ここまで3年間連続で、全国の舞台へと駒を進めてきた早大空手部の女子形競技。4年目の期待がかかる中、メンバーは厳しい鍛錬を続けている。しかし、そんな中でも和やかな雰囲気の中で話す3人には笑顔があった。「私がメニューの軸を決めて、みんなから話を聞いて調整する」(小林)。先輩後輩という関係は感じさせず、全員でひとつの形という作品を作り上げるために。目標へ向けて日々まい進する女子形メンバーの3人に、お話を伺った。
※この取材は9月19日に行われたものです。
自らで考え、実践する
今後のチームを背負う、期待のルーキー石川
――空手をはじめたきっかけを教えてください
石川 もともと、家の近くに空手の道場があって。両親が空手ではないのですが、武道をやっていたので、興味があって娘に空手をやらせてみたいと言って、連れて行かれました。当時は空手は男性がやるものだと思っていたのですが、その道場に行ったときに女性が形演技をしているのを見て、それで憧れたのがきっかけです。
小林 私が空手をはじめたきっかけは、小学2年生の時にすごく仲の良かった友達が空手をやっていて、すごくかっこいいなと思って。それで親に言って、いろいろな武道を見学に行ったのですが、空手が一番カッコ良かったので決めました。幼いながら、「これ!」って言ったらしいです(笑)。
大木 私は姉が先に空手を始めていて、それをずっと見学していて。その後に始めました。
――早大空手部の雰囲気はいかがですか
石川 自分の高校の空手部では指導者がいたのですが、大学には指導者の方が常駐しているわけではなくて。自分たちで考えてやるというのが大学の主流だそうで、ワセダは特にその色が強いですね。
小林 だから、ふざけちゃう時は自分たちが悪いし、良い練習ができる時も自分たちが頑張ったからだし、責任が全部自分たちにあるので、良い意味で頭を使うという感じですね。雰囲気は良いんじゃないですかね。仲良いよね?人数も多いですし。
――部員数もとても多くなりましたよね
小林 多くなりましたね。私が1年生の時は全体で15人くらいしかいなくて。いまの3年生が6人、2年生が9人か。だんだん増えていますね。
――形のメンバーはどのように決めたのでしょうか
小林 女子で形をメインとしてやっているのが、この3人しかいなかったからです(笑)!
――打つ形はどのように決めるのでしょうか
小林 打つ形も決まっていたというか。大会で指定されている形があって、その中から私たちの流派の形でいうと2つしかなくて。
石川 もともと選択肢が少なくて、みんなが慣れている形を選んだという感じですね。
3人全員でつくりあげていく
学年唯一の女子部員として部を盛り上げる大木
――3人のお互いの印象は
小林 梨花(大木選手)は、2年前まではレギュラー争いをしていて、ライバルでした。レギュラーを取られて、泣いて、絶対に勝ちたいし。チームメイトというよりはライバルのように感じていましたね。ただ、4年生になって私がリーダーになって、もう形のメンバーが梨花とみらい(石川選手)しかいないとなって。わたしは立派なリーダーじゃないんですけど、2人に助けられながらやっています。意見とかもしてくれて、パートナーって感じですね。監督もいなくて、私がリーダーでやっていかなければいけないんですけど。みらいも入ってきたばっかりなのに、1年生なりの意見や感じたことを言ってくれるので、助かっています。いままでは暢子先輩やユミ先輩という偉大な先輩がいらしたので、その先輩方が指示して、という練習のやり方でした。でもいまは私があまり言えないので、下級生の2人に助けられている練習になっていると思っています。2人ともいま、笑ってますけど(笑)。
大木 暖乃先輩は、根本的にとても優しいですね。さっきご自身で強く言えないとおしゃっていましたが、逆に下級生の意見に耳を傾けてくれます。上の学年だから、というのは感じさせないですね。みんな選手というのは同じだから、みんなで作り上げていこうという。あとはすごく努力家です。みらいは、お寿司が好きです(笑)。みらいは形を打つ1回目はだいたい考え込んでいて、「みらいワールド」に入っているというか(笑)。
石川 考え込んじゃうんですよね。あ、こんなことも気をつけなきゃ、って。
大木 そう、独り言も言うんですよ。考えながら。 お寿司と独り言、ですね(笑)。
――ちなみにネタは何がお好きですか
石川 ネギトロ…ですかね。
――石川さんから先輩2人をご覧になっていかがですか
石川 もともと高校の時には女子の先輩がいなかったので、初めての女子の先輩にあたる方々なんですけど。お姉ちゃんみたいですね。変に甘えてしまったりして、すごい態度に出てしまったりするのですが。先輩方は大人なので、外に出さずに悩んで…悩ませてしまいました(笑)。
大木 そうですね、暖乃先輩はお姉ちゃんみたいです。
石川 形のこともそうですし、気を配ってくれるなというのが印象ですね。あとはさっき梨花先輩もおっしゃっていましたが、すごく話を聞いてくれる。意見を聞こうとしてくれるので、こちらもいろいろ話しやすいです。空手もこともそれ以外も、いろいろな話を聞いてくれます。梨花先輩はなんだろう、もっと身近に感じますね。お姉さんというよりも…
大木 お友達です。彼女にとっては、お友達です(笑)。お姉さんというより、妹みたいな?
石川 違いますよ!そうじゃないんですけどね。身近な感じです。面白い先輩なんです。たくさん話して…
大木 そうなんです、ペラペラ話してしまって、2人がおしゃべりなので暖乃さんをよく困らせています(笑)。
――小林選手は2年前の秋に団体形で3位に入賞されましたが、そのときの思い出は
小林 あのときは頑張りましたね。いままでの空手人生で一番頑張ったかもしれない。暢子先輩から指導していただいて、めちゃくちゃ練習して。梨花にも1ヶ月前くらいにレギュラーを取られて、予選の関東大学選手権のときも梨花が代表になっていたので。いろいろレギュラー争いでも悩んで、メンバーも交代しながらやっていて。
――大木選手は当時1年生ということで、先輩をご覧になっていかがでしたか
大木 自分は一番下だったので、ついていくのに必死でしたね。先輩たちが全日本に向けて練習している中で、「勝ち」に対してのこだわりがすごく強かったのだなと、いまになって感じます。こだわっていたからこそ、メニューもすごくきついものだったし。そのこだわりのすごさをいまになって感じますね。
ポジティブさを武器に
最上級生として練習を取り仕切る小林
――ことし1年生はたくさんいますが、1年生の中での雰囲気はどうですか
石川 最近、いじられキャラや不思議キャラなどそれぞれの役職が決まってきました。最近は仲が良くなってきました。
小林 何キャラなの。
石川 いじられキャラです。
大木 ほんとに(笑)。1年生の中だよ。いじっているんじゃないの。
石川 私がイジれるのはまる(丸山知己、商1=東京・早大学院)くらいですよ。惇樹(塚本、スポ1=千葉・拓大紅陵)と迅人(澤入、スポ1=静岡・常葉菊川)とじゅりちゃん(中村朱里、スポ1=愛知・旭ヶ丘)とかはイジってきます。元々高校のときからそういうキャラだったんです。
――3人で遊ばれたりしますか
小林 ないね(笑)。
大木 今から遊びに行きますか!遊びました、みたいな感じで(笑)。
小林 ご飯に行きたいねとなっているのですが、なかなか実行できていないです。就活が重なってしまって。終わったら、行くかもしれないです。
――部活の中で特に仲のいい選手、また一緒に遊んだエピソードなどありますか
小林 同期とは仲いいです。あと、組手メンバーの2年の越間菜乃(スポ2=島根・石見智翠館)とはとても仲がいいですよ。よく家に遊びに行って、大暴れします。
大木 同期でごはんを食べに行くことが多いです。その後カラオケに行ったりしています。
小林 カラオケによく行っているよね。私たち(4年)はご飯を食べに行っているときに、(3年は)カラオケに行くみたいな。
大木 どこかに行くとなるとカラオケになってしまいますね。
小林 誰が歌上手いの。
大木 松浦くん(松浦佑樹、スポ3=静岡・富士)です。RYUSEIが上手いです。踊ってくれます。完コピです(笑)。
小林 絢香の「三日月」とか歌わないの。
大木 同期の中で行くときは聞く側です。男子が2、3曲連続で歌うので。
石川 同期の女子はみんな仲良くやっていますね。泊りに行ったり、遊びに行ったりして。あと、組手の澤入とはよく一緒に買い物に行ったり、ごはんを食べに行ったりします。
――同期の仲が良いという感じですか
小林 そうですね。いろいろけんかしたりもしましたけど、今はとても仲がいいです。
――オフの時はなにをしたりしていますか
小林 よくごはんを食べに行きます。
大木 寝ていますかね。友達と遊びに行ったり、同期とごはんに行ったりするときもありますけど、何もないときは一日中寝ています。
石川 買い物に行きます。あまり物は買わないのですが。いろいろなものを見て回って、満足して帰ります。定期圏内なので、新宿をよく歩き回っています。
――競技の話に戻りますが、強化していることはありますか
小林 チームワークです。
石川 下半身です。
大木 力強く打つことです。
――自分達の強みだと思うことは何ですか
石川 ポジティブ?
小林 確かにポジティブだね。あと、話すことをいっぱいしています。練習中、私語もありますけど、いまはどの代よりも形のことについて話します。私がメニューの軸を決めて、みんなから話を聞いて調整するといった感じです。
――自分たちに足りないなと思うことは何ですか
石川 わたしは筋力が足りないです。
小林 細いと力強さとかが欠けてしまうもんね。私は、丁寧にやることと、くせを無くすことですね。
大木 私はスピード感ですかね。力強さもあまりないですが、どちらかというとスピード感ですね。
――大会の目標と意気込みをお願いします。
小林 先輩たちが築いてくれた伝統を引き継いで、ことしも全日本4回連続出場を目指します。
――ありがとうございました!
(取材・編集 芦沢仁美、杉野利恵)
3人の活躍から、目が離せません!
◆小林暖乃(こばやし・はるの)(※写真左)
1994(平6)年3月29日生まれ。162センチ。神奈川・山手学院出身。人間科学部4年。趣味は読書だと語る小林選手。中でもお好きなのは歴史小説で、大河ドラマは毎年欠かさずに見ているそう。「歴女」なんですね!
◆大木梨花(おおき・りか)(※写真右)
1993(平5)年5月24日生まれ。158センチ。東京・八雲学園出身。スポーツ科学部3年。先輩の小林選手も「一度口を開くとなかなか閉じない」と評するほど、明るくおしゃべりな大木選手。取材中も笑顔が印象的で、対談を盛り上げてくださいました。
◆石川みらい(いしかわ・みらい)(※写真中央)
1996(平8)年10月8日生まれ。154センチ。群馬・前橋工出身。社会科学部1年。寮で一人暮らしをしている石川選手が最近した買い物は、姿見。最近お家に届いたそうで、鏡の前でいろいろな服を試すのが楽しい、と語ってくださいました。