全国制覇への道は甘くはなかった。4学年で挑む最後の大舞台、全日本学生優勝大会(全日本)。早大が目指すものはただ一つ。2010年以来遠ざかる頂のみだ。2回戦までを順調に勝ち上がり、3回戦も接戦を制し勢いに乗る。しかし準々決勝では惜しくも中大に敗れ、王座奪還はならず。ベスト8で大会から姿を消した。
初戦で圧勝すると、2回戦は関東学生優勝大会で敗れた東農大と対戦。五将・越智泰介副将(社4=愛媛・新田)がメンを先取すると続けて合いメンを制し、流れをつくる。続く中堅戦でも、久田松雄一郎(スポ1=佐賀・龍谷)が落ち着いた戦いを見せメンあり。最後は大将・西村慶士郎主将(スポ4=佐賀・龍谷)が2本勝ちで締め、リベンジを果たした。続く東北学院大戦、次鋒・小林直道(スポ2=東京・高輪)が「はじめ」の合図がかかった瞬間、相手のメンに飛び込み1本。続けてまたもメンを決め勝ち星を挙げた。中堅・久田松も勢いそのままに2本勝ち。大浦彰一郎副将(スポ4=大阪・上宮)が2本負けを喫したものの、最後はリードを守り本数差で準々決勝へ駒を進めた。
2本勝ちで早大に勢いをもたらした越智副将
早大に立ちはだかった高いカベ。それは全日本学生選手権優勝の梅ケ谷翔を擁する強豪・中大だった。次鋒まで引き分け緊迫した展開となる。五将・越智は梅ケ谷の激しい攻めに自分のペースをつかめず、一瞬の隙を突かれ引きメンを決められる。「絶対打たれると思っていた」と警戒していた技だったものの、相手が一枚上手だった。中堅戦を引き分け、迎えた三将戦。勝って振り出しに戻したい場面、大浦は序盤から得意のメンを狙う。しかし、同時に打ち合ったメンは紙一重で中大の1本。惜敗し、早大は窮地に立たされる。準決勝へ望みをつなぐには勝利しか許されない状況で、果敢にメンを打っていく副将・嘉数卓(スポ3=神奈川・桐蔭学園)。惜しい技も見られたが有効打とはならず時間だけが過ぎる。最後まで攻め続けたが、無情にも5分の経過を知らせる笛が鳴り響き、早大の敗北が決定した。一矢報いるべく最後の戦いへ挑んだ西村もメンを2本取られ、試合終了。日本一の夢は準々決勝で散った。
準々決勝敗退にうつむく選手たち
今大会で引退を迎えた4年生。全日本優勝の目標は達成できず、悔しさを噛み締めた。だが同時に、剣道部での4年間を「一番内容の濃い4年間」(西村)、「後悔はない」(越智)と振り返る。戦いを終えた剣士たちの表情は充実感に満ちていた。そして4年生の思いは後輩へ受け継がれる。「らいねん後輩たちが優勝してくれることを祈っています」(大浦)。この日の悔しさ、先輩の思いを胸に、早大剣道部は走り出す。再び覇者の座に返り咲く時を信じて――。
(記事 藤川友実子、写真 山本葵)
結果
1回戦 ○早大5―0香川大
先鋒 諏訪 コ―
次鋒 小林 コ―
五将 越智 メ―
中堅 久田松 メ―
三将 大浦 ドメ―
副将 嘉数 ―
大将 西村 ―
2回戦 ○早大3―0東農大
先鋒 諏訪 メ―メ
次鋒 小林 ―
五将 越智 メメ―
中堅 久田松 メ―
三将 大浦 ―
副将 嘉数 ―
大将 西村 メメ―
3回戦 ○早大2(5)―(4)2東北学院大
先鋒 諏訪 コ―コ
次鋒 小林 メメ―
五将 越智 ―
中堅 久田松 メメ―
三将 大浦 ―メメ
副将 嘉数 ―
大将 西村 ―メ
準々決勝 ●早大0―3中大
先鋒 諏訪 ―
次鋒 小林 メ―コ
五将 越智 ―メ
中堅 久田松 ―
三将 大浦 ―メ
副将 嘉数 ―
大将 西村 ―メメ
コメント
西村慶士郎主将(スポ4=佐賀・龍谷)
――大会を終えたいまの率直なお気持は
相手が強かったんですけど、最後の試合で4年生が負けたので後輩たちに申し訳ない気持ちと、4年生が負けたなら仕方ないなという気持ちです。悔しい気持ちもありますし、優勝したかったです。
――主将という立場から仲間の姿を見ていて何か感じることはありましたか
1回戦から動きも良くて、2回戦では関東(関東学生優勝大会)で負けた東農大に勝って、中大が勝負だったんですけど、やはり相手は強くて。後輩たちはこの1年間よくついてきてくれて、頼もしかったです。
――ご自身の試合を振り返っていかがですか
相手も強いので、自分の力を全部出し切れたわけじゃないですけど、いまできる力を出して、相手の方が強かったなと思います。
――東北学院大戦は2本負けすると代表戦に持ち込まれる状況でした
最高勝ちで、引き分けでもいけたら良かったんですけど最後に弱い部分が出て。2本負けしたら代表戦という有利な状況で回してくれたのでそこはなんとしても、1本は取られましたけど、2本目はやらない気持ちで臨みました。
――中大に一歩届かなかった部分はどういったところでしょうか
個人の力では互角に戦えるんですけど、やはり試合になると、毎回優勝争いをしているチームとは、試合で本当に自分の力を出し切れるかという差が中大とはあるのかなと思います。
――4年間の部活動を振り返って
全国制覇という目標は達成できなかったんですけど、毎日部活で同期を始め先輩後輩と一緒に全国優勝を目指してやってきて、結果はついてこなかったですけど、いろいろな部分で得るものは大きかったし、一番内容の濃い4年間でした。小中高大と(剣道を)やってきたんですけど、一番濃い時間を過ごせたかなと思います。
――主将としての1年間はいかがでしたか
みんなを引っ張っていく立場で、何もしていないんですけど、部員がよくついてきてくれて、本当に同期と後輩のおかげでやってこれました。
――後輩の選手へのメッセージをお願いします
1週間後には新人戦を控えていて、らいねんは頼りになる3年生がいるので、3年生にしっかりついていってほしいです。実力ではしっかり全国優勝を狙える人材がそろっているので、謙虚に練習に取り組んで、全国制覇を目指してほしいと思います。
大浦彰一郎副将(スポ4=大阪・上宮)
――今大会を終えたいまのお気持ちは
悔しいのですがもう終わってしまったので、らいねん後輩たちが優勝してくれることを祈っています。
――ご自身の試合を振り返っていかがでしたか
体の動きはよかったのですが、3回戦と準々決勝で負けてしまいました。最後の試合は自分から攻めていけたので内容的には悪くなかったんですけど、その前の2本負けした試合がとても悪かったと思います。
――具体的にはどの部分がよくなかったのでしょうか
自分が引き分ければチームの勝ちが決まるという状況だったので、受けにまわってしまった部分があって。そこをもっと厳しく攻めて、相手に打たさないということができればよかったなと思います。
――中大戦の敗因は
全体的には悪くはなかったんですけど、紙一重の差で合いメンを打ち負けたので、相手が強かったですね。相手の実力が上だったということで、(負けたのは)仕方がないなと思います。
――副将として過ごした1年間を振り返っていかがでしたか
後輩たちもしっかり4年生についてきてくれて、いいチームが作れたなと思います
。
――早大剣道部で過ごした4年間を振り返っていかがでしたか
すごく楽しかったです。今までの中で一番楽しかった4年間でした。
――後輩に向けてメッセージをお願いします
らいねんはぜひ日本一になってもらいたいと思います。来週から新人戦がありますが、それに向けて優勝できるように取り組んでほしいと思います。
越智泰介(社4=愛媛・新田)
――大会を終えたいまの率直なお気持ちは
悔しかったというのはありますけど、すっきりしています。後悔はないです。
――東農大戦では流れを変える2本勝ちでした
吹っ切れたところがあったので、2試合目が一番良かったですね。
――中大戦は相手の攻めが激しい印象でしたが、戦ってみていかがですか
中大戦の僕の相手は個人(全日本学生選手権)1位の選手で、若干緊張していた部分はありました。取られた引きメンも絶対打たれると思って警戒してはいたんですけど、やはり強かったですね。4年生として負けちゃいけない試合だったんですけど、借りを返せなくて悔しいです。
――早慶対抗試合後は不調が続いているとのことでしたが、きょうの調子はいかがでしたか
絶好調では全然なかったですね。不調と言えば不調のまま迎えたんですけど、まあまあというか、100点満点中50点くらいです。
――戦っている後輩の姿を見てどのようなことを感じましたか
頼もしい限りでした。ずっとこの1年間一緒に戦えて良かったです。
――4年間の部活動を振り返って
きょうの試合が終わったらもう剣道をすることはないんだろうなと思っていたんですけど、やはりこの4年間があっていまがあるので、この培ったものを次に生かせるように、ぼちぼち剣道も頑張っていきたいなと思います。これからは趣味程度と思っていたんですけど、やっぱり自分は剣道が好きなので地元に帰って、全日本選手権とかに出られるように頑張っていきたいと思います。
――副将としてチームを引っ張ってきた1年間はいかがでしたか
副将の務めを果たせたかどうかはわからないんですけど、本当に同期を含め、後輩たちが一緒についてきてくれたので、良いチームができたなと思います。
――後輩へのメッセージをお願いします
もっと練習しろ(笑)。もっと練習しなければ日本一にはなれないなというのはきょう感じたので、もっと練習頑張ってください(笑)。
嘉数卓(スポ3=神奈川・桐蔭学園)
――今大会を終えたいまのお気持ちは
悔しい気持ちでいっぱいです。
――ご自身の試合を振り返っていかがでしたか
2、3回戦はチームがリードした状態で自分にまわってきたので、自分の勝ち負けよりはチームの勝利につなげられるような試合をしようと思って試合をしました。
――中大戦はどのようなお気持ちで臨みましたか
とにかく勝たなければチームが負けてしまうという状況だったので、絶対に1本取るという気持ちで臨みました。
――引退する4年生への思いはどういったものでしょうか
約3年間、私生活から練習面までいろいろとお世話になって、その先輩たちのためにも最後は日本一になりたかったなという思いがありました。最後に私が勝てなくてチームの負けを決定させてしまったというのはとても心残りなのですが、この悔しさをらいねんに生かせるよう頑張りたいと思います。
――来季は主将になられますが、どのようなチームづくりをしたいですか
確実に(1本を)取らなければならない場面で取り切るということを全員が意識して、攻撃力や攻める力を持ったチームにしたいです。これから頑張っていきたいと思います。