早大の勝利には、起爆剤として前衛で躍動する若い力が不可欠だ。最初に登場していただくのは、実力者ひしめく早大でレギュラーとして活躍する安井奎祐(スポ2=茨城・水戸葵陵)、秋山健太(スポ1=福岡大大濠)のお二人。1・2年生ながら欠かせない戦力として活躍し、早大の将来を担っていくことになるであろう若武者にお話を伺った。
※この取材は9月30日に行われたものです。
「ワセダを代表する」(安井)
2年生ながらレギュラーメンバーの中枢として活躍する安井
――今季を振り返っていちばん印象に残っている出来事は
安井 この前の関東大会(関東学生優勝大会)です。きょねんから関東大会、全日本(全日本本学生優勝大会)であまり上に上がれていなかったので、みんなことしの関東大会こそは上に上がりたいという気持ちで日頃からやってきて、それが結果につながって本当に良かったと思います。
秋山 大学入って最初に出た試合の関東個人(関東学生選手権)で負けてしまったことと、今回の団体戦が印象に残っています。最後は中大に負けてしまって悔しかったんですけれど、少しは大学の剣道に慣れてきたかなという感じです。
――全体的には、この半年はどのようなシーズンでしたか
安井 きょねんの関東大会でシードを逃してしまって苦しいところにいたんですけれど、今までより厳しい練習をしてきて勝ちに行こうって気持ちでずっとやってきたシーズンでした。
秋山 きょねんまで高校ですごく厳しい環境でやっていて、周りも強くて練習時間も長くてというすごく恵まれた環境で剣道をやっていたのですが、大学入ってからは稽古時間も短くてそんなに良くはない環境の中で、自分でどれだけ考えてできるかを意識してきたシーズンでした。大学は自由な分、自分でいろいろ考えてやっていくことが大事だと思っていて、ずっとそれを意識していたんですけれど、まだもっとできるようにならなきゃいけないなという感じです。
――お二人とも印象に残ったと答えて下さった先日の関東大会ですが、振り返って改めてどんな試合でしたか
安井 今までこのチームでの練習試合などもけっこう負けていたので、やっとあそこまで勝ち上がれて結果が出て、ほっとしたというのがいちばんです。その一方で優勝するには足りなかった部分も見えたので、これからが大事だと思っています。
秋山 自分も同じで、これまで負けていた分あそこで結果が出てよかったなと思いますし、でも自分が勝っていればもっと楽に取れた試合もあったと思うし、そこをもっと練習しないといけないと思います。
――それぞれ個人的に意識してきた部分はありますか
安井 私は前の方で出ているので監督からも、とにかく一本取って勝って後ろに回す役割を与えられていました。なんですけど最近ちょっと調子が良くなくて、逆に負けてしまったりして自分としてはまだまだだと思っていて、チームのみんなにも迷惑を掛けてしまったので、全日本までに何とかして調子を取り戻して、勝って貢献できるようにしていきたいと思います。
秋山 安井先輩と一緒で自分も取るポジションにいるので、しっかり一本を取れる剣道をできるように意識しています。その中で上下(メン・ツキと、コテ・ドウ)を打ち分けて特にコテが取れるように頑張っています。
――夏合宿を振り返っていかがですか
安井 ああ夏合宿。私と秋山は部内戦の前の日にもうメンバー入りが決まったので選考はなかったのですが、ワセダを代表するということでやっぱり部内でも負けられないですし、周りより一つ上のところで剣道出来るように意識していかないとと思っていました。
秋山 そうですね、選考の中で周りの人が悔しがっている姿をたくさん見てきたので、出られなかった先輩方や同期のためにしっかり頑張ろうって、絶対全日本取ろうって思いました。
「みんな剣道が好き」(安井)
寮の部屋も同じで仲がいいというお二人
――秋山選手は入学して半年が経ちましたが、大学の授業や稽古には慣れましたか
秋山 はい。
――高校剣道との違いはありますか
秋山 ゆるいです。遊ぶ時間もあって。
安井 髪も伸ばせるし、遊べるし。楽しいです。
――早大を選んだ理由はありますか
秋山 実は中央かワセダかで迷って。剣道をするなら環境的にもメンバー的にも中央がいいのですが、ワセダは名前もあり私の道場の先生もみんなワセダ出身なので、その後押しもあってワセダにしようと思いました。
――安井選手は後輩ができましたが、きょねんと変わったことはありますか
安井 高校の時みたいにガチガチでやっていないので、後輩も友達みたいに一緒に遊びに行ったりしているので、後輩ができたというより友達が増えたというような感じです。
――お二人は仲が良いのですか
安井 仲いいですよ、寮も一緒なので。
――お互いの印象についてお願いします。出会ったのは大学に入学してからですか
安井 高校の時から試合もやったことがあって知っていました。こいつのイメージは、坊主ですごい眉毛が太くて…(笑)。田舎もんっていう感じでした。私も田舎者なんですけど、こいつはザ・九州男児みたいな感じでした。剣道はすごい強かったです。
秋山 安井さんは中学校の時からずっと全国のトップクラスでやっている方なので、最初高校に入って試合をするときにびびり上がってボコボコにされて。最初の印象が怖かったなっていう(笑)。そのイメージだったのですが、大学に入ってから優しくしていただいてます。
――普段お二人で出かけることはありますか
安井 たまに遊びに行ったりします。練習が終わった後に食事に行ったりとか。そういうことはたまにします。
――1、2年生それぞれの雰囲気はいかがですか
安井 1年生は…みんな剣道好きだよね?
秋山 そうですね。1年生がいつも残って自主練しています。まあ、入ったばかりっていうのもあるんですけど、1年生は剣道好きですね。
安井 2年生は仲がよくて面白いって感じですね。
秋山 でも2年生も剣道好きですよね。
安井 まあ、そうだね。1、2年生はみんな剣道が好きで似たような感じです。
秋山 似てますよね(笑)。
安井 3年生だけちょっと特別な感じです。
秋山 強いですよね。
――オフの日はどのように過ごされていますか
安井 外に出かけるなら、買い物に行くか映画に行ったり、その後食事に行ったり。何もない日は寮に引きこもって、寮はたくさん友達がいるので何かしてるみたいな感じです。こいつはアウトドア派なのでよく外に出かけるんですけど。どこ行くの?
秋山 買い物です。お金使うことが好きなので。あとは友達の家が東伏見の寮の近くにあるんですけど、そいつの家の犬と遊んだりしています。
安井 名前なんだっけ。
秋山 コタロウです(笑)。
――最近はまっていることはありますか
安井 読書にはまってます。
秋山 まじですか。
――どんな本を読むのですか
安井 最近は『鹿の王』を読みました。いろんな本を読むんですけど。最近読書にはまってますね。
秋山 趣味とかないんですけど、この前やったのは、久田松(雄一郎、スポ3=佐賀・龍谷)さん、3年生の方なんですけど、一緒にダーツに行きました。私ははじめてだったんですけど、久田松さんは高校2年生からやられていて、強いってずっと自慢されてきたんですけど、2回とも勝っちゃって(笑)。ちょっと味をしめた感じです。
――夏休みも終わってしまいましたが、何か楽しかったことは
安井 夏休みは剣道部だったら、合宿が楽しかったです。練習だけじゃなくて、バーベキューとか一発芸とかそういうのがあって、すごい夏合宿楽しかったです。
秋山 夏合宿と漁に行ったことと、花火に行ったことと。高校の時にできなかったことができたので良かったです。
――夏合宿の一発芸ではMVPを決めると伺ったことがあります
安井 今年は、えーと。
秋山 デミアン(国教2=米・カリフォルニア州サンタバーバラ)さんです。
安井 そうだ、留学生でもう帰っちゃったんですけど、すごい面白いやつで。もうダントツでそいつが奪っていきました。すごい日本語も上手で、親しみやすい人でした。
――逆に夏休みにやり残したことはありますか
秋山 福岡に帰れなかったことです。
安井 そうだね、お前帰れなかったもんね。
安井 帰れなかったです。それ以外はないですけど。
秋山 自分は地元にも帰れたので、やり残したことは特にないです。
――剣道を始めたきっかけは
安井 まあ簡単に言うと、親に勧められたんですけど、その勧められた理由がケンカばっかりしててちょっと真面目になりなっていうことでやらされました。
――おいくつくらいからやっているのですか
安井 幼稚園です。すごいやんちゃだったので(笑)。小さい時から。
秋山 私は仲のいい友達とサッカーをしていて、その人が剣道にいったので、自分も剣道にいって(笑)。小学校1年からやってますね。
――お二人が考える剣道の魅力はどういうところですか
安井 小さい子から高齢者までできる武道、スポーツなので、それで色んな人と関わり合えることが剣道の魅力だと思います。
秋山 あんまり分かんないんですけど。まあ色んな人と関わりがあって、色んな繋がりができるのが良いところだと思います。
「思い切っていきたい」(秋山)
躍動感あふれる剣道が持ち味の大型ルーキー秋山
――順番前後しますが、全日本の後には早慶戦が控えています。
安井 ことしは強い1年生が2人ほど入ったので警戒が必要かとは思うんですが、ワセダにもこうやって(秋山ら)強いのが入っているんで別に脅威ではないし、何よりもまず全日本ってことに頭がいっぱいで。
秋山 僕も大学入るまで早慶戦ってあんま知らなくて(笑)。4年生最後の試合なので絶対勝ちたいっていうのはもちろんあるんですけれど、強い1年生2人ケイオーに入ってるんですけど絶対そこに負けたくないです。
――少し先になりますが、12月には新人戦も控えています。お二人は中心選手として活躍することになるかと思いますが、意気込みはいかがでしょうか
安井 ことしは全体的に見て他大に実力が落ちると思うので、もっと自分もしっかりしないといけないし周りにも強くなってもらわないといけないし、今はちょっと不安な部分もあります。とりあえず全日本なんですけれどそれが終わったらすぐ新人戦に向けて、1、2年生を強化していきたいと思います。
秋山 そうですね、代としては他の大学に比べてそんなに強くないっていうのが正直なところで。まあでも、実力としては確かにそうなんですけれどみんなで協力し、その中で私と安井先輩が取ってあとにつないでもらうという形で、チーム力で勝つしかないですね。その中でも新人戦までの間周りと一緒に強化して、勝つチームになれたらと思います。
――続いて全日本についてお伺いします。団体戦において、ご自身の役割はどういった部分だと考えておられますか
安井 私はたぶん五将で出場することになるのですが、チームとしては前の三人で最低でも0-0、良くて一本リードの状態で後ろに回せるのが理想だと思っています。後ろに強い先輩方が控えているので、最低でも引き分けで回せたら、良くて私か秋山か先鋒の山本さんが一本取ってっていうのが理想の形で、それができるようにしっかり頑張っていきたいと思います。
秋山 1年生なんで思い切っていこうかなと思っています。次鋒っていちばん取りどころだと思うので、勝ちを挙げられたらとは思うんですが、後ろに強い先輩もたくさんいるので思い切っていきたいです。
――全日本に向けてあと2週間を切りましたが、ご自身の調子はいかがですか
安井 私は関東の時が最低だったので、それに比べると少しずつ上がってきているので、このまましっかりといちばんいいパフォーマンスができるように頑張っていきたいと思います。
秋山 ぼちぼちです。本番になってみないとわからない部分もあるので、しっかり集中してその日にベストを持っていけるように今から調整していこうと思います。
――トーナメントが発表されましたが、対戦校の印象などいかがですか
安井 順当にいけば三回戦で鹿屋体大と当たるので、そこを勝てればひとつ山を越えた感じで上がっていけるんじゃないかと思うので、そこが勝負かなと思います。
秋山 そうですね、三回戦の鹿屋体大戦が大一番になるかとは思いますが、その前の近大もやっかいなチームだと思うので、足元すくわれないようにして、近大にも鹿屋体大にも勝って、そのまま優勝したいと思います。
――全日本で、どのような戦いをしたいとお考えですか
安井 関東大会ではチームとして戦えたので勝ち上がっていけたと思うので、全日本でもチーム一丸となって戦えば自分たちより強いチームにも勝てると思うのでそれができるようにチームを大事に戦いたいと思います。
秋山 同じようにチーム力でつないでつないで、粘り強く戦えたらと思います。しっかり勝つという気持ちを持って取り組みたいです。
――最後に一言、全日本への意気込みをお願いいたします
安井 今まで悔しい思いをしてきたので、全日本では絶対に優勝してその気持ちを晴らせるようにしっかり頑張りたいと思います。
秋山 高校の時から日本一まであと一歩のところで負けたりして悔しい思いをしてきているので、大学で日本一になって、今まで負けて悔しい思いをしてきた分も取り返せるように頑張りたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 久野映、杉山睦美)
左・安井『天下一』、右・秋山『福岡産・九州男子』
◆安井奎裕(やすい・けいすけ)(※写真左)
1996年(平8)4月3日生まれ。168センチ、67キロ。AB型。茨城・水戸葵陵高出身。スポーツ科学部2年。幼稚園の頃から剣道を続けているという安井選手。後輩のことを「友達みたい」と言いつつも、随所で先輩としての顔をのぞかせてくれました。いかにもスポーツ万能そうな印象と裏腹に、読書にはまっているというギャップも魅力。「優勝したい」と話す真剣な表情が印象的でした。
◆秋山健太(あきやま・けんた)(※写真右)
1997年(平9)8月15日生まれ。174センチ、68キロ。AB型。福岡大大濠高出身。スポーツ科学部1年。ワセダが誇る大型ルーキーとして活躍する秋山選手。迷いなく色紙に書いたのは「九州男子」の四文字でした。後から「男児」か、と気がつきましたがこれもご愛嬌。全日本では福岡産剣士の気概を存分に見せつけてくれるでしょう!