まさかの初戦敗退となった関東女子学生優勝大会(関東大会)からおよそ1カ月。「全日本(全日本女子学生優勝大会)に出られなかった悔しさを晴らそう」(阪本皇子女子主将、スポ4=長崎・島原)と臥薪嘗胆(がしんしょうたん)の思いを胸に稽古に励み、早慶対抗女子試合(早慶戦)に臨んだ。声援の飛び交う中、行われた今大会。延長戦までもつれる試合が続出するが、地力で勝る早大が接戦をものにし、中堅戦終了時点で早くも優勝を決めた。その後も早大のペースで試合を運び、大将の阪本がコテとメンで相手を下して試合を締める。結果、宿敵を6-1で破り、引退試合を快勝で飾った。
ことしの慶大は、関東大会で早大が初戦で敗れた明大を下してベスト8という好成績を収めているだけに、地力で勝るとはいえ苦戦も予想された。しかし、そんな不安とは裏腹に、一方的な試合展開となる。先鋒を任された杉村麻記(社3=茨城・守谷)は、居付いた相手のコテに飛び込み一本勝ち。すると、次鋒の太田麻友(スポ1=茨城・守谷)も先輩に続き勝利を挙げる。スカウティングで相手の癖を見抜いていたルーキーは、大振りにつられて相手が手元を上げた瞬間に、「狙っていた」とコテを打ち抜いた。五将戦では、川﨑茜(文3=京都・日吉ケ丘)が積極的に間合いを詰める強気な剣道を披露。反則を取られても焦らず、近間からのコテメンでメンに乗り、慶大に王手をかける。勝てば優勝が決まる中堅戦、河村奈穂(スポ3=大分鶴崎)は「ここで絶対に負けられない」と引きドウで相手を仕留め、優勝を決定づける4勝目を挙げた。
杉村。自身初となる早慶戦で躍動し、チームを勢いづけた
三将の川上ゆき女子副将(スポ4=熊本・菊池女)は、全日本女子選手権出場経験者の安井悠(慶大)と好勝負を演じた。引きメンを決めた後、逆ドウを抜かれるなど、互いの打ちがさえる熱戦に。しかし、延長戦の末、中間間から再び逆ドウを抜かれ、敗北。続く副将戦でも、小西波瑠(スポ2=大分鶴崎)が「瞬間的に今だと思いました」と諸手ツキをさく裂させるも逆ドウで追い付かれ、延長戦へ。だが、焦ることなく引きドウを決め5-1で大将の阪本女子主将にバトンを回す。阪本は、出コテで先行に成功するも、直後に合メンで一本を取られスコアをタイに戻される。しかし、つばぜり合いから「無意識に身体が動きました」(阪本)と無心で放った引きメンが決まり、ここで勝負あり。それぞれが持ち味を発揮して慶大を圧倒し、連勝記録を13に伸ばした。
優秀選手賞を受賞し、有終の美を飾った阪本
この秋は、関東大会で初戦敗退の憂き目に遭い、全日本への出場を断たれるという悔しさの残るシーズンだった。しかし、このメンバーで臨む最後の試合となる今大会で快勝し、「終わり良ければすべて良し」と阪本女子主将は笑顔でことし1年間を振り返る。「最後に勝って終われて本当にうれしい」と川上女子副将も頬を緩めた。これからは3年生が部の中心を担うことになるが、次期主将の川﨑は「(全日本に)出れなかった先輩方のためにも絶対全日本へいって勝ち上がって、先輩方に喜んでもらえるようなチームにしたい」と気合十分。充実した戦力を存分に生かし、らいねんこそは奪冠を果たしたいところだ。直近の大会は、12月の関東女子学生新人戦。ことし最後の大会で結果を残し、来季に向けて弾みをつけられるか。下級生の奮起に期待したい。
(記事 佐藤諒、写真 久野映)
満面の笑みで集合写真
結果
○早大6―1慶大
先鋒 杉村 コ― 前園
次鋒 太田 コ― 馬場
五将 川﨑 メ― 小林
中堅 河村 ド― 福沢
三将 川上 メ―ドド 安井
副将 小西 ツド―ド 佐々木
大将 阪本 コメ―メ 竹内
優秀選手 阪本、安井(慶大)
コメント
阪本皇子女子主将(スポ4=長崎・島原)
――本日は引退試合でしたが、どのような思いで臨みましたか
全日本(全日本女子学生優勝大会)に出れない悔しさを今回で晴らそうっていう気持ちで臨みました。あんまり引退とか考えてなかったので、試合が終わった後に寂しくなってぶわっときました。
――早大の勝利が決まった状態で出番が回ってきました
決めてきてくれるんだろうなとは思っていたのですが、どんな状況でも私は大将なので、取らなくちゃいけないなって思っていました。
――慶大は早大が関東で負けた明大に勝っていましたが、対策はしましたか
相手は前々から分かっていたので、ビデオで研究しました。でも、早慶戦は気持ちの戦いになると思うので、全日本に出られない分の悔しさを一人一人晴らす試合をするって話してきょうの試合に臨みました。
――早い時間帯に出コテを取るなど、よく動けていたのではないでしょうか
あんまり調子は良くなかったんですけど、早慶戦は応援の距離も近いのでそれが力になりました。
――2本目の合メンは阪本選手のメンが決まっていたように見えましたが
(入っていたと)思いました(笑)。相手の一本になっちゃったので、ここからどうしよう、やばいと思ったんですけど、みんなを見て気持ちを落ち着かせて次にいきました。
――引きメンは狙って打ちましたか
いえ、全然。無意識に身体が動きました。打ったのも覚えてないです。
――引退試合で優秀選手に選ばれ、有終の美を飾りました
みんながいて、今まで一年間支えられてキャプテンをやってきたので、本当にみんなには感謝しかないです。
――後輩の試合を見るいていかがでしたか
泣きそうでした。でも、こんなに泣いてたら試合できないと思ってそこは切り替えました。
――来年も期待できますね
そうですね。みんな頼もしい後輩たちです。
――ことしは悩むこともあった一年だったと思いますが、振り返っていかがでしょうか
終わり良ければすべて良し、ですね。今の気持ちはすごく良いんですけど、関東の悔しさとかは今後も心の中に残っていくのかなって思います。私は就職して剣道するかはまだ分からないんですけど、今後の人生の糧になればいいなと思います。
――後輩へ言いたいことやアドバイスはありますか
みんな強いので。次の一年は川﨑(茜、文3=京都・日吉ケ丘)が主将になるのですが、すごく頑張り屋さんで努力家でいい子なので、しっかり川﨑に付いていって欲しいなと思います。
川上ゆき女子副将(スポ4=熊本・菊池女)
――本日の試合を振り返っていかがですか
最後に勝って終われて本当にうれしいです。関東で負けてしまって全日本がなかったので、何が何でも早慶戦は優勝しようって言ってたんで、勝ってすごくうれしいです。
――早大の勝利が決まってからの出番となりました
前の河村(奈穂、スポ3=大分鶴崎)が本当にしっかりした試合をしてつないでくれたんで、ほんと強くなったなと思いながら安心して自分の試合に臨めました。
――ご自身の試合を振り返っていかがですか
結果的に負けてしまったんですが内容は全然悪くなかったですし、自分の4年間やってきた力は出し切れたかなと思うので悔いはないです。
――応援はいかがでしたか
ほんとあんな風に応援してくれると気分が上がりますね。うれしかったです。
――後輩に向けて伝えたいことは
ことしは関東で負けて悔しい思いをさせてしまったので、男子の早慶戦(早慶対抗試合)まであと1ケ月しか一緒に稽古できないんですが、その中で伝えることは伝えていきたいです。らいねんは必ず日本一になってくれるよう応援したいと思います。
――試合後、阪本女子主将と抱き合う姿が印象的でした
広島(東洋カープ)の黒田(博樹)と新井(貴浩)をイメージしてやりました(笑)。あのシーンがめっちゃ好きだったんで、きょうは皇子(阪本)に抱き付こうって決めていました(笑)。
――最後にこの13連覇を振り返っていかがですか
ワセダの先輩方がずっとこうやって勝ってきたことは本当にすごいと思いますし、それを途切らせず次につなげたことは本当にうれしいですし、でもとにかくきょうのこの一勝が本当にうれしいです。
川﨑茜(文3=京都・日吉ケ丘)
――昨年の早慶戦と同じ相手との対戦となりましたが、相手の印象はいかがでしたか
去年は自分の気持ちに負けてしまって結果も負けてしまったので、リベンジだなという気持ちで今回は臨みました。
――ご自身の試合を振り返っていかがですか
竹刀を落として反則をもらってしまったのですが、その時にここで焦ったら去年と同じだと思って気持ちを落ち着かせてできた点で、去年から成長できたなと自分で思いました。
――応援の声は試合中も聞こえましたか
みんなが後ろで応援してくれている声が聞こえて力になりました。
――本大会で4年生は引退となります
昨日のミーティングで、4年生と出る試合はこれが最後で、この大会を迎えたくないって話になるくらい先輩の引退の寂しさでいっぱいでした。でもやるしかないって気持ちできょうの試合に臨んで、これからは4年生と一緒じゃなくて自分たちが引っ張っていくっていう実感はまだないのですが、しっかりしないとと思います。あとはやっぱり全日本へ行けなかったという悔しさがまだ残っています。
――川﨑選手は来季主将を務められると伺いましたが、どのようなチームを作っていきたいですか
まずはことし全日本に出れないというすごく悔しい思いをしたので、出れなかった先輩方のためにも絶対全日本へいって勝ち上がって、先輩方に喜んでもらえるようなチームにしたいです。
――春まで大きな試合はないかと思いますが、それまで強化したい点はありますか
12月に新人戦(関東女子学生新人戦)があるので、これからどういう風に1・2年生の気持ちを持っていくか考えていきたいです。やっぱり新人戦で結果が出ることで先輩方も喜んでくださると思うので、そのためにも私が1・2年生をしっかりまとめて引っ張って行きたいです。春になったら全部の試合が自分にとって最後の試合になってくるので、悔いの残らないようにしっかり鍛えていきたいと思います。
河村奈穂(スポ3=大分鶴崎)
――勝てば早大の勝利が決まるという場面での出番となりましたが、どのような気持ちで臨みましたか
前の3人が勝ってくれて、私が勝てば決まりだったんですけど、試合の流れとしては向こうが勝ったらどんどんおもしろくなってくるところだったので(笑)。でもやっぱここで絶対負けられないなって気持ちで臨みました。
――本大会で4年生は引退となりますね
先輩方が最後の試合ってことで、絶対笑顔で終わってほしかったので、自分のできることを精いっぱいやろうと思っていました。
――試合では、初太刀から思い切って飛び込んだように見えましたが、初太刀を狙っていたのですか
はい。相手の試合のビデオとか見て研究してて、狙えるかなと思っていました。
――来春まで大きな試合はありませんが、課題としていくことはありますか
パワーが足りないとの指摘をされているので、しっかり体が崩れないように鍛えていきたいと思います。
杉村麻記(社3=茨城・守谷)
―初の早慶戦、トップバッターということでしたが、どのような気持ちで試合に臨みましたか―
やっぱりすごい緊張しましたが、みんなの応援が力になっていい結果が残せました。
――チームメイトの方々からはどのようなお言葉を掛けられましたか
先鋒なので思いっきりいっていいよって言われていて、もう勝ちしか見えてなかったです。
――去年は補欠として出場されて、どのようなお気持ちでしたか
去年は悔しい思いもあったんですけど自分の力不足を実感していたので、絶対ことしは出てやろうという思いでずっとやってきました。
――途中攻め込まれる場面もありましたね
あんまり気にしないで、自分のペースでやりました。
――最後はコテで決めましたが、狙っていたのですか
狙ってたといったら狙ってたので、そこを最後に決めれたのでよかったです。
――今年を振り返ってどうでしたか
個人では全国3位というタイトルも取れたんですけど関東の団体では負けてしまって、もう全日本には出られないのでそこがすごく悔しいです。でもその悔しさを次のタイトルに向けて、それで4年生に恩返しができるようにもっと頑張っていきたいと思います。
――来年に向けての意気込みをお願いします
最上級生になるのでチームをまとめていくのはもちろんのことですが、自分のこともおろそかにせず、もっと自分がポイントゲッターとして勝てるように頑張っていきたいです。
小西波瑠(スポ2=大分鶴崎)
――本日の試合を振り返っていかがですか
全日本で負けてしまってきょうが4年生最後の試合となるので、私は(前後が)4年生の間に挟まれたポジションだったんですけど、どんな状況で回ってきても勝ちで回そうと思っていました。
――調子はいかがでしたか
最初はすごい緊張しているのが自分でもよく分かって、とりあえずは思い切り突こうと思ったら一本取れました。
――ツキは狙っていたのですか
いや、瞬間的に今だ、と思いました。
――ツキを決めた後、ドウを取られてしまいました
ツキを一本取ってからは緊張も取れていつもの自分らしい剣道ができたと思います。
――対戦相手の攻略方法などは考えて挑みましたか
ちょっとビデオを見たりもしたんですけど、そこまで相手を研究するというよりもいつも通りの自分の剣道を心がけました。
――新人戦に向けての意気込みをお願いします
自分が中心となって引っ張っていかなければならないので、もう本当に関東で負けた悔しさを、新人戦で晴らして優勝したいと思っています。
太田麻友(スポ1=茨城・守谷)
――関東大会(関東女子学生優勝大会)から日程が空きましたが、本日までどのようなことを意識して稽古してきましたか
関東大会では、打ちの強さが足りなかったので、打ちの強さを強くしようと意識して稽古してきました。
――その成果は出ましたか
出ました(笑)。
――初めての早慶戦でしたが、独特の雰囲気の中で緊張はしましたか
感じたことのないプレッシャーだったので、めっちゃ緊張しました。
――あのコテは狙っていましたか
狙っていました。
――慶大は(関東大会で)早大が負けた明大に勝利していましたが、警戒はしていましたか
してました。
――対策はしましたか
対戦相手が分かっていたので、相手の動画をとりあえず見ました。
――スカウティングで相手の手元があいているから、あのコテを打とうと考えたのですね
はい、そうです。
――4年生は本日で引退となります
もっと一緒にチームを組んで試合をしたかったです。関東大会とこれで二試合しかできなかったので。しかもそのうちの一試合は負けてしまっていて、悔しいです。一緒にもっと試合をしたいなっていう思いがすごくあったので、今回も全力で勝って大将の阪本(皇子)さんに回そうと思ってました。
――次の試合は新人戦ですが、意気込みをお願いします
優勝します。