個人戦で学生日本一を決める全日本学生選手権(全日本)が大阪・舞洲アリーナで開催された。早大からは3年ぶりに3選手が出場。末廣祥彦主将(スポ4=東京・世田谷学園)と今尾光(スポ4=大阪・浪速)にとっては最後の全日本。有終の美を飾れるよう意気込んで臨んだが入賞者は現れなかった。
まず1回戦に登場したのは塚本惇樹(スポ3=千葉・拓大紅陵)。「緊張して体が固まってしまった」という塚本だったが、体格で勝る近大の選手に対し、持ち前のポイントの取られない組手を展開する。コート動き回りながら時間を有効に使っていると互いに技が決まらないまま試合時間は残り数秒に。試合はこのまま判定勝負になるかと思われた。しかし、終了のブザーと同時に相手の突きが出されると主審の「止め」の合図がかかる。相手の突きに有効が認められ、残り時間0秒での敗戦。強豪近大の選手を相手に奮闘したが、初の全日本の舞台は惜しくも初戦敗退となった。続いては関東学生選手権でベスト32入りならずも選考会を突破しての全日本出場となった末廣が国士館大の辻田と2回戦で対戦した。初出場の塚本とは対照的に末廣は「緊張は少なかった」といつも通りの気迫を前面に押し出して相手を圧倒する組手を披露。しかし、上段突きで1ポイントを先取されると一転して苦しい展開になってしまう。技を多く繰り出して巻き返しを図るが、近い距離に入ってくる相手をなかなか攻略できない。適切な間合いで技が出せないまま試合は終了。この試合で力不足を痛感したという末廣。試合後には「(団体戦が始まるが)まずは自分自身が強くならきゃいけない」と何度も口にした。
気迫を前面に押し出して戦った末廣主将
関東学生選手権でベスト4に輝いた今尾は勢いそのままに3回戦まで順調に突破すると4回戦で近大の西村と対戦した。「そこ(4回戦)が山場だと思ってました」(今尾)。今尾にとって中高時代から拳を交えた西村は因縁の相手。高校の国体決勝、2年前の全日本で今尾を阻んだのも西村だった。報道陣も駆けつけ、多くの観客が視線を送る注目の試合。今尾は「今回こそは」と意気込んで臨んだ。開始からしばらくは両者のにらみ合いが続くが、先に技を仕掛けたのは今尾だった。牽制で得意の蹴りを繰り出すとその後も積極的に技を出し続ける。しかし、互いに決定打は出せないまま試合は判定へ。主審の笛で一斉に上がった4本の旗はすべて青旗。またしても宿敵に優勝を阻まれた。0-0の僅差での敗戦に「取るチャンスはたくさんあった」と悔しさをにじませた。
試合後には宿敵と健闘をたたえ合った今尾
3選手ともあと一本が取りきれず、僅差での敗戦となった。ことしの早大の選手の実力についてはOBの評価も高く、強豪校の選手と比べて大きく劣っているわけではないだろう。今大会をもって個人戦は終了するが、来たる団体戦シーズンへ向けて「技術ばかりでなくて気持ち的に強いチームにしていきたい」(末廣)と主将は気持ちの大切さを訴えた。チームが一丸となってその僅かな差を埋めることができれば、強豪校の撃破、そして昨年以上の高みが見えてくるはずだ。
(記事、写真 萩原大勝)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません
結果
▽男子個人組手
今尾 ベスト32
末廣 2回戦敗退
塚本 1回戦敗退
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コメント
福田聡監督(昭54政経卒)
――関東学生個人選手権を振り返って
塚本は最後帝京に負けたんですけども、大会前はケガから立ち直って調子が良くて、あんまり後ろに下がったりとか、変に技を出したりってよりはよく相手をよく見て、自分の動きの中で最後の方に必ず自分で勝負をかけて勝ってきた選手なので、危なげない試合でベスト32に入って、ベスト16をかけた試合では帝京の選手に判定負けだったんですよね。だから動きは非常にいいなと思っていました。今尾も関東大会では名の通っている国士館とか帝京の選手にも危なげなく勝っていたので、ことしの全日本個人もいいところまで行くんじゃないかと期待してました。末廣は初戦でゼッケンで失格になってしまいまして。明文化されていたルールではなかったんですけど、審判長の権限なものですから私としては何もできませんでした。せっかく四年間の最後の個人戦で歯がゆい思いをしたんですけども、そのあと学連の理事長推薦というかたちで出られることになりました。末廣は試合に出ていてもベスト32に入っただろうと私は思いますから、3人の力のある選手が出ましたという感じですね。
――試合前には選手にどんな声をかけられましたか
私の場合は道場で顔も見て話していますし、選手たちも自分で調整していると思いますので「頑張れよ」一言ぐらいで。
――きょうの結果を振り返っていかがですか
3人でもう少しいくとは思っていたので、私としては残念な結果に終わりましたね。塚本はどこかで仕掛けようとはしてたはずなんですけど、相手が近畿大で背が大きかったのでどこかで組み立てられなかったということですね。タイミングが良いのも入ってたんですけど、体が後ろに下がっての突きは大学では取ってくれないですね。塚本もケガしてますので、その辺もあったのかなとは思いますけど、早く治してもらって、後期の関東ではレギュラーメンバーとして期待したいですね。末廣は2年の冬に全国の空手道連盟の大会で個人で3位になってますので、テクニック、気合の面でも非常に優れた選手で日本トップクラスだと思います。ただ足を手術しまして、まだ力が入らなくなることもあるようで、3年前期の公式戦は全部出れなくて、そういうのを見ていると本人も忸怩(じくじ)たるものがあったかと思いますね。ケガからかどうかわかりませんが、モーションが大振りになってしまって相手が逃げてしまうものですから、彼が得意の技を出してもポイントに結びつかなかったですね。彼は今尾と並んでポイントゲッターなので、この2人がうまくいけばあと1人なので関東もいいところまでいけると思います。今尾はいい試合だったと思います。判定で負けてしまいましたけど、昔から同じ道場でずっと知っている相手で。西村とは通算で分が悪いそうなんですけどきょうは吹っ切ってたと思います。あとは関東では結構前蹴りでとってたんですけど西村には前蹴りが使えませんでしたかね。今尾は終始気を抜かないで集中してたと思います。やり切ったんじゃないですかね。
――試合後には選手に何か声をかけましたか
「いい試合だったんじゃないか」とさっき一言言いました。
――ことしの空手部の雰囲気はいかがですか
今は昔のように上下関係が厳しくないですし、変な性格の部員もいないので、全体で仲良くやっていますね。稽古している態度も全員が一生懸命何かをやろうとしているので去年と同じで雰囲気はいいと思います。ただスポーツ推薦とそうでない部員では力の差が歴然としてあるので、早慶戦もありますし、スポーツ推薦以外の選手のレベルをもう少し上げたいですね。スポーツ推薦のなかでも今尾末廣以外の選手はその2人が抜けてしまうのまでに彼らのノウハウを吸収してほしいなと。それが後期の課題ですね。
末廣祥彦主将(スポ4=東京・世田谷学園)
――今大会へは選考会を経ての出場となりました
関東(関東学生選手権)はゼッケンで失格になってしまって情けない結果に終わってしまったんですけど、今までの戦績とかを加味したうえで、理事長推薦で選考会に出場させてもらえることになりました。選考会は個人戦としては久々の試合で1勝1敗という結果だったんですけど、前で組手ができて、無事今大会に出場できることになりました。とりあえず安心したっていう感じですね(笑)。
――全日本へは2度目の出場となりましたが、試合前の心境は
緊張はいつもの団体戦と比べると少なかったです。いい意味で落ち着いてたのかなと思います。
――試合を振り返っていかがですか
近い間合いで殴り合うというのが多かったんですけど、相手が1点取ってから逃げに回っている感じだったので、その相手にポイントが取れなかったというのが一番大きかったですね。近い間合いに入ってきたときに決めきれませんでした。反則はきてたんで殴ってはいたんですけど、ポイントになる突きではなかったので。最初の1ポイント目の大事さはもちろんあるんですけど、その後に巻き返すことができなかったので、そこでポイントを取り切れなかったことが敗因だったと思います。あとは試合後にケガ明けで自分が強くなっているというのを実感できてないというのをすごく感じました。完全に復帰して強くなっていくというビジョンではなくて、ケガをしないようにしっかり今までの組手が出せるようにという考えが悪い結果につながってるんじゃないかなと。自分の足は回復しているという思い込みでもいいんで、そうでもしてまずは自分自身が強くならないと主将として情けないなと感じました。
――3人の出場で入賞者なしというこの結果を主将としてどう捉えていますか
ここ最近のワセダとしては3人の出場はいい方だったとは思うんですけど、それで満足してはいけないというのはすごくあります。やっぱり関東大会を戦っていると全日本出場を目指してやっているので出れたらすごいねとはなるんですけど、ただそれは通過点でしかないんだなというのはここへ来てよくわかりました。個人戦の全日本はもうないんですけど、団体戦も全日本に出るとかベスト8ではなくて、優勝を狙えるような大学、帝京大であったり近大のような強いところに勝つという意識を自分自身が強く持たないと部は強くならないなというのは自覚しました。主将としてこの負けはいい経験になりました。
――団体戦へ向けてどのようにチーム作りをしていきますか
先日フェンシングの選手の講演会を早稲田アスリートプログラムで聞いてきて、すごくいいなと思ったことがありまして。その方は攻めるというよりかはカウンタータイプの選手だったんですけど、体は引いていても気持ちは引いていないんだろうなというのを感じました。それは空手部でも一緒でスタイルとして後ろでとることが大事だとしても、気持ちが逃げに回るんじゃなくて、前でたたく意識を持ちつつ前後をうまく使うとか、そういうのは気持ちの持ち方だと思うので、後半は全日本とあと早慶戦もありますし、早慶戦は特に気持ちのぶつかり合いでどれだけ勝ちたいと思っているかが大事になってくると思います。気持ちの持ち方を試合前に持つんじゃなくてずっと持って練習で出していかないと先はないかなと思うので、私が一番にそれは実践していかなければいけないかなと思います。もちろん技術も大事なんですけど、そればかりではなくて気持ち的に強いチームにしていきたいです。これから団体戦にはなるんですけど、指導であったりとかそういう面に重点を置きすぎていたので、私自身が強くなってチームにいい影響を与えられたらなと思っています。熱い気持ちを私自身が持ちたいなときょうの試合を経て感じました。去年の兄(哲彦、平29スポ卒=東京・世田谷学園)を見ていてもそれがあったので。技術もあるけど心も強いチームに夏合宿からではなくてその前から目指していきたいです。
今尾光(スポ4=大阪・浪速)
――3度目の出場となりましたがきょうはどのような意気込みで臨まれましたか
もちろん優勝を狙ってて、最後の大会だったので、有終の美を飾れるようにと思って頑張ってたんですけど、4回戦で小さい頃からやってきたやつと当たるということでまずはそこが山場かなと、そこに焦点を合わせてました。そこを突破しないと上に上がれないと思ってたので。
――初戦では残り20秒まで点が入りませんでしたが焦りなどはありましたか
やりにくい相手でなかなか取らせてもらえなくて、正直ちょっと焦ってました。でも普通にやってればいけるかなという自信と落ち着きでなんとか勝てました。
――西村選手との試合を振り返っていかがですか
中学高校とずっとやってて、大学では2年前にも負けてて、今回こそはとやってたんですけどまさかのまたもやという感じで。ほとんど負けてますね。中二の時に最後に勝って以来で。高校でも国体決勝とか何回かやってきてますけどなかなか勝てないですね。心境としては受けて立つというよりは挑戦者という感じで、委縮せずにのびのびとした組手ができたんじゃないかなと思います。
――蹴りが多かったような印象ですが
狙いにいってはないんですけど、牽制で入ってこないようにして後半でポイントを取って勝つ作戦だったんですけど、そのまま判定になってしまいました。判定になればそのまま負けてしまうというのはあったので最後の10秒で稼げるようにしたいですね。
――きょうの結果をどう捉えていますか
負けは負けなので非常に悔しい気持ちでいっぱいなんですけど。取るチャンスはたくさんあったと思うので、次戦うチャンスがあれば一つ一つの技のクオリティを上げてもっといい勝負ができるようにしたいです。
――後半戦へ向けての抱負をお願いします
これからは団体戦がメインになってくると思うので、チームが勝つことをまずは第一に考えて、チームが勝つには自分の勝利が絶対になると思うので、まずは自分自身の実力の向上、それに並行して、周りも強くしていくようにしていきたいと思います。
塚本惇樹(スポ3=千葉・拓大紅陵)
――個人戦としては初めての全日本の舞台となりました
すごい緊張して、自分の動きをしようとは思ってたんですけど、体が固まってしまっていつも通りの動きができなかったのが悔しいですね。
――高校の全日本との違いはありますか
自分が高校で全日本に出たときは自分が最高学年で年上の人とかがいなかったんですけど、今回は年上の人も含めた試合ということで、周りの大学の「最後だから」という気迫みたいなものが高校の時の全国大会とはまた違った感じがありましたね。
――ケガの状態はいかがでしたか
この前の試合でまた少し痛めてしまって、しばらくは練習してなかったので、またここ一週間ぐらいで練習をちゃんとやり始めたという感じなので多少の練習不足というのもあったかなと思います。
――惜しい敗戦だったと思うのですが、試合を振り返っていかがですか
相手の選手については先輩からいろいろ聞いていて、作戦を練ってきたのでそれを試そうとしたんですけど、相手の選手がイメージしていた動きと違う動きだったので自分の中で動揺してしまいました。本当はポイントを取ろうとしていた技も見切られてしまって取れなかったので。失敗でした。
――具体的には
相手が結構体格がいいっていうのはわかってたので、自分がすごく身長が小さいので、まともにやりあっては正直勝てないかもなというのがあったので。時間を有効に使って時間が迫った時に一本取って勝とうという作戦でした。
――後半戦の抱負をお願いします
まずはケガをしないでしっかり全部の試合に万全の状態で参加できるようにというのと、団体戦がメインになってくるということで、チームに確実に一勝を持ってこれるようにスキルを磨いていって、チームの柱となれるようにしたいと思います。