3年越しの夢はかなうのか――。全日本女子学生優勝大会(全日本)で頂に立つこと。関東女子学生優勝大会以降、それを目標に掲げ、これまで稽古に励んできた。初戦は相手が上段の選手の多いチームだったため、苦戦を余儀なくされたが、続く2回戦では圧勝。早大の剣道を見せつけた。破竹の勢いで勝ち上がった早大を3回戦で待ち受けていたのは西の王者・立命館大。強豪相手に次峰戦まではシーソーゲームを展開するも、中堅戦からは全敗する。早大はベスト16に甘んじ、悔し涙をのむ結果となった。
全国の舞台で初めて矛を交えたのは福井工大。先鋒の髙橋萌(スポ3=栃木・佐野日大)は果敢に攻めるも相手の速い剣に対応できず敗北。出鼻をくじかれてしまった早大だったが、次峰の川上ゆき(スポ2=熊本・菊池女)が2本勝ちを収め、振り出しに戻す。中堅戦では阪本(スポ2=長崎・島原)が引き分け、気の抜けない状況に。このこう着状態を打ち破り、流れを引き寄せたのは畝尾奈波(スポ3=京都・日吉ケ丘)だった。メンを先取されたものの、「上段は得意な方」と語ったように落ち着いて2本取り返し、相手を下す。大将戦では菊池優香主将(社4=京都・日吉ケ丘)が勝ち星を上げてきっちりと試合を締め、3―1と早大の完勝に終わった。
逆転の2本勝ちを収めた畝尾
2回戦を順当に勝ち抜いた早大を3回戦で待っていたのは古豪・立命館大。関西女子学生優勝大会を制した強敵であり、菊池が警戒していると語ったチームだ。先鋒を務める川崎茜(文1=京都・日吉ケ丘)、次鋒の川上は強気に攻めるも引き分ける。白星がほしい早大であったが、中堅・阪本がまさかの2本負け。チームに暗雲が立ち込める。嫌な流れを断ち切りたい副将・畝尾は、相手選手と熱戦を演じる。しかし、力わずか及ばず黒星を喫した。現時点で2敗2引き分け。ベスト8進出の可能性はついえてしまった。試合には負けたとしてもせめて引退は勝利で華々しく飾りたい大将・菊池だったが、結果は2本負け。早大は0―3で立命館大に敗れ、大会から姿を消すこととなった。
今大会で引退となった菊池主将
「特別そんなに大きな差はなくて立命館大の方が勝ちたい気持ちが強かった」(阪本)と自己分析する剣士たち。大舞台への緊張もあっただろう。今後どのような大会でも不動心を保てるよう、精神面の強化が急務だ。また、ベスト16で終わったことに対し、「(4年生を)日本一にさせてあげたいと思って臨みました。それができなくてすごく悔しい」(川上)と、下級生は悔しさをにじませた。花を添えて引退させることができなかった4年生のためにも、若手たちは新人戦でリベンジを果たすことを誓う。
(記事 佐藤諒、写真 八木美織、進藤翔太)
結果
1回戦 ○早大3―1福井工大
先鋒 髙橋 ―メ
次鋒 川上 メメ―
中堅 阪本 メ―コ
副将 畝尾 ココ―メ
大将 菊池 メ―
2回戦 ○早大4―0長崎大
先鋒 川﨑 メメ―
次鋒 河村 メド―
中堅 川上 メコ―
副将 畝尾 ココ―
大将 菊池 ―
3回戦 ●早大0―3立命館大
先鋒 川﨑 ―
次鋒 川上 メ―メ
中堅 阪本 ―メメ
副将 畝尾 メ―メメ
大将 菊池 ―メコ
早大 ベスト16
コメント
菊池優香主将(社4=京都・日吉ケ丘)
――大会を終えたいまの率直な気持ちは
気持ちとしては悔しいですけど、みんなで戦えてすごく楽しかったです。
――大将として、前で戦う後輩の選手の姿を見てどのようなことを感じましたか
1回戦から最後の試合まで、強気で前に攻めていて、本当に勝ちたいという気持ちが表れていてすごく頼もしいなと思いました。
――きょうは全試合異なるオーダーでした。何か意図はありましたか
いまのワセダは7人全員の力がすごく拮抗(きっこう)しているので、その日の調子の良いものを出そうということで、全員試合に出すようにオーダーを決めていました。
――先日の取材でヤマ場だと語っていた立命館大戦ですが、どのような戦略で臨んだのですか
相手はつなぐところとかがうまいので、そういうところをつぶしていって、いつものワセダらしい戦い方で、いつも通りの試合をしようということで取り組みました。
――ご自身の試合は振り返っていかがですか
本当はもっと個人的にも、引き分けと最後は負けで終わってしまったので、勝てればなとは思ったんですけど、でも力は出し切ったかなと思っています。
――4年間の部活動を振り返って
私は引退してしまうんですけど、後輩たちはこれかららいねんもあって、良い選手が多く残っているので、私は引退してもすごく後輩の試合を見るのが楽しみだなと思います。
――主将としての1年間はいかがでしたか
主将をするにあたって悩んだこともあるんですけど、でも全員が私についてきてくれて、すごく良い環境で、良いチームで戦えて。本当にチームワークが良かったので楽しかったです。
――後輩へのメッセージをお願いします
まずは今月末に新人戦があるのでそれで優勝してもらうということと、あとらいねんは絶対に全日本女子学生優勝大会では優勝してほしいですね。
畝尾奈波(スポ3=京都・日吉ケ丘)
――今日の試合を振り返って
1、2試合目は私の相手は上段だったので、上段の相手は得意な方だったので、そこで確実に取れたらなって感じだったんですけど、最後の勝負どころで取れなかったところはまだまだ甘いところがあったと思うので、それを直していってらいねんはしっかりこの大舞台でそういう試合ができるように頑張りたいです。
――初戦は畝尾選手の勝利が試合の流れを変えたように思われましたが
流れが良かったのでそのまま自分のやりやすいようにできたので良かったと思うんですけど、最初に取られたところは取られないでいいとこで取られたと思うので、そこで取られないで確実に2本取れれば良かったと思います。
――上段選手が相手でしたが何か意識した点はありますか
上段に対しては待たないで足を止めずに、相手に対して常に前に前にって気持ちでやっていました。
――対長崎大戦は圧勝でしたね
さっきもいいましたが上段に関しては得意なのでその得意な部分が試合で出たかなと思います。
――対立命館大戦で先取されてしまったときどんな気持ちでしたか
結果負けてしまったのですが、必ず取り返すっていう気持ちでいきました。
――立命館大に負けた理由は何だと思いますか
勝利に対して(気持ちが)ワセダの方が立命館大に劣っていたかなと思うので勝ちにもっともっとこだわって来年からはやっていこうと思います。
――ベスト16という結果でしたが
ベスト16に関しては全然満足していないので、来年こそは優勝するのを目標に頑張りたいです。
――これで4年生が引退してしまいますが
4年生最後の試合でベスト16で負けてしまったことが申し訳ないし、4年生との試合をもっとしたかったんですけど。4年生との試合が楽しくて、4年生自体がいい人たちばかりで、もっと喜ばせて引退してもらえたら良かったと思います。
――来年主将を務めるとのことですがその点はいかがですか
今のままじゃ主将としてはまだまだ頼りない存在だと思うので、菊池主将がいる間に優香さんみたいになれるように頑張っていきたいです。
川上ゆき(スポ2=熊本・菊池女)
――まずきょうの1、2回戦を振り返ってみていかがでしたか
きょうは調子も悪くなかったし体も動いていたので1回戦、2回戦については勝って当たり前だと思っていました。
――3回戦についてお聞きします。まず一本目のメンを振り返ってみていかがですか
前半で相手に引きドウを触られる場面があったので、後半になれば相手もさらに狙ってくるだろうということでこちらも引きメンを一本だけ狙っていました。
――試合終了間際にメンを取られてしまいましたがそのときの率直な気持ちを教えてください
あそこの一本を防いで、私が勝っていたら流れももっと変わっていたと思います。自分のなかでは打たれてしまったという感覚はないんですけど、やっぱりあそこで相手に旗が上がってしまうというのはその前の攻めとかで下がってしまうところがあったからだと思うので、あの一本はすごく悔しいですね。
――きょうは4年生最後の大会でしたがそれに向けてどういう気持ちで臨みましたか
先輩方には本当によくしてもらっていて、本当に日本一にさせてあげたいと思って臨みました。それができなくてすごく悔しいんですけど、2年間ありがとうございましたっていう思いです。
――4年生の方々はどういう存在でしたか
稽古のときはビシッとやって、ふざけるときは一緒にふざけてくれて、たくさん食事にも連れていってくれて、本当に優しい先輩で大好きなので、もっと一緒にやっていたかったですね。
――新しい代になって、これからどういうチームにしていきたいですか
いまの4年生が抜けたら私とか阪本(皇子、スポ2=長崎・島原)とかが主力になってチームを引っ張っていかなきゃいけないと思います。いままでの試合を振り返ってみても負けた試合というのは私と阪本のどちらかが負けてしまっていることが多いので、私たち二人が勝っていかないとワセダの日本一は遠いのかなと思います。なので私たち二人でしっかり引っ張っていきたいと思います。
――次戦は関東女子学生新人大会(新人戦)となりますがそれに向けてどういう準備をしていきたいですか
チームの流れとしては悪いわけではないし、1、2年生も力があると思うのでそれぞれが取り組んでいる課題をしっかりやっていけばいいところまでいけると思います。やっぱり優勝したいですね。
――新人戦に向けての意気込みをお願いします
一戦一戦大事にみんなで戦って、優勝目指したいと思います。
阪本皇子(スポ2=長崎・島原)
――きょうの大会全体を振り返っていかがですか
4年生が最後だったのに情けない結果に終わってしまって、本当に申し訳ないと思います。
――4年生の最後の試合ということで、どのようなお気持ちで臨まれましたか
優勝を狙っていて、4年生の先輩方に最後に優勝旗を持たせて終わりたいという気持ちが一番でした。
――阪本選手にとって4年生はどのような学年でしたか
7人いらっしゃって個性豊かで、すごく良い先輩方でチームをまとめて引っ張ってくださりました。なので本当に申し訳ないです。
――1回戦では相手に先に1本取られましたが、その時の心境はいかがでしたか
その前に自分自身が惜しい技を何本か出していて、なかなか決め切れないところで相手に打たれたので一瞬焦りましたが、落ち着いてやれば取り返せるとは思っていました。
――相手は上段の構えでしたがやりにくさはありましたか
そうですね。私はあまり上段の選手が得意ではないので、相手が上段を取ったときには一瞬不安もよぎりました。でも上段の対策はしてきたので、自信を持って試合に臨みました。
――3回戦は強豪・立命館大との対戦でした。試合前の心境はいかがでしたか
優勝まで一つ一つ勝っていこうと思っていたので、特別立命館大を意識していたということはなかったですね。
――身長の高い選手との対戦でしたがやりにくさはありましたか
私も結構小さい方なので、大きい相手と対戦するときは間合いなどに気をつけていますが、きょうは全体的に体が思ったように動かなかったです。
――ご自身の3回戦での敗因はどこにあると思われますか
試合後にコーチの先輩にも言われたのですが、特別そんなに大きな差はなくて立命館大の方が勝ちたい気持ちが強かったのかなと思います。
――前回の特集では「攻めの剣道がしたい」とおっしゃっていましたが、それは今回できましたか
できていないですね。
――ご自身が課題に挙げるパワーについては
まだまだですね。全国の舞台ともなるといろいろな人がいるし、きょうみたいに大きい相手になると簡単に勝つのは難しいので、まだまだパワー不足だと思います。
――負傷している右足のかかとの具合はいかがですか
まだ全快というわけではないのでそこもしっかり治して、新人戦(関東女子学生新人戦大会)ではこういう思いをしないようにしたいと思います。
――ご自身の今後の課題は何ですか
パワーもそうですが、自分の思うように動けなかったのが今回の反省点なので、精神面も鍛えたいです。全日本(全日本女子学生優勝大会)ともなると緊張もするので、精神面は今後磨いていかなければいけないと思います。
――最後に新人戦に向けて意気込みをお願いします
きょねんは3位という結果だったのでことしは優勝できるように、期間は短いですが自分の剣道を見直していきたいと思います。
川﨑茜(文1=京都・日吉ケ丘)
――今日の試合について
1試合目は、2回戦目からの出場だったんですけど、すごく緊張していたので相手と相性が合って勝てたかなという感じはあります。2試合目は、1試合目で勝てたということもあり、緊張はほぐれていました。自分なりには頑張ったつもりですが、自分が勝てばチームが勝てたかもしれないという状況で1本取りきれなかったところは悔しいと思いました。
――団体で出場する全日本学生選手権(全日本)と個人出場の全日本女子学生選手権で緊張感の違いはありますか
団体は自分が負けても、後ろの先輩方がカバーしてくだされば勝つチャンスはありますが、1年生で個人出場し実績を残せているという面で絶対に勝って貢献しようという緊張がありました。
――引き技が得意とのことでしたが立命館戦ではいかがでしたか
相手が私の引き技に警戒していてやりにくい部分があったり、やっぱり、そこで違う技を出して勝つ人が本当に強い人だと思っています。私はまだまだ対策を練られてしまうと勝ちきれない部分が多いと思うので改善していきたいです。
――具体的にはどんなところを改善していきたいですか
個人戦出場で、対策されてしまっている引き技以外で前に出て行ける技を強化して練習していきたいです
――新人戦に向けて
今回悔しい思いをしたので、4年生のためにも絶対に優勝したいと思います。
河村奈穂(スポ1=大分鶴崎)
――初の全日本学生優勝大会(全日本)を終えて
全国大会ということで、他の強い大学とかを見て、上には上がいるんだなということを実感しました。
――ご自身の試合を振り返って
出るからにはしっかり前へ攻めることを監督にも言われていたので、前に出る試合ができたと思います。
――2本勝ちでしたが、決めた技への評価はいかがですか
1本目は得意技というか、思い切って飛び込めたメンだったんですけど、2本目はずっと練習してきた技が出せたので、それを出せてよかったと思います。
――先輩たちの戦う姿を見て何を感じましたか
取られてもしっかりと取り返す姿勢や、最後のキャプテンの優香さん(菊池)の試合は、負けてしまったけど、しっかり最後の試合としてどんどん前に攻めて良いところを打っていたので、さすが先輩だなと思いました。
――新人戦への抱負をお願いします
きょねん新人戦で先輩たちは3位になっていて、もう組み合わせも決まっていて強豪校がすぐ近くにいるんですけど、きょねんの先輩たちのようにしっかりチームでまとまって粘り強く戦っていきたいと思います。