中原がベスト8で全日個人進出! 昨年度の関東覇者破る【上遠野・片渕・栗山・中原】

剣道

※掲載が遅れてしまい、申し訳ありません

 先週の関東学生選手権(男子)に続き、関東女子学生選手権(関東)が無観客で開催された。今大会は総勢445人の出場者の内、上位28人が、7月頭の全日本女子学生選手権(全日)への出場権を獲得する。早大からは7人の選手が出場し、佐藤桃佳主将(社4=山形・左沢)、中原菜月(社2=愛媛・帝京五)の2人が全日への切符を手に入れた。本記事では中原、上遠野幸(スポ3=福島・安積)、片渕歌音(教2=早稲田佐賀)、栗山一花(社2=大分国際情報)の4人の試合を振り返る。
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 今大会が大学初の公式戦となった上遠野は、午後の部に出場した。1回戦をシードとし、2回戦からのスタートとなる。序盤から手数で上回り、積極的に攻める試合を展開。試合1分ごろには、メンを狙いに行くと見せかけた踏み込みからのコテで、惜しい場面も見られた。しかしそのすぐ後、コテにいったところを返されて引きメンを決められてしまう。コテが多めだったことを利用されるかたちになってしまった。それでもまだ時間は十分にある。上遠野は諦めずにさまざまな技を繰り出し、攻撃の手を緩めない。しかし一旦相手が間合いを取ろうとしたところにメンで飛び込むと、腕を上げて受け止められ、その勢いのままに引きメンを打たれる。これが一本となり、上遠野は2回戦で敗退した。

 同様に午後の部に出場した片渕。初戦は始めから落ち着いた試合運びを見せるも、なかなか自分のペースに持ち込めない状況が続く。そして試合は延長戦となる4分間近に。ここで片渕は少し竹刀を下げて相手を誘う。狙い通り、飛び込んできた相手のコテを返して引きメン。これを決めて一本勝ちとした。続く2戦目の相手は、苦手意識があるという上段の構えの選手。この意識もあってか、攻めきれない状態が続く。そしてまたしても試合が動いたのは4分間際。近い間合いからタメをつくった相手に合わせ、相メンとした片渕。しかし相手に決め切られ、これは相手の一本に。残り少ない試合時間で一本を取り返すことができず、2回戦で負けを喫した。

 栗山も午後の部に出場。1回戦をシードで進み、迎えた2回戦。白熱した戦いとなり、延長戦に入る。そして試合時間のちょうど倍となる延長4分手前で、一度間合いを取る両者。そこから完璧に相手の上を取る相メンを決め、栗山は初戦を突破した。「久しぶりに思い切った面を決めることができて、少しホッとした」(栗山)と振り返る。続く3回戦の相手は海津ゆきえ(筑波大・3年)。高校の頃から何度も戦っていた相手だという海津は、昨年の全日では敢闘賞(ベスト8)を獲得している。そんな海津相手に、栗山は試合開始直後から素早い攻撃を重ねて強気の姿勢を見せるも、開始14秒。メンを打って近づいたところで、相手に体当たりをする反動を使った引きメンを繰り出される。栗山は合わせて相引きメンとするも、3本の旗は相手に上がった。その後も粘り、勝機を探す栗山。しかし3分ごろ、メンに飛び込んだところを相メンで合わせられる。これも相手の一本となり、3回戦で敗退となった。

ドウを打つ栗山

 中原は午前の部に出場。初戦は先を取ったメン、さらにその直後の引きゴテで二本勝ち。わずか30秒足らずで快勝した。続く2戦目も果敢に攻め、2分手前でメン返しドウを奪う。そして立て続けに、つばぜり合いから引きメンを決めて勝利した。3回戦は手数の多めな相手であったが、冷静に対処する。そして3分過ぎ、一旦間合いが切れたところで飛び込んできた相手のメンを返し、ドウを決めて一本勝ちとした。危なげなく勝利を積み重ねた中原は、いよいよ全日進出をかけた4戦目に臨む。緊張感のある展開が続く中、試合は2分手前で動いた。相手が一瞬竹刀を下げ、誘ってからメンに来たところを読んで返しドウを決める。一本を先取した後に、相手がメンを打って抜けた後を追いかけ、有利な状況をつくり出した中原。竹刀を上げて機をうかがうと、相手のメンに合わせてツキを放つ。これに審判の旗が一斉に上がり、中原は全日出場を決めた。

 ここからはどこまで順位を上げられるかという戦いとなる。5戦目は落ち着いた試合展開となる。1分頃、つばぜり合いから相手の竹刀を押しのけて引きメンを決めた中原。さらにその直後には、一本とはならなかったものの、即座に主審の旗が上がるツキを見せた。そして2分半ごろ、深い間合いからメンを打ちこむ。副審1人の旗は相手の返しドウに上がったが、他2人の審判の旗は中原に上がり、これで決着となった。

相手のメンをしのぐ中原

 6戦目の相手は、昨年度の関東優勝者・笠日向子(筑波大・2年)。我慢強く好機を待ち、試合は延長へ。延長4分過ぎ、相手が上から竹刀を回してメンを打ってきたところを返してドウ。この日4本目となる返しドウで一本をもぎ取り、試合を決めた。迎えた7戦目。この試合に勝利すると、111人が出場した第一ブロックを制することになる。相手は昨年度の全日覇者であり、この2試合前に佐藤を破った水川晴奈(法大・2年)。緊張感あふれる展開が続く中、2分半頃、つばぜり合いからその場で逆ドウを打ち込む。しかしこの一瞬の隙に引きメンを打たれ、一本を許す。その後も攻めの姿勢を見せたが、4分が経過し試合終了。中原はベスト8で試合を終えた。

 見事中原と佐藤が全日進出を決めた今大会。上遠野、片渕、栗山は全日進出とはならなかったが、関東学生剣道優勝大会(関東団体戦)でのメンバー入りおよび活躍に向け、さらなる飛躍が期待される。また、松下夏生副将(スポ4=静岡・磐田西)、矢野ひかる(社1=京都・日吉ケ丘)は2回戦敗退という結果だった。

 「仲間の全日出場が決まった瞬間、涙を流して喜んだ」(片渕)。「頑張っている姿を見てきたので、(佐藤が全日出場を決めて)うれし涙が出てきそうでした」(中原)。今大会では早大剣道部の絆の深さも感じられた。『チーム』で戦うことで、日本一を着実に手繰り寄せていく。

(記事 荒井結月、写真 早大剣道部提供)

結果

上遠野幸選手(スポ3=福島・安積)

1回戦  (シード)

2回戦△ 上遠野│-メメ│興梠(駒澤大)

片渕歌音(教2=早稲田佐賀)

1回戦〇 菊池(清和大)│-メ│片渕

2回戦△ 芝本(城西国際)│▲メ-│片渕

栗山一花選手(社2=大分国際情報)

1回戦  (シード)

2回戦〇 松崎(平成国際大)│-メ(延長)│栗山

3回戦〇 海津(筑波大)│メメ-│栗山

中原菜月(社2=愛媛・帝京五)

1回戦〇 中原│メコ-│斉藤(文教大)

2回戦〇 栄井(東大)│-ドメ│中原

3回戦〇 中原│(一本勝ち)ド-│具志(東海大)

4回戦〇 中原│ドツ―│高見沢(大正大)

5回戦〇 野川(法大)│-メメ▲│中原

6回戦〇 笠(筑波大)│-ド(延長)│中原

7回戦△ 中原│-メ(一本勝ち)│水川(法大)

コメント

※このインタビューは、試合後オンライン上で行われたものです。

上遠野幸(スポ3=福島・安積)

――試合を全体的に振り返っていかがですか

 大学での初めての公式戦ということもあり、いろいろ考えすぎて緊張してしまい、うまく良いところが出せませんでした。午前の部で全日出場を決めた2人の試合を見て、自分も、と思ったのですが、空回りしてしまいました。

――今大会では何を目標に取り組みましたか

 全日出場を目標に、自分のペースで試合をし、相手に簡単には打たせない試合展開を目指していました。また、恰好つけず、自分らしくということを目標としていました。

――戦う前、興梠選手はどういったイメージでしたか

 駒澤大は早大と相性が悪く、こちらより上手(うわて)な選手が多いイメージでした。(興梠選手)の1回戦を見ていて、やはり良い所を逃さずに打っていたので、注意しなくてはと思っていました。

――積極的に攻めた試合でしたが、具体的に振り返ってみていかがですか

 先に一本を取られたので、自分から一本を取りにいかなくてはならず、焦ってポンポン前に出てしまったのが悪かったです。二本目も、こちらが嫌がって押したところを引きメンにつなげられてしまいました。

――試合後、チームメートの皆さんと何か話したことはありますか

 自分の試合は悪かったですが、全日を決めた2人の試合には勇気をもらったと話しました。正直、全日はすごく高い壁で手の届かないところにあるような気がしていたのですが、チームメートが全日に出ることになって、自分もより頑張ろうと思いました。午後の部の選手で午前の部の選手の試合を応援していたので、みんな、そう感じていたと思います。試合後はみんなで喜び合いました。

――今大会を終えて、新たな目標について教えてください

 次の関東団体、全日、早慶戦に向けて、まずはレギュラーで出られるように頑張りたいです。自分の弱さと向き合って、自信を持って試合に立てるよう、追い込みたいです。

片渕歌音(教2=早稲田佐賀)

――試合を全体的に振り返っていかがですか

 落ち着いて自分らしい試合ができたと思います。一方で、上位へ勝ち上がる選手は気合や技の多さが違うなと改めて実感しました。また、仲の良いチームみんなで戦った試合だったとも感じています。試合前日に剣道部女子から応援メッセージ動画をいただいて、一人じゃない、みんながついているという安心感や「みんなのために一生懸命頑張ろう!」という気持ちがより大きくなりました。また、仲間の全日出場が決まった瞬間、涙を流して喜んだことが印象的だったのを覚えています。

――今大会では何を目標に取り組みましたか

 「自分の満足する試合を」をモットーに、「一本を狙う」という気持ちで試合に臨みました。

――菊池選手、芝本選手と以前戦ったことはありますか

 どちらの選手とも戦ったことはありませんでした。菊池選手はインターハイに出場されていて強いイメージがあったので、挑戦する気持ちで臨みました。芝本選手は、事前に知っている情報がなく、1回戦を見て上段(の構え)だというイメージだけがありました。上段の(構えの)選手と対戦するとは予想していなかったので、少し動揺してしまいました。

――上段の構えの選手との対戦に、苦手意識はありますか

 正直、苦手意識があります。まだ自分の中で自信がなく、(2回戦で)マイナスな方向に影響してしまったのではないかと感じます。

――1回戦は拮抗した展開が続く中、試合終了間際にコテ返しメンを決めました。振り返ってみていかがですか

 相手の動きがよく見えており、得意技が無意識に出ました。一本に集中し、その技をしっかり決めることができたところは今後の自信につながったと思います。

――2回戦では相手の誘いに乗った相メンで一本を許すかたちでした。振り返っていかがですか

 自分の悪いところが出てしまいました。もっと我慢して攻めを磨くことが大切だと改めて感じました。日頃の稽古で意識して、もう一度同じ失敗をしないように取り組んでいきます。

――試合後、チームメートの皆さんと何か話したことはありますか

 早大の代表として出場させていただいたので、負けて申し訳ない気持ちがありました。ですが「次の団体に向けて頑張ろう!」と声を掛けてくれて、前向きな気持ちにさせてくれました。まずは全日の個人戦に向けて、選手を全力でサポートしていこうと思います。

――今大会を終えて、新たな目標などがあれば教えてください

 今大会で、日本一・早慶戦優勝への良い流れができたと感じています。悔しさをばねに一生懸命練習を頑張り、選手として日本一・早慶戦優勝を達成することが目標です。

栗山一花(社2=大分国際情報)

 試合を全体的に振り返っていかがですか

ただただ悔しいです。

――今大会では何を目標に取り組みましたか

 まずは全日に出場し、支えてくださる方々に恩返しをすることが目標でした。

――松崎選手、海津選手と以前戦ったことはありますか

 どちらの選手も過去に何度か対戦したことがあり、力のある選手だとは分かっていました。

――2回戦では、完全に相手の上から相メンを決めました。振り返ってみていかがですか

 公式戦で久しぶりに思い切った面を決めることができて、少しホッとしました。

――3回戦の海津選手は、昨年の全日では敢闘賞を獲得しています。何か意識するところはありましたか

 高校の時からよく対戦していたので、今回も絶対に負けないという気持ちでした。

――試合後、チームメートの皆さんと何か話したことはありますか

 全日に出場した選手におめでとうと伝えました。

――今大会を終えて、新たな目標などがあれば教えてください

 実力をつけられるように、毎日誰よりも努力したいです。

中原菜月(社2=愛媛・帝京五)

――全日への出場を見事決めたかたちになります。今の気持ちを教えてください

 嬉しいです。ほっとしました。

――試合を全体的に振り返っていかがですか

 目の前の相手に集中して、自分らしい剣道ができたと思います。最後の試合は、自分の日頃の甘さが結果に出ました。また、私が全日出場を決める前に女子キャプテンの桃佳さんが全日出場を決めて。これまで頑張っている姿を見てきたので、試合前なのにうれし涙が出てきそうでした。全日出場を決める試合では、桃佳さんの波に乗って私も波に乗ろうと思い切って試合をしました。

――今大会では何を目標に取り組みましたか

 目の前の相手に勝つことだけを目標に試合に臨みました。

――戦った選手の中で、印象深い選手はいらっしゃいましたか

 5回戦の相手は、高校1年生の玉竜旗で負けた相手でした。6回戦の相手は昨年の関東優勝者で、全国からも注目の置かれる選手でした。7回戦の相手は小学生の時から知っていて、高校の団体代表決定戦で負けた経験があります。

――返しドウで4本を決めていますが、返しドウは得意技なのでしょうか

 得意技です。個人戦は延長戦があって時間制限がないので、自分の得意技に持っていこうと思いました。

――この日最も印象に残っている試合は何戦目ですか

 ベスト8入りがかかった6回戦の試合です。昨年の全日団体戦のベスト8をかけた試合では、私の二本が原因で筑波大に敗退してしまいました(筑波大・笠選手は当時大将)。そのためリベンジをしようと思って試合に挑みました。危ない場面も多々ありましたが、勝てたので良かったです。

――チームメートの皆さんと何か話したことはありますか

 試合前、剣道部女子から応援ムービーをいただいたおかげで緊張が取れました。試合の時は、チームメートがそばで応援してくれたのが大きな支えになりました。そして試合後には、多くの人からメッセージをもらいとてもうれしかったです。改めて、早大剣道部の仲の良さを実感しました。

――今大会を終えて、新たな目標について教えてください

 今大会で得た反省点を改善しながら、全日、関東団体に向けて練習していきます。早大剣道部には強い選手が多く所属しているほか、最近ではOB、OGも練習に来てくださり、勉強になることが多くあるので、この環境に感謝したいです。全日個人では、上位に上がれるように桃佳さんと暴れてきます。