【連載】関東大学選手権直前特集『不撓不屈』 第2回 佐川開人✕鈴木捷太✕谷口輝

空手

 今回登場するのは佐川開人(商3=埼玉・早大本庄)、鈴木捷太(スポ3=群馬・太田)、谷口輝(スポ3=早稲田佐賀)の3年生男子形トリオだ。昨年の関東大学選手権(関東)では7位に終わり、惜しくも全日本大学選手権(全日本)への出場を逃した男子形。その雪辱を果たすべくこの夏鍛錬を積んできた三人に、目前に迫った関東への意気込みを伺った。

※この取材は9月28日に行われたものです。

「(自分は)練習のときも、この練習をやるメリットとかそういう練習の意味を探していきたい人ですね」(佐川)

論理立てて行動していると言われ、笑顔を見せる佐川選手

――三人の中のリーダーは誰ですか

佐川 鈴木くんです。

鈴木 リーダーです(笑)。基本練習などの全体的な練習メニューを決めたり、三人で打ち合わせする中で指揮を執ったりするのは僕ですね。ですが、二つある団体形のうちの一つは佐川にリーダーをやってもらったりしています。練習メニューも三人で話し合って決めるのですが、最終的にまとめるのは僕なのでリーダーと聞かれると僕になりますかね。

――組手と形の練習は別々なんですか

鈴木 そうですね、今は全体でアップとストレッチ、それから基本練習をした後、組手と形で別れてっていう感じですかね。

――お互いの入学してきた時の第一印象を教えてください

鈴木 佐川とは中学時代から大会で会ったりと関わりがあって、こいつがワセダの付属から上がるのはもう知ってたんで、自分が入学決まった時に連絡取り合ってました。なので初めて会った時の印象ってよりかは元々知ってる仲なので大学入ってからいてくれて安心したって感じですかね。で、僕と佐川なんかは新歓前から練習に参加してたんですけど、谷口は自分たちの代では一番遅くに入部したんですよね。それで、最初はなんかコミュニケーションが取れないっていうか。

佐川 寡黙だった?

鈴木 そうそうそう。本当に自分から全然話さない人なので、この人大丈夫かなって(笑)。

一同 (笑)。

佐川 私はさっき言ったように、鈴木は中学から仲良くしてて。高体連には私の学校は出れなかったんですけど、鈴木の試合を見に行ったりしていましたね。国体関連の試合には出てたんですけどね。で、大学入る前に、鈴木がどうしようって迷っていたんで、ワセダこいよって誘って今に至る感じですかね。で、輝は遅れて入ってきて、全然知らなかったんですけど、実は中学の時に全国大会で形の試合をしたことがあって。だから私は一応この2人と大学入る前に試合で当たったことあるんですよ。印象は、その、ね?すごい寡黙な人来たなって。

谷口 自分(が空手部に)入ったのは5月過ぎで、なんかもうみんな顔見知りって感じで、みんなの中に入ってくのが難しくて。しかも同期の他の5人は関東の地区で、自分だけ九州だったので、なかなか会話の内容も分からないからますます(会話に)入れなくて。それでコミュニケーション取るの難しかったです。

鈴木 ごめん。

谷口 いや(笑)。

鈴木 本当に喋らなかったよね?

谷口 まあ元々そんなに喋らないんですけどね。

一同 (笑)。

谷口 印象としては、鈴木は割と話しかけてきてくれる気さくな感じで。

鈴木 めっちゃ頑張った(笑)。

谷口 で、開人は理屈っぽい人だなって。

一同 (笑)。

谷口 今はあまり変わらないんですけど、気さくないい人だなって思ってます。

鈴木 谷口の印象も全く喋らない人からおとなしい人ぐらいには変わりましたかね。

一同 (笑)

――谷口さんはなぜ5月に部に入られたのですか

谷口 同じ高校の先輩がいたので、空手部に入ることは決めていたんですけど、新歓いろいろ(他にも)行ってみよう、見るだけ見てみようかなって。で、4月末ぐらいからちょっとずつ見に来て、5月に入ったって感じです。

――三人で練習を積み重ねていく中で、年々シンクロ率は上がっていますか

鈴木 三人で組むようになったのは2年生からなんですよね。1年生の時は当時4年生だった先輩がいて、今やってる流派とは全く違う流派を先輩の後ろに三人で頑張って付いていこうって感じで。だから付いていくので精一杯でしたね。で、2年生の時からこの3人で組むことになって、予選形と本選形でまず予選形をメインにやったんですね。で、3人それぞれ出身の流派が違うんですけど、僕の流派の方に合わせてもらって、やってたので最初は流派独特の動きに僕以外の二人が付いていくのが大変な感じでしたね。なので団体(で戦う)っていうよりかは、流派に慣れてもらうって感じで、二人はやりづらそうでしたね。で、2年目の今年は、そこがあっての今年で流派に慣れるっていうステップはある程度超えたところにいると思うので、去年に比べたら練習のステップアップのペースなんかもいい感じに進んでいますね。

谷口 僕も同じ答えです。みんな心は一つです(笑)。

――流派を変えるのは難しいものですか

佐川 そうですね、流派ごとに系統が近いとか遠いとかあるんですが、私はまだ鈴木の流派に近い方だったので、まあなんとか。谷口の方は全く別のものな感じで立ち方から違ったりしたので(難しそうでした)。

谷口 全身を使って動くっていうのも、呼吸もそうですし。自分のとこは一瞬で動いて決めるって感じなんですけども、鈴木の剛柔流は呼吸しながらも全身動いてるって感じなので決めるのも難しいですし、立ち方も今までやったことのない全然分からないものだったので本当に最初は付いていくので精一杯って感じでしたね。

――今までも流派を変えたことはありますか

鈴木 中にはそういう人もいますね。でも、自分たちは小中高は道場(での活動)がメインだったので、自分の流派一本できた感じですかね。僕の場合は、たまに上のランクの試合に出ると、形の種類が必要になるのですが、僕の流派なんかは形の元々の数が少ないので、他の流派の形を練習して試合で使ったりということはありましたね。ですがメインは自分の流派一本ですね。

――時間を共有する中でお互いに見えてきた一面はありますか

鈴木 そうですね、谷口なんかは元々静かで、普段からあんま見えてこない感じなんですけど、佐川は、まあ前から知ってるんで。でも大学入って会う機会が増えたことでもっと理屈っぽいなって思うようになりましたかね。

佐川 そんなに理屈っぽい?

鈴木・谷口 だいぶね(笑)。

佐川 でもまあ朝は俺、何か言われると機嫌が悪くなるのは気付いてる(笑)。

鈴木 うん、そうだね、午前ね。佐川は、なんかこう論理的に話を進めていきたいっていうか、順序立てていく感じかな。

佐川 うーん、順序は立てないけど、口数が多いんじゃない?

谷口 無駄なこと嫌いだよね?

鈴木 そう、有意義に時間を過ごしたい感じかな。練習のときも、この練習をやるメリットとかそういう練習の意味を探していきたい人ですね。

谷口 確かに。

鈴木 自分とか谷口はなんかまあこれでいっかなみたいな大ざっぱなところがちょっとあるんですけど佐川はちゃんと突き詰める人ですね。で自分と谷口は途中でしょげちゃう人(笑)。(道場に貼られる前期の目標を書いた紙を指して)ああいうのもみんな手書きな中、佐川だけWordという。

佐川 あれは字が汚くて。

鈴木 アイデンティティ感あるよね。

佐川 浮いてることはあんま気になんないから。

鈴木 1年生の時にさ、その時の主将が佐川の紙見てちょっとだけイラっとしたよね(笑)。

佐川 そう?それもあんま気にはならなかったね(笑)。

鈴木 俺らは気にしてた(笑)。

一同 (笑)。

鈴木 あの目標の紙もいつもはやってなかったんですけど、合宿の時なんかはそれぞれの目標決めて貼り出そうって感じで。みんな合宿の場で書くじゃないですか?でも、こいつは(佐川さんを指しながら)事前に貼り出すのを聞いていたから、合宿前から準備して印刷したのを持ってって貼ったんですよね。で、主将が全員の目標を見てった時に「これ何?佐川?」みたいになってちょっとイラっとするっていう。

――形を始めたのはいつからですか

谷口 自分はちゃんと始めたのは小学校3年生ぐらいからですね。組手はやってなかったです。

鈴木 自分は中学まではどっちもやっていて。で、高校が県立の高校だったので、空手にかけられる時間が全然なくなっちゃって、どっちか選ばなきゃなって思った時にまあ形でしたね。理由はかっこよかったからってことで(笑)。空手頑張ってる高校と普通の高校とじゃ練習量って全然違ってて、そこで道場も行ってたんですけど、組手やるには相手もいないし。で、経験的な面で形の方の練習がだんだんと多くなっていって形の方に寄っていったって感じですね。

佐川 組手もなんか強かったよね?

鈴木 一時期ね(笑)。

佐川 俺多分一回当たったことある。多分6−0で負けた(笑)。

鈴木 え?まじで?覚えてないよ?でも良かった勝っといて(笑)。

佐川 私は道場の先生が形の好きな先生だったので、組手も小さい頃はやってたんですけど、中学の始めぐらいまでですかね。小学校のときまでは身長大きくて、組手できるかなって思ってたんですけど、中学になったらなんかみんな高いとこにいるなって。(組手を)やめようかなって思って。組手はそこからやってないですかね。六大学(東京六大学大会)は組手のメンバーが足りなくて谷口とちょっと出たんですけどね。6−0で勝っちゃったんですけど、まあ点数だけ見たらすごいじゃないですか?でもあれは反則勝ちなので、結局普通にやったら負けた試合だったです。相手の蹴りがばちーんって入っちゃって、気づいたら天井見てて。それも怖くてあんまり組手はやんないですね。

「全体の雰囲気や迫力を持ち味にしたい」(鈴木)

丁寧に説明をする、男子形をまとめ上げる鈴木選手

――普段の具体的な練習内容を教えてください

鈴木 前期は個人戦がメインになるので、個人戦挟んで夏休みから後期っていう流れで、前期の試合終わってからだんだんとこう団体戦練習にシフトしてったんですね。で、全体的なメニューは主将が考えられるんですけど、最初はみんなでアップして、基本練習やって、で形と組手が別れるっていうのがいつもの流れっていう感じですね。まあ基本がなかったり、全部が基本とトレーニングだったり、結構練習メニューにむらがあるんで、その日によって結構こう柔軟に対応してっていう感じで、メニューは何個か考えておいて時間を見ながらそこにポンポンポンって入れてく感じですね。基本がないときは女子の形の団体とはまた別に、この三人で基本の中で決めの練習だったり、パワースピードをつける練習だったりしなければならないんですけど。今は佐川と谷口の経験値だったり、自分自身もあんまり団体形の経験値がないので、団体形の練習をしなきゃいけないって方向性が決まってて、なので基本は練習ってよりは、身体を動かすためのアップに近いです。全身運動系の基本やってそれでアップは完結させる、でそこから実践的な試合を目標において試合っぽい練習をどんどんやろうって感じで入りますね。2つの形で三人それぞれ形がちょっとずつ違っちゃうんで形合わせって感じで三人の形を合わせて、それから1個の形を何個かの部分に分けて、短い部分を何回もやる、それが終わったら次の部分を何回もやるっていう部分の練習を積み重ねてます。それで、三人のイメージが同じになってきたら通し練にしてくっていう。部分やって通して部分やって通してを繰り返します。部分って通し以上に思い切りできるので、自分のスピードアップになりますね。そういう行程が済んだら、今度は何回も通すっていう。同じ形に対して何回を何セットってあらかじめ決めといて、それをこなすようにはなっちゃうんですけど、何回もやると三人の息も合ってくるんで、っていう風に進度によって練習内容を変えてましたね。今あらかじめ考えていた進度による練習の種類は一応もう一周して一通り終わったところにいますね。でも夏合宿の危機に瀕している時のビデオを見ると気迫とかが今と全然違うので、一回その時に立ち返ってもう一回考え直そう、あのアグレッシブさを取り戻そうっていうのが今の状況です。

谷口 やっぱりビデオ見ると合宿の時いいなって感じになって。具体的に何でっていうのは分からないんですけど、ただ練習の時間も長かったので部分的にやれてたのも響いてるのかなって。

佐川 別の人たちがやってるみたいだよね(笑)。

――合宿の内容は

鈴木 合宿は朝、午前、午後、夜っていう4つに分かれて練習だったんですけど、朝はランニングとかダッシュ系のメニューで、午前と午後の練習が基本だったり形だったりで2時間半とか(かけて)、夜練は確認みたいな感じでビデオを見ながら修正する時間を1時間ぐらい使ってましたかね。だいたい5時間半の練習でしたね。合宿中は鏡が小さいものしかなかったんで、何回も通した後、最後をビデオで撮って夜確認していました。夜練は全員でしたね。学校では鏡を見ながらの練習が多いですかね。

――授業が始まりましたが、練習メニューに変化はありますか

佐川 基本的に時間は変わらないので、そんな・・・。ただ期間的には落とす時期です。

鈴木 合宿で疲れちゃったんですよね(笑)。疲れちゃったよね?

佐川 合宿は疲れちゃったね(笑)。

鈴木 気持ち(を取り戻す時期という意味合い)はあります。アグレッシブな感じなんですけど、アグレッシブさが足らないという意味で合宿の時期を思い出したりします。

――練習や私生活で組手の選手との交流はありますか

鈴木 基本的に部員はみんな仲いいので、部室やキャンパスで会えば交流はあります。練習中だと(形は練習場の)端っこの方のマットで形は基本的に練習しているんですけど、やっぱりもう少し広いところで練習したいなという気持ちはあるので、組手が引いたときに1番奥の試合をイメージしやすい(大きい)マットを使わせてもらって、自分たちが(形を)通して、それを組手の人たちや他の形メンが見てくれているので後で意見を聞きにいったりします。そういう助けてもらっているという部分はありますね。

――関東学生選手権では形の選手はみんな敗北し、誰も全日本学生選手権出場というカベを越えることはできませんでしたが、振り返っていかがですか

鈴木 あまり思い出したくないね(笑)。

佐川 点数があまり伸びなかったね。

鈴木 みんなちょっとずつ(点数が)上がっていても予選の大台は超えられないんですよね。自分に関しては去年より点数が落ちちゃったのでショックでしたね。ショックの一言に尽きます。そこから頑張ろうというのがしばらく湧き起こってこなくて、今は団体戦があるから気持ち切り替えてやっていこうみたいな感じで。あまり思い出したくなかったので、今思い出しましたね(笑)。

――お二方はいかがですか

佐川 私は一応点数は伸びてて。でも空手の形って大会ごとや年ごとにちょっとずつ審判の見る目が違ってはやりみたいなものがあって。あと学連(全日本学生空手道連盟)と全空連(全日本空手道連盟)の(審査)基準が全然違う。雰囲気が違うので、その雰囲気をつかむのにすごく時間がかかったんですけど、徐々に点数が上がってきているので、(雰囲気を)つかみつつはあるけどまだ大台には乗れていないという感じですね。

谷口 自分は実力的には去年と比べても結構自分でも伸びたと思いますし、先輩とかにも「良くなったね」とは言われるんですけど、点数的には去年よりめちゃくちゃ低くなってて。去年は自分最後一人だけで(形を)やったんですよね。なので多分自分単体でやったらそこそこに見えるんでしょうけど、二人で並べたときにパッとしないイメージがあるので、それで点数が伸びなかったのかなというのは思いますね。

――国士舘大や帝京大などの上位校との力の差はどういった部分で感じられますか

鈴木 全部ですね。3人でやるので1人がうまくても駄目じゃないですか。3人で1個の形として見ないといけないので、パワーとかスピード以外にも、誰かが合わせよう合わせようとしてるんじゃなくて、3人で本当にシンクロしてやっている。完成度が違うなとは思っています。形の挙動でいうとパワー、スピードは全然違うなということは三人とも自覚してて。強豪校がよくやっている流派が松濤館流で、結構見栄えのいいパワフルでスピーディな形が多いんですけど、自分たちのやってる剛柔流というのはゆっくりなところと力強いところの緩急だったり、(自分たちは)感じの違う形をやっています。そういうところ(パワーやスピード)で負けてるなというのは認めてて、違うところで勝負しようという方向性で今はやってますね。パワー、スピードは負けているから、それに追い付いて追い抜いてガシガシやっていこうという感じではなくて、自分たちは流派も違うし空手につぎ込める時間も他に比べたら全然短いので、じゃあどうしようと考えて、自分たちのやっている形だとか、力を振るうポイントを他の人たちと同じにしないで、自分たちなりの良さを出すためにどこに尽きる力を振るっていくかを常々考えながらやってますね。よそに比べて劣ってるところもあるけど、ここよりはここは勝ってるみたいなのを目指してやっていますね。

――その持ち味は

鈴木 松濤館とか他の形は全部が速くて強いみたいな感じなんですけど、剛柔流はゆっくりで雰囲気のある、重さのあるところもありつつ、その中でここの1ケ所だけ爆発する、バーンと跳ねるところがあるみたいな。そこの差って大きければ大きいほど速い動きの部分が引き立つし、それを引き立たせるそこ以外で重厚感があったら高評価だし、(他の流派とは)形自体の流れが違うので、型の挙動一つ一つではなく、全体の雰囲気や迫力を持ち味にしたいなと思ってやっています。

佐川 形は速いから勝つとか先にラインに届いたから勝つとかそういう世界ではないので、どの審判がどこをどのくらいの割合で見てるかとかは違うので難しいんですけど、その中でもうちは雰囲気で勝とうという感じですね。

――今までの試合で悔しかったり1番印象に残っている試合は何ですか

谷口 去年の団体戦で入場の時に失敗しちゃって(笑)。入場するときに鈴木がちょっと(前に)出て、後ろの二人が付いていくという入り方だったんですけど、自分鈴木と一緒に出ちゃって、ちょっとミスしちゃって「あっ」てなりました(笑)。

鈴木 僕がセンターでその時は分からなかったんですけど、後からビデオを見たら「あっ」て(笑)。全然入退場とかは評価に入らないんですけど、形って全部雰囲気なので、審判も「あ、ミスっちゃった」ていうのが分かるともう駄目で。

谷口 悔しいから今年は気をつけようって(笑)。

佐川 私は1年生の時の関東(関東学生選手権)。だから6月の関東大会で取りあえずやってみてこんな点数が低いんだって。全空連の目で見たらそんなに低い感じはしなかったんですけど、学連(の目)で見たらここまで下がっちゃうんだというのがあって、それのギャップがすごく驚いたなという感じですね。

鈴木 2年の関東の個人と団体どっちもです。結構高校で頑張ってきて、受験期でブランクはあったんですけど、大学入ってきて「よし頑張るぞ」という感じで続けてきました。1年生の時は何も学連のことは知らないからチャレンジ精神でやっていこうというふうに思っていて、個人は予選ギリギリで負けちゃって「でももう一歩だな、頑張ろう」という意欲が湧いて、後期の団体は全日本までつなげることができてそこでプラスのモチベーションになりました。それがあっての2年目で今年が勝負だなと思って挑んでたんですけど、そこで点数自体は個人では上がってたにも関わらず、予選を通れなくて「まだ駄目か」という気持ちの落差みたいなものがあって、そして後期に入って切り替えて団体に集中しようと思って。そこから新体制で三人とも不安があったと思うんですけど、もうちょっとできたなと終わってから思うところがあって。そういう面だと前期では自分が勝てる気でいって落ち込んだみたいな印象で、後期は悔いが残る、まだできたなという感じでした。結構今に比べたら団体(の練習を)やれる時間も少なかったんですけど、その中でもうちょっとできたんじゃないかなという後悔が残る後期の団体でしたね。2年の前期と後期です。

「自分の中では、自己満足が大事だと思う」(谷口)

流派が異なり、剛柔流に合わせるのに苦労したという谷口選手

――話は今年のことに変わります。これからある関東の目標は何ですか

鈴木 大目標、小目標があります。大目標の方は、関東の予選から準決(準決勝)という決勝トーナメントに行けるまで4校しかなくて、いつもその4校はほぼ同じメンバーなんですけど、そこの1校として自分たちがやりたいなというのです。年によって違いはありますが、4つの下に2校くらい全日本にいける枠があって、そこにランクインしたいなというのが小目標ですね。

――どのような演武を披露されますか

鈴木 予選形は去年と一緒で『久留頓破(クルルンファ)』という形をやります。もう1個トーナメントで用意している形は『安南(アーナン)』という形で、また違う流派の形で自由形の『安南(アーナン)』の方は『久留頓破(クルルンファ)』に比べたら未完成なんですけど、一応2つ用意して合宿中も頑張って練習していました。

――それぞれの形でどのようなところを大切にしていますか

佐川 基本的にはさっき言った雰囲気を出したいなというのがあるんですけど、雰囲気をどう出すかと考えたときに、『久留頓破(クルルンファ)』は速いところとゆっくりなところをしっかり分けるというのが大事かなと思っていて、『安南(アーナン)』に関しては力強さを推していきたいですね。

――少し話は変わりますが、千本突きの練習は形でもされていますか

鈴木 それは全体基本の時間にやるので。

佐川 まあ行事みたいな。

鈴木 自分たちが入学する前の代でやってて、伝統的にそんなのがあるみたいで、今の幹部の先輩方がそのとき1年生だったんですけど、この年やらないとみんなやり方分からなくなっちゃうからというのもあったらしいです。チームとしてイベントをこなしていくと一体感が生まれるのでそこで形、組手がバラバラになってしまうといけないですから、チーム内の雰囲気は良くなりますよね。

――奇麗さは求められますか

一同 もう考えられない(笑)!

鈴木 最初のうちはちゃんと数えてたんですよ。もう考えられないですね(笑)。

――形の中で最も大事な練習は何だと考えますか

鈴木 それはそれぞれの流派で言った方がいいんじゃない?

谷口 立ち方だと思います。動きが速くてバッと止まらなくてはいけなくて、一瞬で決める強さというのが一番大事だと思います。

――どのように練習されるのですか

谷口 移動技法だったり鏡を見ていかに美しく立つかというのが大事だと思います。

――佐川選手はいかがですか

佐川 私が今までした練習の中で一番効果があったと思ったのはイメトレですかね。結局自分がやってるのを想像できないときって現実でもできなくて、イメトレで自分ができるかどうかが大事で、その次に(実際に)やってみたらプラスのイメージからどれくらいずれているかというのが動画を撮ったりして分かることなので。何なら部活の半分はイメトレでいいと思ってます。

鈴木 いや、部活外でやれよ(笑)。

佐川 やってると寝ちゃうんだよね(笑)。家で布団の上でやってると寝ちゃうからしょうがない。

鈴木 僕に関しては佐川の言ったイメトレも大事だと思ったんですけど、今は少なくなっていても、基本の練習が一番いいかなと思ってて。これまで中高で形をやっていて、3時間練習があるとしたら30分アップで時間がとられるとしても2時間ぐらいは(基本の練習を)やっていたので。形の中で剛柔流も松濤館も全部そうだとは思うんですけど、共通している動作は必ずあって、基本でやっていたやつを組み合わせたいろんな種類の練習をやって、それがトレーニングにもつながるので、そういうのできっちりやってるとどの形をやっても決まりますね。たとえば自分たちがやってる『久留頓破(クルルンファ)』の練習を何回もやったとしたら、『久留頓破(クルルンファ)』の決め方しか分からなくなる。また違う形をやったときにまたこっちの決め方を勉強しないといけないという話になります。基本をやっておくと『久留頓破(クルルンファ)』も決まるし違う形も決まる。基本に時間をとられても意味ないよという意見もあったんですけど、自分の中ではそれが効率的だと思ってて形数も必要だったので、それぞれの練習をするよりは基本をやっていた方がぽっとやったときにきちんと決まる。雰囲気は後から付いてくるので基本ですかね。

佐川 鈴木くんは一番部内で基本がうまいですね。

鈴木 そう思いますね(笑)。

一同 (笑)。

鈴木 一番ちゃんとやってる。

佐川 まあそうね。基本っていうのは突いたり蹴ったりを蹴りは蹴りだけ、突きは突きだけみたいに、2、3個組み合わせたりもするんですけど、そういうのをその場でやったりするのをいいます。

――最後になりますが、関東への意気込みをお願いします

佐川 目標は勝つということなので、意気込みも勝つということなんですけど、三人で去年からずっとやっているので、今年はしっかり結果を出していきたいなと思ってます。

谷口 大きな目標は勝つことで、自分の中では、自己満足が大事だと思うので、試合で自分が満足できればいい結果につながると思うので、自己満足できるようにやりたいと思います。

鈴木 これまでのワセダが松濤館流でその中で剛柔流をやらせてもらっているということで、ワセダの流れを押し切って自分たちの方針なので、去年は結果を出せませんでしたが、結果を出して証明しないと認めてもらえないと思うので、今年こそはという思いもあります。ですけど、三人で2年間やってきて、(今は)落ち着いている期間ですけど、これまで結構伸びてて大会で披露するのが緊張もある反面楽しみなところもあって、そこで高評価をもらえて、さっき谷口が言ってた自己満足ではないですけど、そういう願望もちょっとあります。その結果優勝だったり全国大会につながったらいいなと思う気持ちもあるので、勝ちたいという責任感もあるんですけど、披露したいという願望もありますね。

――ありがとうございました!

(取材・編集 宇根加菜葉、林夏帆)

三人で組むのは2年目。さらなる高みを目指す

◆佐川開人(さがわ・かいと)(※写真左)

1997(平9)年5月30日生まれ。162センチ、65キロ。埼玉・早大本庄高出身。商学部3年。色紙の言葉もあらかじめWordで用意してくださった佐川選手。几帳面な性格を垣間見ることができました。

◆鈴木捷太(すずき・しょうた)(※写真中央)

1997(平9)年4月20日生まれ。167センチ、64キロ。群馬・太田高出身。スポーツ科学部3年。鈴木選手が空手を始めたきっかけは、子どもの頃『未来戦隊タイムレンジャー』のリーダー・タイムレッド役の永井大さんの空手シーンを番組で見て、憧れたからだそう。関東でも早大の形のリーダーとして、チームを引っ張っていきます!

◆谷口輝(たにぐち・ひかる)(※写真右)

1997(平9)年9月9日生まれ。164センチ、60キロ。早稲田佐賀高出身。スポーツ科学部3年。家族全員、剣道や柔道など何かしら武道の経験があるという谷口選手。谷口選手も気が付いたら空手を始めていたそうです。