まず登場するのは、昨年からレギュラーとして活躍する小西波瑠(スポ2=大分鶴崎)と、今春鮮烈な大学デビューを果たした大型ルーキー太田麻友(スポ1=茨城・守谷)。ことし早大は、関東女子学生優勝大会(関東大会)でまさかの初戦敗退、全日本(全日本女子学生優勝大会)出場を逃す結果となった。悪夢の敗戦を目の当たりにし、感じたこととは――。今後早大の中核を担っていくことになる若手剣士たちにお話を伺った。
※この取材は11月4日に行われたものです。
「どんな相手でも一本を取れるように」(太田)
全日本でベスト8に輝き表彰される太田
――個人戦を振り返って
太田 関東(関東女子学生選手権)も全日本(全日本女子学生選手権)も中途半端と言ったら中途半端で、ベスト8以上にいけなかったので、悔しさの残る大会になったかなと思います。優勝を目指してたので悔しいです。
小西 1年生のときに全日本に出られなくて悔しい思いをして、ことしこそはと思っていたんですけど、あと一歩のところで最後に負けてしまって。しかも負けた相手が全日本で優勝して。それを見てて、まだ自分の力が足りなかったなと実感させられました。
――どこが足りなかったと思いましたか
小西 上段への対応があまり上手くなくて、そこが課題かなと思います。上段は苦手ですね。上段にも勝てないと個人戦で上がるのもきついなと思うのでしっかり対策していきたいと思います。
――太田選手は上段との相性はいかがでしょうか
太田 私は割と得意です。
――個人戦を経て、課題が見つかったということですが、秋の団体戦に向けてどのような取り組みをしてきましたか
太田 春は勝負に来ない相手から(一本を)取れなかったので、秋は新人戦(関東女子学生新人戦)に向けてどんな相手でも一本を取れるようにやっていきます。
――決め技はやはり引きメンですか
一同 (笑)
太田 引きメンだけじゃないようにいろんな技を増やしています。
――どんな技を増やしているのでしょうか
太田 ドウです。
小西 返しドウ(笑)
――強力な引きメンはいつ習得されたのでしょうか
太田 お父さんが剣道をやっていて、お父さんも引きメン得意なんですけど。お父さんの動画を見漁ってお父さんに教えてもらったり、男子の先輩にも引き技上手い人がいるので、真似てとりあえずやってみていました。
――実際に太田選手の引きメンを受けていかがですか
小西 避けれないですね(笑)。どうやって打っているのか教えてもらって練習もしてみたんですですけど、試合で出せって言われても難しいなって思うので、リスペクトしてます(笑)。
――小西選手は春以降、秋に向けてどのような稽古をしてきましたか
小西 メイジと一回戦で当たるって分かってからは負けないという気持ちをみんなで入れ直して頑張ってきたんですけど、私自身メイジ戦に出ることもできなくて、すごく悔しさの残るシーズンでした。
――部内選考もされたのですね
小西 夏合宿で関東団体のメンバーを決めたんですけど、一次選考から上がってきた人から、最終的には9人で2枠を争いました。そこでなんとか食い込んで、という感じだったので、ぎりぎりでした。
――先日、部内大会で太田選手は2位に輝いたそうですね
太田 相手が4年生の川上さん(川上ゆき女子副将、スポ4=熊本・菊池女)で仕方ないなって思ったので、来年は優勝目指して頑張ります(笑)
小西 私は茜さん(川﨑茜、文3=京都・日吉ケ丘)に負けてしまったんですけど、1年生のときも茜さんに負けてしまって。このままだと3年間茜さんに負けてしまうような気がするので、来年こそは(笑)
――関東団体ではお話にあったように、メイジに負けてしまいました
太田 公式戦では4年生とは1試合しかしていないので、もっと試合をしていたかったなっていう気持ちが一番です。
小西 メイジ戦は観て応援することしかできなかったんですけど、もう、本当に悔しかったです。その言葉しか出ないっていう感じです。
――ことしの早大は優勝を狙える戦力があったと思いますが、初戦でメイジに敗北してしまった敗因は何だと考えていますか
小西 メイジがいつも通りのオーダーではなくて、得意な人を当ててきていて、そのオーダーが当日まで読めなかったっていうのはあります。当日にびっくりしてしまったところがあって、動揺するなとは監督にも言われたんですけど、やはりみんな動揺していた部分があります。当たると思っていた相手を対策していたので。
――裏をかかれてしまったということですね
小西 練習試合とかで聞いていたオーダーで来るなって大体予想していたんですけど、違ったみたいです。
――関東団体では何か収穫はありましたか
太田 審判が一人だけ上げるような、惜しい技とかが何個があったんですけど、(他の審判の旗を)上げさせることができなかったので、中途半端な技でも全部一本にできたらチームの勝敗も変わってくると思います。
――関東団体で対戦した相手は高校の先輩でした
太田 一緒に出ていた先輩で、そんなに分は悪くなかったはずなんですけど、先輩の意地を見せられたっていう感じでした。
――小西選手はいかがでしたか
小西 メイジはやっぱり技が豊富だなと感じました。もうちょっと技のレパートリーを増やしていかないといけないなというのは感じました。
――先日の早慶戦では慶大を大差で下しましたが、振り返ってみていかがですか
太田 すっごい緊張しました。初めてみんなが見ている、あんな雰囲気の中でやるっていうのはそんなに経験のないことだったので、緊張しました。
小西 私も剣風的に絶対前のポジションに置かれると思っていました。私と麻友が先鋒と次鋒かなと勝手に思っていたので、副将と言われたときに「マジか」と思って(笑)かなり予想外でした。でも、そのときに監督に何で副将に置いたかっていうのはしっかり話されて、絶対負けられないなと思って意地でやりましたね。
――監督は小西選手を副将に置いた理由は何だとおっしゃっていましたか
小西 関東のメンバー5人を前に置いて、そこで必ず勝ってきて、私が皇子さん(阪本皇子女子主将、スポ4=長崎・島原)につなぐっていうところです。私が粘り強くて、延長をどんなにやっても波瑠は負けないからそこに置いたって言われました。
――このチームで臨む試合は早慶戦で最後でした
太田 緊張はしたんですけど、終わってみれば試合を楽しめていたんじゃないかなって思いました。
小西 ケイオーは私たちが負けたメイジに勝って全日を決めていたので、ケイオーの後ろにメイジがいるじゃないけど、もう絶対に負けられないっていう思いがありました。皇子さんとゆきさん、4年生を最高のかたちで送り出せたのは良かったと思います。
――その他に印象に残った試合はありますか
小西 個人的には、河村さん(河村奈穂、スポ3=大分鶴崎)が3位まで上がった関東女子学生選手権と、杉村麻記さん(社3=茨城・守谷)があそこまで上がった全日です。いつも一緒に練習している先輩が活躍しているのを見て刺激になりました。
太田 関東団体です。入学して、早いかたちでこういう悔しい経験ができたのは、あとの3年間で絶対に生きるのかなって思いました。
「すごく刺激をもらっています」(小西)
寮も学部も同じだという二人。終始笑顔で質問に答えて下さりました
――太田選手は大学生活には慣れましたか
太田 はい、慣れました。
――高校との違いはありますか
太田 1限が3つしかないことです(笑)。高校は毎日1限があったので、今ずっと楽です。
――そもそも早大を選んだ理由は
太田 ワセダの剣風が、前に攻めていくみたいな剣道で。高校の時に大学の試合を見た時に、(ワセダの選手が)勝ち負けじゃなくて前に向かっていく剣道をしてらっしゃるのを見て、自分もこういう剣道を目指していたので、早大だったらそれが極められるのではないかなと思ったからです。
――小西選手は、後輩ができたことで何か変化はありましたか
小西 そうですね。基本的に毎年女子は5、6人しか入らないのがなんと11人入ってきて、合宿までに誰かしら辞めちゃうんじゃないかなと思っていたんですけど、全員しっかり辞めずについてきて。私は今まで高校の時は後輩が1人とか2人とかしかいなかったので、差がありすぎてびっくりなんですけど、今はすごくにぎやかで。後輩もどんどん強い子が入ってくることによってすごく刺激をもらっています。負けていられないって感じです。
――1、2年生はそれぞれどのような学年ですか
太田 1年生は、一人一人の個性が強くて、楽しいです。とりあえずノリノリって感じです。
小西 2年生は本当に仲が良いです。誰とでも気が合うという感じです。
――お互いの第一印象は
太田 中学校の時から知っていて、何この人って思って(笑)。強すぎて。
小西 私もこの子と、中学の都道府県大会の前の練習試合でよく行ってたりしていました。一緒の大学って聞いて最初はびびってました。高校の時のインターハイでも見たことがあってめっちゃ強かったので(笑)。
――今はどのような印象ですか
小西 今は寮も一緒なんですよ。学部も一緒なので、全部一緒って感じです(笑)。
太田 頼りになる先輩です。
――お互いの剣道についてはどのような印象をお持ちですか
小西 今までやってきた人の中で、本当に一番強いと思います。
太田 波瑠さんは、ワセダの剣道に忠実で、向かっていく剣道で、その必死さっていうのがかっこいいなと思うし、見習わなきゃいけないなと思います。
――剣道を始めたきっかけは何ですか
太田 家族が、私以外全員剣道をやっていたので、私も始めなきゃいけないのかなと思って(笑)。
小西 私は、姉が最初にやっていて、元々は違う競技がしたかったんですけど、親に兄弟で違う競技をしたら面倒くさいから、新しい防具を一式買ってあげるから剣道しなさいって言われて始めました(笑)。
――剣道の魅力はどういった部分ですか
太田 他のスポーツだったら、たぶん年配の方とやると若い人が勝ってしまうみたいなのがあると思うんですけど、剣道はそういうのじゃなくて、逆に年配の方にぼこぼこにされることがあるので、幅広い年齢層の方々と交流できるのが剣道の魅力なんじゃないかなと思います。
小西 剣道を初めて、全国に沢山友達ができたし、辞められないないですよね、依存性がある(笑)。一本取る楽しさとか、勝てたら楽しいし、本当に楽しいと思います。
――趣味などはありますか
太田 買い物です。本当に買い物ばかりしてお金が無くなります(笑)。
小西 1年生の時は私も結構外に出ていっぱい買い物したいみたいな感じだったんですけど、2年になるとバイトもするようになってから、寝るのが一番幸せです。寝て、おいしいものを食べに行くのが楽しいです。たまにおいしいものを食べに行って、時間があるときはゆっくりするという感じです。
――バイトはお忙しいですか
小西 そうですね。後輩がたくさん入ってきたので、頑張らないと(笑)。
「自分の姿で周りを引っ張っていけるような人に」(小西)
早慶戦での小西。持ち味の前へ向かって行く剣道で勝利に貢献した
――ここからは今後についてのお話をうかがっていきたいと思います。4年生がもうすぐ引退となりますがどのようなお気持ちで送り出したいですか
太田 送り出すとかいう立場ではないんですけど、普通にさびしいです。4年生の先輩は面白い方ばかりで部室とかでも4年生の先輩のおかげで楽しい雰囲気だったので、さびしいから行かないでって感じです(笑)
――1年生という立場だと4年生に対してかしこまってしまうこともあると思うのですが、4年生の方からコミュニケーションを取ってくれるのでしょうか
太田 そうですね。私からも行きます(笑)
――小西選手はいかがでしょうか
小西 本当にさびしくて、どんどん上の学年になっていくのが嫌だなっていうのを実感しています(笑)
――太田選手は、12月の新人戦で「優勝します」と以前おっしゃっていましたが、改めて新人戦への意気込みを教えて下さい
太田 優勝します(笑)。去年から4年生とかとも一緒に出ていたっていうのもあるので、何とか自分が勝って、どういうオーダーになるかは分からないんですけど、去年から出ている波瑠さんとか私が勝利してチームに貢献できればなと思います。
小西 最後の新人戦になるので。去年、最後に私がやらかしちゃって負けたっていうのをまだ引きずっているのでリベンジですね。
――この大会では2年生がチームを引っ張ることになります
小西 ちょっと不安なんですけど、心強い後輩がたくさんいるので。メンバーがやっと決まったので、その7人でしっかり勝ちにいきたいと思います。
――新人戦が終わったら公式戦は春までなくなりますが、その期間、どのような意識で稽古に臨みますか
小西 ワセダは3カ月冬の期間オフなんですけど、体育大学とかはその期間も練習しているところが多いと思います。そういうところで置いていかれたら意味がないので、しっかり自主的に稽古に取り組みながら、楽しむところはしっかり楽しんで気持ちを入れ替えて、3月1日の開始のときに他の大学に後れを取らないように自分たちでやっていきたいと思っています。
太田 大学生の冬のシーズンの過ごし方がまだ分かっていないので…
小西 めっちゃ長いよ(笑)
太田 (笑)。分からないんですけど、大学生なので遊ぶところはしっかり遊んで、練習するところは練習をして、オンとオフの切り替えをしっかりつけて、また同じ悔しい思いをしないように春を迎えられたらなと思います。
――今後お二人は部の中心を担っていくことになるかと思いますが、どのような役割を果たしていきたいですか
小西 前に先生にも言われたんですけど、自分の姿で周りを引っ張っていけるような人になれって言われたので、それができるようにしていきたいなと思います。自分が頑張っている姿を後輩とかに見せてしっかり引っ張っていきたいです。
太田 私はまだ引っ張っていくような学年ではないので、引っ張っていかれる先輩の手助けじゃないですけど、ついていくのはもちろん、支えていきたいです。
――最後に、来シーズンに向けての意気込みをお願いします
小西 個人は3年目こそ必ず全日に出て、また新しく後輩も入ってくるので、活躍している姿をしっかり見せたいです。団体戦では、ことしのこの悔しさを絶対に晴らすっていう気持ちをもってやります。個人と団体も必ず全日本に出るようにしっかり頑張りたいと思います。
太田 個人も悔しい思いをしたのですが、やはり団体の悔しさは本当に大きかったので。来年は個人もそうなんですけど、団体で全日本に出て、杉村麻記さんが先輩で高校のときにお世話になったので、先輩たちに恩返しするためにも頑張ります。
――ありがとうございました!
(取材・編集 佐藤諒、下長根沙羅)
フレッシュな二人が選んだのは「初心」の言葉でした!
◆小西波瑠(こにし・はる)(※写真左)
1997年(平9)3月3日生まれ。身長164センチ。O型。大分鶴崎高出身。スポーツ科学部2年。
剣道には依存性があると話していた小西選手。剣道をするのが楽しくて仕方がないご様子でした。新人戦でも試合を楽しんで、のびのびと自分のパフォーマンスを発揮してくれることでしょう!
◆太田麻友(おおた・まゆ)(※写真右)
1997年(平9)10月25日生まれ。身長164センチ。A型。茨城・守谷高出身。スポーツ科学部1年。小西選手から「今まで剣道をやってきた中で一番強い」と評された太田選手。初めての対談取材にも、終始笑顔で丁寧に答えて下さりました。新人戦では、憧れだった『前に攻めていくワセダの剣道』を見せてくれるでしょう!