【連載】全日本直前特集『名門復活』 第1回 諏訪稜介副将×船橋惇冶×安井奎祐

剣道

 最初に登場するのは、諏訪稜介副将(スポ4=茨城・水戸葵陵)、船橋惇冶(社2=茨城・水戸葵陵)、安井奎祐(スポ1=茨城・水戸葵陵)の三人。この三選手には、共通点がある。それは、高校剣道界きっての名門・水戸葵陵高出身ということだ。同郷の剣士たちは、早大でいったいどのような思いで互いに切磋琢磨(せっさたくま)しているのだろうか。その胸中に迫る。

※この取材は10月14日に行われたものです。

「頑張りました」(船橋)

厳しい部内選考をくぐり抜け、団体メンバーを勝ち取った船橋

――まずは、今季の振り返りをお願いしたいと思います。個人戦を振り返ってみていかがですか

諏訪 関東(関東学生選手権)は他の同期と比べて少なくて2回目の出場で、ギリギリ全日本が決まって。全日本(全日本学生選手権)はどうしようもない結果で終わってしまって、ちょっと情けなかったっていうのが反省です。(今シーズンの)前半は個人戦という部分もあって団体じゃなくて良かったなっていうのが正直なところ。1、2、3年生のときからもっと個人戦を意識してやっておけば良かったなと後悔しています。

安井 自分は初めての大学の試合だったので挑戦するつもりで試合して、結果全日本に出られたので良かったなって思います。これからは上位に上がれるようにしっかり練習していきたいと思います。

――団体戦を振り返って

諏訪 情けない。試合後インタビューしていただいたときと同じなんですけど、本当に情けない結果で。いつも通りやればもう少し力のあるチームだと思っていたので、ああいうかたちで負けるっていうのは想定外でした。大将に回った時点で勝ったなと思ったので。ちょっと情けないなって思います。

船橋 私は1、2試合目は補欠で試合には出ていないんですけど、正直観ている側としても情けないっていうか、勝つものだと思っていたのに相手(流通経大)のペースにされて自分たちの剣道ができなくて。本当に情けない。

諏訪 ひどかったよな。

――何かメンタル面などで原因があったのですか

船橋 コンディションは別に悪くなかったですね。

諏訪 ないよね。やりずらいチームっていうのは意識していました。相手はぐちゃぐちゃくるのが普通なのに、それを嫌がった結果誰も取れなくて。で、最後まで回ってぐだぐだして取られたのかなって思います。

――安井選手はいかがでしたか

安井 私の相手も高校のときの先輩だったので何回かやったことがあったんですけど、思いっ切りできたっていう部分はあるのですが、やはり知られている部分もあって。なかなか自分の試合ができなかったです。

――今季印象に残っている試合は

諏訪 今季は関東個人の敗者復活、帝京大学の選手とやって私がツキをくらって負けた試合が印象的です。私しょっちゅうツキくらって負けているんですよ。日本武道館行くと。4年生にもなってまた同じようなことになったのかと思ってすごく印象に残っています(笑)。構えが他の選手よりも低くてこっち(のど)が空いていて、ほぼ無防備で入っていくから相手は簡単にきて。私が無駄に強気で入っていくのでくらってしまいます。いままでの4年間で反省していないのが悪いんですけどね(笑)。またかと、一人で面白がってたっていうので印象に残っています。

船橋 私は今季は2試合しか出ていないので印象に残っている試合といえば、(関東学生優勝大会の)敗者復活の1試合目に試合に出て二本勝ちしたことが嬉しかったです。

安井 関東個人で4回戦のときに負けた試合なんですけど、速攻で負けてしまって。大学のトップレベルの選手とやってみて、自分の力が足りないなって。

――安井選手は井手選手(国士館大)や林田選手(筑波大)といった有名選手とよく当たっていましたが、やはりそういった選手は他の選手とは違いましたか

安井 やっぱりスピードとか攻めの強さとか全然違って、まだまだ自分の力が足りないなと思いました。

――船橋選手は今季から団体メンバー入りを果たしました

船橋 個人戦に出たかったんですけど、部内戦で負けてしまって悔しくて。諏訪先輩も一緒のチームになろうって言っていたので頑張って葵陵の三人入れたので(良かったです)。頑張りました。

――安井選手は個人戦からずっとレギュラーとして活躍していますね

安井 どうなんだろう…まあ、うれしいなって。

諏訪 小学生かよ(笑)。

――諏訪選手は今季副将としてやってきていかがですか

諏訪 すごく面白くやっています。主将がどっちかというと真面目で剣道に対してすごく熱心で、練習後はすぐ自主練していて、生活が厳しい人間なので。下の者がたらたらしていたらしっかりとまとめないといけないのですが、よく分からないですけど私生活でも後輩が慕ってくれているので、すごく楽しく良いポジションでやれているなと思います。また、剣道もまとめてくれる者がいるので、その下でまず自分のことに集中できるっていうのと、従う中で後輩でも対等にできるっていうのが良いなと思っています。

――諏訪選手の副将ぶりはお二人から見ていかがでしょうか

船橋 頼りがいがあるっちゃ頼りがいがあるんですけど、たまに抜けているので、「え」ってなります。

諏訪 いつだよ(笑)。言ってみろよ(笑)。

船橋 集合でわけ分かんないこと言ってたり…。集合は練習の感想とかを幹部の人が言うんですけど、先輩がいきなり「UVERworldのライブのチケットが余っているので誰か欲しい人いますか」とか言い出して(笑)。

諏訪 あれは個人的にだから(笑)。言ったもん、個人的にって。

――安井選手から見ていかがですか

安井 面白いなって(笑)。最初怖いなっていうイメージがあったんですけど,試合とかでもずっと一緒にいて,面白くて。先輩なんですけど一緒に楽しくできる先輩だなと思います。

諏訪 上下があっても、9人の選手っていうのでやっているしそこには学年は関係ないと思うので,やっぱり試合のときとかも集中するところは集中して楽しくやるときは上下関係なくやっています。私も心掛けているところもあるし、いまはそれが自然になっています。

高校時代に迫る

対談は終始和やかな雰囲気で行われた

――この組み合わせで対談が決まってどう思いましたか

諏訪 4年生が4人で、2年生が3人で、3年が1、1年が1でちょっとまとまらない。で、ここがまとめられたってことは単純に高校が一緒だからだなっていう。早スポの雑なところを私は感じました(笑)。

――水戸葵陵の部の雰囲気はいかがでしたか

諏訪 剣道面でいったら日本一厳しいともいわれている練習なので、やっぱり練習中はすごく厳しくて。月一で合宿がありました。朝練やって、授業を受けて通いの者が私たちが住んでた寮に泊まって、全員が寮で夕方に合宿メニューをやるというのがあって。そのときに気を失うものもいたり、昔は救急車がしょっちゅう来てたり、とにかくきつい練習で。すごく剣道に特化された環境かなと思います。私生活は毎回練習が終わって、監督の先生がいなくなったらもういまのワセダ以上に皆友達のような感じでした。敬語を使うことはほぼなかったですし、寮でも楽しく、すごく良い環境だったと思います。

船橋 そうですね、練習はやっぱり正直きつかったですね。週1でトレーニングがあって、防具をつけないで階段ダッシュとか色々やるんですけど、それが本当にしんどくて、何してんだろうって思うときもありました。1年生のときが本当にきついんですよ。

安井 毎日、1年生のときは辞めたいとか、帰りたいとかそういうことしか思ってなくて、剣道が強くなろうとかいうことよりも、とりあえずもう1日1日をどうやって終わらせるかっていうことしか考えてなくて、死ぬ気で毎日毎日過ごしていました。雰囲気は、私のときは先輩後輩あんまり仲良くする雰囲気っていうか、怖かったなというイメージがあります。あんまり仲良くできなかったですね、一年生のときは。

――高校と大学の違いは何ですか

諏訪 高校生は剣道でいうと中学生が一段階上がったっていうのがあって、大学は大人の一歩手前っていうイメージとしてみるとやっぱりすごく大きな違いがあるかなって思います。身体がまず違うなっていうのがあって、高校生から上がっても細いままのやつもいるし、大学4年生と高校3年生を比べてもやっぱりどっちの代にしても最終学年の中でも竹刀を振るスピードや力強さであったり、体幹の強さとか剣道面においては身体つきは全然違うなっていうのを私は1年生のときに感じました。生活面は遊ぶ幅が増えたのかなって思います。

船橋 高校と比べて180度変わってますね。高校が私も寮だったんですけど、寮からすぐ目の前なんですよ、学校が。いま実家から通ってるんですけど、通学がめっちゃきついですね。あとは、基本楽しいですね、大学は。高校がきつい分、今は正直楽しいっていうのはありますね。やっぱりそこでメリハリをもってやらなきゃいけないと思うので、頑張りたいと思います。

安井 高校のときは、先輩であったり、先生であったり、叱ってくれる人や見てくれる人がいたんですけど、大学に入ったらほとんど自由になるので、自由になって楽しむことができるっていうこともあるんですけど、授業にちゃんと出席しないといけないとか、そういうのが疎かになっちゃうかなっていう感じですね(笑)。でも大学のほうが自由で楽しくていいです。

――安井選手はどうして早大に入学したのですか

安井 葵陵の先輩二人行ってるっていうのもあって、一個上なので高校のときも被ってて、すごく慕ってて。行きたいって話もずっとしてて、諏訪先輩も中学校の頃から知ってたのでそれで一緒に剣道できたらいいなと思っていて。他にも強い先輩がいっぱいいて、その人たちと剣道やりたいなって思って。それでワセダにしました。

――大学生活には慣れましたか

安井 慣れてきたかなって感じですね。

船橋 慣れすぎやろ(笑)。

諏訪 ほんとだよ(笑)。

――船橋選手はなぜワセダに入学しようと思ったのですか

船橋 それはかっこいい諏訪先輩がいたから(笑)。尊敬していたので、その背中を追って。私が3年生のときに教育実習でワセダの先輩が来たんですよ。ワセダの話を色々聞いてて、ワセダいいなあと思って。ちょうど3年生の諏訪先輩も行ったし。ワセダに行きたいなと思ったのは、勉強も剣道も両方充実できるじゃないですか。そういうところでやりたいなと思って、ワセダにしました。

――お互いの印象についてお聞きします。お二人からみて諏訪さんの印象は
いかがですか

船橋 良くいえば、メリハリがあって良い。悪くいえばチャランポランって感じですね。スイッチ入るときは入るんですけど、「ここで入る?」ってとこもあるし、「ここは入らないの?」ってときもあるんですよ。

安井 諏訪先輩は、最初、めちゃくちゃ大人な感じがあるなと思って。大人チックでかっこいいなあと思ってたんですよ。高校のときそう思ってて、大学入ったらむちゃくちゃふざける人で、それも先頭に立ってもふざけるような人だったんで。全然イメージと違うなっていうのが今の感じですね。

――高校と大学で変わられたのですか

船橋 変わってないですよね。

諏訪 高校のときは、上下よりも同期が仲良かったんですけど、大学入ると同期以外にも上も下も増えてきてその分部内で関わる人数も増えるので、色々な性格の部員が入ってくるので色々な人とふざけたいと思ってて、ずっとそうなっているのかなと思います。

――ではお二人からみて船橋さんの印象はいかがですか

安井 高校のときは短気ですぐ怒ってて、なんで怒ってんのって感じであんまり面白い人じゃないと思ってたんですよ。大学入ったら結構やんちゃな人に変わってて。高校では真面目でむすっとしちゃったりする人なんですけど、面白さが出てきたなっていう感じですね。

諏訪 1年生も同じ寮にはいたんですけど、高校のときは同期と仲良かったのでそんなに大学みたいに上下でまとまって遊んだりとか、お酒飲むみたいなこともなかったので。けど大学入ってから思ったのは、短気なとこと、あとこんなにやんちゃだっけなって思いました(笑)。あんまり絡んでなかったからかもしれないですけど。

――お話を聞いていかがですか

船橋 真面目っちゃ真面目でしたけど、寮のなかで一番はしゃいでたほうだと思うし、はしゃいでたよね?

安井 はしゃいでたけど、真面目な人やったなあって(笑)。

――ではお二人からみて安井さんの印象はいかがですか

諏訪 頭が悪いです(笑)。私が1年生のときは4年生とこんな絡めなかったし、4年生としても1年生とすごい絡めてるから、コミュニケーションも取れてて私はすごく良いと思います。やっぱり1年生としてはびびっちゃうところもあるだろうし、そういうのもなくしっかり絡んできてくれるっていうのは4年生的には嬉しいかなっていうのはあります。

船橋 さっきの言葉を返すようですけど、こいつも結構短気で、高校のときは何か言っても怒ってくるし、言い返してくるしっていうイメージでした。でも大学入ったら言ってこないし、大人になってるんですけど、試合会場で靴履き忘れちゃうとか、抜けてるところは変わってないですね。やんちゃですね、とりあえず。

安井 言われている通りだなって思いますね。

諏訪 今後の成長に期待ってとこだな(笑)。

――趣味はありますか

諏訪 読書と、母親がやってたピアノと、今後社会人になるので、ちょっと料理に挑戦してみたいなと思ってます。あと数独がすごく好きで、電車の中は読書か、それをやってます。家帰ったら、料理とピアノに挑戦しつつ、って感じです。

船橋 剣道とはいいたいですけど、正直飽きてきている部分もあるので、大学入って面白いと思うのは麻雀ですかね。部員同士で予定ある日にやってます。

安井 最近、料理をちょっとやってます。自分がしっかり料理を作らなきゃな、と思って最近料理の腕を磨いてます。

――オフの日は何をして過ごしていますか

諏訪 1日寝てるか、病院に行くか、お酒を飲むか、その3つくらいです。

船橋 同期で前の週とかに計画立てて、どっか行こうとか決めて、同期のみんなで遊びに行ったりしますね。買い物だったり、遊びですね。

安井 寝てるか、最近映画観に行ったりしてます。あんまりこれといってすることは特にないです。

「最後なのでやれることをやるしかない」(諏訪)

諏訪。最終学年ということで、全日本に懸ける思いは並大抵ではない

――では、剣道の方に話を戻したいと思います。早慶戦(早慶対抗試合)が近づいて来ましたが、早慶戦に懸ける思いは

安井 私は初めてなので、どういうものかわからないんですけど、先輩たちが絶対勝つという思いでやっているので私も絶対負けないという思いでやろうと思っています。

船橋 私は2回目の出場になるのですが、ことしは抜き勝負なので最低でも3人は抜きたいです。

諏訪 1、2年のときに負けていて3年のときに勝って、まだ抜き勝負で勝ったことがないので、最後だしやっぱり勝ちたいです。

――いま、お話の中に全日本が出ましたが、全日本に向けての仕上がりはいかがでしょうか

諏訪 4年生としては9人中4人と一番多いので、やっぱり全日本にしても早慶戦にしても4年生が意地を見せるところだと思っているので、4年生は残りの時間をどれだけ稽古に費やせるかっていうのが勝負だと思っているし、残りの後輩たちには思い切りやって今後の自分の自身にしてなおかつ日本一を狙ってもらえれば(いいなと思います)。最後は私たちに任せてもらって、それで絶対日本一になりたいと思っています。

船橋 まだ仕上がりとかは全然意識していないです。やっぱり大体調子上がってくるのって3日前くらいなんですよ。いまは正直何も考えないで落として上がっていくようにっていうところですかね。

安井 自分もコンディションとか考えるのは1週間前あたりで、まだそんなに自分のコンディションどうこうとかは考えていないので、とりあえず1日1日の練習を大事にしています。

――全日本ではどのような剣道をしたいですか

安井 全日本では多分自分が先鋒なので、勢いがつくように自分が思い切った試合をして、次鋒につなげられるような試合ができるようにしていきたいと思います。

船橋 自分が思う最高のプレーをしたいなと思っています。

諏訪 どのようなっていうのは言いづらいんですけど、私が責任感をもって試合をするべきかなと思います。関東のように全員が引き分けとかではなくて。あそこで私が取れていれば簡単に終わった話なので。やっぱり意地と責任をもって臨んでいきたいなと思っています。

――最後に一言お願いします

安井 まずは早慶戦ですよね。あっ、全日本(笑)。まずは全日本でしっかり全力を出し切って優勝を目指して頑張っていきたいと思います。早慶戦も勝てるようにしっかりやります。

船橋 ワセダの代表として試合に出るので自覚を持って(やっていきたいです)。厳しい戦いになると思うんですけど、そこに勝つチームが強いチームだと思うので、そこで日本一になって、後の早慶戦とか新人戦(関東学生新人戦)の後の試合にも良い流れでつなげていきたいなと思っています。

諏訪 とにかく最後なのでやれることをやるしかないなと思います。意地でも日本一になって、早慶戦も勝って次の代に引き継げればなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 佐藤諒、大石藍、久野映)

全日本への思いを色紙に書いていただきました!

◆諏訪陵介(すわ・りょうすけ)(※写真右)

1994年(平6)2月17日生まれ。172センチ、72キロ。B型。茨城・水戸葵陵高出身。スポーツ科学部4年。後輩のお二人から慕われている諏訪選手。対談での様子から、気さくな人柄がうかがえました。全日本でも、持ち前の勝負強さでチームに勝利を呼び込むことでしょう!

◆船橋惇冶(ふなばし・じゅんや)(※写真中央)

1995年(平7)8月5日生まれ。身長173センチ、体重90キロ。B型。茨城・水戸葵陵高出身。社会科学部2年。厳しいレギュラー争いを勝ち抜き、団体メンバー入りを果たした船橋選手。関東団体では、持ち前の攻撃力の高さで全日本出場権獲得に貢献しました。全国の舞台でも活躍を誓います!

◆安井奎祐(やすい・けいすけ)(※写真左)

1996年(平8)4月3日生まれ。身長168センチ、体重67キロ。AB型。茨城・水戸葵陵高出身。スポーツ科学部1年。会場で靴を履き忘れてしまうなど、抜けていると評されていた安井選手。しかし、剣道となれば一変、力強い姿を見せます。大型ルーキーの鋭い竹刀さばきに注目です!