上位進出ならずも、実り多き大会に 

空手

 道着を着た若者たちの威勢のいい掛け声がこだまする日本武道館。第52回東日本大学選手権が開催され、男子は57、女子は38の大学が団体戦で熱い戦いを繰り広げた。女子は目標としたベスト8には程遠く、初戦敗退。男子は優勝した国士舘大に3回戦で惜敗したが、今後へ向けて手応えも感じられた大会となった。

 「自分からいく気持ちが足りなかった」。越間菜乃(教3=島根・石見智翠館)は、この日の試合内容をこう振り返った。初戦となった中京学院大との2回戦。早大は先鋒・中村朱里(スポ2=愛知・旭丘)が勝利し流れを作る。しかし、後が続かなかった。中堅・越間はたて続けに点を奪われると徐々に気持ちに焦りが生じ、なかなか自分の技を出し切れない。そのまま試合終了を告げるブザーが鳴り、0-5の完敗を喫した。この悪い流れを大将・渡邊仁美(社2=東京・雙葉)も断ち切ることができないまま敗戦。ベスト8という目標を掲げて臨んだが、初戦敗退という厳しい現実を突き付けられた。

敗戦に肩を落とす越間ら女子組手メンバー

 一方の男子は1回戦の東京都市大に5-0、2回戦の関東学院大に2-0と圧勝し、順当に3回戦に進出。ベスト8進出を懸けて国士舘大との一戦に臨んだ。先鋒・塚本惇樹(スポ2=千葉・拓大紅陵)は開始早々に上段突きを決め、幸先よく先手を取るが、その後は点を連取され敗戦。しかし、次鋒・今尾光(スポ3=大阪・浪速)は得意の蹴りで流れを引き寄せ、勝ち星を持ち帰る。その後1敗を喫し、1-2ともう後がない状況で末廣哲彦主将(スポ4=世田谷学園)が登場。試合終了まで残り30秒というところで決めた上段突きによる1点を守り切り、白星を挙げる。「俺がやらなきゃ誰がやるんだ」(末廣哲主将)。一発奮起した主将が意地を見せたが、最後は澤入迅人(スポ2=静岡・常葉菊川)が0-6と完敗し、万事休す。ベスト16で姿を消した。

大将戦に望みをつなぎ、意地を見せた末廣哲主将

 今季の団体戦で初めての公式戦。初戦敗退に終わった女子は中村に次ぐ二人が勝ちを挙げられないことが痛手となった。東京六大学大会でも同じような結果に終わっており、10月の関東大学選手権に向けて越間と渡邊の成長は不可欠。個人の技に磨きを掛け、団体戦での勝利につなげたいところだ。そして3回戦で敗退した男子だが、決して悲観的な内容ではない。この日、優勝を果たした国士舘大に対して前に出る空手を展開し、大将戦にまでもつれ込む接戦を演じてみせた。「自分たちの努力次第では勝てない相手ではない」(澤入)。強豪の強さを肌で感じ、目標とする日本一への距離も測れたのではないか。ここから先は個人戦の大会が続く。再び団体戦が行われる秋に日本一へ登り詰めるためにも、各選手が好成績を収めたい。 

(記事 郡司幸耀、写真 渡辺新平、三田侑実)

結果

▽男子組手

早大 ベスト16

▽女子組手

早大 2回戦敗退

コメント

末廣哲彦主将(スポ4=東京・世田谷学園)

――きょうの東日本大学選手権を迎えるにあたり、どのような準備をしてきましたか

六大学(東京六大学大会)の優勝から勢いを落とさないように。みんなができるだけモチベーション高くやれるように練習中は心掛けてきました。

――3回戦で国士舘大に敗れてしまいました

正直に言うと、勝てない相手ではないと思うんですよ。ただ、自分たちと彼らで微妙な差があって、そこがまだ埋められてないなと感じましたね。

――その差とは、具体的にどのような点だと感じましたか

1点をとるということに国士舘は必死だったなというところですかね。必死さというところでまだ国士舘には劣っているかなと感じました。

――試合前は相手が強豪ということでチーム全体的にかなり気合いが入っているように感じました

そうですね。気合いはもちろん入っていたと思いますけど、何より楽しんでほしいなということで。強い相手と戦えることを楽しもうということで声掛けをしていました。

――ご自身が登場した場面はもう後がないという状況でした。その時の心境はいかがでしたか。

正直、めっちゃ緊張しました(笑)緊張はしたんですけど、やはり俺がやらなきゃ誰がやるんだということで。あそこで自分が必死に(点を)取りに行く姿を見せて、後ろにつなげられたらなと思っていました。そういうことはできたので、緊張をいい緊張にできたかなと思いますね。

――残り時間が30秒を切り、引き分けが見えてきたところで上段突きを決めて逃げ切った場面が印象的でした

引き分けたらダメだなと思って、まずあそこで1点どうにかしてとろうという気持ちで入りましたね。あとはとにかく2点目をとるよりかは、相手に絶対に点を与えない。相手のポイントをゼロで終わらせるということを意識して動きました。

――収穫はありましたか

去年と比べてみんな伸びてきていますし、層が厚くなったなというのは今回しっかり実感できましたね。六大学では仲間内なので、相性ややりやすさもあったんですけど、普段やらない相手と、あそこまでしっかり動けたことは収穫だと思います。

――これからは個人戦が続きます。意気込みを聞かせてください

団体、個人関係なくこれからみんなどの大会でも1番をとれるようにということで、きょう終わった後も、今月末の関東学生選手権で個人の力をしっかり見せつけられるように喝を入れました。また気合いを入れてやっていきたいと思います。

今尾光(スポ3=大阪・浪速)

――今大会に向けてどのような準備をされてきましたか

六大学(東京六大学大会)で優勝して、そのまま勢いに乗って東日本(学生選手権)も優勝する気持ちでいました。主将が考えた厳しい練習を、みんなで盛り上げながら乗り切ってきました。一致団結して今大会に挑みました。

――敗れた国士舘大との試合を振り返ってみていかがですか

流れは悪くない試合でしたが、最後に意地を見せられて国士舘大に負けてしまいました。自信をつけてその差を埋めるためにも、また練習をやらなければいけないと思いました。

――調子がいいように見えました

最近はずっと調子が悪かったのですが、自分の悪いところを分析して、チームに貢献できるように取り組んできました。チームは負けてしまったのですが、個人としてはいい動きができたと思います。

――お話にあった悪いところとは、具体的には何でしょうか

先日、選考会があって、そこでは顔を伏せた時にやられるパターンが多かったです。それはきょうもちょっと出てしまったので、失点を無くせるように修正していきたいです。

――戦った3試合は、いずれも先制して勝利しました。ご自身の試合内容を振り返ってみていかがですか

自分は最初に(ポイントを)取られてしまうと負けるパターンが多いので、積極的にファーストポイントを取りにいくことを念頭に置いていました。

――東京都市大と国士舘大との試合では得意の蹴りが決まっていました

蹴りは2ポイント、3ポイントと大きく、自分が得意としている技です。それが入ると自分も勢いづくので、それを常に狙っていました。

――きょうはチーム全体として積極的に攻める姿勢が見られました

負けてしまった選手もいるのですが、基本的には前で戦っていたので、次につながる大会になりました。

――学年も上がり、チームでは上級生という位置付けになります

大学生活も折り返していて、残された時間もそれほど多くはありません。焦ってはいけないのですが、もっといろいろなことを頑張っていかなければいけないと思います。

――今大会の収穫は何でしょうか

強い選手と戦えましたし、いろいろな戦いが見れたので、本当に自分にとっていい刺激になりました。関東の個人戦(関東学生選手権)に向けて、もう一度頑張っていきたいと思います。

澤入迅人(スポ2=静岡・常葉菊川)

――国士舘大との3回戦では2-2の同点の場面で登場しました。あの場面を振り返っていかがですか

大学に入って初めて自分に全てが懸かっているという状況でした。気合いを
入れて臨んだんですけど、完敗したので悔しいですね。

――普段から気迫を前面に出すタイプだとは思うのですが、あの場面はいつにも増して気合いが入っているように見受けられました

そうですね。いつも以上に気合いは入っていました。

――0-6の完敗に何を感じましたか

やっぱり、試合の中で全体的に相手に先手を取られてしまっていたので、自信を持っていけるように練習していかなければならないなと思いました。

――強豪校との力の差は感じましたか

きょうやってみて、自分たちの努力次第では勝てない相手ではないと感じました。

――強豪校を倒しその先の日本一へ、これから取り組んでいく必要のあることは

試合では激しくなるんですけど、練習はどうしても仲間内でなあなあになってしまう部分があると思うので、練習から試合のように、メンバーもメンバーじゃない人もみんなが気持ちを出せたら試合でももっといい動きができるのではないかなと思います・

――関東学生選手権への意気込みを教えてください

去年は3回戦で負けてしまったので、最低でも全日本(全日本学生選手権)に出られるようにベスト32までには必ず入りたいです。

越間菜乃(教3=島根・石見智翠館)

――初戦敗退となりましたがいかがでしたか

先鋒の中村が勝ってくれて、中堅の私も絶対勝たないといけない状況だったのに負けてしまって。チームとしてベスト8を目標にしていたのに、自分のせいで申し訳ないなと思います。

――その勝ちが続かなかった原因は

何としても私が勝たないとチームとしては勝てなかったので、私が勝つか、少なくとも引き分けにして大将の渡辺に渡すのがいいんですけど。やっぱり自分からいく気持ちが足りなかったと思います。

――ベスト8という目標でした。この結果をどう受け止めますか

次の団体の試合は10月の関東(大学選手権)になるんですけど、そこまで5ヶ月ないので、この結果を持ち込むだけでなく前向きに自分の課題を一人一人自覚して、10月に向けてまたベスト8という目標を掲げて頑張っていきたいと思います。

――相手の印象はいかがでしたか

相手の方が気合いが入っていて、その勢いに負けてしまったという感じでした。

――きょうの試合で個人的に見つかった課題はありましたか

この一年間、前で前でという組手をやってきて、前手をもっと強くしていこうと意識してきたんですけど、きょうはあまり前手がでなくて。自分がやりたいと思っている、得意としている技をもっと積極的に出せるようになりたいと思います。今後はその技を集中的に練習していきたいと思います。

――前に出ることができなかったのは気持ちの面も大きかったですか

点をとられるうちにだんだん焦ってきてしまって。気持ちが浮いてしまったり、ごちゃごちゃしてしまいました。コーチにも言われたんですけど、シンプルに自分のできる技をしっかり決めていかないといけないと思います。

――秋の団体戦に向けて意気込みをお願いします

女子は組手のメンバーは3人しかいなくて、これからもこの3人でやっていくので、個人の技を強くしていって、団体として力を出せるように、ベスト8まで行けるように頑張っていきたいと思います。