『ラスト』は、4年生だけではない。このメンバーで挑むシーズンは誰にとっても『ラスト』なのだ。ワセダに入るきっかけともなった憧れの先輩とともに戦う3人の新鋭、澤入迅人(スポ2=静岡・常葉菊川)、塚本惇樹(スポ2=千葉・拓大紅陵)、笹野由宇(スポ1=東京・世田谷学園)。団体戦で勝つためには自分たちの勝利は必要条件と3人は口をそろえる。目標である『日本一』を目指し、最後の秋が始まる前に今の心境を伺った。
※この取材は9月22日に行われたものです。
憧れの3人を追いかけてワセダへ
ルーキー笹野は前期から頭角を現した
――最初に会った時のお互いの印象はいかがでしたか
塚本 自分と澤入が同級生なのですが、初めて会ったのは入試でした。第一印象はイケメンだなあって(笑)。澤入はしゃべってみてもすごく優しいやつでいいやつなんだなというのは感じました。2年生になって、笹野が入ってきて見ての通りイケメンだな(笑)。キビキビして動きもいいですし、いいやつだなと思いました。
澤入 同期の塚本は最初あったときに、自分は身長が低いので、デカいやつだったらどうしようと正直思っていて(笑)。自分より(塚本選手は身長が)低いんですよ。一緒ぐらいっちゃ一緒ぐらいなのでおお良かったとめちゃくちゃ安心しました。笹野は最初見たときに高校の時に見たことはあったのですが、身長がすごく小さかったんですよ。それなのに大きくなっていたんで、しかもイケメンじゃないですか。いいなあこいつかっこいいなと。
一同 (笑)。
笹野 大学が決まって3月にワセダに、入学前に週2日くらいで練習しに来ていたのですが、まだ全然大学のことが分からなくて質問したり最初の科目登録とかのことをいろいろ聞いたりしたのですが、全部優しく答えてくださって。二人とも優しいなという印象です。
――笹野選手から見て、お二人は空手の先輩としてどんな先輩ですか
笹野 強いですよね、やっぱり。普段は結構優しく接してくれるんですけど練習中とかはいろんなアドバイスとか結構きつくバンバン注意してくれるのでそういうところが本当にうれしいですね。先輩として尊敬できますね。
――ワセダに入学した理由は
澤入 最初勉強では絶対に来られないと思っていて考えてなかったのですが、推薦があるよというのを聞いて。末廣哲彦主将(スポ4=東京・世田谷学園)、今尾光先輩(スポ3=大阪・浪速)、末廣祥彦先輩(スポ3=東京・世田谷学園)の3人がいると聞いて、自分達からしたらあの3人はレベルが違うと思うのですが、一緒にできるなら入ってみたいなという気持ちが一番大きかったです。
塚本 自分は中学校の時に東京にいて、東京都の強化練習で今3年生の祥彦先輩と、4年生の哲先輩(末廣哲主将)によくしてもらっていて一緒に空手やりたいなと思っていました。そして、たまたま大学から声が掛かったのでいい機会だなと思って早大に入りたいなと思いました。
笹野 自分の高校が世田谷学園で、自分が1年生で入学した時の主将の祥彦先輩に本当に憧れていて。自分が何かしようとするとアドバイスくれるなど主将としても出来上がっている人ですごかったんです。兄の哲彦先輩もワセダにいるということで、推薦をもらったときはうれしかったですね。
――憧れている3人の選手と、今、実際一緒に同じチームとしてやってみていかがですか
笹野 いろんな強い刺激が起きますよね。
塚本 指示が的確なので、聞いていて否定することはないというか言っていることは「ああそうなんだ」と完璧に全部聞こえますね。そういうところを尊敬しているし、見習わないといけないなと感じますね。
澤入 技術は当然なのですが、部活内での行動の面や生活の面とかでも的確にアドバイスをくれるので、全体的にすごく尊敬できるなと入ってからより強く思いました。
――入部する前のワセダの空手部のイメージと、今とで変わった点はありますか
塚本 思っていたより、上下関係はしっかりしているんですが、仲いい時は仲がいいですし、フレンドリーです。
澤入 大学の部活なので練習中も部活以外も先輩がいて、後輩もずっとへこへこしているイメージだったのですが、部活中以外は先輩もとても優しくフレンドリーなので部活以外の時は結構楽しいかなと思います。
――それぞれが考えるワセダの空手部の強みは何だと思いますか
塚本 他の大学と比べてワセダの空手部は自主性を一番大事にしています。他の部は監督やコーチが毎日いてやらされているところもあると思いますが、監督も毎日来るわけじゃなくて来ない日もあって、そんな中でもどれだけ自分を追い込めるか。自主性が高いので自由です。自分がやりたいことを練習できるのは強みというかいいところなんじゃないかなと思います。
澤入 少し似てしまうのですが監督やコーチが毎日いるわけではなくて、練習メニューも主将が考えたり、たまにこういう練習がいいとかあるとか聞いてくれたりもします。そうやって選手だけで練習組んでいるので自分の課題を見つけやすかったり、課題を練習中に自分で考えてやったりしやすい環境だと思うので、課題の改善や発見はしやすいなと思いました。
『引き』の組手から『攻め』の組手へ
塚本は2年生になって心の持ちようが変わったという
――それでは改めて前期の試合を振り返っていかがですか
澤入 まず団体なんですが、東日本大学選手権で国士舘大と当たって、自分は大将として出ました。自分がその試合に勝てば勝ちだったんですが、結局自分が負けてチームとしても負けてしまいました。それと、関東個人(関東学生選手権)っていう全日本学生選手権(全日本)に進める大会で、組み合わせから見たら(全日本に)行けそうだったんですけど、全然動きが良くなくて。勝てなくて行けませんでした。全体的にやっぱり自信がなかったなって感じたので、練習でもっと自信をつけなきゃいけないなって思いました。
塚本 前期は澤入とちょっと内容かぶっちゃうところもありますが、東日本で先鋒として国士舘大との試合に出た時に、『引き』の組手になっちゃって相手に攻められる一方でほぼ何もできないみたいな状態になってしまうことがありました。前期はそういう試合が多くて相手を見すぎてやられる、ということが多かったのが反省ですね。
笹野 自分は関東個人で組み合わせが良くて、全日本に出ることができたんですが、1つ全日本に出場したということで自信が付きました。ただ自分の課題であるのですが『引き』の組手をとってしまうので、もう少し攻め技を増やしていきたいと思います。
――収穫や課題はありますか
塚本 前期の反省で『引き』の組手が多かったと言ったんですけど、後期はもっと自分から技を仕掛けてポイントを取れるようにしていくことが後期の課題かなって思っています。
澤入 技術的な感じになっちゃうんですけど、自分結構大きく詰めて技を出そうとするのですが、その大きく詰めているときに相手にやられることが多いので、細かく詰めていつでも自分が反応できるようにすることを今の課題としてやっています。
笹野 自分は相手にポイントを取られた時に追い付いて逆転するっていうのがなかなかできなくて。後期の課題は必ずポイントが取れる得意技をつくっていきたいなと思っています。
――澤入選手と塚本選手は昨年から試合に出場していますが、2年生になり変化はありましたか
澤入 ちょっと良い事というか感覚的なことなんですけど、高校と大学に入って試合の感じで、高校のときだったらこれでポイント取れるのに取れないなとか、試合中に「あ、全然(ポイント)取れないんだなー」って思っちゃうことが1年の時は多かったです。2年になって慣れてきた部分もあるんですが、出した技でポイントが取れる確率が増えてきました。正確にポイントが取れるようになってきたことは2年になってできるようになったことです。
塚本 技術面ではなくて心の面なんですけど、1年生の時はあんまり勝ち負けにこだわらなくて、先輩からも「思いっきりやれ」としか言われなかったので結構自由にやっていたのですが、2年生になって後輩が入って来ることによって自分も勝たないといけない立場になってきたので、試合の時は絶対に勝ちに行くっていう気持ちが強くなりました。
――笹野選手は早くから存在感を示すシーズンになったのではないでしょうか
笹野 いや、たまたま組み合わせが良くて、関東個人戦に出られただけなので、自分が強いとかは全然思ってないんです。でもそれが自信になったので、これからの関東大学選手権が10月にあるんですけど、それにつなげられたらいいなと思っています。
――全日本の舞台では何を感じましたか
笹野 大学に入って大きい大会は(全日本が)初めてで、出場できたことは本当にうれしかったです。その中で恥じないようにどのような組手をして、相手も分かっていたのでYou Tubeで動画を見て研究をしてやっていました。負けてしまったんですけど、本当にいい経験になりました。
自分たちの勝利を先輩につなぐ
リラックスした表情の澤入も試合中は人一倍気合いがみなぎる
――後期の団体戦で上位に行くためにも個人の力を伸ばしていくことが不可欠になると思いますが、そのために取り組んでいきたいことは
塚本 個人のスキルアップのためには、やっぱり自分からポイントを取らないと勝ちにはつながらないので、勝つためにも今後の練習で相手がやりづらいような組手をしつつ、自分からポイントを積極的に取りにいけるようにしないといけないと思っています。
澤入 (東日本で)国士舘大に負けちゃった時もそうだったんですけど、試合の中で全体的に自分は何もできなくて相手のペースでポイントを取られ負けることが多いので、試合の中で自分が動きの主導権を握れるようにしっかりと何をするにも自分でプレッシャーをかけて相手を動かすっていうのをできるようにしないといけないなと思っています。
笹野 自分もまず攻めの組手ができないので自分から攻めていくようにしないとポイントも取れず勝てないので、ポイントを取れるようにしたいです。
――前期が終わってから合宿にも行かれたと伺っておりますが、ここまでどのような取り組みをされてきましたか
塚本 前期が終わり最初の大きな行事が合宿だったんですけど、合宿では部員全員で一人一人目標を書き、自分は「相手がやりづらい組手をする」っていう目標を立てました。要は周りと比べて身長が低い方なので、普通に組手をしてもどうしてもリーチの差とかでタイミングが同じでも、大きい人の方が技も見えやすいし力もあるのでそっちの方に(審判の)旗が上がりやすいんですよね。だから、第一の目標として相手がやりづらいような組手をするってことを心掛けてやっていました。
澤入 さっき言った技術面とは別になるのですが、空手で組手なんですけど、何をするにもやっぱり基本が大事だと思いました。今まで自分は全然基本の練習を来なくて、「別に組手じゃないしいいやー」って手を抜いていたところがあったんです。やっぱりつながってくるところがあるので基本の練習で手を抜かず、全然できてないので言われたところや、先輩のアドバイスをもらったところはちゃんと意識して全力でやるようにすることを、前期から特に合宿中は意識してやっていました。
笹野 基本の動作っていう空手の基本があるんですけど、自分の合宿の目標としてその基本を確実に身に付けてそれを組手に活かすってことをやってきました。突きのコースとかで基本の真っ直ぐのコースとかちょっと基本から外れて曲げて突くとかいろいろあるんですけど、そういうのを含めて基本の動作は本当に大切だなって思いました。
――夏合宿の練習はやはり大変でしたか
澤入 相当きつかったです・・・。肩車をして前屈立ちっていう、足を1メートルくらい開いて立って前足を直角にするのですが、普通にやってもきついんですよ。それを肩車して人を乗せて往復するっていうメニューが一番きつかったです。
――このメニューは誰かが考えられたやつですか
一同 まぁまぁ(笑)。(奥で対談する先輩方を見つめる)
――他にも何かきついメニューはありましたか
一同 あれきつかったよね…おんぶしてダッシュ(笑)
笹野 おんぶしてダッシュするのを笛で、壁にタッチできるまでみたいな。それでピッて鳴ったら全力ダッシュ、笛鳴ったら戻る全力…向こうの壁に着くまでという練習ですね。
――それはいつもはやらない練習なのでしょうか
澤入 いつもやっている練習の強化版みたいな。いつもは普通に人の足で走って、バックしながらもも上げしてダーッて下がってってやるんですけど、それの強化版です(笑)。
一同 (笑)。
――合宿の練習以外で楽しかった思い出などあれば教えて下さい
塚本 それはあれじゃない、流しそうめんとか。
澤入 流しそうめん楽しかった。
笹野 あとバーベキューも楽しかったです。
塚本 でもやっぱり流しそうめんが楽しかった(笑)。
――4年生と臨むシーズンとしては最後となりますが、そのことについてどのように考えていますか
塚本 前期から始まって目標を『日本一』にして、それを念頭に置いて練習してきました。主将の末廣哲彦先輩は中学校の時から知っていたので、最後に日本一を取らせてあげたいなと思っています。
澤入 4年生の中でも特に哲彦先輩は、普段からも部活全体の雰囲気を明るくしてくれたり、練習中もことあるごとにアドバイスをくれたり、本当にチーム全体で強くしようとしてくれているなというのを感じます。一緒に練習していてこの人のために勝ちたいなと思える先輩だなと思っています。
笹野 日頃の練習でのアドバイスや注意など全体的にいろいろ強く言ってくれます。哲先輩も練習中に「これじゃあ日本一になれねえよ」と結構強い口調で言ってくれるので、負けられないなと。先輩のためにも、ワセダのためにも。
――チーム内での自分たちの役割をどのように考えていますか
笹野 あそこのトップ3人(末廣哲、末廣祥、今尾)がいるので、自分たちは団体戦で出た時に勝てば(チームは)だいたい勝てるという感じです。自分たちが、自分が勝てば本当にワセダが勝つというかんじですね。
塚本 その通りですね。
――後期の目標はありますか
澤入 チーム全体の目標である『日本一』ということで、全日本大学選手権に出て『日本一』を取るというのももちろんあります。自分は1年生だった去年の早慶戦で先鋒をやらせていただいたのですが、ボロ負けでチームも負けてしまいました。早慶戦に出たら、自分でチームを盛り上げられるように絶対に勝ちたいなと思います。
笹野 自分は去年の早慶戦を高校の監督と一緒に観に行って、すごい雰囲気でやっているなと思い、来年ここに出られると思ったらすごいなと。早く出たいですよね(笑)。
塚本 後期って団体戦がメインになると思うのですが、団体戦に出ることができたら絶対に勝って帰ってくるというのが1つの大きな目標かなと思います。
――最後に後期に向けて意気込みをお願いします
塚本 絶対に日本一を取ります。
笹野、澤入 使われちゃった(笑)。
澤入 試合中に自信がないので、絶対強気で戦って勝ってきたいと思います。
笹野 自分が出る団体戦の試合は負けないです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 加藤佑紀乃、秦絵里香)
下級生トリオが先輩たちを盛り立てます!
◆澤入迅人(さわいり・はやと)(※写真左)
1996(平8)年10月13日生まれ。168センチ、67キロ。B型。静岡・常葉菊川高出身。スポーツ科学部2年。夏は黒くいたくて、ひたすら焼くことにこだわっていたという意外な一面もお話ししてくださった澤入選手。自信のなさを克服し秋は強気で戦いたいと宣言。より気迫のこもった組手に期待です。
◆塚本惇樹(つかもと・じゅんき)(※写真右)
1996(平8)年4月12日生まれ。163センチ、60キロ。A型。千葉・拓大紅陵高出身。スポーツ科学部2年。日常生活から太りやすい体質のため食べ過ぎないようにしたり走って調整をするというストイックな塚本選手。夏合宿で『相手がやりづらい組手をする』という目標を立て練習をしているということで、秋にはさらに進化した塚本選手の姿が見られるでしょう。
◆笹野由宇(ささの・ゆう)(※写真中央)
1997(平9)年10月23日生まれ。175センチ60キロ。A型。東京・世田谷学園出身。スポーツ科学部1年。対談では緊張した面持ちでしたが、質問に対して丁寧に答えてくださいました。夏休みは海に遊びに行きながらも、空手の稽古を怠らないあたりに笹野選手らしい真面目さがうかがえました。