今季初の個人戦となった関東学生選手権に、早大からは形の部に5人、組手の部に13人が出場した。7月に大阪で行われる全日本大学選手権(全日本)の切符を懸けたこの大会だったが、出場を決めたのは笹野由宇(スポ1=東京・世田谷学園)のみ。実力者が早々と敗退し、悔しい大会となった。
トーナメントで争われた組手の部。女子は出場した3選手のいずれも初戦で敗れると、男子も1、2年時に全日本に出場しており、昨年のこの大会では3位入賞を果たしている今尾光(スポ3=大阪・浪速)ら団体戦の主力メンバーが相次いで敗退していく。その中でも一人の選手が健闘した。上遠野暢太(文3=東京・早大学院)だ。時折、相手に突きで攻め込まれる場面もあったが、「殴り合いで負けたくない」と闘志を燃やし、2勝を挙げる。4回戦で敗れたが、自身2度目の個人戦で持てる力を出し切った。
4回戦まで進出した上遠野
先輩たちが次々と敗退していく一方で、ルーキー・笹野は安定した戦いぶりを見せる。1回戦では硬さがあったが、2回戦以降は動きがよくなったという笹野。この日は突きが鋭く決まり、順調に点を重ねていく。また、上段蹴りによる一本で大きくリードを奪う場面も。4回戦を3-1で突破し、見事に全日本出場を決めた。「1年生でも部のメンバーとして出ているからには勝ちにいく」(笹野)。チームで唯一の出場となる全日本の舞台でも、早大の代表として恥じない戦いをしてくれるはずだ。
ベスト16入りを果たした笹野。終始気合いが入っていた
「不甲斐ない結果」(末廣哲主将)。ここまで団体戦では好調だっただけに、今回の結果はもの足りない。下級生時から経験豊富な選手が多いだけに、最低でもベスト32には残り、全日本につなげてほしかった。空手は一対一の勝負。それぞれが一人の選手として勝負できなければ、個人戦はもちろん、この先の団体戦での上位進出も難しくなる。秋の団体戦へ向けても、まずは個の力を伸ばすことが最重要課題だ。この先は次の関東大学選手権までしばらく間が空く。夏の合宿を中心に練習量は増していくだろう。しかし、苦しい時期を全員で乗り越えた先に、必ず光は見える。このまま終わってなるものか。武道館で見せる意地に期待したい。
(記事 郡司幸耀、写真 當間優希、三田侑実)
★形の部でも上位進出者は現れず
スピード感とキレのある演武を披露した早津
形の部には男子3人、女子2人が出場。決勝トーナメント進出者は現れなかった。4年生として最後の個人戦に挑んだ早津陸(先理4=東京・世田谷学園)は、スピード感とキレのある『カンクウダイ』を披露。しかし、「力みすぎていた」と反省するように、得点は思うように伸びず21.6点で予選敗退に終わった。「力強さが足りない」と早津。個人戦は最後となったが、10月の関東大学選手権には初めて団体形に出場する。今度こそ4年間の集大成を見せられるか。
結果
▽男子個人組手
笹野 ベスト16
※上位進出者のみ掲載
コメント
末廣哲彦主将(スポ4=東京・世田谷学園)
――きょうの早大勢の結果をどう受け止めますか
全日本につながったのが1年生の笹野だけというのは、不甲斐ない結果だったなと思いますね。勝たなきゃいけないやつが勝てる相手に勝ち切れてないというところが目立っていたのでそこはなくさないと秋も同じことが続いてしまうと思います。
――ご自身の成績に関しては
本当に情けないですね。最初リードした後に「このまま守っていれば大丈夫」と思ってしまったので、そこで気持ちが悪い方に行ってしまったかなと思いますね。そこで「まだ点を取るんだ」という気持ちをもっと持てなきゃ今後勝っていくのは厳しいかなと思います。
――東日本大学選手権まではチームは上り調子だったと思いますが
やり方を変えたわけではなかったのですが、やはり団体だと誰かが負けても誰かが勝ってフォローしていけるんですど、個人はチームじゃなくてその人自身が強くないと勝てないので、そういう意味で自分たちが本当に強いかと言われたら、「チームとしては強いよね」と言われてしまうような段階なのかなときょうを通して感じましたね。
――今後、団体戦で上位進出を目指す上でも個の力を伸ばすことが必要だと
そうですね。最後は個人競技になってくるので、個々の力を6月と7月、そして合宿をしっかり迎えて秋に備えたいと思います。
――弟の末廣祥彦選手(スポ3=東京・世田谷学園)は故障のため、欠場となってしまいましたが
けがしないのが一番ですね。そこは他の選手にも言えますけど、けが人が増えているので、どれだけ自己管理するかというところをもっと大事にしてほしいですね。練習できない期間はもったいないので、そこはなくさないとチームとしても強くならないのかなと思います。
――早大から唯一の全日本出場を果たした笹野選手でついてはいかがですか
きょうは本当にいい試合をしていたと思いますね。思い切りがいいので、その笹野のよさがしっかり出ていたと思います。
――7月の全日本選手権に向けて笹野選手にエールをお願いします
1年生だからといって気負うことなく、元気よくやってほしいなと思います。
――秋の団体戦に向けて一言お願いします
この悔しさを忘れずに、やるからには優勝できるように頑張ります。
早津陸(先理4=東京・世田谷学園)
――きょうの試合にはどのような気持ちで臨みましたか
4年間で最後の個人戦だったので、ことしこそ、という気持ちで臨みました。
――ご自身の演技を振り返っていかがでしたか
ちょっと力みすぎていたかなと思います。そんなに緊張はなかったですけど、うまく調整しきれなかったかなという感じです。
――東京六大学大会からこの大会までの間で何か調整はされていましたか
この試合までにいくつか自分の試合があったので、そこで少しずつ調子を上げていきました。
――形の部では決勝トーナメント進出者はいませんでしたが全体を見ていかがでしたか
他の選手を見ていて、力強さが全然足りていないなと思いました。スピードとキレだけでは勝てない世界だなと思います。元々そんなにパワーがないので、スピードとキレを重点的に練習してきたんですけど、やはりパワーがないと、ベスト8にあがるような選手とは差が開いてしまうかなと。そこが課題かなと思います。
――秋に向けて夏の取り組み方はどうされますか
団体形は初めてなのですが、明後日から再スタートという形で、コーチや先輩方に色々聞きながらやっていこうと思います。
今尾光(スポ3=大阪・浪速)
――きょうの試合はどのような気持ちで臨みましたか
結果は良くなかったんですけど、もちろん上を目指して頑張っていました。最後の試合は内容が良くなくて、勝ち切れずにいたので、次は最後まで頂点を狙いにいきます。
――初めて全日本出場を逃しました
そうですね。1年生、2年生と出場していて、もちろんことしも出たいと思っていたんですけど。この結果を受け入れないといけないので、次の大会に向けて頑張りたいです。
――意識していた先制に成功し、最後は蹴りでとられてしまいましたが
先制して途中までよかったんですけど、最後まで勝ちきることができなくて。1点取られて引き分けになっても内容としてはこちらが有利だったので、判定に持ち込んでもいいという気持ちで最後まで取れればよかったんですけど、後ろに下がってしまって、結果的に蹴りもらってしまって。次は絶対に抜かないようにします。
――ここまでの取り組み方で反省点などはありますか
結果が出ていないので、やってきたとは言えないです。やらないといけないなと思います。調子が悪かったわけではなくて、試合の運び方が悪かったので、そこをもうちょっと見直していかないとと思います。
――相手の差は
相手が負けている状態で、(相手の)取りたいという気持ちが強かったので、それを潰さなきゃいけない状態だったのにその気持ちに負けてしまって。気持ちで落としてしまいました。常に強気で行けばポイントを取りに行けたと思うので、次は戦い方を修正して臨みたいです。
――秋に向けて夏はどのような調整をするつもりですか
夏の大会はだいぶ空いて、10月の関東は団体戦になってしまうのでこれからどうするかは具体的には決めていないです。目標は見失わずにいきたいと思います。
上遠野暢太(文3=東京・早大学院)
――今日はどのような大会になりましたか
団体戦の公式戦だと実力的に出られなので、個人戦の公式戦でやっと回ってきたという感じで。個人戦に出るのは2回目で、この少ないチャンスでどうにかして、普段試合に出ている選手たちと渡り合いたいなと思って、挑戦するという気持ちで臨みました。
――今大会の目標などは決めていましたか
明確な目標のようなものは立てていませんでしたけど、自分の中での得意技(後ろ足で足払いをした後の上段突き)を絶対1回は決めようとは思っていて。その技を出したんですけど、結果当てすぎの忠告をとられてしまったので、相手に届いてはいるものの、ポイントにはならないというところを改善したいなと思います
――今大会の結果についてどう思いますか
多少(トーナメントの)ヤマがよかったとは思うんですけど、それでも向いてきた運の中で最大限頑張れたかなと思います。
――初戦の2回戦と3回戦を振り返ってみていかがですか
特に3回戦はやっぱり相手の突きも強くなってきて、当てられたときにひるんでしまうこともあって。それでも殴り合いで負けたくないなと思って。逆に殴られる方が燃えるというのもあって、そういう感じで初戦、3回戦は戦えました。
――惜しくも4回戦で敗退してしまいました
練習試合でも戦ったことのある相手だったんですけど、その時もボロボロに負けてしまって。だからリベンジという気持ちで挑んだんですけど、やはり一歩及ばなくて、常に相手に攻められてしまったという感じです。
――次の大会まで期間が空きますが、それまでに重点的に取り組みたいことはありますか
普段の練習の中でもよく注意されるのですが、自分からでる技の1本目の相手との距離がどうしても短くなってしまうので、自分から入る時の間合いを伸ばしていきたいなと思います。
――団体戦のメンバー入りに向けての意気込みがありましたら教えてください
今まで部内戦で勝つことを目標にしていたんですけど、きょう試合に出て、他の大学の選手と戦うという経験をさせてもらったので、もう少し視野を広げて、外の選手たちにも勝てるようにこれからやっていけばいいなと思います。
笹野由宇(スポ1=東京・世田谷学園)
――ベスト16に進出し、見事に全日本への出場を決めました。今のお気持ちを聞かせてください
トーナメント表を見たときに、自分のヤマがよくて。勝たないといけない立場だったので、出場を決めることができてよかったと思います。うれしいです。
――きょうはいつもより体がよく動いているように見えました
午前中の1試合はあまり体が動かなくて硬い状態だったんですけど、午後の一発目からはすごく体が動いて、そこから調子も上がっていったと思います。
――声もよく出ていましたね
そうですね。気合いを入れるために声も出していきました。
――1年生でありながら早くから出場していることについてはどう受け止めていますか
1年生だからどうとかは考えていなくて、部のメンバーとして出ているので、勝ちにいかないといけないという気持ちでやっています。
――5回戦では帝京大の選手から上段蹴りで一本を続けて奪ったシーンが印象的でした
大学に入って帝京大の選手と戦うのが初めてだったので、最初の方は緊張してしまって動けない時間があったんですけど、だんだん試合が展開されていって相手が突っ込んでくることに気付いて、そこから蹴りを合わせることが2回できたので、よかったと思います。
――6回戦では日大の選手を相手に敗れました
スタミナが切れてしまったというのはあって。それと、自分の間合いを全部切られてしまったのをもう少し早く気付いて修正できればよかったなと思います。
――最後に、全日本に向けての意気込みを聞かせてください
これからの練習を大切にして日々精進し、全日本でいい結果を残せるように頑張ります。