「一からやり直す」…2人が出場も不完全燃焼に終わる

剣道

 前日の女子の熱戦の興奮冷めやらぬ中、大学生男子の個人王者を決める第65回全日本学生選手権(全日本)が開幕。精鋭集う本大会に、早大からは激戦の関東地区を勝ち抜いた久田松雄一郎主将(スポ4=佐賀・龍谷)と安井奎祐(スポ3=茨城・水戸葵陵)の2人が出場した。久田松にとっては大学生活最後の個人戦、安井にとっては自身2度目となる大舞台。早大の代表としての期待を背負って臨んだ二人だったが、久田松は4回戦で、安井は2回戦で敗れ、両者とも悔しい結果に終わった。

冷静に相手をいなす久田松

 「誘われても我慢して我慢して、打つべきときに打つ」。大会直前に負った足のケガで思うように動けない久田松が、本大会で意識していたことだという。その言葉通り、1、2回戦では徹底的に相手の中心を取りにいった。無駄に動き回らず、剣先で巧みに相手の竹刀を抑えながらじっとタイミングをうかがう。我慢し切れず飛び込んできた相手の攻撃は全て冷静に受け流す。それが功を奏し、1、2回戦とも延長戦で相手の一瞬の隙をついたメンを決め連勝した。その姿勢は、3回戦で強敵・藤野聖那(国学院大)と対戦しても変わらない。強気で攻めてくる相手にも動じることなく、相手が居ついた瞬間を逃さずメンで仕留めた。続くベスト16入りを懸けた4回戦でもこれまで通り冷静に試合を展開したが、両者とも1本が決め切れず延長戦へともつれ込む。その延長戦開始直後。互いに間合いを詰めたところで、久田松が相手の竹刀を巻きにかかる。ところがそれをかわされ、手元が上がったところを相手のコテが襲う。体勢が崩れたところを捉えられ、無念の1本負けを喫した。ケガに苦しみながらも地力を発揮しここまで勝ち進んできただけに、「慎重過ぎたのが裏目に出てしまった」と語る悔しい結果となった。

 また、久田松は関東学生連盟の推薦により全日本学生東西対抗試合の東軍代表にも選ばれていた。関東学生選手権覇者の宮本敬太(国士舘大)ら全国トップクラスの選手と肩を並べての名誉ある選出。圧倒的な戦力を誇る東軍が6人残しで勝利し四将の久田松の出場はなかったが、東軍の勝利が決定した瞬間には、笑顔でチームメートに拍手を送った。

 一方の安井は、シードのため2回戦からの出場。「なかなかうまいこと試合が運ばなくて」と振り返るように、積極的に攻め込むが1本を決め切れない展開が続く。延長戦でここぞというタイミングでメンに飛び込んだものの、そこにうまくドウを合わせた相手に軍配が上がった。普段あまり取られないというドウでの、まさかの初戦敗退。納得のいかない結果に終わり、自身2度目の全日本は幕を閉じた。安井は1年生の時から貴重な戦力として活躍しており、最終学年となる来年にはチームの中核を担う存在となる。安井自身、「秋では自分がしっかりチームを引っ張って行けるような選手になる」とその自覚は十分だった。この敗戦を糧に、秋の団体戦での活躍に期待がかかる。

奮闘するも1本が遠かった

「全員が全員、多分納得のいかない結果」(安井)。本大会の予選となった関東学生選手権には7人が出場したが、その中で全日本への切符をつかむことができたのは久田松、安井の二人のみ。その二人も、本大会では本来の力を出し切れず不完全燃焼に終わった。春の個人戦シーズンが総じて不振に終わったのは否めない。しかし、くよくよしてばかりはいられない。秋には本命の団体戦が控えている。悲願の団体日本一に向け、今回全日本の舞台の緊張感を肌で感じた久田松と安井は「一からやり直さないと」と口をそろえた。この二人を中心に、「結果に厳しく」(久田松)という目標を掲げて臨む鍛錬の夏での成長に期待したい。

(記事 久野映 、写真 松本一葉)

結果

久田松 4回戦敗退

安井  2回戦敗退

コメント

久田松雄一郎(スポ4=佐賀・龍谷)

――本日、調子はいかがでしたか

ちょっと足をケガしてしまっていてそういう不安要素はあったのですが、その中でどうやるかっていうのを考えてやってきていたので調子が悪いっていう感じはあまりなかったです。

――ケガの影響はありましたか

やっぱりちょっと足が出なかったですね。痛みというより無意識にかばってしまうというか、それで足が出なかったし、体も前に出なかったって感じです。そういったところは良くなかったですね。

――そういった不安のある中、本大会にはどのような目標を持って臨みましたか

一戦一戦大事にってところですね。優勝するとか考えるよりも、目の前の一戦一戦に集中して、勝ちに行くように意識していました。

――続いて試合についてお伺いします。まず1回戦と2回戦はどちらも延長戦での一本勝ちとなりましたが、振り返っていかがでしょうか

個人戦なので打ち急がず、辛抱して打つべきところで打てたのかなと。きょうはそこに関しては良かったと思っています。

――3回戦、国学院大の藤野選手との試合を振り返っていかがでしょうか

割と名前のある有名な選手ですけどあまり気にせず、誘われても我慢して我慢して、打つべきときに打つことを心掛けました。

――惜しくも負けてしまった4回戦を振り返って

きょうはしっかり辛抱して打ち急がないことを心掛けていたんですけど、慎重過ぎたのが裏目に出てしまいました。

――決まり手は引きゴテでしたが、詳しい状況を教えてください

仕切り直しで始めってなったときにお互いグッと入って、そこで巻きにいこうとモーションをかけたときに空振ってしまって。そこで竹刀が上がってしまったところをパーンと打たれた感じです。

――きょう全体を振り返ってこの結果をどのように捉えていますか

ケガの面でもそうですし、一からやり直さないとなあと感じました。まあ個人戦なので、これから団体戦に向けてやるべきことを一つ一つやっていきたいです。

――今お話にも出ましたが、今後団体戦に向けてどのような稽古をしていきたいと考えていますか

試合に対して厳しく、結果に対して厳しく、ですね。そういう心持ちで試合や稽古を一つ一つやっていきたいです。

 

安井奎祐(スポ3=茨城・水戸葵陵)

――今日の試合を振り返っていかがでしたか

今日の試合は結構体が動いてて調子いいと思ったんですけど、なかなかうまいこと試合が運ばなくて、最後いつも打たれないようなドウを打たれてしまったっていう感じですね。

――相手の中村さんのドウいかがでしたか

そうですね、まあ入らないと思ったんですけど打突部位はしっかりと捉えられていたので入っても仕方がなかったです。

――早大として、今大会の結果はいかがですか

全員が全員多分納得いかない結果だと思うので。師範がおっしゃっていた通り、全員が一からしっかりやり直していかないといけないと思います。

――夏に向けて強化していきたいことはありますか

体育大学とかを見ているとやはり、体のつくりがしっかりできているので、私たちはまず体から鍛えていかないといけないという印象を抱きました。

――秋の団体戦に向けての意気込みをお願いします

秋では、自分がしっかりチームを引っ張って行けるような選手になってまずは関東、しっかりと優勝を狙って頑張っていきたいと思います。