10月12日、日本武道館にて関東大学選手権が行われた。全日本大学選手権への前哨戦である今大会に照準を合わせて練習を励んできた早大空手部。男子団体組手は1回戦を突破し、全日本大学選手権への切符を無事獲得したが、2回戦では1点も奪えず敗退。女子団体組手は1回戦敗退、3年連続でベスト4を手にしていた女子団体形もまさかの予選敗退を喫し、全日本学生選手権への夢は途絶えた。男女ともに課題の残る結果となった。
男子1部組手は大正大との1回戦に臨んだ。先鋒を任されたのは末廣祥彦(スポ2=東京・世田谷学園)。引き分けに終わったが、持ち前の積極性でチームに流れをもたらす。中堅の今尾光(スポ2=大阪・浪速)も引き分けに終わったが、副将の末廣哲彦副将(スポ3=東京・世田谷学園)が勝利を収め、全日本大学選手権(全日本)の出場権を獲得した。迎えた2回戦では強豪の日大と対戦。先鋒の澤入迅人(スポ1=静岡・常葉菊川)は果敢に突きを繰り出すも勝利を手にすることができない。次鋒の末廣祥も敗れ、命運は中堅の今尾に託された。上段突きで先制すると、軽快なフットワークで試合を優位に進める。しかし、前に出てきた相手に対応できず、中段突きを3連続で決められてしまう。仲間の声援を背に、仕掛ける今尾。1ポイントを返して2-3としたが、もう時間は残されていなかった。試合終了を告げるブザーが会場に鳴り響く。敗退が決まり、悔しさをにじませる選手たち。完敗だった。「2回戦も見据えて自分たちが優勝するビジョンを持ちながらやれたかと言われるとやれていなかった」と振り返る末廣哲。収穫と共に新たな課題の残る大会となった。
勢いのある組手を見せた末廣祥
女子団体組手は、初戦を青学大と迎えた。先鋒の中村朱里(スポ1=愛知・旭丘)は相手に先制点を入れられるもすぐに上段突きを決めて巻き返す。追いつき追い越されの互角な試合だったが、終盤技ありを連取され2−4で敗退。中堅は、公式戦で初出場の渡邊仁美(社1=東京・雙葉)が緊張した面持ちで試合に臨んだ。体格差のある相手に技を仕掛けるも有効打につながらず0−6で破れる。迎えた大将戦では越間菜乃(教2=島根・石見智翠館)が出場した。開始早々上段突きを決め、テンポよく点を奪っていき5-0で完封。大将としての風格が表れていた。「いつもは1点も取れずに終わることが多いが、きょうは負けられない試合だったので、とにかく前に出た」と振り返る越間。結果として敗退を喫したが、成長も見られた試合だった。
突きを何度も決めた越間
一方、予選から始まった女子団体形。団体形の公式戦ではこの試合が最後となる小林暖乃(人4=神奈川・山手)、大木梨花(スポ3=東京・八雲学園)、石川みらい(社1=群馬・前橋工)が出場した。演武の順番は10組中3番目、試合前はメンバー同士で会話するなど和やかな雰囲気を見せていたが、コートに入ると真剣な表情へ一変していた。3人の「ジオン」の声が響き、張り詰めた空気の中形を打ち始める。後輩二人の前に立ち、貫禄ある演武を見せる小林。「引き手を意識する、ちゃんと顔を作るといった毎日の練習でいつも言っていることをずっと唱えていた」と試合を振り返った。手足のキレと動きの溜めが揃った美しい演武を披露し、礼をして試合を終えた三人。告げられた得点は21.5。しかし全体として7位タイ、決勝進出ならず4年連続のベスト4は叶わなかった。
惜しくも決勝進出は逃したが見事な演武を披露した
男女ともに収穫はあったものの、課題も残った。全日本大学選手権への第一歩であった今大会。全員が出場権を得られたわけではないが、それぞれが意味のある一歩を踏み出せたのではないだろうか。次は関東学生体重別選手権。個人戦となるが、見つけた課題を解消しまた成長した姿を見せてくれることだろう。
(記事 三田侑実、渡辺新平 写真 谷口武、土屋佳織)
コメント
末廣哲彦副将(スポ3=東京・世田谷学園)
――2回戦敗退という結果でしたが、どのように受け止めていますか
1回戦に勝って全日本(大学選手権)の出場権を得ることを目標にしてしまっていたので、その目標の達成はできましたが、目標の位置が低かったなというのはあります。2回戦も見据えて自分たちが優勝するビジョンを持ちながらやれたかと言われるとやれていませんでした。そういうところが2回戦敗退の原因だと思っています。
――ご自身の出番はありませんでしたが、日大は強い相手でしたか
そうですね。地力の差というか、相手の方が技や思い切りの良さに絶対的な自信を持って前に詰めてきていたので、それに対してうちは対応できていませんでした。勝てない相手ではありませんが、力の差は感じましたし、自分たちの甘さも痛感しました。
――日大戦の3選手のプレーはいかがでしたか
技は入っているかなと思うのは何本かありましたが、日大側の方が決めの強さや、当たり負けをしていなかったので、うちの技が審判からしても(判定を)取りづらい技だったのかなと思います。そこはまた研究してやっていきたいです。
――1回戦は中堅として出場され、チームに大きな勝利を持ち帰りました
とても緊張しましたね。前の2戦が引き分けたので、自分が絶対に負けられないなと思っていましたが、後ろから今尾(光、スポ2=大阪・浪速)が「先輩、固いです!」と言ってくるので、自分はそんなつもりはありませんでしたが、やはり力んでいた部分がありました。勝てて何よりホッとしました。
――2分けという状態で迎えたのは予想外だったのでしょうか
1-0か1-1、2-0で来ると思っていて、2分で来るとは思っていませんでしたね。予想外でした。
――終盤に突きを決められましたが、やはり前半は固かったということですか
そうですね。少し足を動かそうと思いました。1点目奪われたのは不用意の出来事だったので、ただその後は落ち着けて相手も見えるようになったので、相手の技の間を取れて良かったなと思います。
――今大会を迎えるにあたり、どのようなことに取り組まれましたか
対談の時にも話した『前に出る』ことを絶対のテーマに自分の中でも決めていましたし、それを国体の際にも監督(福田聡監督、昭54政経卒)からも「直ってきたね」と言っていただいたので、それを貫こうとこの1カ月間思いながらやりました。
――全日本の出場は決まりましたが、今大会を踏まえ見つかったチームの課題はありますか
日大のようなフィジカルや、一つの技であれだけ(点を)取れるというのは強みかなと思うので、自分たちも『前に出る』技を徹底的にやって、次日大に当たったら圧勝したいです。
――関東学生体重別選手権(体重別)も控えていますが、意気込みをお願いします
体重別は個人個人各階級で勝ち上がれたらなと思います。自分もベスト8、ベスト4、決勝としっかり上のステップまで上りたいなと思います.
今尾光(スポ2=大阪・浪速)
――今大会を振り返ってみていかがですか
とりあえず全日本(全日本大学選手権)の切符を取ったので良かったと思っているのですが、内容的には良くなかったので非常に課題の残る試合だったと思いました。
――課題とは具体的には何でしょうか
今回はチームとして先鋒、次鋒、中堅と全然つなげられなかったので、チームで戦ってチームで勝つという点で課題が残りました。
――1回戦では出だしから積極的に技を出せていたと思いますが、振り返ってみていかがですか
結果として前で取ろうとは思っていたのですが、全然ポイントにつながらなかったのでも修正してもっとポイントを重ねられるような動きにしていきたいと思います。
――2回戦では序盤から足を動かしてリズムをつくることができていたと思います
相手の戦法に対応できていなかったことが敗因だったと思います。
――個人的に今大会で見つかった課題はありますか
少し相手に対して合わせる動きが必要になると思いました。中段に対してどう崩していくのかといった点ですね。
――次の関東学生体重別選手権に向けての意気込みをお聞かせ下さい
体重別ではもちろん優勝を狙うのですが、一つ一つ大事に戦っていきたいと思います。
末廣祥彦(スポ2=東京・世田谷学園)
――今大会を振り返ってみていかがですか
東日本で1回戦負けだったため全日本(全日本大学選手権)が決まっていなかったので、とりあえず出場の権利を得るために頑張ってきました。ただ、目標が全日本出場にとどまってしまい、その先までいけていなかったところが目標として良くなかったのかなと反省しています。
――1回戦では積極的に技を出していましたがなかなかポイントにつながりませんでした
自分は1回戦目は固くなってしまうところがあります。技を出すことで緊張をほぐして自分の本来の技が出せますし、先鋒なので勢いがつけれたらいいなと思っていました。いろいろな技を出そうと思っていて、勢いと気合が出ていると監督にも言っていただいたのでチームに勢いをつけることができたという点では先鋒としての役割を果たせたと思います。ただ、勝てるかどうかというのが問題だと思うので課題が残りました。
――2回戦では長身の選手との対戦でしたがどのように対応しようとお考えでしたか
対峙(たいじ)をしたときにやはり攻めづらいなというのがあってどう崩そうかなと思っていたのですが、攻めていったときに思っていたよりかは間合いに入れて、手は届いていました。そこで自分が決めきることができなかったことが流れを悪くした原因だと思います。そして、やはり後ろに下がってしまったというのが一番悪かった点だと思います。
――今大会で見つかった課題というのはいまおっしゃったように後ろに下がってしまうという点でしょうか
そうですね。もっと自分の技が出せれば、という風にOBの先輩方にも言っていただきました。それは意識してやっていたつもりだったのですが、試合中にどう攻めるかなと考えているうちに後ろに下がっている場面が多かったので、まだ徹底して前に出るということができていないのかなと思います。
――次の関東学生体重別選手権に向けての意気込みをお聞かせ下さい
個人戦できょねんは2回戦で負けているので、チームで戦っているわけではないので自分の責任なんで、気楽に思い切り自分の組手ができれば勝てると思えるくらい、自信をもてるくらい日ごろの練習に励んでいきたいと思います。
小林暖乃(人4=神奈川・山手学院)
――いまの率直なお気持ちは
全日本には行けないんですけど、あしたから団体の練習をしなくていいという実感がわかない感じです。
――団体戦がきょうの試合で最後になってしまいましたが
きょうの試合が最後だったんだという感じがあまりしないです
――試合前に選手間で話していたことは
引き手を意識する、ちゃんと顔を作るといった毎日の練習でいつも言っていることをずっと唱えていました。あとは、どこの大学よりもワセダが1番コートの中で演武する時間を長くしてワセダがどこよりも周りにアピールするように話していました。
――試合前に受けていたアドバイスは
私たちの強みは力強いところだから、多少の癖はあっても力強さを生かして行けと。試合中もその力強さを生かした形ができているからそのままでいいというアドバイスがありました。
――4年間で初めてベスト4を逃すという結果になりました
1つ上、2つ上の先輩方の築いた伝統を引き継げなかった申し訳なさもありますし、その二人を越せなくて悔しいという気持ちもあります。
――次の早慶戦や関東学生体重別選手権への意気込みは
どちらの試合も形はないので、私は早慶戦の演武しかできないんですけど、やっぱり組手メンバーのサポートですね。私が勝つつもりで組手メンバーの相手をすれば組手メンバーももっと伸びると思うので、そのくらい組手も頑張りたいです。それと、早慶戦の演武は空手人生最後の形になると思うので、きょうよりもいい形を打てればなと思います。
越間菜乃(教2=島根・石見智翠館)
――どのような気持ちで臨みましたか
きょねんは女子団体組手で全日本(学生選手権)には出場していないので、ことしは一年生もたくさん入ってくれて、絶対に全日本にいきたいという気持ちで臨みました。
――合宿ではどのような点を強化しましたか
主将を始め、先輩方にも前に出るようにと指導してくださったので、自分も前で勝負できるようにと練習していました。
――組手ではずっと攻め続けている印象でした。ご自身の試合内容を振り返ってみていかがですか
いつもは下がってしまって一点も取れずに終わることが多かったのですが、きょうは負けられない試合でもあったので、とにかく前に出て点を取るしかないと思って前に出ました。
――きょうは調子が良かったのですか
そうですね。思った以上に体が動いたので、そのまま行けたんだと思います。
――自分が勝たなきゃという気負いはありましたか
1年の中村が勝ってくれるという安心感もあるんですけど、チームとしては2勝が必要なのでそのためには自分も必ず勝たなきゃならないので、ここ最近は緊張が続いてたんですけど、やっぱり勝たなきゃという気持ちでやりました。
――チーム全体としてはいかがでしたか
自分と中村もそうなんですけど、初戦ででた渡邊も全員が前へ前へという意識で3人ともできたので、チーム全体としては良かったと思います。
――きょうの試合で課題は見つかりましたか
点を取れるようになっては来たんですけど、自分で決めたい技は決めたいって思うんですけどなかなかできなくて。自分がやりたい技で決めれるようにしていきたいと思います。
――次の体重別選手権<への意気込みをお願いします。
きょねんより階級を一個落としたので、まずはなんとしても体重を落とさないとなと思います(笑)。