学生日本一の剣士を決める第48回全日本女子学生剣道選手権(インカレ)。ことしは日本武道の聖地・日本武道館で開催された。全国からえりすぐりの選手たちが集まる中、早大からは畝尾奈波(スポ3=京都・日吉ケ丘)、川﨑茜(文1=京都・日吉ケ丘)の2選手が出場。畝尾は強豪・鹿屋体大の選手に延長戦の末惜しくも敗れ1回戦敗退となった。一方、ルーキー川﨑は次々と接戦を制し、決勝まで駒を進める。決勝で法大の選手に敗れるも堂々の2位となり、1年生としては初の快挙で大会を締めくくった。
2年連続でインカレ出場を逃していた畝尾にとって、初の大舞台となった。周囲の期待を背負う中、1回戦の火ぶたが切られる。初戦ともあって、序盤は互いに相手の手の内を探り合う慎重な姿勢を見せた。「緊張していた」と振り返るように、思うように攻めきれない展開が続き、勝負は延長戦へ突入。両者とも惜しい場面を多く作り、長期戦となった。しかし、延長戦の勝敗は1本、つまり一瞬で決まってしまうもの。畝尾の足が少し止まったところにすかさず相手のメンが決まり、試合終了。「自分らしい試合ができず悔しい」(畝尾)。畝尾の全国への挑戦は、1回戦で幕を下ろす結果となった。
新たな課題を見つけた畝尾。夏でどこまで修正できるか
1年生にしてインカレ出場となった川﨑。1回戦に臨むも簡単に全国の舞台では勝たせてもらえない。「1試合目は緊張した」と自分の間合いで打つことができず、延長戦へ。拮抗(きっこう)する展開の中、なんとかメンを決め2回戦に進出。その後2回戦、3回戦と徐々に緊張もほぐれ勝利し4回戦へ進む。4回戦の相手は渡邊タイ(日体大)。関東の覇者でもある渡邊の胸を借りる気持ちで挑んだ川﨑だったが、前に出てくる相手に終始押される展開に。そのような状況でも幾度もピンチをくぐり抜け、この日3度目の延長戦に持ち込む。「体力的には自信がある」と絶対に諦めず奮闘した。20分を越える熱戦の中、ついにチャンスが訪れる。相手が引いたところを見逃さず、すかさず飛び込みメン。これが見事に決まり、勝負あり。この時点でベスト8。しかし川﨑の快進撃は止まらなかった。続く準々決勝では、前の試合で2本勝ちし勢いのある相手を引きメンで破り、準決勝ではこの日初の出コテで勝利。決勝の舞台へ駒を進める。会場にいる全ての人の視線を集める中、最後の決戦が始まった。序盤は攻めの姿勢で相手を圧倒するも、その後は一進一退の攻防となり、またも延長戦へ。この日7試合中6試合が延長戦となったが、川﨑が下を向くことは決してなかった。しかし延長戦が5分を越えたところで互いに1本決まりそうな場面を作るも決めきれない。そして、会場が少し落ち着いた時だった。相手のドウがきれいに決まり審判の旗が全て上がる。惜しくも敗戦となり「力の差が大きくあった」と語るも、2位という結果には「信じられない」とうれしさをのぞかせた。
果敢に相手を攻める川﨑
今回の大会での2人の収穫は大きい。畝尾は「攻め切る姿勢」をさらに追求するという課題を見つけ、川﨑は大舞台で最後まで戦いぬくという貴重な経験をした。2人はすでに次の目標、全日本女子学生優勝大会への出場に向けてスタートを切っている。今回の収穫を早大剣道部に還元し、団体としてさらに成長してくれることを期待したい。
(記事 中丸卓己、写真 大塚千尋、藤川友実子)
1年生で2位という創部史上初の快挙を成し遂げた
結果
畝尾 1回戦敗退
川﨑 2位
コメント
畝尾奈波(スポ3=京都・日吉ケ丘)
――きょうの試合を振り返ってみていかがだったでしょうか
自分は全然自分らしい試合ができないで悔しい結果に終わってしまったんですけど、川﨑(茜、文1=京都・日吉ケ丘)が決勝まで上がってくれたので本当によかったと思います。
――5月の関東女子学生選手権で、「攻める剣道をしたい」とおっしゃっていましたが、その点についてはどうでしたか
やっぱり緊張していたのもあって、なかなか攻めて攻めてよりも、待って相手が来たところを、という剣道をしてしまったので打たれてしまったのかなと思います。
――初戦から手強い相手だったと思いますが、どのような剣道をしようと思って臨みましたか
強い相手だろうとも関係なくて全日(全日本女子学生選手権)にきたからにはもう強い相手としかやらないというのはわかっていたので、強い気持ちを持ってやっていこうと思いました。
――きょうの敗因はどのようなところだったのでしょうか
攻め切れていなかった部分と、最後の最後はやっぱり相手が来るのを待って、受けてしまったので。この前まではちゃんと自分から攻めて、相手が来たところを足を使ってよけていたりができていたんですけど、きょうの一本は足も止めたままよけてしまったのが敗因かなと思います。
――きょう出た課題に対してはどのようにして修正していきたいですか
5月に言ったのと同じように攻めて攻めてっていうことと、そこで相手が来たところを狙えるようにしていける剣道を目指して頑張りたいと思います。
――最後に秋の団体戦に向けての意気込みをお願いします
きょねんもおととしも全日本(全日本女子学生優勝大会)には行けずに関東(関東女子学生優勝大会)の2回戦で負けてしまったので関東でしっかり勝って全日本に絶対出れるように、しっかりチームで力つけていって、全日本で決勝まで行けるように頑張りたいと思います。
川﨑茜(文1=京都・日吉ケ丘)
――いまの率直な気持ちは
準優勝したなんて信じられないです。
――初めてのインカレでしたが、緊張はありましたか
1試合目は緊張したんですが、2試合目からはしなかったです。決勝はもう決勝という感じがなくて、練習試合は言いすぎですけど、全国の舞台という感じがなかったです。
――4回戦は関東王者の渡邊タイ選手(日体大)との対戦でしたが、試合前は何を考えていましたか
以前練習試合をした時はボコボコにされていて、強いということはわかっていたので、挑戦者として頑張ろうと思いました。チャンスはあると思っていたので、そのチャンスをどう生かすかと考えていました。勝ってびっくりしました。
――最後の一本を決めた時の感触はどうでしたか
狙って打ったのですごくうれしかったです。
――20分を超える長期戦でしたが、体力や集中力はいかがでしたか
体力的には自分は結構自信があるので、ここまで長くやったら絶対勝ちたいという気で最後はやりました。
――準決勝ではメンではなく出コテで勝利を決めましたが、感触はいかがでしたか
決まったというのは全然わからなかったですが、コテは狙っていたので、狙い通りに決まってよかったです。
――決勝の敗因はどこにありましたか
力の差が大きくありました。技とか試合内容がどうこうではなかったです。松本さん(弥月、法大)はジャパンのメンバーでもあるので、そんな方とこの大舞台で剣道をできたことが私にとってはいい経験になったと思います。
――きょうの目標はありましたか
渡邊タイさんと当たるところまでは絶対勝ちたいと思っていました。
――前回は「攻撃力を強化したい」とおっしゃられていましたが、その点については
前の試合よりも思い切って技を出せていたと思います。
――これから強化していきたいポイントはありますか
これから注目されてくると思いますし、相手も自分のことをいろいろ研究してくると思いますが、その裏をかいてこっちもしっかりやっていきたいです。
――団体戦に向けて意気込みをお願いします
まずはメンバーに入って、チームが3年間出られていない全日本に出られるようにしっかり頑張りたいです。