個人の日本一を決定する全日本女子学生選手権(全日)が、有観客の下、日本武道館で行われた。今大会は各地域大会を勝ち抜いた90人が、トーナメント戦で優勝を争う。早大からは関東女子学生選手権でベスト28の佐藤桃佳主将(社4=山形・左沢)、ベスト8の中原菜月(社2=愛媛・帝京五)の2人が出場した。初の全日出場となった2人は終始攻めの姿勢を見せたが、どちらも2回戦敗退となった。
1回戦はシードとなった佐藤は、2回戦が初戦となった。相手は関東ベスト4の杉本咲妃(中大・3年)。序盤から激しい打ち合いが行われた。初の全日出場ながら、自分のペースでメンやコテなどを畳み掛ける佐藤。しかし相手に落ち着いて対処される。実力は拮抗(きっこう)しているように思えたが、3分過ぎ。佐藤はメンを打った後、ふと面が空いた状態で動きを止める。この「打たされた」一瞬の隙を突かれ、前へのメンで一本を許してしまった。試合時間は残り約1分。佐藤は果敢に攻め、ツキなど惜しい打突も見られたが、メンを被せられて決めきれず。4分の合図が鳴り、悔しい一本負けとなった。
ツキを打つ佐藤(左)
中原の初戦は、第5試合場の第1試合となった。関西女子学生選手権でベスト8の有田澄(立命館大・3年)を相手に、探り合いが続く展開に。途中、中原は得意技の返しドウも繰り出すものの、一本とはならず。相手が一つ反則を取られた状態で、試合は延長へ突入した。そして延長20秒頃。中原は竹刀を回して機会をうかがう。そこで相手が竹刀を立てて避けようとしたところをすかさずメン。審判3人の旗が一斉に上がり、1回戦で勝利を収めた。初めは緊張でうまく試合を運べなかったものの、最後は「自分の打ちたかったメンが打てた」と振り返った。
メンを打ち込む中原
先ほど第2試合場で2回戦敗退となった佐藤も近くで見守る中、迎えた第2試合。相手は関東でベスト28の西尾彩子(日体大)。中原はなかなか自分のタイミングをつかめないながらも、3分手前では逆引きドウなど、随所で惜しい打突を見せた。拮抗(きっこう)した試合展開の中、3分半頃、相手に反則が取られる。その直後、両者は近い間合いに。互いに一度引くかと思われたが、この隙に引きメンを決められてしまった。試合時間は残り約30秒。中原は速打ちで一本を狙うも時間切れ。2回戦敗退となった。
一本を許し、白線に戻る中原
佐藤、中原どちらも2回戦敗退となったものの、全日出場という大きな経験は、必ずや秋の関東女子学生優勝大会、ひいては全日本女子学生優勝大会(団体戦)につながるだろう。また、今大会には早大部員全員が応援に駆け付けたという。2人の試合ぶりに感化された部員も多いのではないだろうか。2人の熱戦は、早大剣道部がまた一つ強くなるためのきっかけとなったに違いない。
(記事 荒井結月、写真 渡邊悠太)
結果
佐藤桃佳主将(社4=山形・左沢)
1回戦 (シード)
2回戦△ 佐藤-メ(一本勝ち)杉本(中大)
中原菜月(社2=愛媛・帝京五)
1回戦〇 中原(延長)メ-▲有田(立命館大)
2回戦△ 西尾(日体大)(一本勝ち)▲メ-中原
コメント
佐藤桃佳主将(社4=山形・左沢)
――試合を終えて、今の心境を教えてください
全日本まで時間があって、それなりに対戦相手(への対策)や関東大会で見つけた自分の弱点をやってきたつもりでしたが、やっぱり全国大会は関東大会とは全然別物だなと。強いだけではなくてうまい選手が多かったし、私自身も「打たされたな」というのがあったので、まだまだ課題が見つかったかなという印象が強いです。
――今日はどんな目標を持って試合に臨みましたか
全国大会は一位以外(目指すものが)何もないので、とにかく一戦一戦戦って、自分の出し切れるところまで出し切って。もちろん目標は優勝でしたが、そこに重きを置きすぎず、とにかく自分の力を出し切ることを目標にしていました。
――今回が初の全日出場となりましたが、いかがでしたか
多少の緊張はありましたが、関東大会の「(全日に出場するには)ここまで勝たなきゃいけない」というものがなかったので、その分思い切りぶつけようという気持ちの方が大きかったです。
――一本取られた場面を振り返って
私の上段の構え特有の片手メンを出そうとしたところを相手が狙っていて、うまくかわされて面に乗られたかたちでした。私自身も「行ける!」と思った甘さ、緩んだところを打たれたので、まだまだそこが課題だなと実感しています。
――佐藤選手のペースで試合を運べていたようにも見えました
そうですね、メンタルで補っていたところで、試合としては五分五分で。自分が押しながらできたと思いますが、メンタルだけでは勝てないのが全国大会というか。技術面でも勝てないと全国大会では上がれないんだなということを実感しました。
――試合後、チームメートの皆さんと何か話されましたか
今日は部員全員が来てくれたので、解散式で話をしました。「初戦で終わってしまったので申し訳ない」ということを伝えた時に、みんなが「今までで一番かっこよかったよ」と言ってくれたり、惜しいところがあったというのを言ってくれたりして。反省の気持ちはもちろんあるのですが、団体(関東女子学生優勝大会)がまだあるというところで、そういう言葉をかけてもらったからこそもっとみんなと頑張りたいな、団体にも生かしていきたいなという気持ちが強くなりました。
――最後に、次の関東女子学生優勝大会・全日本女子学生優勝大会に向けての意気込みをお願いします
今回個人戦ではありましたが2人出場できたり、女子全員として団結できたりしたところが一番の収穫だったかなと思っています。全国大会に出るつらさとかも、中原と私が一番分かったと思うので、そこをみんなにも還元していきながら、もっといろいろなことを吸収して、団体(全日本女子学生優勝大会)では絶対に日本一を取りたいと思います。
中原菜月(社2=愛媛・帝京五)
――試合を終えて、今の心境を教えてください
とても悔しいです。でも、試合に出られることに感謝しないといけないなというのが一番あります。次は団体(関東女子学生優勝大会)がすぐに来るので、団体に向けて頑張ろうという気持ちが今は強いです。
――今日はどんな目標を持って試合に臨みましたか
目の前の相手だけに集中して、一戦一戦戦おうとしていました。
――今回が初の全日出場となりましたが、緊張はありましたか
緊張もしましたが、2年生なので思い切って試合しようと思っていました。
――1回戦を振り返っていかがですか
緊張でがちがちで(笑)。なかなか思うようにいかなかったのですが、最後に自分の打ちたかったメンが打てたので良かったです。
――2回戦は相手が反則を取られた直後にメンを許したかたちでした
相手が反則を取られたので、つばぜり合いではすぐに引くだろうなと思ったのですが、そこを狙われて。それは考えてもいなかったので、団体(関東女子学生優勝大会)に向けて修正していきたいと思います。
――2回戦で一本を取られた後、残り時間の少なさに焦りはありましたか
ありました。一本を取らないと延長にならないですし、なかなか相手も隙がなかったので、焦ってしまいました。
――試合後、チームメートの皆さんとは話されましたか
みんなが「お疲れ」と言ってくれて、いい部活、いい大学だなと思いました。
――次の関東女子学生優勝大会や、来年の全日本学生選手権に向けての意気込みをお願いします
団体(関東女子学生優勝大会)ではまずは選手に入って全日出場を目指すとともに、個人でも来年は上がれるように頑張りたいと思います。