第2回は女子団体形メンバーの柴崎暢子(社4=東京・八雲学園)、上杉ユミ(スポ3=東京・八雲学園)、小林暖乃(人2=神奈川・山手学院)、大木梨花(スポ1=東京・八雲学園)をお届けする。団体形を組んで2年目。悔しい思いをした昨年とは違う、一回り成長したメンバーの姿に迫った。
※この取材は9月17日に行ったものです。
「ことしは本当に勝ちにいく」
下級生の小林と大木(左)
――夏合宿お疲れ様でした。いかがでしたか
小林 ことしは後輩も居て、団体形も2年目ということで意識を変えなければいけなかったから、きょねんとは違った合宿になって良かったと思います。
上杉 きょねんよりも形を練習する時間がありました。きょねんはエンピをやっていたんですけど、ことしからゴジュウシホに変わって。合宿の時はまだ形になっていなかったんですけど、細かいところもできて試合に向けての良い練習になったかなと思います。
大木 初めて7泊8日という凄く長い合宿を経験して、やっぱりその分疲れも溜まって全然付いていけない部分も多かったんですけど、1000本突きとか初めてやって(笑)。
――1000本突きというのは
柴崎 1000本突きと1000本蹴りと100回形と、あんまりためにはならないんですけど(笑)。数をやって精神的に追い込むみたいなイベントが昔から伝統であって、その中の1つです。
大木 楽しいものではないんですけど、それを辛いけどみんなで声を出して盛り上がりながらできて良い経験になりました。形も結構長い時間練習できたので、合宿で教えてもらったことを後期につなげていきたいなと思いました。
――柴崎さんにとっては最後の合宿でしたが
柴崎 きょねんから形は仕切らせてもらっていて。でもことしは形メンバーだけでなく部活全体としても引っ張っていかないといけなくてそこがきょねんとは違うところでした。その辺は大変でしたが、4年間経験してきて一番あっという間の合宿でした。形メンバーの二人(上杉、小林)も学年が上がって自分に掛かる負担も減ったし、精神的にはことしが一番余裕はありましたね。きょねんは本当にがむしゃらにやらなきゃという年だったんですけど、ことしは本当に勝ちにいくために皆が考えて自分から動けるようになったのかなと思いました。
――2年生の小林さんは入部当初と比べていかがですか。成長された部分は
柴崎 やっぱり、努力はすごくしています。見えないところでも。それは皆すごく分かっています。ただちょっと、言われたことばかりになってしまっているというか。頭の中でこれをやらなきゃということしか考えられていなくて、それが空手にどうつながっているかをもっと考えればもっと視野が広がるかなと思いますね。
小林 いつも言われてます(笑)。自分でも分かっているんだけど、それをまだうまく形に生かせていない。これからですね。できるか分からないけど。
柴崎 直接的にすぐには結果に出ないけど、夏にやってきたことがだんだん出始めてはいるので、9月末ぐらいからいきなり伸びるのかなって信じていますけど。大丈夫かな(笑)。
――大木さんは入部して半年が経ちました。先輩方と過ごしてきていかがですか
柴崎 何かあるでしょ、先輩。一個上で一番よく関わっているもんね。
小林 形の話はあんまりしないかな。形メンバーでライバルだと思っているから、まだ私があんまり心を開けていないかもしれない。話したいんだけど、そのあと一歩がまだいけてないと思う。
大木 先輩方1人1人性格が違って。暖乃先輩はふんわりした感じがあって、一緒に居て安らぐって感じ(笑)。
柴崎 なめてます(笑)。
上杉 じゃあ暢子先輩は?
大木 暢子先輩は、結構やっぱり言われて、自分落ち込んじゃうんですけど(笑)。でも暢子先輩は嫌でも皆に強く言わなきゃいけないし、引っ張っていかなければならないという気持ちが凄く出ているので、自分もなるべくそれに応えられるようにやっていかなければならないと凄く思います。
――そもそも空手を始めたきっかけというのは何ですか
柴崎 兄がやっていたから。
大木 姉がやっていたから(笑)。
上杉 お兄ちゃんがやりたいと言って一緒に見に行って、やりたいってなったけど小さくてやらせてもらえなくて。東京に引っ越してきてから家の前で空手をやっていたので見に行って、勝手に入っちゃった(笑)。
――大学でも空手を続けようと思っていましたか
柴崎 思っていませんでした。腰が悪くて。辞めようかなと思ってワセダに入りました。高校生の時に怪我が多くて、自分のペースでできる環境が良いと思ってワセダに入って、自己推薦なら辞めても良いので、っていう軽い気持ちでした。凄くない?この軽さ(笑)。
小林 初めて聞きました(笑)。
柴崎 でも結局やらざるを得なくなってしまったので、辞められないんです。
――辞められない、というのは
柴崎 まあ、応援してくれている人が居るからですかね。凄く強いレスリングの人が、応援してくれている人が1人でも居れば絶対に辞めたら駄目だと言っていたのを間接的に聞いて。あとユミと団体形を組みたいねって話していたら、暖乃が入ってきてくれて。じゃあもうこれは本当に勝ちにいこうと。本気で勝とうとシフトしました。
――空手を続けてきて良かったことは何ですか
柴崎 1つは全国に友だちができたことかな。試合で当たったり、高校で全国優勝したからっていうのもあって名前が広まったおかげで色んな強い選手と友だちになることができました。あとは何だろう。
上杉 あと頑張れることがあること。多分空手とかやっていなくて普通の大学でバイトしてってやってたら、一生懸命頑張ろうと思えることも無かったと思うので。頑張れることがあるのは良いことかなって思いますね。
柴崎 形は特に忍耐力が自然と身に付いているのかなとは思いますね。あとOBの先輩と縦の関係が築くことができるのは良いところかなと思います。普通だったら出会うこともないし。おじいちゃんみたいな先輩が可愛いです(笑)。
小林 高校の時は全然勝てなかったから空手を辞めたいなってずっと思っていました。大学に入って満足したわけではないけど、先輩方と団体形を組めて、やっている時も楽しいし結果を出せた時も凄く嬉しかったし。そういうことがあるから空手をやっていて良かったなって思います。
大木 空手をやっていて、社会に出た時も通用することって多分たくさんあると思います。あいさつ1つでもそうだし、1年生は結構仕事があったりして次のことを考えたりしながら動かなければいけないので、そういうところが社会に出てきた時にもつながってくると思うのでいいと思います。
団体形なら「辛いことも楽しいこともみんなで共有できる」
上級生の柴崎と上杉(左)
――団体形をやる上で大事なことは何ですか
上杉 先輩が言うこと当てていい?チームワークって言うと思う(笑)。
柴崎 いや、もうそれしか出てこないね(笑)。それに限ります。私が昔から一番大切にしていることはチームワークです。何て言うのかな。別に喧嘩したりしても良いんですけど、そこにある絆が強いところが絶対に勝つと思っていて。高校の時に特に思ったのは、個人レベルの高い人が集まっているトップレベルの学校はいっぱいあるんですけど、そこが絶対に強いわけではないと思います。
――現在、形メンバーのチームワークはいかがですか
柴崎 そうでもないですね、ぶっちゃけ。仲悪いし(笑)。
上杉 仲悪い(笑)。
柴崎 でもこれからだと思います。部活は2時間しかなくて足りないので、今週から1カ月くらい午前練、午後練とずっとやっていくんですけど、そういうきつい時間をみんなで共有してこそ生まれてくるものだと思います。
上杉 目標がみんな一緒ならぶれないと思います。向かっていく方向が一緒なので。
柴崎 そこが違うとどんなに仲良くても、競技では崩れるのかなと。みんな辛いことや悩むこともあると思うんですけど、同じ目標を共有してそれに向かってみんなで必死にやっていけば、最終的にはぶれないと思います。
――個人とは違う団体の難しさとは何ですか
小林 自分のことだけ考えていては駄目なところ。
上杉 何だろうな、人間関係(笑)。モチベーションの違いとかを、全体でぐっと持っていったりするのが難しい時があるかな。疲れている時とかは特に。
――逆に団体の良さは何でしょうか
上杉 1人じゃないところ。練習も団体だったら楽しい。時間が経つのが早い。
柴崎 辛いことも楽しいこともみんなで共有できる。個人は時計を見て、うわあと何時間あるよってなるけど、団体だとあと何分しかないっていうくらい早いですね。あとは妥協しないところかな。チームだけどある意味みんながライバルで、その中でやるから。
――試合に出る時も団体と個人ではやっぱり違うんですか
全員 団体の方が緊張します。
柴崎 個人は思い切りやればいいやみたいな。やってきたことを出し切ろうぐらいの気持ちなんですけど、団体はどうしても合わせなきゃとか思ってしまうので。
――団体形としては現在何を練習されているのですか
上杉 ジオン、ゴジュウシホ、ソーチン。
――個人として形はどれくらいの数を覚えているのですか
上杉 覚えているだけだったらいっぱいあります。
柴崎 30個くらいかな。
――その中から、どうやって団体で演武する形を選んだのですか
柴崎 指定形(ジオン)とソーチンはきょねんやっていて、高校からずっとやっている形でもあるので、その2つは入れようとなりました。松濤館流の中にも、力強い系の形かスピーディーな形かっていう系統があるんです。力強い系はジオンやソーチンで、スピーディー系はカンクーダイ、エンピとか。私はジオンを個人でも打つんですけど、ユミはカンクーダイじゃないですか。決勝では形の分解もあるので、それも見据えて何が良いかとなった時にソーチンで分解をしたい、と。形には第1、2指定形、自由形とあるんですけど、指定形は結構みんなができる形で、自由形は難しいものが多くて。第2指定形のエンピを自由形の方で打つとやっぱり難しい形を打っている選手に負けてしまうので、エンピは無しになりました。そこでゴジュウシホが無難かなと、消去法ですね。
――他大学とは違うワセダのアピールポイントは何ですか
上杉 何だろうね。
柴崎 女子だとなかなか難しいし限界はあるんですけど、やっぱりパワーは重視しています。パワーとキレですかね。
2年間の集大成として
――柴崎さんは引退まで2カ月を切りました。4年間振り返っていかがですか
柴崎 早く終われって感じですね(笑)。こないだ振り返った時に、大学生活辛いことしかないなって思いました。悔しい思いしかしていないし、本当に嬉しいっていう瞬間があったのかと思うと無いなって。特に1、2年生の時は団体すら組めなかったし、3年生の時はそれなりに成績は出たんですけど決勝コートに立てなかったので。最後の最後に勝ちにいきたいという思いがありますね。後悔したくないです。
――改めて団体形メンバーへの思いを聞かせてください
柴崎 団体を組んであっという間で、もう2年目なんですけど。ユミは中学生の時から長く組んできたんですけどこれで最後になる可能性が高いので、一緒にまたトップを取りたいという思いがあります。中学生で2位で、高校生で1位で、もう1回大学生で1位を取ったら格好いいじゃないですか。暖乃は2年目なんですけど、結構長く組んでいたのかっていうくらい一緒に居る気がするよね、なんか。
小林 一緒に居ますね。
柴崎 4年間くらい一緒な気がするんですけど、私があんまり器用じゃないっていうのは自分でも感じていて。凄く厳しく言ってしまうタイプなので自分が後輩だったら絶対に怖いなとは思うんですけど、一緒に勝ちたいという気持ちが凄く強いから。本人もそれに応えてくれているから、やっぱり勝たせてあげたいという気持ちが強いです。勝った時の世界が全然違うから。分かるよね、見える景色が違うのが。
上杉 違いますね。普通に準決勝と決勝でも全然違うからね。
柴崎 その瞬間を本当に味わわせてあげたいし、一緒に味わいたい。だから暖乃自身もこれが最後っていう気持ちでやってほしいなと思います。来年私はもう絶対に居ないし、辛いことは多いかもしれないけど、そこの思いを強く伝えたいと思いますね、梨花にも。
――最後に10月14日の関東大学選手権に向けて意気込みをお願いします
小林 ずっと2年間一緒に居た暢子先輩と組めるのは最後だから、先輩にラストに一花咲かせてあげたい。私も初めて全国でトップを取ってみたいから、あとちょっとしか練習できる期間はないけど、自分に負けないで頑張っていきたいです。
大木 まずは1つでも形のメンバーに入れるように努力することと、あとはもう4人で1位が取れるように、勝ちにいきたいと思います。
上杉 関東はとりあえず、大学の名前に負けないように。きょねんはそれで悔しい思いをしているので、圧倒的な差を付けていきたいなというのがあります。やっぱり優勝して全日本に行くのとぎりぎり全日本に行くのは印象が全然違うので。優勝することによって、全国でワセダは強いんだという名前を残したいなと思います。ワセダは頭だけじゃないぞ、と。まあ自己推薦だし頭も無いんだけど(笑)。なんか格好いいじゃないですか、勉強もできて空手も強いみたいな。そういう感じになりたいなって思います!
柴崎 関東大学選手権が私、誕生日なんですよ。だから勝ちたいですね。きょねんとは全然違う私たちで臨みたいなって思います。試合当日には皆が堂々と自信を持って、とにかく良い形を打って結果につなげたいと思います。優勝したいです。関東は予選から気合いを入れてやって、全日本では本当に最後の最後なので思い切りはじけて一番輝かしい金メダルをいただきに…って何が起こるか分からないんですよね、絶対勝てると思っていたのにきょねんは予選落ちしちゃったし。だから頑張りますとしか言えないですね(笑)。最後なので思い切りやります!
――ありがとうございました!
(取材・編集 加藤万理子)
柴崎、上杉、小林、大木
◆柴崎暢子(しばさき・のぶこ)(※写真中央左)
1991年(平3)10月14日生まれのA型。150センチ。東京・八雲学園高出身。社会科学部4年。形メンバー唯一の4年生ということもあって面倒見が良く、後輩が大好きだという柴崎選手。関東大学選手権当日は22歳の誕生日。団体形2年目の集大成としても、最高の演武を見せてくださることでしょう!
◆上杉ユミ(うえすぎ・ゆみ)(※写真中央右)
1992年(平4)5月23日生まれのO型。157センチ。東京・八雲学園高出身。スポーツ科学部3年。とても気さくで取材中も場を和ませてくださった上杉選手。しかし、形メンバーからは「人に興味が無い。後輩嫌い(笑)」という声もちらほら。冗談を言えるくらい、みんな仲がいいということなのでしょうね。
◆小林暖乃(こばやし・はるの)(※写真左)
1994年(平6)3月22日生まれのA型。162センチ。神奈川・山手学院高出身。人間科学部2年。大学に入ってから空手が楽しいと話す小林選手。取材中に柴崎選手が小林選手へかけた言葉に対し、実は「うれしくて泣くのをこらえていた」そう。先輩・後輩から良い刺激を受けながら日々練習に励んでいるようです!
◆大木梨花(おおき・りか)(※写真右)
1993年(平5)5月24日生まれのA型。158センチ。東京・八雲学園高出身。スポーツ科学部1年。笑顔がとっても素敵な大木選手。1年生ということでちょっぴり控えめな様子でしたが、実は腹黒いという噂も。これから取材を重ねていくうちに少しずつ暴いていけるといいのですが(笑)。