2年ぶりの開催となる全日本大学選手権が日本武道館で行われ、早大は男女組手の部で出場した。久しぶりの全国大会出場となった女子組手の初戦の相手は関西大。先鋒の藤平梨沙(スポ1=埼玉・花咲徳栄)は刻み突きでリードを奪うと危なげなく勝利を収める。しかし次鋒の天本菜月(スポ2=宮崎第一)が序盤で先制点を奪われると、焦りが見えたか本来のペースを崩し、連続で失点してしまう。その後も流れを引き戻すことはかなわず、勝負は大将の土谷菜々子(スポ3=北海道・札幌北)に託された。しかし土谷も「1点目を先取されたあたりから焦ってしまった」と悪い流れにはまってしまい、徐々に点差を広げられて敗北。目標のベスト8には遠く及ばず、「『もっとできた』という思いがある」と土谷は悔しさをにじませた。
男子は初戦で北海道科学大に快勝し、2回戦で日大と対戦した。早大は前半に吉田翔太主将(スポ4=埼玉・栄北)、野澤颯太(スポ3=長野・松商学園)、長沼俊樹(スポ3=東京・保善)の上級生3人を起用して勝負をかけるオーダーで臨んだが、初戦の吉田が「相手にペースを握らせてしまった」と苦戦。2-2の先取差で敗北し、当初の目論みが崩れてしまう。野澤、長沼は順当に勝利し、2勝1敗で後半のルーキー2人につないだ。
副将の時田隼門(社1=滋賀・玉川)が敗れ、最後に登場したのは池田倖紀(スポ1=北海道・恵庭南)。序盤は相手の攻勢に対応できず3点のビハインドを負ってしまう。しかし気迫を前面に出すプレーで得点を重ね、残り25秒でついに同点に。勝利のためにはあと1点が必要だったが、無情にもここで試合終了。チームとしても2-3となり、次戦で強敵・近畿大との対戦を見据えていただけに悔しい敗戦となった。
男女ともに歯車が嚙み合わず、不完全燃焼な結果に終わった今大会。しかし来年も多くのメンバーが残り、この結果を「悔しさの原動力に」(土谷)と意気込む。今年度も残すは早慶戦のみ。二週間後に迫る集大成の舞台で「チーム全員で一丸となって」3年ぶりの勝利を掴みに行く。
(記事 名倉由夏)
結果
▽男子団体組手
1回戦 〇早大5-0北海道科学大
先鋒 池田倖紀(スポ1=北海道・恵庭南) 〇6ー0
次鋒 野澤颯太(法3=長野・松商学園) 〇6-0
中堅 長沼俊樹(スポ3=東京・保善) 〇1-0
副将 吉田翔太(スポ4=埼玉・栄北) 〇6-0
大将 時田隼門(社1=滋賀・玉川) 〇3-0
2回戦 〇早大2―3日大
先鋒 吉田 ●2-2(先取)
次鋒 野澤 〇2-0
中堅 長沼 〇2ー0
副将 時田 ●0-1
大将 池田 ●3-3(先取)
▽女子団体組手
1回戦 ●早大1-2関西大
先鋒 藤平梨沙(スポ1=埼玉・花咲徳栄) 〇2ー0
中堅 天本菜月(スポ2=宮崎第一) ●0ー4
大将 土谷菜々子(スポ3=北海道・札幌北) ●0-4
土谷菜々子(スポ3=北海道・札幌北)
――今の率直な気持ちをお願いします
悔しいですね。正直実力だけで言えば勝てない相手ではなかったと思っているので、そこで勝ちきれないのがまだまだ自分たちの足りない所だったと感じてます。
――関西大の印象は
事前に動画を見たりして選手の分析をある程度して何となく特徴は分かっていたのですが、それに対して自分たちが上手く対応できなかったのが良くなかったですね。
――自身の調子やチームの雰囲気は
私自身は可もなく不可もなくという感じでした。チームの雰囲気としては多少緊張はあるかなと思いましたが、悪くなかったです。
――全日本の舞台だからこその緊張があったのでしょうか
団体で全日本に出るのは全員初めてでした。大会前はいつも緊張してるのですが、そこが当日の動きに良くつながらなかったことが良くなかったです。
――どんな目標を掲げていましたか
一応、ベスト8を目標にしていました。
――試合内容を振り返っていかがですか
相手は中段突きが得意な選手だと事前に分かっていたので、そこをちゃんと潰せるような戦い方をしようとしました。ただそういう相手が少し苦手で、中段突きに対処できませんでした。1点目を先取されたあたりから焦ってしまって、悪い方向に行ってしまいました。正直自分の実力を出し切れて負けたわけではなく不完全燃焼だったので、もっとできたという思いがあります。
――大将としての出場で、勝負が決まるプレッシャーもあったのでしょうか
関東団体でもそういう場面があったので、大将にいる時点で自分に回ってくるなら勝敗が決まらないこともあると覚悟はしていました。試合前の気持ちの持ちようは良かったのですが、1点取られた後での焦りが良くなかったです。
――前の2人の試合を見てどんなことを感じていましたか
先鋒の藤平は予定通り勝ってくれて、このまま天本も勝ってくれるだろうと思っていたのですが、そこで点差をつけられて負けたことは予想外ではありました。天本に関しては自分と同じで最初に点を取られてからの焦りが目に見えて分かったので、そこで焦らず自分の得意とする展開に持って行けなかったことが課題なのかなという印象です。
――改めて、自身やチーム全体についてどんな反省や収穫がありましたか
自分と天本は0-1になってからの競りの部分で自分らしい試合ができなかったので、気持ちの持ち方が課題として見えてきていて、逆に藤平は関東であまり良くなかった分、今回はずっと練習してきた技で点を取れてしっかり勝ちを持ってきたので、すごく収穫なのかなと感じます。全然自分たちの力を出しきれなかったので、これから上に上がっていくための原動力にはなるんじゃないかと感じました。
――チームとして残すは早慶戦のみとなりますが、意気込みをお願いします
もう2週間後に迫っていますけど、この全日本で悔しい思いをしたのでそれを晴らしたい思いもありますし、2年連続で負けているのでその思いを晴らすのと、4年生に絶対最後勝っていい思いをして引退してもらいたいので、チームとし絶対勝てるようにあと4週間悔いを残さないようにやるしかないという気持ちです。
吉田翔太(スポ4=埼玉・栄北)
――大会を終えた今の気持ちをお願いします
チームとしては3回戦目の近畿大を見据えて対策を立てたり練習してきたので、その前の日大戦でぎりぎりとはいえ負けてしまったことは正直みんな「やってしまった」という雰囲気があります。でももうへこんでいる時間はないので、早慶戦に向けて気持ちを切り替えているのでその点はいいかなと思っています。
――試合前の調子や雰囲気はいかがでしたか
いい感じに仕上がってきていると思っていましたし、メンタル面でも試合に向けて集中できていたので心身ともにすごく良い状態だったなと思っています。
――日大に対して事前に抱いていた印象と、本番での戦い方のずれはどんな所で感じましたか
オーダーで言うと関東では先鋒・中堅・大将が固定化されていたので、それを見越してこっちもオーダーを組んだのですが、全然違うオーダーできたので、こちらの対策をしてきているなと思いました。ただ皆も向こうの選手全員の試合をある程度見ているので、どのように当たってもある程度頭に思い描いたプラン通りにできれば特に問題はないと思っていたのですが、試合の流れで先取負けとか僅差での負けを重ねてしまい今一つ勝ちきれなかったことがチームとしての負けにつながったかなと思います。
――早稲田のオーダーはどのように組みましたか
正直自分達は前半を重視していました。というのも日大のオーダーが後半を重視することが多くて、関東でも後半に実績のある選手を二人置いていたので、こちらは前半重視で行って向こうのペースになる前に決めてしまおうと思い上級生を前に固めました。
――自身も含め前3人で終わっておきたかったということですね
本当にそうですね。自分が先取で勝っていたら前3人で特に危なげもなく終わっていたので。自分が取りきれなかったからこそ後半に行ってしまいましたね。
――敗因はどんな所にありますか
日大は弱い大学では全然なく実力が近い大学なので、どちらに転ぶかはわからなかったのですが自分達は勝つ気でいました。1人1人の差はなかったと思うのですが、強いて言うならばオーダーや相手選手のプレースタイルが自分たちが研究した時と違っていたので、向こうの方が自分達の対策をしてきていたのかなと感じました。
――接戦が多かった中で、勝ちきれなかった原因はどの辺りですか
改善点になってしまうのですが、あと1点とらないといけないところで技の引き出しが少なかったり、気持ちばかりが前にいってしまって駆け引きをしっかりしていないからこそ決めきれなかったことが結構あったので、気持ちの問題という人も結構いると思うのですが気持ちがあっても技術が伴わないと得点には繋がらないので、冷静になって一点でもいいから確実に取れる動き方や技の出し方を一人一人が考えることができていれば粘り強く戦えたのかなと思います。
――自身の試合内容について振り返っていかがですか
調子は良くも悪くもなかったです。日大戦に関しては今まで通りの動きをやっていても相手の対策通りの展開になってしまうと思ったので、何かひとつ違う動きや技を見せて点を取りに行った方がいいと思っていたのですが、かなり対策されて得点のタイミングを狙われて、相手がそこに徹しているなと思いました。そこで展開を変えられず相手にペースを握らせてしまいましたね。逆に自分が得点した技はあまり相手の頭になかったと思うので、もっと最初から出していれば試合展開が変わったのかなと思います。
――他の選手の試合を見てもそういうやりづらさがあったのでしょうか。逆に、普段より良かった点もありましたか
勝った二人(長沼、野澤)は本当に良いパフォーマンスをしてくれたので特に言うことはないですね。池田(倖紀、スポ1=北海道・恵庭南)はすごく気持ちを前に出していて、最初一気に3点ほど取られてそのままズルズルいってしまうのかと思ったのですが、後半に追い上げて最後は同点(先取負け)まで行きました。関東団体の東海大戦のように先行されても、粘り強く一点ずつ返していける力が付いたのはすごくいいことだと思います。まだ1年生なので、この経験を生かして粘り強い対応力のある選手になってくれればと思います。時田(隼門、社1=滋賀・玉川)は得意な技をかけることを意識しすぎて点が取れなかったことを反省していたので、そういった技を決めるために色々な技を覚えて対策されにくいようにできれば彼のペースで試合できるのかなと思います。
――残すは早慶戦となりますが、意気込みをお願いします
早慶戦では男子10人女子3人の13人が出られる試合で、普段大会に出られない選手も試合ができる絶好の機会なので、チーム全員で一丸となって普段から声かけなどでいい雰囲気づくりをして、絶対に勝てるように頑張ります。