習試合とかでもすごくいい結果だったので優勝できるかなと思っていたんですけど、負けちゃいました。それでもみんなすごく頑張ってたし、全日に出場するっていう目標は達成できて、みんなのおかげで全日に出られるので、良かったなと思います。
「自分らしい試合ができた」(栗山)
――10月には早慶対抗女子剣道試合(早慶戦)が行われ、見事18連覇を達成しました。榎本選手が五将、中原選手が中堅、そして栗山選手が三将を務め、お三方の3連勝で試合を決めるかたちになりましたが、振り返っていかがですか
榎本 早慶戦前にキャプテンから、前がどんな流れでもいい意味で自分は自分の剣道スタイルを貫ける私を3番目に置いて、後ろに流れを持って行ってほしいっていう思いがあって私を3番目に置いたっていうのを聞きました。そこをやろうと思ったし、しかも私の後ろが同期の一花ってつながってるのも心強かったので、そういう部分ですごく戦いやすかったし、頼もしかったです。しかも結果的に見たら三人で流れをつくって試合を運べたというのを考えると、自分の仕事もできたし、後ろの二人もそれがどうか分からないけど私の流れを継いでやってくれたのがうれしかったし、結果として勝てたっていうのもすごくうれしかったです。
栗山 私は三将で後ろから三番目だったんですけど、試合の前に「私が後ろにいたらやってくれるだろう、勝負がかかってくる」って言われていて、本当にその通りの結果で本番回ってきて、私が勝ったら(チームの)勝ちが決まるっていう状況でした。でもそれを意識しすぎることなく自分の試合に集中することができたし、さっきも凜香が言ってたんですけど、前の同期の二人が勝って私まで回してくれて、ここで私が負けて迷惑かけるわけにはいかないなって思いました。後ろに4年生の二人もいたので、思い切って自分らしい…勝ち方がすごいかっこよかったとかそういうわけじゃなくて、あんまりかっこいい試合ではなかったんですけど、でも自分らしい試合ができたかなって思いました。
中原 私は前と後ろに凜香と一花がいて、安心して試合ができたなと思っていて。めっちゃ緊張もしていたんですけど、試合前のグータッチが、始まる前は凜香で終わった後は一花で、そこで緊張が和らいだなっていう感じがしました。結果もチームで勝てたので良かったです。
――今年度の試合で一番印象に残っている試合は何ですか
榎本 私は早慶戦です。早慶戦は伝統もあるので、私たちが全日に懸ける思いと同じくらい懸けているところがあります。そこで試合の当日もそうなんですけど、その前にみんなで早慶戦に向かってやっていた稽古とか練習試合とか、それこそ前日設営とか選手以外の人たちがいろいろ頑張ってくれたというのがすごく印象的なので、そういう意味でも早慶戦かなって思います。
栗山 私も早慶戦です。1年生の時は他の試合とは違う重圧というか雰囲気というか、今まで感じたことの無いようなものをすごく感じて、それに飲み込まれてしまって、自分が負けてあまり良くないスタートを切ってしまいました。でも今年はポジションが後ろっていうのもあって、みんながつなげてくれてきたものをそのままつなぐっていうことができて、試合に対する覚悟が決まったというか、自分が成長したって思うことができました。
中原 私は関東団体の初戦(※1回戦はシード通過のため、早稲田にとっての初戦は2回戦)かなと思っています。関東大会の初戦で結構危ない場面で副将まで行ったんですけど、最後に副将の桃さんの意地で、4分経過の音が鳴る瞬間で一本取って逆転したところは鳥肌が立ちました。桃さんの今までの頑張りが報われたというか、さすが4年生だなって思った瞬間でした。
「菜月なりのかっこいい剣道で」(榎本)
相手の竹刀をいなす中原
――ここからは全日本女子学生優勝大会(全日)について伺っていきたいと思います。自分が期待されている役割はどのようなものだと思いますか
栗山 私はいい意味で、誰にも期待をされていないんだよっていうふうに自分に言い聞かせています。誰にも期待されていないからこそ、自分の思い切ったパフォーマンスができるようにしようっていう。1年生の時は期待を変に背負いすぎて自分のやるべきことができていなかったので、今回の全日はいい意味で期待されていないっていうふうに心を落ち着かせて、自分がチームのためにできること、与えられたことを精一杯やろうかなって思っています。
中原 私も一花と一緒で、あれやっとけば良かったなって後悔しないように試合したいのと、チャレンジャー精神でどの大学にも立ち向かっていきたいなと思います。
榎本 私は結構ずっと言っているかもしれないんですけど、私は私っていう。どこで出るかまだ分からないんですけど、どういうチームの流れ、状況であっても、自分の剣道で自分の試合をやり抜く。いい意味で周りを気にしないで、自分の試合をすればおのずとチームに流れが出るんだよっていうのを桃さんから1年間言われ続けていたので、そこを最後やれればいいかなって思っています。
――では反対に、ここにいる他のお二人に期待していることは何ですか。まずは榎本選手に期待していることを教えてください
栗山 凜香は試合の流れが悪かったら持ち直すし、良かったらそのまま後ろにつなぐっていう、中継がすごく上手です。これってやらなきゃいけないことがはっきり決まっているよりも何倍も難しいことだと思います。それをしっかりやり切ってくれるのが凜香で、本番もそうやってくれるって思ってるので、頑張ってほしいです。
中原 私も一花と同じです。凜香は相手のペースになってても自分のペースに持っていくのがすごくうまくて。私たちも凜香の試合は安心して試合が見られます。
榎本 その期待と自分の課題が一致してたことで、自分の考えが間違っていなかったんだなってことを再確認できました。期待に応えようとかではないかもしれないけど、こういう同期に恵まれたこともあって、今まで2年間ではあったけど同期が自分に対してきてくれたこととか全日で恩返しできればいいかなと。4年生や3年生全員に対しても、1年間の恩返しができればいいかなって思います。
――次に栗山選手に期待していることを教えてください
中原 一花は本当に肝が据わっていて、とにかく強い相手に超強くて。チームの勢いをつけてくれるのは一花だなとずっと思っています。なので全日でも暴れてくれることを期待しています(笑)。いい意味で早稲田が目立つようなことをしてくれるのは一花だと思います。
榎本 私も菜月と同じで盛り上げてくれるって信じているのもあるし、一花はどこのポジションでも対応能力があるので、本当にまだポジションがどこになるか全然分からないですけど、一花はどこのポジションでも任せられるし、どこのポジションでもチームを盛り上げてくれると思うので、そこを期待しています。
栗山 あんまり自分に自信が持てなかったんで、今の二人の言葉を聞いてうれしかったし、もっとこうやって考えて思ってくれている同期がいるってことをちゃんと分かって、二人のために自分ができること、チームのために自分ができることを精一杯やろうと思います。
――中原選手に期待していることは何ですか
榎本 菜月はもう剣道がかっこいいんですね。剣道に風格があるというか。そういう面で相手に動じずに、強気で試合の4分間攻め続けられます。このままいけば菜月は中堅だと思うんですけど、チームの一番真ん中で、要となる部分なので、そこを菜月なりのかっこいい剣道で。戦術がどうとかというより、4分間かっこいい剣道を貫いてほしいなって思います。
栗山 必ず菜月のところに勝負が懸かってくると思います。でもどんな相手でもどんな状況でも、菜月が自分の試合をしたら勝てない相手はいないと思うし、取られる相手もいないと思うので、しっかりそこは自信を持って、自分の試合を貫いてもらいたいと思います。
中原 自分を貫けるように頑張ります(笑)。
「絶対日本一になります」(栗山)
前で技を出そうとする栗山
――皆さんは現在2年生ですが、4年生の佐藤主将、松下夏生副将(スポ4=静岡・磐田西)は今回の全日が最後の大会になります。お二人にメッセージをお願いします
栗山 佐藤さんは、こんなにチームのことプラス自分が勝ちたいっていうふうに思っているって、今まで見てきたキャプテンの中で一番それが強くて。自分のことももちろんすごく頑張るんですけど、チームのために自分が先頭に立ってやってやろうっていう気持ちがすごく強いです。剣道面で言ったらすごく力もあるし「桃佳さんに回したら大丈夫」って思えるし、剣道外のところでも先頭に立ってバシッと決めてくれます。夏生さんは一緒に練習をしている時間が一番長い人で、自主練とかオフ期間とかも、毎日のように夏生さんが練習に付き合ってくれました。私の話もすごくよく聞いてくれて、一番過ごしている時間が長いかなと思うくらいで。本当に練習熱心で、すごく努力をしているので、必ず報われてほしいなっていう思いです。
榎本 まず桃さんから。私は桃さんのことがめちゃめちゃ好きで、よくご飯にも連れて行ってもらって、剣道以外のところでも恋愛の話とか、いろいろな話を桃さんとするんですけど、価値観がすごく私と合っていて。なおかつそうやって普段は楽しくやってくれるのに、チームのことになったら誰よりも真剣で真っ直ぐで。桃さんは結構ぐっとのめりこむタイプで、クサいですけど情が厚くて人間味があるというか、そういう部分が私は大好きで。話していて周りのことを自分のことのように思っているところがすごいなあって思います。私が割とさっぱりで、自分は自分、他は他っていうタイプなんですけど、桃さんは逆に他の人やチームのことも自分のことのように考えて毎日行動しているのが桃さんの言葉とか行動とかからもすごく分かるので、そういう部分で「桃さんはすごいなあ」って尊敬するし、全日は桃さんのためにも頑張りたいなって思っています。夏生さんはほわーってしているように見えて、本当に端から端まで全部見えているような人で、超視野が広いというか、周りが見えている人です。桃さんと夏生さんって結構反対に見えるんですけど、二人って似ている部分があって。真逆に見えて似ているところがあるから、二人がうまくチームを引っ張ってくださってるんだなって思うし、桃さんの副キャプテンとして一番チームを支えられるのって夏生さんしかいないなって思います。副キャプテンはキャプテンより日の当たらないというか、陰からサポートする存在なのに、徹底してそれを貫く姿を1年間見てきてすごいなーって。二人ともすごく尊敬する先輩で、二人だからできることをやって1年間それを貫いてきたなって思います。
中原 二人は本当にパパとママみたいな存在で。本当に話し出すとめっちゃ長くなるのでまとめると、二人が大好きだなって思います。桃さんは、桃さんより面白い人なんてこの世にいるのかってくらい面白くて…本当に面白い人です(笑)。剣道面では人一倍チームのことを考えてくれていて、本当に模範キャプテンみたいな感じです。夏生さんはパパママみたいな存在で。何て言うんだろう、難しい、夏生さん。
榎本 夏生さんは言葉に表すの難しい。
中原 ね。夏生さんは包容力がめっちゃあって、本当にいい人って思います。夏生さんが泣いているのとか見たら、私もよくもらい泣きとかします(笑)。そんな二人と同じ大学に入って、一緒に稽古ができて良かったなって思うので、この最後の大会でさっき凜香も言ってたんですけど、二人に恩返しができたらいいなと思っています。
――最後に、全日への意気込みをお願いします
中原 全日は一試合一試合集中して、4年生のためにも自分のためにも、チームのためにも後悔しないような試合をしてきます。
榎本 私もまずは二人からも、自分の課題でもあった自分の剣道を貫くってことを徹底して、そのうえで4年生の二人に恩返しっていう気持ちで、全力で戦っていきたいと思います。
栗山 絶対日本一になります。
――ありがとうございました!
(取材・編集、写真 荒井結月)
◆榎本凜香(えのもと・りんか)
2003(平15)年1月15日生まれ。茨城県・守谷高出身。社会科学部2年。ディズニーにはまっている榎本選手。対談の2週間ほど前にもディズニーに行っていたそうです!
◆栗山一花(くりやま・いちか)
2003(平15)年2月14日生まれ。大分国際情報高出身。社会科学部2年。食べることが好きだという栗山選手。また、最近ではIKEAで買った大きな鮫のぬいぐるみがお気に入りだそうです!
◆中原菜月(なかはら・なつき)
2002(平14)年6月17日生まれ。愛媛県・帝京五高出身。社会科学部2年。カヌレとアイスが好きだという中原選手。しかし、打って変わってしめ鯖も好きだという一面も教えてくださいました!