全日本女子学生選手権(全日本)の予選を兼ねた今大会。500名を超える参加者の中から全日本への切符を手にできるのはわずか28名という過酷な戦いに、早大からは7名の選手が挑んだ。その中で、ベスト4という好成績を残した河村奈穂(スポ3=大分鶴崎)、力強い剣道で他を圧倒した川上ゆき(スポ4=熊本・菊池女)、敗者復活戦にまわるも悲願の出場権をもぎ取った杉村麻記(社3=茨城・守谷)、鮮烈な大学デビューを果たした新人・太田麻友(スポ1=茨城・守谷)の4名が全日本出場を決める。今大会覇者をぎりぎりまで追いつめた阪本皇子女子主将(スポ4=長崎・島原)など他の選手もそれぞれ存在感をアピールし、早大の強さを存分に見せつけた大会となった。
早大勢で最初に全日本を決めたのは川上。危なげなく勝ち上がり、全日本出場を懸けた5回戦では「試合運びとしては完璧」と会心の試合展開で上段の強豪選手を圧倒し、勝利を収めた。期待の新星・太田は1年生とは思えない堂々たる活躍を見せる。勝てば全日本決定という5回戦で日体大の強豪選手・糸山を倒し会場を沸かせ、『早大の太田』の名を早くも大学女子剣道界に知らしめた。また、今大会を「一歩成長したなと感じられた大会」と振り返る杉村は、強化してきたというメンを軸に安定した勝利を重ねる。5回戦で敗れたものの、敗者復活戦を経て自身初の全日本出場権をつかみ取った。
鮮烈な大学デビューを果たした
今大会で最も成長を見せたのは河村。1年生時からこの大会に出場し団体戦でも活躍してきた選手だが、個人戦で全日本出場を決めたのは今回が初めてだ。1回戦から延長戦にもつれるなど決して楽な試合ばかりではなかったが、一つひとつ着実に勝ち上がる。とりわけ鬼門だったのは筑波大の実力者と激闘を繰り広げた4回戦。落とせば全日本はないというこの試合は体力的にも限界に近い大延長となったが、最後は「絶対に勝つ」という河村の情熱が勝ち渾身のメンを決めた。続く5回戦では、1本を先取された状態から巻き返して勝利を収め、ここでも河村の気持ちの強さが光った。準決勝で結果的に今大会覇者となった大亀(明大)に敗れたものの、選手層の厚い関東地区でベスト4という、全日本での活躍も期待できる成績を残した。
表彰される河村
「一戦一戦しっかり戦っていきたい」(太田)、「全日本本気で優勝したい」(川上)と全日本出場を決めた4名の気合いは十分。全国の大舞台でも、その実力を思う存分発揮し活躍してくれるだろう。また秋には団体戦を控えており、今季初の公式戦で全体として好発進したことしの早大には大きな期待がかかる。「今のメンバーだったら絶対(全国制覇)できる」(川上)と言うように、名門復活への確かな手ごたえを得た大会だった。ワセ女剣士たちの躍進から今後も目が離せない。
(記事 久野映、写真 佐藤諒)
結果
河村 ベスト4
川上 ベスト16
太田 ベスト16
杉村 5回戦敗退(敗者復活戦を勝ち抜き、出場決定)
川﨑茜(文3=京都・日吉ケ丘) 4回戦敗退
小西波瑠(スポ2=大分鶴崎) 4回戦敗退
阪本 3回戦敗退
コメント
阪本皇子女子主将(スポ4=長崎・島原)
――3回戦敗退という結果でしたが、どのように捉えていますか
組み合わせを見た時から3回戦がヤマになるだろうなと思っていたので準備はしていたんですけど、残念な結果に終わってしまってすごく悔しいですね。
――結果的にその選手が大会でも優勝しましたが、やる前から意識されていたということでしょうか
そうですね。小学校の時から知ってる有名な選手で。大学でも活躍されているので、気をつけていました。
――1、2回戦と連勝で、勢いにも乗っていたと思いますが
1回戦の時には、これが4年間で最後の個人戦ということもあってかなり緊張していて。動きがすごく硬かったんですけど、集中してできていたのでこのまま3回戦もいけるかなとは思っていました。
――3試合すべて延長戦となりました
個人戦では私は結構じっくり粘り強く試合をするタイプなので、4分間で決めようとは思わずに、最後に勝ちで終わることができればと思って試合を進めていました。
――大会を終えて何か見つかったことなどはございましたか
打ちの弱さや技の正確性とか、そういうところが上に進んでいく選手に比べてまだまだ劣るかなと思いますね。そこは今後、要改善です。
――本年度の主将に就任されてから、何か大変なことなどはございますか
4年生の中でも主将ということで、やはり部をまとめなければいけないなというのは常に思っています。1年生が11人も入ってきてくれてすごくうれしいんですけど、人数が増える分やはりまとめるというのも大変になってくるので。でもみんな一生懸命やってくれているので、特に悩んでいることとかはないです。
――主将としてはどういったお仕事をされるのですか
基本的に練習のメニューなどは男子の主将が組むので、女子が特別何かをするということはそんなにないですね。でも練習後の女子の集合などで目標を共有したりするので、そういうところが女子主将の仕事かなって思います。
――全員の前で話すのは得意ですか
いや、そんなに得意ではないんですけど、思っていることを伝えられるように一生懸命努力しています。
――主将として特別心掛けていることなどはございますか
『率先垂範』ですかね。やっぱり口だけだと嫌な主将じゃないですか。なので、自分がやっているところを見せなきゃいけないなと常に思っています。
――シーズンが開幕して、チームの雰囲気などは主将から見ていかがですか
1年生が入ってきてくれたこともあって全体的ににぎやかな感じで、みんなが「強くなりたい」という雰囲気でやれていると思うので、いい感じです。
――次の公式戦は団体戦になると思いますが
そうですね、次は団体戦に向けて。全日本に出る4名は全日本に向けて、他の者はもう団体戦に向けて頑張っていくというかたちになります。
――4年生として、最後の1年はどのようなものにしたいですか
完全燃焼で終わりたいです。ここ3年間で自分が満足いった1年というのはなかったですし、もちろん満足がいってしまうと成長が止まってしまうので良くないんですけど。やっぱり最後の1年なので悔いが残らないように、完全燃焼で終わりたいです!
川上ゆき女子副将(スポ4=熊本・菊池女)
――今シーズンに向けて、冬の間どのような稽古をしてきましたか
個人的に全日本女子選手権の強化合宿などが入ったりしていたので、充実した稽古はできていたと思いますし、詰めてやっていたかなと思います。
――どういった部分を伸ばそうと考えて稽古に取り組んできましたか
手元を上げなかったらある程度の試合をできるって監督に言われていたので、それをずっと意識してやっていました。特別何か新しい技を、というよりも、今やっていることをまとめる練習っていうのを心掛けていたのかなと思います。
――きょう、練習の成果を実感できましたか
初めて内容的にはすごく良かったなって自分で思っているので、本当に優勝したかったです。ああいうかたちで手元がふわっと浮いたところがまだ詰めが甘いなって思います。まあでも、少しずつは出ているのかなって思います。
――調子自体は悪くなかったのですね
そうですね。
――全日本出場権を勝ち取りました
とりあえず決まってほっとしていますし、全日本本気で優勝したいなって思っています。これから、今やっていることを詰めてやって、さらに監督の言うことを徹底してやっていければ日本一を獲れるんじゃないかと思っているので、頑張っていきたいと思います。
――印象に残っている試合はありますか
全日本が懸かった、上段の川添さん(国士館大)とやった試合です。練習試合でやったときは二本負けだったのでちょっと苦手意識があったんですけど、足を使ってやれていたので、試合運びとしては完璧だったかなと思います。
――上段に対する苦手意識は
基本的に得意なんですけど、川添さんは結構強いので。それで負けたこともあるのでちょっと嫌だなと思っていたんですけど、自分のペースでやれたので良かったと思います。
――ことしで最終学年ですが、どのような1年間にしていきたいですか
集大成ですし、良いメンバーもいるので、もちろん個人戦で日本一になることも目標ですけど、やはり一番は団体戦の全日本で優勝することが目標です。今のメンバーだったら絶対できるんじゃないかと思っているので、詰めてやっていくしかないなと思っています。
河村奈穂(スポ3=大分鶴崎)
――ベスト4という成績を振り返っていかがですか
1、2年生では全日本に行くことができず3回戦で負けてしまっていたので、今回は全日本に行くことを一番の目標にして頑張りました。
――具体的に意識していたことは
手元を上げないこと、中心を攻めることを意識していました。
――延長戦も多く体力的にも厳しい試合だったのでは
とにかく気持ちを切らさずに打てるところで打つというのを心がけました。
――特に印象に残っている試合は
4回戦で大西選手(筑波大)と戦った試合です。すごく強い選手で、高校時代も結構負けたりしていた相手でしたが、絶対勝とうと思っていました。
――トーナメントが出た時から意識されていたのですか
そうですね。しかも(全日本出場をかけて戦う)5回戦のまだ一歩手前のところで当たるので、ここで勝たなければ全日本はないということで、絶対勝ちたいと思っていました。
――全日本に向けての目標をお願いします
今回は取った技も結局メンばっかりで他の技が使えていなかったという反省点があるので、全国でも通用するようにもっと他の技も磨いていきたいと思います。
杉村麻記(社3=茨城・守谷)
――今日の試合を振り返って
初戦から強い相手と当たったのですが、自分らしい剣道ができたと思います。
――どういった点が自分らしい剣道だったのですか
上段(の構えを取って)で片手メンが決まったことがポイントだと思っています。
――初めて全日本を決めたということでご感想は
去年の新人戦から徐々に自分らしい剣道ができるようになったなと思っていて、メンを強化したのですがそのメンが決まってきて一歩成長したなと感じられる大会となりました。
――敗者復活戦に臨むときの心境は
最初はやばいと思ったんですが、同期にこれ負けたら(次の相手も上段の構えを取る選手なので)相上段だよと言われ、そうなる前に敗者復活戦の一試合目に勝つしかないと思いました。
――全日本への意気込みをお願いします
上を目指すというよりも1試合1試合を大事にして、自分らしい剣道で一本を取れるようにしたいです。
太田麻友(スポ1=茨城・守谷)
――本日がデビュー戦となりましたが、緊張はしましたか
きのうとかきょうの朝まで緊張していたんですけど、試合前になったらリラックスできました。
――調子はいかがでしたか
割と良かったと思います。
――部内でのメンバー争いが激しかったのではないでしょうか
厳しかったですけど、個人戦に出たかったので。その気持ちが強かったので、出られたと思います。
――全日本出場が決まりました
これは通過点だと思うので、1年生でも上位にいけるようにまた練習を頑張っていきたいと思います。
――印象に残った試合はありましたか
全日本決定戦の糸山亜美さん(日体大)です。試合でも勝ったことなかったので、勝てて良かったです。
――入学からおよそ1カ月半経ちましたが、大学には慣れましたか
まあまあ慣れました。
――最後に全日本に向けて一言お願いします
一戦一戦しっかり戦っていきたいと思います。