五月晴れの下武道の聖地・日本武道館で、今季初めての団体戦である東日本大学選手権が行われた。多くのチームが照準を合わせて調整してきており、今後を占う試金石でもある今大会。1つでも勝ち進んでいきたいところであったが、男子は準々決勝で悔しい逆転負けを喫する。女子は3回戦で強豪に屈し、目標としていたベスト8には届かなかった。
男子は初戦で相手に一瞬の隙も与えず圧勝し、2回戦でも3勝1敗と順調に勝ち進む。迎えた3回戦の相手は立大。先鋒・芝本航矢(スポ1=東京・世田谷学園)が残り10秒で上段突きを決め逆転勝利を収めると、次鋒・笹野由宇(スポ2=東京・世田谷学園)は相手との距離を詰め先制に成功し2連勝。その後の試合は相手の攻撃を逃げ切り、引き分けに持ち込ませた。ベスト4を懸けた準々決勝では、先月行われた東京六大学大会(六大学)で勝利した法大と対戦。六大学の時と同じメンバーで臨んだが、思うように有効打を取れず中堅を終えて1勝2敗。あとがなくなった状況で、副将に今尾光(スポ4=大阪・浪速)が登場した。今尾は序盤から積極的に蹴りを狙う姿勢を見せる。終盤になっても集中力を切らさず攻め続け、ポイントを積み重ねた。ここまで2勝2敗、運命は大将戦に託されることになった。大将戦には笹野が登場。序盤はにらみ合いが続くが、2度有効を取られてしまう。時間だけが過ぎていき、崖っぷちに立たされた。ここで笹野は勝負に出る。残り14秒、笹野の右足は鮮やかに上がり、相手の首元へ。上段蹴りが決まり一挙3ポイントを獲得。見事な逆転に会場は大きく沸いた。しかし、このままでは終わらない。法大はすぐさま反撃に出て3-3の同点に持ち込む。この時点で残り数秒。笹野は何としてもポイントを取ろうと技を仕掛けるが、無念にもブザーの音が鳴り響いた。惜しすぎる敗戦に肩を落とし、2014年以来3年振りのベスト4進出とはならなかった。
笹野の健闘をたたえる団体戦メンバー
一方、女子は2回戦で一橋大に完勝。迎えた3回戦の相手は前年度3位である駒大だ。隙を突いていきたいところであるが、やはり強豪校のカベは厚かった。相手のパワーに圧倒され技を繰り出せない。距離を詰めて機会をうかがうが、一度もポイントを上げることはできなかった。女子団体組手は越間菜乃(教4=島根・石見智翠館)、中村朱里(スポ3=愛知・旭丘)、渡邊仁美(社3=東京・雙葉)の三人で組んで3年目、ことしが三人で迎えるラストシーズンとなる。それぞれチームに対する思い入れは強いだろう。「1つでも多く少しでも長く三人で戦っていけるように」(越間)。強豪校にも互角の戦いができるよう、また1つカベを乗り越えたいところだ。
蹴り技を繰り出す越間
今回は同点であっても先取した競技者が勝利というルール変更の影響もあり、戦略の選択も勝敗に関わっていた。今後も多くの大学が新ルールの対応を考えてくることが予想されるだろう。また、これから先はしばらく個人戦が続く。個人として力を伸ばし、それをチームに還元することができたら目標へ一歩近づくことができるはずだ。そして秋に進化した姿を見せてほしい。
(記事 加藤佑紀乃、写真 萩原大勝、加藤佑紀乃)
★ルーキー芝本が大車輪の活躍!
男子で一際存在感を放っていたのが芝本だ。先月も国際大会で優勝するなど数多くの実績を持つ期待の新人である。この日は全試合に先鋒として出場しチームで唯一全勝を挙げ、堂々の大学公式戦デビューを果たした。中でも法大戦では、六大学の時に敗れてしまった相手に対してリベンジ成功。緊張したというが、先輩からのエールを受け「自分は思い切って勝負を仕掛けていくだけ」と割り切り果敢に攻める強気の組手を見せた。頼もしいルーキーの活躍が楽しみだ。
1年生らしく思い切った空手を見せた芝本
結果
▽男子団体組手
1回戦 〇早大5-0東北学院大工学部
2回戦 〇早大3-1日大
3回戦 〇早大2-0立大
準々決勝 ●早大2-3法大
早大 ベスト8
▽女子団体組手
2回戦 〇早大3-0一橋大
3回戦 ●早大0-2駒大
早大 3回戦敗退
コメント
芝本航矢(スポ1=東京・世田谷学園)
――きょうはどのような意気込みで臨まれましたか
先輩方が一緒についていらっしゃるので、自分は思い切って勝負を仕掛けていくだけだと意気込んで臨みました
――先日の国際大会では優勝、きょうは出場した全試合で勝利しましたが最近の調子はいかがですか
ここに向けて整えてきたのでいい調子でできました。光先輩(今尾)と一緒にスペインに行かせていただいて、そこで沢山いろんな収穫があって、それを修正してここへ持ってきたので、スペインでの試合の反省を生かせたと思います。
――早大の選手として初の公式戦となりましたが緊張はありましたか
緊張したんですけど祥彦(末廣、スポ4=東京・世田谷学園)先輩の方から「全然気にしなくていいから自分のことだけを考えて、思い切って行ってこい」という言葉をいただいて、それだけで心に余裕ができて、自分らしい組手ができました。
――試合中にも声をかけられていましたが力になりましたか
自分は試合中に焦る癖があるので、「絶対に焦るな」というアドバイスをいただいてました。それをしっかり聞いて常に焦らず戦うことができました。
――法大との準々決勝を振り返っていかがですか
六大学大会では負けてしまった選手との試合だったので、当たった瞬間に絶対に借りを返すという気持ちでコートに立ちました。自分の組手をすれば絶対勝てると思っていたので、焦って自分の組手を崩すことのなく勝つことができました。
――進学先としてワセダを選んだ理由を教えてください
尊敬する高校の先輩方や他にも色んな憧れの先輩方がいらっしゃって、その方たちと一緒にインカレ優勝を目指して空手がしたかったので、ワセダに入りたいとずっと思っていました。
――「自主性」を重んじるワセダの練習には慣れましたか
高校時代は縛られるというか、練習の雰囲気が重いような感じがしたんですけど、大学では自分が何をしなければいなければいけないのかという課題を常に考えてやるようになりました。自分の力がレベルアップしているのがわかりますし、いい雰囲気でやれていると思います。
――関東学生個人選手権への意気込みを教えてください
出させてもらっているからには1年生とかは関係ないんで、まずは全国出場を目指して、元気に声出して思い切っていきたいと思います。
越間菜乃(教4=島根・石見智翠館)
――今大会にはどのような意気込みで臨まれましたか
ことしは東日本(東日本大学選手権)と関東大会(関東大学選手権)でベスト8というのを目標に掲げて一年をスタートしました。ベスト8を目指して一つでも多く勝ちたいなという気持ちでした。2回戦目で当たるのが強い相手というのは分かっていたので、そこになんとか食らい付いていければと思っていました。
――2回戦目で当たった駒大はやはり手ごわかったでしょうか
そうですね。パワーも強かったですし…。強かったなと感じましたが、1点でも取れたら良かったと思います。
――今大会を通して収穫や課題は見つかりましたか
個人的には、2回戦目は特に相手のパワーに負けてしまって技が出せていなかったと思うので、しっかり自分も体格を生かして前で勝負していきたいと思います。チームとしては、中村と自分の前二人でしっかり勝って、勝ち進んでいけるようにしたいと思います。
――このチームは結成して3年目となり、チームとしてもラストイヤーになります。これまでと今で変わったことはありますか
もちろん時間も経っているので、会話も多くなって試合中に声を掛け合うことも増えました。チームで戦っているなという感じは年々増していてことしは今までで一番チームとしてまとまりが出ていると思います。
――ご自身はラストイヤーとなりますが、ラストイヤーに懸ける思いは
3年生2人とずっとやってきて、2人に対する思い入れも強いですし、何とか最後の年に結果を残してこのチームで良かったと思えるように、後期の団体戦も頑張りたいと思います。
――今後一年間の目標を教えてください
チームとしては関東大会ベスト8で、全日本大学選手権は毎年出場できているのですが1回戦で負けてしまうので、ベスト8を目標に1つでも多く少しでも長く3人で戦っていけるようにしたいです。個人としては、全日本学生選手権に出場したことがないので、今月の関東学生選手権でなんとか全日本の出場権を得られるように頑張りたいと思います。