昨季は満足のいく成績を残せなかった早大剣道部男子。新主将に大串快晴(スポ4=愛知・星城)、副将に嶋田陽樹(社4=栃木・佐野日大)と和田晃貴(社4=福岡・東福岡)を据えてチーム改革に取り組んでいる。幹部となった3人に、現在のチームの様子や今後の目標について伺った。
※この取材は2月6日に行われたものです。
他己紹介
――まずは、部活やプライベートでのエピソードを交えながらお互いの紹介をお願いします
大串 和田晃貴くんは、一言でいうと『ストイック男』という感じですね。部活動でも私がいないときは和田くんが練習メニューを決めるのですが、そのときは本当に地獄のようなメニューを組んでくれます。
和田
嶋田さんは、一言でいうと、誰とでも仲良く接するというイメージがあります。嶋田さんは後輩とのコミュニケーションを大事にしていて慕われているので、上下関係は嶋田さんがいるおかげでうまく保てているというような、そういう存在だと思います。
嶋田 大串さんの印象としては、めちゃくちゃ真面目というのが第一印象でした。先輩やコーチなど指導陣がいないときでも、手を抜いているところを一切見せないで、常に何事にも一生懸命です。そういう人が主将でいてくれると、ついていきたいなと思えるので、いい主将だなと思います。
笑顔で質問に答える大串
――オフの日はどんなことをして過ごしていますか
大串 僕は寮で運良く1人部屋なので、部屋で1人でゲームをしたりしています。あまり外にはコロナもあって行けていないです。嶋田と同じ寮なので、たまに部屋に集まってご飯を食べたり、ゲームをしたりもします。
和田 買い物に行くことが多いと思います。結構きついスケジュールで疲れがたまっているときはサウナに行きます。
嶋田 僕はオフの日は何もしたくないなとなっちゃうので、部屋でずっとYouTubeを見ているか、寝ているかという感じですね。
――3月まで稽古が少ない日が続くと思いますが、今はどんな練習をしていますか
大串 全体での練習はないのですが、道場を勝手に使って、自由に練習ができるので、同期や後輩を「やろうぜ」という感じで誘ってやっています。
――少し話は変わりますが、みなさんはいつから剣道を始めたのですか
大串 私は年中からやっています。父親が剣道を高校までやっていて、また再開するということで、一緒にやる流れになりました。
和田 4歳で始めました。きっかけは兄と父が剣道をしていて、その影響で一緒にやるようになりました。
嶋田 6歳から始めました。親が武道が好きで、親は武道をやっていたわけではないのですが、息子に武道をやらせたいと思っていたらしくて、「空手か剣道、どっちやりたい」と聞かれたときに、なんとなく剣道の方が格好いいなと思って始めました。
――大学以前で、何か印象に残っているエピソードはありますか
大串 高校時代に、和田のいた東福岡高校当たって負けてしまったという試合がありました。負けた相手が大学になって同じチームにいて、一緒にやるというのは、うれしい気持ちでした。
――和田選手もそのときのことを覚えていますか
和田覚えています。私は先鋒で、大串さんは大将でポジションは違ったので、直接やることはなかったのですが、力強い剣道で、本当にすごい選手だなという印象がありました。
――嶋田選手は何かエピソードはありますか
嶋田 高校のときに、周りも高校のチームメイトが強くて、そのうちの1人が総体で優勝しました。そういうレベルの人が同期にたくさんいて、そういう人たちと毎日練習できたというのが、自分を成長させてくれて今の自分があるので、そういう高校での環境が印象深いかなと思います。
――これまで剣道をやってきて、つらいなと思ったり、やめたいと思ったことはありましたか
大串 つらいと思うことはすごくありますが、やめたいと思うことはないですね。つらいと思うのは、剣道の中で一番きついと言われている掛かり稽古というのがあるのですが、高校のときは先生が元立ちでそこに打ち込んでいくというのがありました。いつ終わるか分からずに、永遠にしごかれるというか、そのときがきつい瞬間です。
和田 小学校、中学校時代はずっとやめたいと思っていました。周りの友達が遊んでいるなかで、自分は毎日放課後も練習があって、自分も遊びたいなというのがありました。小中は練習もつらいし、なんで自分だけ遊べないんだというので、ずっとやめたいと思っていましたね。それでも、一緒にやっていた同期の仲間が非常にいい人ばかりで、その人たちと毎日一緒に練習をする楽しい生活がなくなるのも嫌だなと思って続けていました。
嶋田 何度もやめたいとか、つらいなと思ったことはありますが、特にそう感じたのは、高校のときや大学の最初の方です。選手になれなかったというのが一番つらくて、先輩に勝てないのは仕方がないなとなるのですが、同期や後輩に抜かされてレギュラーを取られると、何のために頑張ってきたんだろうとか、情けないなと思ったりして、悔しくて、やめたいなと思ったことは何度もありました。
主将、副将になって
――主将、副将はどのようにして決まったのでしょうか
大串 1年生の頃に、同期で話し合って決めています。
――決定した時はどのようなお気持ちでしたか
大串 私は結構主将になりたいという気持ちはあって。みんなをまとめて一つの目標を達成したいという気持ちがあったのでうれしかったのですが、まさか主将になれるとは思ってはいなかったので。だから当時はびっくりしていましたね。
和田 私も大学では幹部として部をまとめたいという思いがあったので副主将になりました。主将になった大串くんは素晴らしい人間で、すごく尊敬できるところがたくさんあるので、そういう人間に主将をやってもらって、そのサポートができるというのはありがたいというか、良かったなと思います。サポートを全力で頑張ろうと思って今はやっています。
嶋田 私は特にまとめたいとは思っていなかったのですが、小中は主将をやってきていて、高校ではやっていないですけれども、大学ではもう一回引っ張っていきたいなと。自分が頑張って後輩とか同期にその背中を見せて、引っ張っていきたいなという気持ちがありました。そういうのは上に立たないと見てくれないという気持ちがあったので、副将になったときは頑張っていこうと思いました。
――実際に役職についてみて、イメージと違うところはありましたか
大串 高校までと違って学生が運営していかないといけないということを改めて実感しました。例えばOBの方がよくいらっしゃるのですが、その方々へのコロナ対策はどうするかであったり、普段の練習メニューにしても、やっぱり早大剣道部の特徴として一般入試生とスポーツ推薦生とで多種多様な人がいるので、全員が納得してできるような練習メニューを一から作っていかなければならなかったり。そういった部分での裁量が大きくて、本当に学生が主体となってやっていかなければならないなというのは感じました。
和田 周りをよく見ないといけないなというのはすごく感じています。今までは、自分が実力をつけるためにと自分のことばかり考えて練習してきたのですが、副将になると自分だけではなくて、組織全体を見ていかなければなりません。でもまだまだ自分は周りが見られていないなということをすごく感じていて。やっぱり部を運営する立場として、もっと周りを見ながら自分を高めていかなければならないなと思いました。
嶋田 やっぱり部全体の意見をまとめるのが難しいなと感じています。幹部で考えていること、同期で考えていること、後輩が考えていること、そして首脳陣が考えていることってやっぱり違って。そういったことを全部まとめて最終的に決定するのは幹部なので、首脳陣も部員も不満が無いような案を考えることが一番難しいですね。
――大串選手は星城高校時代も主将を務めていましたが、高校と大学で何か違いはありましたか
大串 高校時代は監督の権限が強かったので、主将として私が統率しなくてもある程度まとまりがあったんですね。ただ大学になると、監督はあまり口出ししてこなくて、学生自ら部をつくっていかなければならないということになるのですが、後輩はまだ高校の時のように、監督に言われたことをそのままやればいいという。それに対して自分たちは、監督に言われなくてもやっていかなければならないという意識の差が部員間で生じている、というところに高校時代との差を感じますね。
――高校の監督の権限が強いというのは特にどういったところですか
大串 高校時代の監督は毎日練習に来て指導してくださったり、練習メニューを組んでくださったりしていたのですが、大学になると土日しか監督はいらっしゃらないので。平日は幹部の私たちがしっかりと引き締めなければいけないですね。
昨季は「望むような結果は出せていない」(大串)
――ここからはチームについてのお話に移ります。昨年のチームはどういったチームでしたか
大串 コロナで何もかも変わって新しいことに直面した代だったので、私たちの1個上の先輩方は本当に苦労されていて。それを間近で見ていて、大変そうだなと。
和田 昨年の代は熱心な印象です。4年生が非常に熱心で、下の代がそれについていくという感じでした。コロナウイルスでたくさん制約があったり大会が中止や延期になったりする中で、そこをどう乗り越えようかと4年生が頑張っていて、下の代は何とかそれにくらいついていました。
嶋田 和田の言う通りとても熱心な代だったのですが、それが空回りというか。4年生が頑張りすぎてしまって、後輩がそれにあまりついていけないという感じが時々見受けられて。4年生と下の代とで温度差を感じていた一年だったかなと思っているので、今は後輩たちとコミュニケーションをとって、そうした温度差をなくしていくことを心がけています。
――温度差というのは、稽古に対する気持ちの面などでしょうか
嶋田 後輩もやる気がないわけではないんですよね。練習メニューや方針が変わるなどの節目で、なぜ変えたのかを説明してくれなくて。なんでそういうメニューをしているのか、なんでそういう風に変えたのかが後輩に伝わっていなくて、そういうところから温度差ができ始めてしまったのかなという感じです。
――昨年は関東学生優勝大会(関東)ベスト16、全日本学生優勝大会(全日本)でベスト16、早慶対抗試合(早慶戦)準優勝という結果でした。この結果をどう捉えていますか。
大串 全然望むような結果は出せていませんね。
和田 日本一を目標に取り組んではいましたが、自分たちの実力はまだ日本一には及ばないので、関東と全日本でのベスト16というのは良くもないですが悪くもなく、まあ妥当だなと思います。早慶戦は私たちが入学してからずっと勝っていなくて、そろそろ勝たないといけないなという思いがありつつも負けてしまったので、非常に悔しいですし、本当にそろそろ勝ちたいですね。
嶋田 関東も全日本も早慶戦も、納得した結果ではなくて。私は一応選手には入っていたのですが補欠というかたちで、試合に出られなかったので何か言う権利はないのですが、今年こそは昨年の結果を上回りたいと思っています。
――この昨年度の結果から課題は見つかりましたか
大串 個人個人のパワーアップというよりも、チーム力が課題です。早稲田大学の魅力は、様々なバックグラウンドを持った人が本当に多く存在しているという点です。先ほど嶋田が言ったように、昨年は練習の説明ができていなくて分断が起きていました。70人の部員全員が一つになって試合に臨むことができれば実力以上のものが出せると思っているので、意識して練習を一からかみ砕いて説明しています。
和田 大串が言った通り、チームのまとまりをもっと強化していかなければならないというところが課題です。もう一つ個人的には、早慶戦の時、慶應に勝ちたいという思いで負けていたのかなと感じるので、思いで負けないようにしていきたいなと思います。
嶋田 やっぱり昨年の結果を上回るには、他のもっと強い大学に勝たないといけないというのが前提で。他の大学は中学高校と強豪校でやってきた経験がある人が同じ大学に集まることで強くなっているのですが、早稲田はあまり中学高校を強豪校でやってきたという人が少なくて。そういった中でどう勝つか、大串の言うようにチーム力だったり、頭を使ったりして現実的に考えなければならないです。そういう面は昨年にはなかったかなと思います。今年は技術だけでなく頭を使って、そしてチーム力もアップさせて勝っていきたいなと思います。
――反対に、昨年のチームの良い点はどこでしたか
大串 私たちの1つ上の代とその下の代とで意識の差は生まれてしまったのですが、1つ上の代は本当に熱心で。最上級生になると天狗になったり、練習でも手を抜いたりという傾向があると思うのですが、その点1つ上の代は練習で手を抜かなかったですね。
和田 私もやっぱり熱さがあったところだと思っています。最上級生で就活とかもあっていろいろ大変だとは思うのですが、その中でもちゃんと部のことを考えて、自分自身も高めて、という非常に熱量のある先輩ばっかりでした。
嶋田 1つ上の代は、みんな剣道が好きだったのかなという印象です。練習がやりたくないなだとか、そういった愚痴を1つ上の代からはあんまり聞いたことが無くて。剣道に対する思いが、2つ上、3つ上の先輩たちよりも強かったのかなと感じています。
――前主将の鈴木涼也選手(社=佐賀・龍谷)はどういった選手でしたか
大串 あんまりものを言わないというか、口数が少ないけども、内に秘めた思いが熱い人で、背中で見せるようなタイプでした。本当にあんまり怒ったりも、逆に褒めたりもしなくて、ただ自分は誰よりも努力して背中で見せる。そんな主将でした。
和田 みんなの前では口数の少ないクールな主将でしたが、私は広報という役職で同じで、飲みに連れて行ってもらう機会がたくさんありました。そういう時は普段見せない顔といいますか、笑顔で暴れるような酔っぱらい方をするので、本当はそういう内に秘めたものがあるというギャップがあってかわいい人ですね。
嶋田 本当に負けず嫌いだなという印象があります。もちろん試合で負けたら悔しがっていましたが、稽古中の練習試合でも、相手が先輩だろうと後輩だろうと勝ちに行く人で。自分よりも弱い選手だから手を抜くことがなくて、誰に対しても自分のスタイルを貫いて、絶対に勝つという気持ちが人一倍強い選手だなという風に感じていました。
昨季を振り返る和田
――鈴木選手と同じ1つ上の代で、尊敬している選手はいらっしゃいますか
大串 全員尊敬しているのですが、その中でもやっぱり私は前主将の鈴木選手を尊敬しています。というのも、地元が愛知県で同じで、小学校の頃からずっと鈴木主将を見てきたんです。本当にめちゃくちゃ強くて、負けたところを見たことがないくらい。小中の時は試合会場で一番というくらい背も高くて、オーラがすごかったですね。ずっと憧れの選手で、大学で同じチームで試合に出られたのは本当にうれしいことでした。鈴木選手には特別な尊敬がありますね。
和田 私も全員尊敬しているのですが、特に尊敬しているのは三浦選手(晃太朗、法=東京・早稲田)ですね。三浦さんの2年生から4年生までを見てきましたが、競技力の伸びが半端なくて。たまたま伸びたとかではなくて、剣道に対する探究心がすごかったんです。タブレットにネットから取ってきた強い選手の技の映像を何百件も保存して、それを研究して自分に取り入れていて、努力の量が普通の人の比じゃなくて……、それが結果にも表れていますし。最後は本当にかなわないくらい強かったので、剣道に対する努力の部分で尊敬しています。
嶋田 僕は池松選手(敦、国教=東京・順天)です。一般で入学して、剣道も全然強くないのですが、それでも4年間頑張って、最後は早慶戦の補欠になるくらいまでになって。早慶戦の選考試合から本戦までは少し期間が空いていたのですが、池松選手は早慶戦の選考で負けてしまったんです。もう早慶戦には出られないので本当はそこで引退なのですが、早慶戦まで毎日自主練していて。「なんで自主練しているんですか」と聞いたら、「みんなの士気を上げるためだ」と。自分が選手になれなくても、チームのために頑張れる人って格好いいなと感じました。剣道の面よりも、人として尊敬しています。
「風通しも良く、雰囲気はとても良い」(和田)
――新チームが始動してからの雰囲気などはいかがですか
大串 雰囲気はすごく良いと思います。1個下に3名ほど元気の良い子がいるのですが、練習中の声かけやふるまいで盛り上げてくれて、良い方向に影響を与えてくれるので、チームの雰囲気としてはすごく良いと思います。
――元気の良い方はどなたですか
大串 山田(大晴、スポ3=福島・安積)、山本(勇真、スポ3=大阪・明星)、神谷(悟志、スポ3=奈良・郡山)の、スポーツ科学部の競技歴方式入試で入ってきた子ですね。
――今年のチームの雰囲気について他にはありますか
和田 雰囲気は非常に良いと思っています。先輩、後輩の関係に限らず、お互いにアドバイスしあえているというのが非常に良いと思っています。そういったことができるということで、部の風通しも良く、信頼関係も良いかたちでできてきていると思うので、そういった面で、部の雰囲気はとても良いと思います。
嶋田 今までよりも、後輩を含めた全員が練習しやすくなっているのかなと。私たちが1年生の時は上級生が怖くて「練習中にミスをしないように」のように、自分が強くなるためではなく、練習自体に支障が出ないように振る舞っていて、「練習に身が入らなかった」というような感じでした。しかし「そういう環境では後輩は強くならないな」と思ったので、今年は後輩もしっかりと練習に身が入るように、練習しやすい環境をつくるというのは意識しているので、そういった面で、後輩も含めた全員で練習しやすい雰囲気をつくれているのかなと思います。
――練習しやすい雰囲気をつくるために工夫していることは何ですか
嶋田 やはり、「理不尽な怒り方はしない」というのは心掛けています。1年生の時などは本当に理不尽に怒られることがあり、同期の間でも「そういうのはやめておこう」というようになっていて、「理不尽な怒り方はせず、ミスをした時にはちゃんと怒って、しっかりとできているところはしっかりとほめる」といった方針でやっているので、そういったところで練習しやすい雰囲気をつくれているのかなと感じています。
和田 大串の話とも重なるのですが、練習をするときに「この練習はこのためにやる」ですとか、「この期間はこういうことをする」というのを一々説明をしています。「なんでこういうことをやっているのかな」と後輩に思われないように、やることやること全部に意味を持たせるといいますか、ちゃんと理解してもらって行動することで、下級生からの不満をなくすことを心掛けています。
大串 練習中とそれ以外の時間、オンとオフはしっかりと使い分けるようにしています。練習中は自分にも厳しく、他人にも、手を抜いている人がいたら、そこはしっかりと「ちゃんとやれ」というようにしていますし、練習が終わったら「先輩も後輩も関係なくコミュニケーションが取れるような雰囲気をつくっていこう」と意識しています。
――今年のチームの特徴や良い点は
大串 今年のチームの特徴としては、本当に「誰一人取り残さない」といいますか、幹部陣が部員全員に目をかけて練習をできており、それに対して部員全員も応えることができて、というような感じですね。今までのチームですと「スポーツ推薦生と一般入試生」というような感じで意識の面でも分かれていたのですが、今のチームでは一般入試の人が推薦生を追い抜くくらいの勢いを持っているので、そういう面では、部員全員が高い意識を持って練習できているところが良いところだと思います。
和田 部員全員がお互いを高め合っているといいますか、一般入試生から競技歴方式などスポーツを使って入ってきた人まで関係なく、みんなで競い合っているというところが非常に良い面だと思っています。それに加えて、非常に仲も良いといいますか、上下関係も関係なしに仲が良いというのが特徴だと思います。
嶋田 いい意味で「来年は誰が選手になるか分からないな」という感じで、「高校では強豪校でやってきたから」ですとか、「昨年選手になったから」というので選手になるのではなく、今まで選手になったことがない人でも選手に入れるような、みんなが競争力の高い、良い選手なので。つい先日も、同期で選手ではない人が、全日本都道府県対抗優勝大会の東京都予選で準優勝してきて。あと一歩のところで都道府県の代表にはなれなかったのですが、選手ではない人が東京都で2位になってくるという意味で、選手になれるチャンスがみんなにある、そういうなかで、「自分が選手になる」「自分が選手になる」というように、みんなが切磋琢磨(せっさたくま)して毎日稽古をしているので、そういった環境が今年のチームの良い点や特徴になります。
――今年のチームの課題や困難なことはありますか
大串 緩い雰囲気や緩い面が目立つかなというのは少しあります。というのも、先ほどお話しした『風通しの良い雰囲気』というのは私たちが目標にしている、1つのスローガンではあるのですが、それを意識するがあまり、後輩に対してダメなことをダメだと厳しく言えないところや、厳しくすべきところで厳しくできていないところがあるので、そういったところは課題だと思っています。
和田 今年のチームの課題は、(高校時代に)強豪校でやってきた選手が少ないということで、経験の面で少し劣っているのかなと少し思っています。なので、もっと対外試合での経験などを積む必要があり、練習試合といったところでカバーしていく必要があるのかなと思っています。
嶋田 飛び抜けて全国で通用する選手がまだいないといいますか、もちろん、大串もめちゃくちゃ強いのですが、本当に日本一を目指すとなると、やはりまだ物足りないといいますか、私も含めてそうなのですが。そういった、「ここぞ」というときに勝てる選手がまだ早稲田にはいないので、もちろん、「そういった選手に自分がなる」という気持ちで自分もやるのですが、そのような、「ここぞ」というときに勝てる選手が欲しいかなと主将、副将としても思います。
チームについて話す嶋田
「自分だけではなく、チームみんなで強くなっていきたい」(嶋田)
――昨年から意識的に変えたところはありますか
大串 大きく変えたところは練習内容です。早稲田は伝統的に、毎日同じメニューをずっとやってきたのですが、それだと部員の士気が下がるといいますか、毎日同じ練習ですと飽きている部員がいて、それではダメだと思っていて、日によって、例えば「この日は上半身を鍛えることを中心としたメニューを立てる」、次の日は、「昨日は上半身を鍛えたから下半身を鍛える」、その次の日は「上半身と下半身を休ませて技の練習をメインでやる」というように、日によって練習のテーマを変えることで練習の質を上げるように取り組んでいます。
和田 大串が言った通りで、「風通しの良さ」以外だと変えた点は練習メニューくらいですかね。
嶋田 これまでやってこなかったメニューなどをいろいろと取り入れて、そういった中で「練習中にしっかりと後輩などに声掛けをしてあげる」ですとか、些細(ささい)なことなのですが、自分だけが強くなるのではなく、みんなで強くなっていきたいので。「後輩に声をかけたりアドバイスをしたりする」というのは、自分だけではなく同期みんなが意識していることなので、そういった中で先輩と後輩の間にある壁も徐々になくなっているので、そういった心がけ一つ一つが良い雰囲気を生み出しているのかなというのは感じています。
――今年のチームをどのようなチームにするのか、構想はありますか
大串 構想としては、大きく分けて3つあります。1つ目は先ほど言った「風通しの良いチーム」です。2つ目は「応援されるチーム」ということで、早稲田のOBの方や試合の時に審判をしてくださる方々に応援されるために、あいさつや整理整頓といった凡事を徹底するというところです。最後は、「集合天才」ということで、「1人1人の個性が集結して、より大きなパワーを生み出す」といった意味で、頭の良い部員もいれば頭の悪い部員もいるので、そういう個性を集結させて、より大きいパワーを生み出す、以上の3つを大きく意識しています。
――4月に入ってくる新入生に求めることは何ですか
大串 剣道が強い人が入ってほしいというのはもちろんなのですが、情熱を持った、熱い選手が入ってきてほしいなと思っています。やはり1年生だと、どうしても先輩に言われたことを受け身でこなす、というようなことがあると思いますが、そうではなくて、1年生の時から4年生に対して「もっとこうしたほうがいいんじゃないか」というようなことを言ってくれるような、情熱を持った選手に入ってきてほしいです。
和田 攻撃力がある新入生が欲しいなというのはあります。というのも、今の早稲田は一本取る力というところで課題がありまして、一本取れる、攻撃力がある新入生が入ることによってプラスになると思うので、そういう新入生が入ってきてほしいと思っています。
嶋田 本気で日本一を目指す選手が欲しいです。高校の時に強かった人でも、「大学では日本一にならなくてもいいかな」と考えている人はいりませんし、逆に中学、高校と活躍はできなかった人でも、「大学では日本一になりたい」という人は本当に入ってきてほしいです。やはり体育会ということで、サークルとは違いますし、そういった面では、本気で大学で日本一になりたい、という人に入ってきてほしいなと思います。
日本一、早慶戦優勝へ
――皆さんの個人としての目標はいかがですか
大串 剣道面では、個人、団体日本一というのを目指しています。ただ、現状の実力を見ると、まだまだな部分があるので、残りの半年くらいの間、本気で日本一を目指して頑張ろうと思っています。人間性としては、主将として、みんなの模範となるような主将像に近づけるように頑張っています。
和田 剣道に関してはやはり日本一が目標で、そのなかで私自身がチームの要になれるような存在になりたいという目標はあります。人間性に関しては、(自分は)副主将ということで、色々な部員と接して、悩みだったり、普段言えない不満だったりを副主将が聞いていかないといけないと思うので、信頼関係という面で、信頼できる人になりたいという目標があります。
嶋田 剣道面に関しては、まだ私自身が選手になれるのかなれないのかが分からない状態なので、まずは選手にしっかりと入って、試合に出たら日本一、早慶戦優勝を目指して、チームの要になっていけるような選手になりたいと思っています。そして、私生活や人間性に関しては、やはり、部の上に立つ身として、本当に見本にならないといけないと思うので、剣道以外の私生活のところでも見本になれるように、身の回りの整理や、あいさつなどは率先してやっていきたいなと思います。
――最後に、チームとしての目標をお願いします
嶋田 もちろん、何度も言っている通り、「日本一」、「早慶戦優勝」というのは目標です。ただ、私たちの部には「最低目標」というのも設けています。やはり今の実力から見て、日本一には程遠くて、その程遠い目標を、部員全員に対して「日本一になるぞ」「日本一になるぞ」といっても温度差が生まれてきてしまうのかなと感じています。そういったなかで、早慶戦はもちろん優勝で、最低でも「全国でベスト4にはなろう」というふうに、チームとして目標を掲げているので、そこを目指して頑張っていきたいなと思います。
和田 チームとしての目標はもちろん「日本一」というところで、そのために、先ほども部の方針として言った「チーム力」だったり、「応援されるチーム」だったりというところで、日本一にふさわしいチーム作りを目指して、最終的に日本一になりたい、というのが目標です。
大串 チームとしては、「日本一」というのと、『剣道を楽しめるチーム』というのを目標に頑張っていこうと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 是津直子、渡邊悠太、荒井結月)
◆大串快晴(おおぐし・かいせい)
2000(平12)年9月5日生まれ。愛知・星城高出身。スポーツ科学部4年。「何事にも一生懸命」と部員からの信頼を集める大串主将。取材では、どんな質問にも笑顔で答えてくださいました!
◆嶋田陽樹(しまだ・はるき)
2000(平12)年4月3日生まれ。栃木・佐野日大高出身。社会科学部4年。上級生と下級生の潤滑油となっているという嶋田選手。チームや部員についての冷静な分析が印象的でした!
◆和田晃貴(わだ・こうき)
2000(平12)年4月22日生まれ。東福岡高出身。社会科学部4年。練習では「地獄のようなメニュー」を組んでいるという和田選手。大会でその成果が出るのが楽しみです!