【連載】関東大学選手権直前特集 第3回 吉田翔太×伊坂夏希×長沼俊樹

空手

  最終回には、今年度のチームを率いる吉田翔太主将(スポ4=埼玉・栄北)、主務の伊坂夏希(スポ4=鳥取・米子東)、副将の長沼俊樹(スポ3=東京・保善)というメンバーが集った。今年も新型コロナウイルスが体育各部の活動にも影を落とす中、3人の対談からはそれをはねのけるようなチームの勢い、そして部員への信頼感が感じられた。幹部から見たチームの状況やここまでの取り組み、そして今大会への目標や意気込みについてお話を伺った。

※この取材は9月25日にオンラインで行われたものです。

右から吉田、伊坂、長沼。「W」ポーズで写真に収まった

チーム作りで心がけてきたこと

――まずは他己紹介をお願いします

吉田 主務を務めてくれている伊坂はとても真面目で、練習の時から凄く積極的に取り組んでくれる同期です。また主務としても自分たちが試合に集中できるように毎回必要なことをアナウンスしてくれるので、そういうところも含めて部として必要不可欠な人だと思っています。

一同 照れ笑い

伊坂 副将の長沼俊樹を紹介します。長沼はまず、空手が強いです(笑)。空手が強い選手はとんがってたりもするんですけど、彼は後輩として可愛げがあり、練習も盛り上げてくれるムードメーカー的な存在を両立しているので、後輩ながら尊敬もしています(笑)。

長沼 主将の吉田翔太先輩です。こちらの先輩はなんと選抜で2位をとった伝説の先輩です!(笑)本当に優しくて、私から見ても本当についていきたくなるような先輩です。後輩のことを考えて練習メニューを組んでいて、場の雰囲気も盛り上げてくれますし、下の人間のこともしっかり考えて行動できる先輩なので、そういった面でついていきたい先輩だと思っています。

――例年と比べて、チームの雰囲気はどんな感じですか

吉田 すごくいい雰囲気だと思います。部員同士で意見交換をしたり、先輩後輩関係なく1年生が4年生を盛り上げたり、例年よりも部員一人ひとりが強く意識を持って練習しているとすごく感じています。1年生に強い選手や経験者が多く入ってきて下から突き上げられて、自分たち上の代もいい刺激をもらえているので、お互いに切磋琢磨できています。

伊坂 「下からの突き上げ」は本当にその通りだなと感じていて、自分は先輩ですけど後輩から焚き付けられてやる気をもらっているので、上下の関係なくお互いに高め合える良い雰囲気だなと思っています。

長沼 下の代から先輩方を見た時に、(筆者に向けて)どうですか?優しそうじゃないですか! そのおかげで後輩がやりやすい雰囲気で練習できていると思っています!

――先輩後輩関係なく高め合える雰囲気が伝わってきましたが、そういった雰囲気作りのために皆さんが心がけていることはなんですか

吉田 1年生が4年生の部員にアドバイスや提案をすることは結構難しいんですよね。なので、わざと2人組や3人組に組ませて普段から積極的にコミュニケーションを取らせることで、上の代から後輩に話しかけたり意見を求めたりしています。ガチガチの上下関係を作らず、先輩後輩関係なく意見できるのが一番いいと思いますね。自主性を持つのは早稲田の特色だと感じていて、何も考えずにメニューをこなしているだけだと意味がないです。長沼たちが「目標や改善点、課題を紙に書くことで全体に共有できた方がいいのではないか」と提案してくれて、それによって新たにどんなメニューを取り入れるべきか見えてきました。部員が何を意識しているかを自分たちが理解することでアドバイスもしやすくなりますし、練習に目的をもって取り組めているなと感じます。

伊坂 前の話にかかってくるのですが、自分は後輩からも見習う部分が多いと常々感じています。最近は練習中に動きがどうだったかを後輩に聞いたりして、後輩から学んで考えて練習することを意識しています。

長沼 主将と被る部分があるのですが、やはりコミュニケーションを取る場をいかに増やすかを考えています。例えばペアで行う練習で毎回違う後輩と組んだりしています。あとは積極的にアドバイスをしています。自分自身が気付いたことを後輩に伝えて、それがいい雰囲気つながっているのかなと自分は思っています。

――今年は特に多くの一年生が入部しましたが、印象はいかがですか

伊坂 1年生をがたくさん入ってくれたのですが、「変わったな」と思ったのは部の雰囲気にフレッシュさが増したと言うか、若返ったことだと思います。それが部全体で元気に練習に取り組める要因のひとつだと感じています。

吉田 早稲田はよくも悪くも正統派な組手で、シンプルな突きや蹴りが中心の選手が今まで多かった印象なのですが、今までの早稲田にいなかったようなタイプが増えたのかなと感じています。時田(隼門、社1=滋賀・玉川)は身長も体重もあって他の部員にないタイプの組手をできる選手ですし、大きな影響を与えてくれているんじゃないかなと思います。また池田(倖紀、スポ1=北海道・恵庭南)は駆け引きがすごく上手で、彼も今までのは既にないスタイルで面白いなと思います。形選手にも熊谷(拓也=東京・世田谷学園)という実力者がいて、組手のあと2人も早慶戦に向けて一つ一つ頑張っています。色々な個性の強い選手たちが入ってきたなと思っています。

長沼 雰囲気が変わったことは感じています。1年生は結構みんな強くて、だからこそ「負けられない」と思いましたね。でもみんな素直でいい子なので自分の意見も受け入れて練習で試してくれるので、そういった姿を見ると後輩のために頑張りたいという思いも強くなりますね。

チームの要として

――三役の役職についたことで大変なことはありますか

伊坂 主務として気をつけているのは、いかに選手が大会や練習に集中できる環境を提供できるかを常に考えることです。 去年からはコロナ禍で大会の申し込みからルールまで幅広く変わった部分があり、そういったことを抜け漏れなく部員に伝えたり、申し込みに不備があってはいけないので、そういった部分に気をつけてやることが大変でしたしプレッシャーでもありました。

長沼 正直、大変なことはなくて。ただ副将は上の立場にあると思うのですが、そういった立場にいることで後輩からの目線や見られ方を気にしていて、後輩から見て強い先輩でありたいという気持ちが強くなっています。だから後輩のために勝ちたいなという思いがあり、プレッシャーは強くなったかなと思います。でも副将としての役割が、というよりは楽しいという思いが強いです。

吉田 みんなの時間を使わせてもらって同じ時間に一緒に同じ練習をしているので、無駄にしたくないなとすごく思っています。一番大変だったのはメニューを作ることですね。みんなに合うメニューは正直ないと思っていて、そこに皆がいかに意識や目的を強く持って意味づけしていくかが大事だと思っています。そのためにどんな雰囲気で練習していけばいいのかと思ったときに、コミュニケーションを取って上下関係なくやって行こうと決めました。ただやはりメニューを作るのは難しくて、自分自身そこまで詳しいわけじゃなかったので、色々調べてはいたのですが上手く言語化できなかったので、同期や長沼に相談しました。長沼は一つ下の代ですけど積極的に意見をくれるのですごく助かりますし、そうした面で上下関係なくという特徴が活きているのかなと感じます。

一同 照れ笑い

――逆に、嬉しかったことはなんですか

吉田 自分は主将として雰囲気を大事にしていて、声掛けなどを自分たちの代が中心となって部員に伝えていたのですが、皆がすごく楽しそうにやってくれているのが自分としてはすごく嬉しいですし、やりがいがあります。主将は良くも悪くも全体を見なければいけないのですが、だからこそいい雰囲気になってきたな、逆に雰囲気が落ちてる時にどうやって上げようかな、と自分で考えたことが皆の表情や雰囲気に直結するので、大変ですけど楽しいなと感じています。

伊坂 主務をやっているのになんですが、僕はけっこう抜けていて、ちょいちょいミスがあったりするんですよ(笑)。 ただ主務・副務チームがあってそこで色々な子がサポートしてくれるのですが、その子達が本当にしっかりしていて助けられることも多くあり、このチームでやって良かったなと常々感じます。

長沼 自分の意見を言えることが一番良かったなと思います。それは先輩たちがこういった雰囲気を作っていただいているからでもありますし、その雰囲気がそのままメニューにも繋がっていることに自分自身やりがいを感じます。チーム全体として一人一人が意識を高く持って、雰囲気も良くなって来ているので、そういった面にもやりがいを感じます。

――今年もコロナ禍による影響があったと思います

吉田 練習が無くなったことはなかったので、比較的例年通りのスケジュールで動けたのですか、ひとつ言うならば夏合宿が大学での二部練習に変わったことが大きかったです。他には特に影響はなかったよね。

長沼 そうですね。

吉田 そういった面ではいい感じに仕上がってきているのかなと感じています。

伊坂  ただ大会が延期・中止になるかもしれないという不安が常に付きまとっている状態ではあるので、そこをどう向き合うかが難しいかなと個人的に感じています。

長沼 自分はモチベーションは逆に上がってますね。他の学校では練習できてないところも多くて、早稲田は通常通り練習できているので、逆にそれがチャンスだと思っていて、自分自身はモチベーションがバチ上がりです!(笑)

鍛錬の夏

――二部練習の振り返りをお願いします

伊坂 振り返り…一言で言うとしんどかったのですが(笑)、それは夏合宿にしても去年の二部練習にしてもその苦しさはあって、でもその中で得られたものもたくさんあったなと思います。今回に関しては普段に比べて頭を使って練習に取り組むことが多く、自分の課題もいつもより鮮明に見えましたし、そこにどうやってアプローチするかを自分で考えることができたのでその後の練習や試合に繋がるような形でできたかなと思います。

長沼 正直しんどかったのですが、楽しかったです。チームの雰囲気もそうですし、個人のことで言えば二部練で何をやるかを明確にして取り組んでいて、 それも試してどうだったかを意識していて、それも楽しかったなと思います。

吉田  主将目線で振り返ると、今2人が言った通り一人一人が課題を持っていたので、ただしんどいだけの練習じゃなかったかなと感じました。一人一人が意識や目的を強く持って取り組んでいたので、普段以上にキツイのですが意味のある濃い練習になったのかなと思います。

――今の仕上がり具合はいかがですか

伊坂 正直課題がたくさん見つかり、それにアップアップしているような状況ですが、課題を解決する方法が自分の中でだんだん見えているので、後は本当にひたすらやっていくだけかなと思っています。

長沼 一度自分の課題を箇条書きで書き出したことがあり、その際に細かい部分も合わせると(課題が)40個ぐらい見つかったので、課題を修正しつつビデオなどで細かい部分をチェックしてやっています。そのおかげで日々成長できているかなと思っています。

吉田 二部練習に限らず普段の練習から積極的に話しかけたり意見を求めたりするのですが、自分には今までなかった考え方や意識の持ち方が見えてきて、すごく勉強になっていますし、 自分の考えが広がっているなと感じているので、二部練習でもそれ以外のところでも成長できているなと感じています。

――二部練習を通して特に成長したなと思う選手はいますか

吉田 みんな成長したよね。

伊坂 難しいです。今後輩が部室にいるので(笑)

長沼 1年生の澤祐太朗(教1=東京・世田谷学園)が成長したかなと思っています。

伊坂 長沼はメニューの作成を積極的にやったり、主将がいない時に立派に部を率いていたので、 成長が見えたなと思いますね(笑)。

吉田 世代で言うと3年生の中堅の代の成長が見えていて、助けられたなと感じています。やっぱり4年生だけが張り切って行っていても雰囲気はそこまで変わらないと思っていて、3年生が積極的に声かけなどをいろいろ動いてくれることで初めてうまく成り立っているなと思ったので、そういった面で代替わりしてからの3年生の代の成長や存在の大きさを感じます。

集大成

――関東大学選手権が間近に控えていますが、どんな目標を立てていますか

長沼 チームとしてはベスト4以内を目標に掲げて取り組んでいます。個人としては勝つことを当たり前でいかにチームのメンバーが楽に試合をしてもらえるかを目標にしています。具体的には対戦相手に8対0など、点差をつけて勝つことが自分の目標であり役割だと思っています。 

伊坂 自分はまずは本当にレギュラーに入らないといけないので、そこに向けて頑張っていきたいなと思っています。その上でチームの掲げる目標に貢献できるくらいまで成長しないとだめだなと思っているので、まずはそこに向けて頑張りたいです。

吉田 後期は団体戦の試合が続くので、主将としてもちろんチームに貢献していきたいです。今までの成績を振り返ってみるとあまり貢献できていないなと感じているので、最後の年ぐらいしっかり自分が勝っていい位置でつないだり、勝負を決める流れに持っていくことでチームに貢献していきたいなと感じています。

――4年生にとっては集大成となります。後期全体の目標をお願いします

長沼 チームとしては4年生が悔いなく引退してほしいなという思いが一番強くて、自分のためよりも4年生のために頑張りたいです。だから4年生が満足した形で引退してくれれば、自分はもう何もないです。以上です!(笑)

伊坂 ちょっと長沼が泣けることを言ってきたので恥ずかしいのですが(笑)、自分としては残りあとわずかな時間をがむしゃらにやることだけを意識してやっていきたいと思っています。難しいことを考えてもしょうがない部分はあるので、がむしゃらな姿勢が部の雰囲気や士気を高めるようなことにつながればと思います。

吉田 長沼が言ってくれた「自分たちの代が悔いなく引退出来るような形」として、ずっと前から目標に掲げているのが早慶戦で勝つことです。それが一番悔いなく終われるのかなと感じています。もちろん公式戦で勝ちにいくのが大前提ですが、最後に一番多くの部員が出場できる試合が早慶戦なので、最後みんなで勝ってよかったねと終わりたいなと感じているので、残り2ヶ月と時間も限られていますが、毎日を大切に、チームをバランスよく見ながら声出して頑張っていきたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 名倉由夏)