夏休みも終わりが近付き、徐々に人けも増えてきた早稲田キャンパス。雨の降りしきる中、国内外から多くの人が早大空手部の創部85周年を記念する演武会に駆け付けた。現役部員はもちろん、付属校・系属校の空手部員や早稲田空手ジュニアクラブの子どもたちといった若い世代から年の離れたOBの先輩方まで、さらには海外から集った空手愛好家を加えた合同稽古からスタート。「Don‘t forget kiai!」。道場に響く声に応えるように老若男女が気合いの入った形を打つ。その後、部員たちは形と組手ともに日頃の稽古で培った技を惜しみなく披露した。
個人形/早大空手部の一員として堂々の演武
早大の一員として堂々の演武を見せた國米
早大勢の先陣を切って登場したのは國米櫻(国際コミュニケーション研究科M2=京都・同大)。米国代表ながら早大の空手部員として出場したことしのFISU第10回世界学生空手道選手権大会で準優勝に輝いた実力者だ。節目の年の演武会に独特の緊張感を感じながらも「今の自分の中でベストの形が打てた」と國米。得意とする『八歩連(パープーレン)』を披露し、観衆を魅了した。また、この日は英語による司会も担当。運営の立場からも演武会を支えた。「卒業してからもここで広がった輪を大切にしてこれからも頑張りたい」。そう言って充実の表情を浮かべた。
女子団体形/もう一度全国の舞台へ――
ことしの女子形は下級生主体で挑む
続いて男女の団体形に移った。女子団体形は1、2年生のみの若い顔触れで『慈恩(ジオン)』を披露。2年生の石川みらい(社2=群馬・前橋工)が最上級生として引っ張るが、やはり苦労も多いと言う。3年連続のベスト4進出から一転、昨年の関東大学選手権では予選敗退で涙をのんだ。悔しさを味わったあの日から間もなく一年。伝統的にワセダの女子形は関東でも結果を残してきたという自負がある。演武会後の記念祝賀会ではスライドに上映された先輩たちの雄姿もしっかりと目に焼き付けた。「ワセダは組手だけでなく団体形も勝っていけることを結果として残したい」。最後の言葉に力を込めた。
試合組手/外国人選手との組手が貴重な経験に
蹴りを入れる末廣哲主将。外国人選手にもひるまず向かっていった
試合組手には男子4名、女子1名が出場。体が一回り大きい外国人選手と真剣勝負を繰り広げた。「日本の人より前で勝負しようという気持ちが強いので、そこは勉強させていただきました」(末廣哲主将)。組手における『前に出る』ことの重要性を日々痛感しているからこそ、得るものも大きかったようだ。試合後は握手や抱擁を交わし、お互いの健闘をたたえ合う姿も。組手メンバーとしても貴重な経験となった今回の演武会。これから始まる後期の団体戦にもこの経験はきっと生きてくるはずだ。
(記事 郡司幸耀、写真 秦絵里香)
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コメント
末廣哲彦主将(スポ4=東京・世田谷学園)
――きょう一日を振り返っていかがですか
外国の方とも一緒に練習でき、OBの先輩方にもたくさん来ていただいたので、空手やっていて良かったなと思いました。
――試合組手で外国の方と組んでみた感想は
やっぱり威圧感が日本人と違うなと。というのも、あっちの人は前に出ないと死ぬと思って組手をやっていて、そういう意味で日本の人より前で勝負しようという気持ちが強いので、そこは勉強させていただきました。
――自分を含めて出場した7人の組手メンバーについては
前に出ている部員もいたので、本当に全体を通して一つの良いきっかけになったのかなと思っています。
――形の演武についてはどうご覧になりましたか
そうですね、女子もしっかり4人でやっていて。男子も一人ケガしているので二人でしたけど、合宿でやったことがしっかり出ていたのかなと思いますね。
國米櫻(国際コミュニケーション研究科M2=京都・同大)
――きょうの演武会はいかがでしたか
試合とはまた違う雰囲気が道場の中にあったので少し緊張したのですが、みんなの前で今の自分の中でベストの形を打てたので良かったと思います。
――自身の今回の演舞を振り返っていかがでしたか
どうしても間が空いてしまった、という思いが自分の中にありました。もう少し流れとスピードを意識できていたらさらに良いものになったと思います。
――演じられた『八歩連(パープーレン)』について詳しく教えていただけますか
国際大会で現在はやっている形なのですが、スピードや動作の緩急がとてもバランスよく取れる形だと思います。その形が自分の中でとても表現しやすいと思うので、今一番好きな形です。
――今日は国内外から多数の方が来られ、合同練習をしたり、一緒に組手を組んだりするシーンも見られましたがどうでしたか
今回の85周年で部活以外の人々、海外の空手愛好者の方々と会話をしたり練習をしたりする中で、空手へのアプローチの仕方に違いを感じました。私たちはスポーツとして空手を受け取っているのに対して、海外の方々は武道を極めている姿勢があるので、私の中で振り返らないといけない部分があることを感じさせられました。とても刺激になりましたし、いろいろ勉強にもなりました。
――最後に早稲田大学空手部の一員として85周年を迎えられたことについて一言お願いします
このタイミングに部員でいれたことが本当にうれしいです。ことしは世界学生(世界学生選手権)にアメリカ代表ではありましたが、早稲田大学の空手部員として出場させていただきました。OBの方々からの応援の中、結果を残せた部分と今回の式典をこの場で手伝わせていただくことができた部分は本当にうれしいことだと思います。今年一年だけなのですが、卒業してからもここで広がった輪を大切にしてこれからも頑張ります。
石川みらい(社2=群馬・前橋工)
――演武会を振り返って雰囲気などいかがでしたか
85周年でとても壮大な会だと分かったのと、そんな会に立ち会うことができたのは良い経験だったと思います。また、たくさんの外国人やOBの方がいらっしゃる中で形を打てたことは光栄だと思いました。もっと練習してワセダに貢献できるように頑張りたいという思いが強まりました。
――女子団体として形を打った『慈恩(ジオン)』についてはどうでしたか
本当は3人で打つのが団体の形なのですが、今回は85周年という大きな式典であるということもあり4人で打たせてもらいました。10月10日に関東大学選手権があり、その大会でしっかりワセダの名前を轟かせる形ができるようにすることを目標にやっていますが、少し困難な部分が多いです。しかしこの大会までにはワセダの名前を売って来ようと思っています。あと少しの時間を有意義に使えるように練習に励みたいと思っています。
――スライドで過去の女子の先輩方の活躍を見て、士気が高まりましたか
そうですね。去年も団体形に出させていただいたのですが、その時に組んでいた4年生の先輩は全日本(大学選手権)3位のときに団体に加わっていて、その先輩の元でやっていたのに思うような結果が残せず悔しい思いをさせてしまいました。自分はまだ2年生で少し時間があると思っている部分もあるので、気持ちを入れ替え、機会を逃さず一回一回の大会をOGの先輩方のようにしっかり戦っていきたいと思います。
――下級生だけでの団体戦に不安はありますか
そうですね。3年生がいない分、上に立っていく覚悟はあったのですが、いきなり2年生で最上級生という役が回ってきたこともあり、なかなかうまくいかない部分もあります。しかしそれが今の自分の成長するべきところなのかなと思って、3、4年でしっかり今の努力が生きるように、全力でやっていきたいと思っています。
――最後に関東大学選手権に向けての意気込みをお願いします
何回も出られる、という言葉に甘えず自分たちのためにも、ことしでしっかりワセダは組手だけでなく団体形も勝っていけることを結果として残したいです。