夏の厳しい合宿を終え、さらに実力に磨きをかけた早大空手部。この日、団体戦シーズンの幕開けとなる関東大学選手権を迎えた。11月に行われる全日本大学選手権(全日本)への出場権を懸け、女子団体形に出場した上杉ユミ(スポ4=東京・八雲学園)・小林暖乃(人3=神奈川・山手学院)・越間菜乃(スポ1=島根・石見智翠館)は、息の合った演技を披露し予選を突破。ベスト4という成績で、出場権を獲得した。しかし、男子団体組手は実力を発揮できず、まさかの1回戦敗退。全日本での再起を誓う。
「まさかまさかのベスト4」(小林)。演技が終わった瞬間、思わず顔をほころばせた。女子団体形の部には、上杉・小林・越間の3人が出場した。今年からメンバーに加わった越間は、高校まで組手をメインに戦ってきた選手。ほとんど行ったことがなかったという形競技の練習は、決して簡単なものではなかった。形ならではの美しい姿勢を維持するために、走り込みやトレーニングを重ねる毎日。その様子を近くで見守ってきた上杉も、「辛いこともやらせてきて大変だったと思う」と振り返る。迎えた試合当日、厳しい練習が実を結び、全員で息のぴったり合ったジオンを披露。「しんどいときもあったけれど、やってきてよかった」(越間)。22.0という高得点をたたき出し、堂々のベスト4。全日本への道を切り開いた。
息の合ったジオンを披露した
一方、男子団体組手は悔しい結果となった。5月に行われた東日本大学選手権でベスト4という成績を残したため、既に全日本への切符を手にしている早大。出場権を懸けて必死に挑んでくる相手の勢いに押されてしまった。先鋒の末廣祥彦(スポ1=東京・世田谷学園)、中堅の今尾光(スポ1=大阪・浪速)は白星をチームに持ち帰ったものの、薬師寺拓哉主将(商4=東福岡)ら上級生3人が敗れ、2勝3敗で1回戦敗退。「一番やってはいけないことをやってしまった」(薬師寺)。1ヶ月後には今季最終戦となる全日本が控えている。最後の大舞台を前に、薬師寺は「自分がもっと強くないといけない」と闘志を燃やした。
白星を飾れなかった薬師寺
女子団体形、男子団体組手で明暗の分かれる結果となった。勢いそのままに、全国の舞台でも自分たちらしい形を披露したい女子団体形。また、男子団体組手はもう一度チームを立て直し、今度こそ納得のいく戦いを見せたいところだ。それぞれの結末は、全日本へ——。強い思いを胸に、大舞台へ挑む。
(記事、写真 芦沢仁美)
結果
▽男子個人組手
1回戦敗退
▽女子個人形
ベスト4
コメント
薬師寺拓哉主将(商4=東福岡)
——きょうの試合を振り返って、いかがですか
一番やってはいけないことをやってしまったな、と。その一言に尽きる試合でしたね。
——1回戦敗退という厳しい結果に終わりましたが、その理由はなんでしょうか
実力が相手の方が上だった、ということは結果に現れているので、それがまず大きな原因だと思います。それと、こちらに気の緩みがあったという訳ではないのですが、相手の立教大学は全日本大学選手権への出場権が懸かっているので、気持ちが入っていたということもあります。そういう精神的な部分でも負けていたのかなと思います。
——試合前のチームの雰囲気はいかがでしたか
夏合宿から、かなりきつい練習をしてきたと思っていて、だいぶ仕上がってきているとは思っていたのですが。実際に雰囲気も良くて、今年こそは絶対に勝ちに行こうと言っていたのですが、このような結果になってしまいました。
——夏合宿ではどのような練習をなさっていましたか
夏合宿では体力からしっかりと鍛えようとしていて。走ったり、トレーニングを行ったりしました。ただそれだけでは偏ってしまうので、空手の技術面もバランスよく鍛えましたね。
——全日本に向けての課題を教えてください
チームとしては、今後どのように取り組み方を変えていくかはまだきちんと決めていないのですが…ただ言えるのは、個人として、自分がもっと強くないといけないなとすごく感じました。東日本(大学選手権)でも個人的に反省するところが多かったので、次の大会はそこを修正して、勝つ、ということを目指していきたいと思います。強い後輩たちがいるので、安心して試合をさせてあげられるような実力をつけないといけないなと思いました。それがまず一番最初の課題かなと思います。
——全日本での目標を教えてください
ベスト8、5位入賞のカベを近年超えられずにいるので。どうにかそれをクリアしていきたいと思っています。
上杉ユミ(スポ4=東京・八雲学園)
——組手に関して、きょうの試合を振り返っていかがですか
組手は練習時間もあまり割けなかったのですが、気持ちで負けないように、そういう姿勢を見せないようにと心がけていました。
——形では3位入賞、全日本への出場権を手にされました
1年生の越間がことし形をやってくれるということで、もともと彼女は形の選手ではないので、辛いこともやらせてきて大変だったと思います。ただきょう、今までやってきたことがしっかりと発揮できて、試合で良い演武をすることができて、さらに全日本にも行けるということで、とても嬉しいです。
——昨年の形のメンバーから柴崎さんが抜けることで、新チームになるにあたっていかがでしたか
暢子先輩は上手かったですし、チームを引っぱってくれる存在だったので。抜けた穴は大きかったなとは感じます。今度は自分が引っぱっていかないといけない立場になったので、そういう意味では練習の工夫もしてきたつもりです。
——4年生、最高学年としての苦労はありましたか
私は結構、そういうチームを引っぱったりというのが苦手なタイプなので。これでいいのかな、と思いながら、試行錯誤していましたね。
——演技終了後には笑顔も見られましたが、納得のいく形が打てましたか
練習通りの形が打てたというのと、思っていたよりも点数が出たので。本当は全日本は行けないかと思っていたのですが、予想外の点数で嬉しかったというのもあります。ジオンに力を入れてやっていたので、次はどうしようかなと思いつつ(笑)。とりあえず良かったなと思いました。
——全日本での目標を教えてください
私にとって、引退試合となるので。せっかく出られるチャンスもいただいたので、全日本のコートでしっかりと自分たちらしい形を悔いなく打てるよう、頑張っていきたいと思います。
小林暖乃(人3=神奈川・山手学院)
――きょうの振り返りをお願いします
形でまさかまさかのベスト4で、全日本にいけると思っていなかったのですごく嬉しいです。組手も自分なりに頑張りましたが、やはり形がよかったと思います。
――どのような気持ちで形を打ちましたか
私自身、全日本までこの3人でいきたかったので、そのためにいつも通りのていねいな形を打とうと思っていました。
――新チームになり先輩方の引退で形のメンバーも変わったと思います。苦労した点はありましたか。
きょねんまでは私が一番下で、柴崎先輩(暢子、平26社卒)、ユミ先輩(上杉、スポ4=東京・八雲学園)についていけばよかったのですが、ことしは(ユミ先輩に)ついていく反面、後輩もいるので指導しないといけなくて、間として役割を果たすのが大変でした。けれど貴重な経験になりました。
――卒業された先輩に入れ替わるかたちで越間さん(菜乃、教1=島根・石見智翠館)が形の団体メンバーに入りましたが
最初は組むつもりはなかったですけどね。菜乃ももともと組手をやっていたから。けれどやはり(私たちが)組みたいと思ってお願いしてやってもらいました。菜乃には本当に感謝しています。
――全日本への抱負をお願いします
もう一度基本に戻って、苦手なところを直して、もっともっと良い形を最後3人で打てたらいいなと思います。頑張ります。
越間菜乃(教1=島根・石見智翠館)
――きょうの振り返りをお願いします
形は今までほぼやったことがなくて大学に入ってからやり始めたのですが、この半年やってきて先輩と一緒に練習してきて、しんどいときもあったけれどやってきてよかったなと思いました。まさか全日本に出られるとは思ってなくて、嬉しくて涙が出てしまったのですが、本当に良い経験をさせてもらっているなと思いました。組手は(高校まで)ずっとやってきて他の先輩たちは形の選手なので、自分が勝って引っ張っていかないといけないなと思っていたのですが、満足のいく結果にはなりませんでした。それでも、自分らしく前に出る組手ができたのでよかったなと思います。楽しかったです。
――形の試合に出るにあたって、どのような練習をしてきましたか
基本からできなかったので、まず筋トレから始めました。形にたどり着く前に、走り込みや筋トレを繰り返していて、なかなか形を行うまでは遠かったです。
――実際に形を実演して、形ならではの難しさはありましたか
足腰にかなり負担がかかるので、形をしていて足の筋肉がだいぶ付いたなと感じるくらいにハードなものだなと。
――きょうはどのような気持ちで先輩方についていきましたか
とにかく思い切ってやれと言われていてそれで納得のいく形が打てたのでよかったのかなと思います。
――全日本への抱負をお願いします
あと1ヶ月、先輩方にしっかりついていって最後は笑顔で終われるように、今日は泣いてしまったので、全日本は笑顔で終われるように頑張ります。