【連載】全日本学生剣道優勝大会直前特集『覇』 第1回 外山大地×門間光児×山本勇真

剣道

 いよいよ10月30日に迫った全日本学生優勝大会。特集第1弾では、来年度早大剣道部を引っ張る、3年生の外山大地(社3=神奈川・鎌倉学園)、門間光児(社3=熊本・九州学院)、山本勇真(スポ3=大阪・明星)にお話を伺った。
※この対談は10月25日に、オンラインで行われました。

お互いに尊敬しあう存在

間合いを取ろうとする山本

――お互いに紹介をお願いします。まずは外山選手の紹介をお願いします

門間 私が見る感じ、外山は好きな音楽とかそういうものはあまりなく、剣道面ではすごいなと思うことが多いです。高校の時は上段という構えでしたが、大学では上段を崩して中段の構えです。1年生の頃と比べて見違えるほど強くなりましたし、今は選手として活躍していて、本当に刺激をもらえる人だなといつも思っています。

山本 剣道面に関して門間も言ってくれましたが、すごく強くて、外山の試合を見ていて不安なことがないというか、もう心配せず外山だったらやってくれるだろうという感じで、すごく安心して試合を見ることができるので、尊敬しています。人間的な面で言うと、外山は身長が高くて3年生の副主将ということですごく怖そうなイメージがあると思いますが、後輩にも優しく接していて後輩にため口使われても怒らないような、そういう寛容な心を持っている人間だと思います。

――お二人の話を聞いて外山選手はいかがですか

外山 後輩に優しくしようとか意識したことはないですが、気付いたらため口を使われていました(笑)。

――続いて門間選手の紹介をお願いします

外山 学部が同じなので、門間と一緒にいる機会はけっこう多いです。適当な部分もありますが、ここぞという時は本当に頼りになります。剣道面はもちろん剣道以外でもそういう印象です。

山本 剣道面では私は門間に教えてもらうことがけっこうありますが、さすが(3年生の)主将だなと思う行動がありました。1年生と2年生が出場する新人大会(関東学生新人戦大会)で、私たちが2年生の時に門間が大将として出場したのですが、1、2回戦のしっかり勝たないといけないところでしっかり勝ってくれるなどの剣道の強さもあり、試合前に選手一人一人に話しかけて「この相手はこうだよ」とか、「次の相手はこうだからこうした方がいいよ」とか、門間は「こういう剣道をした方が試合に通用すると思うよ」というようなアドバイスを試合前に必ずしてくれるので、その分やりやすくなります。早慶戦のときは試合前に話しかけてくれたので、やっぱりさすがだなと思います。

――お二人の話を聞いて門間さんいかがですか

門間 なかなかこういう機会はないので、聞いててすごく照れてしまいました(笑)。でも適当な部分もあるので直していきたいです。

――最後に山本選手の紹介をお願いします

外山 勇真を一言で表すとムードメーカーで、明るいです。普段もそうですし、試合中にチームがビハインドになって雰囲気が暗い時でも明るい声を掛けられたり、雰囲気を変えられたりできるというのはそういう人物なのかなという印象です。

門間 外山が言ったように非常に明るい性格で先輩、後輩、同級生ともすごく仲がいい印象があります。剣道面では自分のスピードを生かしながら試合を組み立てているなというイメージがあって、私にはスピードがないのですごくうらやましいなと思う部分も多々あります。

――お二人の話を聞いて山本選手はいかがですか

山本 ムードメーカーと言われて確かにそうなんですけど、次は4年生で一番上の代になるのであまり調子に乗りすぎないように頑張っていきたいと思います。

――皆さん3年生と同級生ですが、部活外での交流はありますか

外山 山本はスポーツ科学部で私と門間は社会科学部なので、キャンパスが違うこともあって普段授業などでの交流はありませんが、私たちの学年は仲がいいので頻繫にご飯に行っています。

――サウナは一緒に行かれないのですか

山本 サウナは一緒に行ったことないですね(笑)。

「チームとしてしっかり戦えた」(門間)

早慶対抗剣道試合に臨む門間

――5月頭にあった関東学生選手権大会では、門間選手が出場されました。2回戦で敗退となりましたが振り返っていかがですか

門間 関東の個人戦の前はケガもあって、それと付き合いながらの試合になりました。2回戦で負けてしまって全日本の切符を手に入れられなかったということに関しては、本当に悔しい結果ですし負ける相手でもなかったので、まだまだ甘いなということを実感した大会になりました。

――外山選手と山本選手は試合をご覧になっていかがでしたか

山本 みんな強い相手との試合になり、門間がケガをしていたことも知っていました。でも個人戦は何が起こるか分からないなと本当にすごく伝わったというか、実感しました。確かに負けるような相手ではないと門間が言っていましたが、そう思って見ていたものの負けてしまった時は、こういうことがあるのが剣道の世界だなと感じました。個人戦でも団体戦でもそうですが、個人戦は勝負が決するまで引き分けがない状態なので、いつ何が起こるか分からないというのが剣道なんだなと改めて思いました。

外山 私は大会役員として現地で試合を見ていました。他校の強い選手もたくさんいて、その中で勝つことというのは本当に難しいことなんだと実感しました。

――出場者はどのように決まったのですか

外山 部内で試合をして、成績が良かった人が出場するというかたちでした。

――部内戦を振り返っていかがでしたか

外山 私はほぼほぼ負けてしまい、選手にはなれないだろうという感じだったので、自分の弱さをしっかり見つめ直せるいい機会だったのかなと思います。

山本 私は最後の3人から2人を決めるという中からはぐれてしまったのですが、その時に2人が4年生の先輩で、執念で負けたというか、懸ける思いがすごく強いんだなと感じました。私も出場したいという思いはすごくありましたが、4年生のうまさというか、そういうものにやられてしまったなという感覚がありました。それは私の気持ちの弱さでもあったので、4年生になってからは強い気持ちをもって早大の中でも勝って、大会でも早大のために勝利をするという強い気持ちで頑張ろうと思いました。

――全日本学生優勝大会の予選となる9月の関東学生優勝大会では、3人全員がメンバー入りしました。まずはメンバー選考の部内戦を振り返っていかがですか

外山 その時の選考は合宿中に試合をしてメンバーを決めました。私は個人戦の時はほぼ負けていましたが、今回は調子が良かったこともありますし、合宿中でみんながヘロヘロの状態でやっていたのでそういうところで体力面も含めて勝てたかなと思います。

門間 団体戦の選考は例年と違って、昨年はリーグを作って総当たりで決めるというかたちでしたが、それでは結局個人戦になるので、今年はチームを実際に2チーム作って7人制で試合を行いました。引き分けもあり、より団体戦に向いているのは誰かというところを見極めた選考だったと思います。山本も外山もしっかり試合をして、勝つところはしっかり勝って(メンバーに)入るべくして入ったと思います。

山本 外山も言ってくれましたが合宿中ということで、私は合宿中にうるさすぎるくらい楽しんで合宿をしていたので、すごく元気でした。周りが疲れていたり、選考に緊張したりしている中で自分にできることは何だろうと思い、選考の団体戦ですが、本当の試合のように盛り上げようと考えていました。勝つところは勝って、いつもは「個人戦で負けたらおしまい、負けると選考に選ばれない、勝ち続けないといけない」というプレッシャーがありますが、団体戦で引き分けもあり、負けても後ろがいるので安心するという気持ちがあり、試合がやりやすかったです。私は2勝1敗でしたが、雰囲気を盛り上げることができたので、いい感触はありました。

――選考では皆さんどのポジションでしたか

門間 私は後ろの方のポジションをよくしていましたが、外山と山本は前の方をやっていたかなと思います。

――関東学生優勝大会の試合を振り返っていかがですか

外山 2、3回戦から簡単な試合ではなかったという印象がありましたが、先輩が作ってきたこのチームの強みはしっかり生かしながらチームの勝ち方に徹することができたかなと思います。4回戦は相手は中大で全国大会(全日本学生優勝大会)3連覇しているチームでしたが、最後まで自分たちのやってきたことに徹することができたのは良かったと思います。

――外山選手ご自身は2回戦と3回戦で次鋒を務められましたが、そのときの試合を振り返っていかがですか

外山 もう少しできたかなという部分も多々ありましたが、振り返ってみるとトーナメントで1回でも負けたら駄目とか、1回のミスがチームの負けにつながるということですごく緊張して硬くなったなというのは今でも覚えています。

――門間選手は副将として全試合引き分けという結果でした。チームとして、また個人として振り返っていかがですか

門間 初戦から一本に集中してチームとしてしっかり戦えたのではないかと思います。個人的には2、3回戦はチームもリードしていたことで、私自身はあまり良くなかったですが、良くないながらも最低限の仕事ができたのではないかと思います。

――山本選手は初戦となる2回戦(※1回戦はシード)の先鋒を務め、一本負けを喫しました。振り返っていかがですか

山本 チームの印象としてはみんな調子が良かったと思います。私たちの考え方として、団体戦は個人戦が7個並んでいるのではなくてしっかり団体で戦って勝利しよう、というものがあり、それがしっかりできていて今日は絶対勝てるなという印象がありました。個人的には私は2回戦で負けてしまいすぐに交代になりましたが、関東団体戦、しかも日本武道館という広い場所で2回戦の先鋒となるとこんなにも緊張しちゃうんだなと思って、ムードメーカーと言われていましたが全然ムードも作れず、逆に負けて流れを作るという最悪な出だしになってしまいました。そこで次鋒の外山が勝ってきてくれて、誰かが負けたら誰かが補うというかたちがすごくできていたので、見ていて安心しました。

――早慶対抗剣道試合(早慶戦)にも皆さん出場されていました。6年ぶりの優勝となりました

外山 早慶戦は普通の試合と違う雰囲気があって、それに向けて4年生がチームを作り上げたり、準備をしてくれたりしたので、4年生のおかげもあって勝てたものだったのかなと思います。

門間 早慶戦は20人での戦いでそういう試合は他になく、戦い方がすごく難しいですが、チームとして勝てて本当に良かったなと思います。

山本 本当に勝てて良かったなということと、大串(快晴、スポ4=愛知・星城)主将が早慶で並んで校歌を歌う時に声で負けないようにしようと言っていて、最初は何でだろうと思っていましたが、女子の早慶戦の時に早大の方が声が大きくて、試合も勝っていい雰囲気を作れていたので、練習後に校歌を歌っていました。それが今となってはすごくいい部の雰囲気も作ることができ、勝利につながったのではないかなと思います。

――ご自身の試合を振り返っていかがですか

外山 私は前から15番目(6将)で出場しました。前の人たちがリードで回してくれたので、戦いやすくのびのびと試合をすることができました。

門間 私が勝てばチームが勝つという状況で、試合に負けてしまい大将の先輩に負担をかけることになってしまい、そこは個人的には悔しいですし、あまり良くなかったかなと思っています。(副将で出場)

山本 私は11番目の中堅で出場し、相手が昨年の早慶戦でも戦った相手で、どんな剣道をするかは分かっていました。前の松田(圭司、社4=大阪・清風)先輩が地元の大阪の先輩で、勝ちの姿を見せてくださり、試合前に気合が入って勝利できたと感じます。

「一瞬も気を抜けない」(外山)

関東学生優勝大会で振りかぶる外山

――ここからは直前となった全日本学生優勝大会について伺います。まず、団体戦で自分が期待されている役割は何だと思いますか

外山 私はチームの中で目立った役割や派手な剣道ができる人間ではないので、スコアには反映されないような、でも結果的に勝ちにつながったり、流れが動いたりするようなそういった役割を担えたらいいなと思っています。

門間 私は後ろの方のポジションを任せていただいています。1回戦、2回戦から勝負が拮抗(きっこう)してくると思いますが、いつでも戦える準備を常にしておかないとなという思いもあり、チーム全体でも自分自身も見ていかないといけないのかなと思っています。

山本 私はおそらく前の方で団体戦に出場するので、関東の二の舞にならないようにしっかりチームのために戦って、なおかつムードメーカーになれるような試合でも大きな声を出して、もし試合に出なかったとしても応援でチームを元気づけられるような、チームの士気を上げられるような役割を担いたいと思います。

――では、外山選手に期待することを門間選手と山本選手から教えてください

門間 外山は打たれないというところが一番の武器かなと思っていて、その中でも4分間を通して一本を取ってくれることを期待しています。本番は焦らず、自分の剣道を崩さずいつも通りしてくれればいいのかなと思います。全日本学生優勝大会が終われば私たちの代になり外山が副主将となるので、そういうところの責任もより高めていかなければならないですし、その点の期待もしています。

山本 外山は自分がミスせず相手のミスを誘いそこを叩くというような剣道だと思うので、自分の剣道を貫いて相手のミスを仕留めてくれるようなことを期待しています。外山も試合の中で応援などでムードを作ってくれ、応援も的確なことを大きな声で言ってくれて、試合してる側からしても後ろから聞こえて安心するので、それをしっかりやってくれればチームがいい方向にいくのではないかなと思います。

――外山選手はお二人の答えを聞いていかがですか

外山 二人の期待にも応えたいと思いますし、言われていることはその通りなので、頑張りたいと思います。

――続いて門間選手に期待することを外山選手と山本選手からお願いします

外山 門間は今までの試合の経験が今のチームではずば抜けているので、勝負強さという面ではすごいなと思います。勝負が回ってきたときにおそらく勝ってくれるので、そういうところを期待しています。私は高校時代に全国大会に出ていなかったので、全国大会での雰囲気に飲まれないように声を掛けてくれたらうれしいなと思います。

山本 門間が来年の主将になるので、その辺を意識しつつ今回の試合に集中してくれたらなと思います。門間も外山も打たれないのが強さだと思うので、門間もそこで相手のミスを誘って仕留めるような剣道をしていただければ、すごく安心して見られるような選手なので、頑張ってほしいと思います。私も全国大会の経験があまりないので、また新人戦のときや早慶戦の時のように試合前に声を掛けてくれればなと思っています。

――門間選手はいかがですか

門間 今言ってもらったように経験は少しあるのかなと思うので、もちろんそこは伝えていくのが当然ですし、勝負が回ってきた時は絶対にチームを勝たせるように頑張りたいと思います。

――では山本選手に期待していることを外山選手と門間選手からお願いします

外山 試合では前の人の入りでチームの勢いや審判の見方も変わってきて、そういった面で最初は重要になるのでチームの勢いをつけてほしいなと思います。大阪開催で山本の地元になるので、地元パワーで頑張ってもらいたいと思います。

門間 山本も外山と同様、力をつけて常に強くなっていることを感じるので、試合本番は会場の空気に飲まれることなく自分の剣道を崩さないでやれば必ずいい結果になると思います。簡単には負けないと思っているのでやってきたことを信じて、一緒に頑張りたいなと思います。応援もしっかりしてくれてチームが本当に盛り上がるので、そこもやってほしいと思います。

――山本選手はいかがですか

山本 主将と副主将の二人からの力強い言葉を聞いて、しっかりやらなければいけないなという責任をより感じました。やるべきことはやってきたと思いますし、あと1週間もないので詰められるところは詰めて雰囲気に飲まれないように、それだけを意識してやれば地元の大阪ということもあって知り合いとかもたくさんいるのでリラックスして、固くならないように、先輩を勝たせられるように頑張りたいなと思います。

――皆さんは3年生ですが、お世話になった4年生の先輩はいらっしゃいますか

外山 鈴木敦也(法4=東京・早大学院)さんという先輩がいらっしゃって、敦也さんは学連という裏方で試合の企画や運営をしてくださっていて、部内ではあまり見えないところで動いてくれていてそういった人がいるから試合もできているので、そういう人たちのためにも頑張りたいなと思います。

門間 私は3年生の主将ということもあり今の4年生の幹部の先輩方、大串先輩と和田(晃貴副将、社4=東福岡)先輩、嶋田(陽樹副将、社4=栃木・佐野日大)先輩の3人の先輩方とはよくコミュニケーションも取っていただきましたし、試合でも常に一緒だったので最後に4年生の先輩たちがこの1年間部を作ってくれて、チームを作ってくれたので、必ず3人を勝たせられるように自分も頑張りたいなと思います。

山本 私も3人いて、まず和田先輩には飲みにも誘っていただいたり、剣道でも試合や練習の際に声を掛けてもらったりしたので、すごくお世話になっている優しい先輩です。2人目は松田先輩で団体戦に出る先輩なのですが、大阪出身ということですごく目をかけてもらって、練習中も松田先輩は私が困っていたら声を掛けてくれたり、練習中でも「いい面だね」と言ってくれたり、熱い男なのでその先輩を勝たせたいなと思います。3人目は女子の佐藤桃佳主将(社4=山形・左沢)です。その先輩も和田先輩と同じく飲みに誘ってくださって、仲がいいのでその先輩たちに勝った姿を見せられたらいいなと思います。

――最後に全日本学生優勝大会への意気込みをお願いします

外山 1回戦から各地域の大会を勝ち抜いた学校しかいなくて、一瞬も気を抜けないというか強豪校しかいないような大会なので、そこで一戦一戦勝っていって最終的に日本一という目標を達成できればいいなと思います。

門間 今年の私自身の最後の大会ということもありますし、4年生の先輩たちも最後の試合なので必ず悔いのないように戦いたいと思っています。やるからには当然勝たなくてはいけないと思っているので、そんなに甘くはないと思いますが、日本一にしっかり挑戦していけたらいいなと思います。

山本 私も日本一になりたいという目標もありますし、先ほど言ったように4年生の最後の試合ということでみんなで悔いのないように、一試合一試合を楽しんでやれれば実力が発揮されるのではないかなと思います。頑張りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集・写真 荒井結月、堀内まさみ)

◆外山大地(とやま・だいち)

2000(平12)年5月31日生まれ。神奈川県・鎌倉学園高出身。社会科学部3年。最近は『ダイヤのA』など、漫画を読むことにはまっているそうです!

◆門間光児(もんま・ひかる)

2001(平13)年5月3日生まれ。熊本県・九州学院高出身。社会科学部3年。韓国ドラマをよく見るという門間選手。「ピノキオ」という作品が好きだと教えてくださいました!

◆山本勇真(やまもと・ゆうま)

2001(平13)年7月14日生まれ。大阪府・明星高出身。スポーツ科学部3年。サウナ好きの山本選手。下落合にある銭湯のサウナがおすすめだそうです!