約500人もの剣士が、聖地・日本武道館へ集った。全日本学生選手権(全日本)への60枚の切符を懸け、激戦区・関東でぶつかり合う本大会。早大からは厳しい選考を経たえりすぐりの7人が出場した。久田松雄一郎主将(スポ4=佐賀・龍谷)がベスト16入りと結果を残し、安井奎祐(スポ3=茨城・水戸葵陵)は敗者復活戦で全日本出場権を死守。しかし全日本進出を決めたのはこの二人にとどまり、精鋭を送り出した早大としてはもの足りない結果となった。
安定の強さを見せた久田松
主将がその実力と貫録を見せつけた。4回戦までを危なげなく勝ち上がり早大勢一番乗りとなる全日本出場権を獲得すると、続く5回戦でも快勝。久田松は「うまく力が抜けていて良かった」と自身の試合を振り返った。しかし強敵・筒井雄大(筑波大)との6回戦は、勝ち急いだことが敗因となる。序盤に先取されその直後に取り返したものの、ここで試合を決めたいと飛び込んだメンにドウを合わされ無念の敗北。自身の昨年のベスト8という成績には届かなかった。また、3回戦敗退と苦杯をなめた昨年の雪辱を果たすべく本大会に臨んだ安井は、ヤマ場と捉えていた4回戦で慶大の伊藤謙剛と対戦した。パワーとスピードのある相手に対し技で勝とうと挑んだが、見切ったはずの相手のメンに捉えられる。それまでいい流れで勝ち進んできただけに、悔やまれる敗戦となった。敗者復活戦では「気持ちが切れてしまった」と2連敗を喫したが、もう後がなくなった3戦目で仲間の応援を受け奮起。延長戦を制し、全日本出場権をもぎ取った。
一方、トーナメント形式の悪夢を見た選手もいる。2年時には全国3位の成績を収めた大学剣道界屈指の実力者・勇大地(スポ4=東福岡)が、まさかの初戦敗退。ルーキーイヤーから数々の大舞台で活躍してきた秋山健太(スポ2=福岡大大濠)も3回戦で姿を消した。一度でも負けるとそこで終わりという、本大会の過酷さを感じさせる結果だ。中嶋優樹(法2=東京・国学院久我山)は3回戦まで勝ち進み強敵をあと一歩のところまで追い詰める健闘を見せたが、部内戦で本大会出場権をつかみ取った新生・岩部真佳(商3=神奈川・桐光学園)、ラストイヤーにレギュラー返り咲きを目指す船橋惇冶(社4=茨城・水戸葵陵)は振るわなかった。
敗者復活戦で辛勝する安井
「実力は自分が4年間いる中で一番あると思っている」(久田松)と、ことしの早大の選手層は厚く、寄せられている期待も大きい。それだけに、全日本へ進むのが二人というのはあまりに悔しい結果だった。明暗分かれた1日だったが、それぞれの課題は浮き彫りとなったはずだ。久田松、安井は全日本が開催される大阪の地での躍進を、日本一への道を断たれたメンバーは秋の団体戦でのリベンジを誓う。
(記事 久野映、写真 石塚ひなの)
コメント
久田松雄一郎主将(スポ4=佐賀・龍谷)
――きょうの試合を振り返っていかがでしたか
調子は良かったです。全日本(全日本学生選手権)が決まってとりあえずほっとしています。
――最後の年の個人戦として、どのような意気込みで臨まれましたか
最後だからとかいうのはなく、しっかりやっていこうと1週間前から試合に向けて準備してきました。
――危なげなく勝ち上がりましたが調子は良かったのですか
結構きょうは力が抜けてて良かったなと思います。
――6回戦についてお伺いします。相手の筑波大の筒井選手についてはどのような印象をお持ちでしたか
昔からよくやっていたので、大体勝負どころというのはわかっていました。出鼻を狙っていたんですけど、最後は勝ち急いで打っていってしまったところが敗因かなと反省しています。
――1本取られた後にすぐ取り返しましたが
取られても気持ち的には落ち着いていたので、ああいう風に取り返せたというのは良かったかなと思います。
――3本目は相手に抜きドウを決められましたが狙いに行ったのでしょうか
早く作って先にと打ちに行ったら抜かれてしまったので、そこはやはり勝ち急いでしまったという感じかなと思っています。
――ベスト16という結果をどう捉えていますか
とりあえず全日本出場というのが第一ですね。収穫のある試合でしたし、体的にもよく動けていたので今後に繋がるかなとは思っています。
――個人戦ではありますが主将として意識していた点はありますか
いや、本当に個人戦なのでそんなことは考えずに、しっかり自分で準備してやっていきました。
――勇選手(大地、スポ4=東福岡)や秋山選手(健太、スポ2=福岡大大濠)といった力のある選手がまさかの結果となりましたが
それは私からどうこうではなく本人がどう感じて今後に繋げていくかだと思います。別にそんな気にしてはいないです。
――まだ先ではありますが、秋の団体戦に向けて課題などはありますか
やはり2人しか(全日本に)上がれないという結果は残念ですけど、実力は自分が4年間いる中で今年が一番あると思っているので、試合に向けてしっかりと練習していきたいです。試合前の準備とかそういったことは全員で話し合って、みんなで勝ちに行きたいと思っています。
――最後に全日本に向けて意気込みをお願いします
全日本とかそういうのではなくて、一つの試合に向けてしっかり準備をして当日を迎えるという意識を持ってやっていきたいと思います。
安井奎祐(スポ3=茨城・水戸葵陵)
――全日本選手権(全日本)の出場権獲得おめでとうございます。まずは今大会への意気込みはどのようなものだったか、お聞かせください
3年目なので、優勝を目指すつもりで臨みました。トーナメントを見て、全日本選手権を懸けた試合の相手が強いのが分かっていたので、そこが勝負だと思っていたのですが負けてしまって。そこで気持ちが切れてしまって、ずるずると負けてしまいました。ただ結果として(出場権を)取れたので良かったです。
――今お話にもあった4回戦の相手、慶大の伊藤選手にはどのような印象をお持ちでしたか
力とスピードがある選手だというのは何度も見て分かっていたので、技で勝とうと思っていたんですけど、やはり跳躍力とかがすごくて、負けてしまいました。
――決まり手はメンでしたが、取られたときの状況を詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか
メンが来ると分かったので私は引いたんですけれど、それをしのぐほどの跳躍力で飛び込まれて。見切ったと思ったのですが、捉えられてしまいました。
――3回戦までは順調に勝ち上がりましたが、調子はいかがでしたか
悪くもなく、良くもなくという状態だったんですけれど、だんだん良くなっていきました。
――敗者復活戦では苦しい試合が続きました
そうですね、敗者復活戦の1試合目に気持ちが切れたまま試合に入ってしまって。正直自分でも入ったか分からないような微妙な技で負けてしまったのを引きずって次の試合に臨んで、(敗者復活戦の2試合目は)雑な試合になってしまいました。先に取ったのに、雑に次を取りに行ったらそこに乗られてしまって。最終的に気が抜けたところを打たれて負けるという最悪な形になってしまいました。/p>
――敗者復活戦の3試合目はいかがでしたか
精神的に2試合目の負けで参っていたので、あとはここで負けたら全日本はないと思うと思い切って飛び込むこともできなくなってしまって自分の試合ができず長引いてしまいました。
――他の試合場の試合が終わっていたので、応援も耳に入ったのではないでしょうか
そうですね、みんなからの拍手とかが聞こえて、励みになったし、絶対に負けられないと思いました。
――12月の新人戦はケガで欠場という形になってしまいましたが、今の調子はいかがですか
足のケガがひどかったので欠場してしまいましたが、今は少し痛むこともありますが大丈夫です。
――では、このような大きな試合は久しぶりのことでしたか
そうですね、大きな試合はかなり久しぶりで、秋の団体戦以来です。
――今大会のメンバーは部内戦で決めたのですか
私はもともと入る予定だったので部内戦はしませんでしたが、船橋さん(惇冶、社4=茨城・水戸葵陵)、岩部真佳(商3=神奈川・桐光学園)、中嶋優樹(法2=東京・国学院久我山)が今回部内戦で勝って出場することになりました。
――最後に、全日本への意気込みを聞かせて下さい
きょうでたくさん課題が見つかったので、もう一度一から頑張ろうと思いましたし、全日本で日本一を取れるようにもっと厳しい練習をしていこうと思います。