自分を高める場所
昨年10月に行われた関東大学選手権では、男子団体組手が41年ぶりにベスト4という成績を収め、女子団体組手と女子団体形と共に翌11月に行われた全日本大学選手権に出場するなどの結果を残した早大空手部。今年度、成長を見せた部を主将として先導してきたのは、澤入迅人(スポ=静岡・常葉菊川)だ。主将として悩みながらも常に部や部員を考え続けてきた澤入の四年間を振り返る。
空手を始めたのは小学1年生の終わりごろ。元々は体操をやっていたが、筋肉がつくことで身長が伸びなくなることを心配した両親の勧めで、兄がやっていた空手を始めた。そのため、「正直全くやる気は無かったので、ずっとやめたかった」と語った。そんな澤入が空手に向き合い始めたきっかけは小学4年生ごろ。出場した大会で初めて悔しさを味わい、そこから真摯に空手に向き合うようになった。
試合で気迫を見せる澤入
中高では不調な時期もあったが、空手に真摯に向き合い続け、全国大会や総体に出場するなど着実に実力をつけていき、高校では主将として部を引っ張った。そのような高校生活の中、トレーナーになりたいという将来の夢を抱き、またボクシングが好きであることから大学ではトレーナーの勉強とジムでボクシングを始めようと考えていた。そのため多くの大学から推薦の声を掛けられたが、全て辞退していたという。そんな時に早大からスポーツ推薦の話が来た。早大の空手部には一つ上の学年に、高校時代、全国大会で優勝候補に挙げられていた末廣祥彦(平成30スポ卒=東京・世田谷学園)や今尾光(平成30スポ卒=大阪・浪速)が所属しており、そのような選手と一緒に出来るのであればと思い、また当時の高校の監督に「一度入部してみて、そこで考えてみればいい」と背中を押され、早大空手部への入部を決めた。
大学に入ってからは、高校時代に培った間合いの取り方にさらに磨きをかけ、1年生から試合に出場し、2年生の時には東京六大学大会で個人戦にて3位を勝ち取る。3年生で臨んだ関東学生体重別選手権では、個人戦3位入賞と勝ちを積み上げた。そして、4年生で主将として部を引っ張ることになった。「信頼される主将になりたい」。そう思い続け、常に周りに目を向けてきた。練習メニューを考える際には、スポーツ推薦とそれ以外の部員との実力差がある早大空手部において、いかにどちらにも適した練習にするかを部員の意見を積極的に取り入れながら考えた。また、練習の説明をする際にも、練習の意義を明確にしながら伝えたい要点を絞ることを意識した。その結果、関東大学選手権で41年ぶりのベスト4という快挙を成し遂げた。「主将としてずっと悩みながらやっていた一年間でしたが、割と出来は悪くはなかったのかなと自分では思います。最後の一年は楽しかったですね」。澤入は大学最後の一年間をそのように振り返る。
最後に、澤入にとって早大空手部とはどんな存在かを尋ねると、しばらく考えた後に「『自分を高める場所』です。武道の精神や空手の本質的なことを教えてくれた」と笑顔で語った。また、これからの早大空手部を担う後輩たちに、「新しく入ってくる1年生は(体が)大きいので、一気に平均身長が上がる。その身長を活かした戦い方をしてほしい」と出場する大会での決勝進出を期待した。澤入は卒業後、働きながら自分が以前通っていた道場に教えに行くなど、何かしらの形で空手に関わるつもりだ。早大での四年間の経験を胸に、新たなステージを力強く進んで行くだろう。
(記事 石黒暖乃、写真 石名遥)