【連載】全日本学生剣道優勝大会直前特集『覇』 第3回 大串快晴主将×嶋田陽樹副将×和田晃貴副将

剣道

 10月30日の全日本学生優勝大会に向けて行われてきた対談もいよいよ最終回。今年度のチームづくりを大きく担った大串快晴主将(スポ4=愛知・星城)、嶋田陽樹副将(社4=栃木・佐野日大)、和田晃貴副将(社4=東福岡)に、最後の大会への思いを伺った。
※この対談は10月26日に、オンラインで行われました。

「部で一体となっている」(嶋田)

ドウを狙う嶋田

――ここまで昨年度よりもいい結果が出ている印象がありますが、振り返っていかがですか

大串 昨年度よりもわずかですが、いい結果が出ているのかなと思っています。

和田 同じく、いい調子でできているのかなと思います。

嶋田 昨年よりチームが団結しているというか、部で一体となっているのは昨年より少しいいのかなと感じています。

――一体感が出ている理由などはありますか

嶋田 今年のチームになってから、BチームやCチームのメンバーも練習試合に出場する機会が増えてきて、選手から少し遠い存在の人たちも明確な目標、試合で勝ちたいという目標を持ちやすくなったんじゃないかなと思います。そういう目標が部員全体にあるところから一体となっているのかなと感じています。

――5月頭には関東学生選手権(個人戦)がありました。出場された大串選手と和田選手は、部内戦の結果から試合までそれぞれ振り返っていかがですか

大串 私の場合は部内戦をしておらず、個人戦(関東学生選手権)に出ることは最初から決まっていました。本番では、昨年も全日本(全日本学生選手権)に一人も行けていなかったので、それもあって3回戦目で全日本がけという試合までは進みましたが、そこで気持ちで負けてしまったなというところがありました。

和田 自分は部内戦選考でぎりぎりのところで、個人戦に出場できました。そこでも試合に出場できるか出場できないかの選考で自分の思ったような力が発揮できず、試合内容はあまり良くない状態で本戦に出場しました。1、2回戦は有名な選手と対戦して、負けてもともとというか、相手の方が上だなという気持ちでチャレンジャーのような気持ちで試合ができたので、いい試合運びができました。大串と同じく3回戦の全日本がけというところで、プレッシャーのかかる場面で部内戦と同じように力が発揮できず、プレッシャーに打ち勝てないという課題が如実に出て負けてしまいました。

――関東学生優勝大会では3人全員がメンバー入りされましたが、選考から振り返っていかがですか

大串 従来の選考とは違う方法をとりました。これまでの選考方法は負けたら終わりという選考でしたが、今回は試合の勝ち負けよりも内容を重視して見るという選考方法で選手を選出しました。本番は全日本がけの試合でロースコアで代表戦になるということはありましたが、それも想定内で1回戦から互角、ぎりぎりの試合になるだろうというのは想定していました。そこで勝って勢いに乗って強豪の中大も倒すことができたので、嬉しい結果もありつつさらにもっと上にいきたかったという思いもあります。

嶋田 選考は大串も言ったように内容を見るというかたちで行い、手応えというか満足のいく試合はできませんでしたが、なんとかメンバーに入ることができてほっとしました。私は個人戦に出場できなかったのでその分団体戦にかけていたということもあり、本当にうれしかったです。本戦は大将の大串に任せてしまった部分が多くあって、なかなか前で勝負を決めきれないというか、ロースコアで回すというのが一応チームの方針でしたが、負担をかけすぎてしまったなという感じでした。全国はもう少し負担を和らげられるように前が頑張りたいなと思っています。

和田 選考では大串が言ったように内容を見るというところで、いい感じに決められたのではないかと思います。大会は嶋田が言ったようにロースコアで、作戦通りというか、練習してきたものがしっかり出せていたということもありますが、やっぱり最後は大串が決めてくれてというかたちが多かったです。全日本ではもう少し前でとることができるようにがんばっていきたいと思います。

――関東学生優勝大会で印象に残っている試合はありますか

大串 一番印象に残っているのは全日本がけの試合の代表戦の試合です。正直全日本がけの試合以降のことはあまり考えていなくて、とにかく全日本に出る、最低限そこをしっかりやろうという気持ちでした。そういう思いで臨んだ代表戦だったのですごく緊張はしましたが、開き直っていくしかないという気持ちでいって、それが結果的に勝ちにつながったのですごく印象に残っています。

嶋田 私も大串と一緒で全日本がけの東京国際大との試合がいちばん印象に残っています。ここ2年くらいは全国大会に毎年出場していて、自分たちの代で絶対に流れを止めるわけにはいかない、ここで全国を逃してしまったら後輩にも先輩方にも見せる顔がないなという中で、全員引き分けの代表戦というかたちになりました。一瞬ここで負けてしまうんじゃないかとよぎったところがありましたが、そこでしっかり大串が決めてくれて本当に一安心したというか、良かったなという気持ちが大きかったので、印象に残っています。

和田 私が一番印象に残っている試合は4回戦の中大との試合です。中大は今までずっと全国を連覇してきて、すごく強い雲の上の存在というか格上の相手ですが、全日本を決めたいい流れもあって一人一人がいつも以上の力を出せたことによって勝つことができました。可能性を感じたというか、全日本でもまだまだ戦うことができるという希望が見えたので印象に残っています。それに加えて、自分が対戦した相手が幼稚園の時に一緒に剣道を始めた幼なじみで、そういった人と大学の全国の舞台でまた試合ができるということもあり印象に残っています。

「先輩方の無念を晴らすことができた」(和田)

早慶対抗剣道試合で優勝杯を受け取る和田

――早慶対抗剣道試合(早慶戦)では6年ぶりの優勝になりましたが、振り返っていかがですか

大串 6年ぶりなんですが、さきほど嶋田も言っていた通り試合前から団結力というか、早慶戦は個々の力よりも20人で戦うので、チームの雰囲気がストレートに出る試合だと思います。試合前からチームの雰囲気が良くて、やる前から「絶対に勝つ」と個人的には確信して試合に挑むことができました。

嶋田 6年ぶりの優勝は本当にうれしかったですし、自分は6年ぶりに勝てたことに理由があると思っています。主将の大串が1、2週間前から校歌や応援歌の練習を全体でやってきて、いざ本番で歌って歌で制圧したというか、圧倒したときは「このまま早慶戦勝つんじゃないかな」と気持ちものったので、校歌のおかげなのかなと思っています。

和田 6年ぶりに早慶戦を勝つことができたのは非常にうれしく思っています。先輩方が最後の大会で負ける姿、そういった先輩方が悔し涙を流して卒業していくのをずっと見てきました。自分たちが4年生の早慶戦で、自分たちにとって最後のチャンスで勝つことができて先輩方の無念や雪辱を晴らすことができたのが、個人的にはすごくうれしかったです。

――早慶戦のそれぞれの試合を振り返っていかがですか

大串 自分の試合は自分が勝ったらチームが勝つ、自分が負けたらチームが負けるという状況でした。関東の全日本がけの試合を経験していたからか、緊張はしましたが、そこまで精神的にもぶれることなく臨むことができたので、そういう点では関東での経験があって良かったなと思っています。あとは応援がすごくて試合前から感動するくらい応援してくれて、これは勝たないとなという思いで臨んで勝つことができたので、良かったです。

嶋田 個人的な試合内容としては本当に全然駄目で、チームに助けられた早慶戦だったと感じています。やっぱりどこかで関東学生(優勝大会)でベスト8になって、浮かれているというか、大丈夫だろうという気持ちが心のどこかにありその甘さが出た1日だったのかなと思い、本当に反省しています。全国大会ではより一層勝たないと、という気持ちになりました。

和田 自分は嶋田と同じく早慶戦の個人的な試合は全然駄目だったなという思いで、非常にチームに助けられたなと思っています。早慶戦の独特の雰囲気で会場も盛り上がっていて、絶対に勝ちたいというみんなの思いもあってそこでプレッシャーを感じて心の準備ができていないまま試合に臨んでしまい、駄目な試合になってしまいました。くよくよしていてもどうしようもないので、それを次の全日本に生かしていきたいなと思っています。

――全日本学生優勝大会で自分に期待されている役割は何だと思いますか

大串 自分の役割は主に大将だと思いますが、チームの一番後ろなので自分が負けたらチームが負けるし、自分が勝ったらチームが勝つという気持ちで1回戦から臨んでいきたいと思っています。前の人を安心させるじゃないですが、自分に回せば絶対チームが勝つというそういう雰囲気を醸し出すようなそういうポジションでいたいです。

嶋田 自分の役割として、私は攻撃力がないので絶対に負けは許されないと思っています。プラス最高学年として試合以外での後輩のメンタルケアであったり、気持ちを上げることであったり、そういうところにも気を配ってやっていきたいなと思っています。

和田 自分はチームの前の方で起用されると思うので、そこで引き分け以上のプラスで後ろに回したいと思います。最上級生ということで誰よりも声を出して誰よりも足を使って、泥臭く、粘り強く4分間戦い切って、チームを元気づけるような試合をして盛り上げていきたいと思っています。

――大串選手が他のお二人に期待することは何ですか

大串 和田には勝ち負けをあまり意識してもらいたくなくて、和田のいいところは試合内容でチームを元気づける、盛り上げるところだと思うので負けてもいいから、とりあえず自分の剣道を貫いてほしいです。忍者みたいな剣道をするので、忍者剣道を思う存分出してくれればいいかなと思っています。嶋田はテクニカルな剣道をするのでテクニックに自信をもって、本人は攻撃力がないと言っていますが技もうまいので、渋いところを拾って勝ってもらいたいです。

――お二人は今のお話を聞いていかがですか

和田 主将の期待に応えられるように全力で頑張りたいと思います。

嶋田 ありがたいです。頑張りたいと思います。

――和田選手が他のお二人に期待することは何ですか

和田 大串に期待することは、いつも通り自信満々に堂々と戦ってくれればいいなと思っています。最後大将で大串に勝負がかかって負けたらしょうがないというか、早大のトップが出て負けたなら悔いはないと思うのでチームを勝たせないとみたいなことは思わないで、ただ大串がいつも通り堂々と試合してくれればいいなと自分は思っています。嶋田は普通にやったら打たれないので、気にせずに試合をしてくれればいいかなと思います。

――お二人は今のお話を聞いていかがですか

大串 普段はあまり言ってくれないので、こういう機会設けてくださってありがとうございます。

嶋田 頑張ります(笑)。

――嶋田選手が他のお二人に期待することは何ですか

嶋田 大串は1年からばりばり試合に出場していて、同期の中ではもちろん早大の中でも一番強いというのはあるので、堂々とやってきてほしいです。大串の試合が早大の試合というか、早大を大串が背負っているという感じだと思うので自覚をもって堂々と試合をしてほしいなと思っています。和田は先ほど本人が言っていたように、前で試合することになると思います。和田が緊張するとその後のみんな緊張した試合になってしまいますし、逆に和田が勢いづける試合をしてくれればそれに乗っかって後ろもいくと思うので、のびのびと全国の舞台で試合をしてほしいなと思います。

――お二人は今のお話を聞いていかがですか

大串 明日嶋田に「昨日は言ってくれてありがとう」って言ったら、うそだよって言うと思うのであまり信じてないです(笑)。

――そうなんですか

嶋田 いや、本音です。本人には言えないんですけど(笑)。

――和田選手はいかがですか

和田 言っている通りだと思うので頑張ります。

――では、他の部員に期待していることはありますか

大串 いつも伝えているのですが、全員が試合に出場するくらいの気持ちで練習をしてほしいですし、応援も一緒に戦っているという気持ちを忘れずにやってほしいです。それくらい団結していかないと実力的には相手が上という試合が全日本は多いと思うので、そういった時に9人プラスアルファの力が絶対に必要になってくると思います。試合に出ない人たちには応援や雰囲気づくりなどそういうところでしっかり活躍してほしいです。

嶋田 他の選手に期待していることは、全国大会で絶対緊張してしまいますし、小さくなってしまうのはしょうがないですが、後輩は来年も再来年もあるのでのびのびと試合をしてほしいなと思っています。全国だからかっこよく勝とうとか、かっこいいところを見せてやろうという感じだと足元をすくわれると思うので、全国大会だからといって普段と違うことをするのではなく、いつも通り泥臭く泥臭くやれば結果はついてくると思うので全国大会という意識をせずにいつも通りやってほしいなと思います。

和田 チームで戦うので一人で気負いすぎずに前後ろにいい選手が控えているので、その人たちのことを信じて思い切った試合で自分の良さを存分に出して、戦ってほしいなと思っています。

「日本一になります」(大串)

メンを狙う大串

――全日本学生優勝大会でキーパーソンになりそうな選手や、推したい選手はいますか

大串 私は松田圭司(社4=大阪・清風)がキーパーソンだと考えています。まだ出場するかはわかりませんが、彼は大阪出身で応援もすごく声を出していますし、試合に出ると相手がどれだけ強くても盛り上がる試合をします。負けん気を全面に出す選手なので、その松田がどれだけチームを鼓舞して戦ってくれるか、これはすごく見ものだと思います。

嶋田 自分がキーパーソンだと思うのは3年の門間光児(社3=熊本・九州学院)です。門間は大串と張るくらい実力もありますし、来年は大将を張っていく存在だと思います。小さい頃からものすごい実績があり、剣道をやってきて、そういった自分が勝たないといけないというプレッシャーもあると思いますが、彼が勝てばチームが勝ちますし、彼が負けたらチームはピンチな状態になると思うので、門間がチームの勝敗を握っていると言っても過言ではないと思います。小さくならずに、来年もあるという気持ちでのびのびとやってほしいなと思います。

和田 自分がキーパーソンだと思っている選手は外山大地(社3=神奈川・鎌倉学園)です。正直言うと最初はあまり強くありませんでしたが、そこで悔しい思いをしてずっと研究したり努力したり長い間積み重ねてきて、最近すごく実ってきたというか、非常にポイントも取ることのできる選手になってきました。今まで新人戦(関東学生新人戦)なども出場していましたが、そこよりも格段に強くなっていると思うので、相手を驚かすというか、こんなに強い選手いたんだとなるような選手になると思うので、キーパーソンになると思っています。

――全日本学生優勝大会のトーナメントも発表されました。ご覧になってどう思われましたか

大串 トーナメントを見て、すごく嫌なところに入ったなというのが本音です。剣道は関東に強い大学が集まっていますが、その関東の強い大学が集中しているところに早大も入ったので、厳しい戦いにはなると思います。けれども関東で全日本(全日本学生優勝大会)3連覇している中大を倒してきている自分たちなので、それを自信につなげて、自分たちは絶対に勝てるという意気込みでやっていけば日本一になれると信じています。

嶋田 私も最初に見た時はきついところに入ったなと思いましたが、やっぱり目標は日本一であって、日本一になるためには倒さなければならない相手、勝たないとならない相手なので、それがただ早い段階で当たるだけと考えるようにして、そんなに嫌がらずに、おそらく相手も絶対嫌だとは思うので、気持ちで負けないように頑張っていきたいと思います。

和田 私も同じくすごく厳しいトーナメントに入ってしまったなという思いがありました。でも決まってしまったものには変えようがないので、それをプラスに捉えて強いところに勝つと乗ってくるというのがあるので、一戦一戦を大事にして1回戦よりも2回戦、2回戦よりも3回戦、どんどんいい試合をできるように、試合を重ねるごとに早大は強くなるというイメージで今回のトーナメントを戦えるんじゃないかなと思います。1戦1戦を大事に目の前の相手に勝利して、流れに乗って優勝までいくと私は考えています。

――最後の全日本学生優勝大会になりますが、今現在どのような思いですか

大串 あっという間にこの時が来てしまったなと最近思っています。悔いの残らない試合をしたいと思っていて、学生時代にみんなと出場できる最後の試合なのでもうやり切った、出し切ったと言えるような試合をして、結果的に日本一になったらうれしいなと考えています。

嶋田 大学4年間の最後の全日本ということもありますし、自分が16年やってきた剣道生活の最後の大会と言っても過言ではないです。自分の剣道人生の集大成となる大会だと思うので、悔いの残らないように精一杯頑張りたいと思います。

和田 自分も今まで18年くらい剣道をやってきてその最後の大会におそらくなると思うので、勝ち負けも大事ですがそこよりも自分らしく、今まで培ったものを発揮することができればいい結果につながると思います。そういった試合をしていきたいと思います。

――最後に全日本への意気込みをお願いします

大串 日本一になります。

嶋田 選手になれなかった部員たちの思い、そしてもう試合が終わってしまった同期たちの思いを背負って、恥ずかしくないような試合をしていきたいなと思います。頑張ります。

和田 今、いい部員たちに囲まれてみんな本当に大好きですし、そういった仲間たちと最後に楽しく試合ができればいいなと思っています。楽しんだもん勝ちなので、楽しくいこうと思います。

――ありがとうございました! 

(記事・編集、写真 荒井結月、堀内まさみ)

◆大串快晴(おおぐし・かいせい)

2000(平12)年9月5日生まれ。愛知県・星城高出身。スポーツ科学部4年。寒くなり、寝ることが好きになったという大串選手。半袖半ズボンで寝るのがお気に入りだそうです! 

◆嶋田陽樹(しまだ・はるき)

2000(平12)年4月3日生まれ。栃木県・佐野日大高出身。社会科学部4年。ここ1カ月はボウリングにはまっているそうです! 

◆和田晃貴(わだ・こうき)

2000(平12)年4月22日生まれ。東福岡高出身。社会科学部4年。カレーライスが好きだという和田選手。スパイシーなところが好みだと教えてくださいました!