『楽しむ』気持ちで逆転勝利! 30年ぶりの3連覇に王手/法大1回戦

準硬式野球
1回戦
法大
早大
(早)○清水、前田、杉山-吉田龍
♢(三塁打)鈴木(4裏) ♢(二塁打)鷲田(3裏)、関(5裏)

 栄冠はもう目の前だ。勝ち点を取れば優勝、取れなければ4位となる法大戦。その大事な初戦は、手に汗握る接戦となった。先発の清水佑樹(スポ2=早稲田佐賀)は先制点こそ許したが、7回3安打1失点と先発の役割を十分に果たす。打線は4回に鈴木涼馬(商4=東京・早実)の適時三塁打で追い付くと、5、7回には関大輝(基理2=茨城・江戸川学園取手)の2打席連続適時打で2点のリードを獲得。投打がかみ合って逆転勝利を果たした早大は、30年ぶりの東京六大学リーグ戦(リーグ戦)3連覇まであと1勝とした。

 先制したのは法大だった。初回、清水は先頭打者を遊ゴロに打ち取ったが、それを渡部椋雅(商2=神奈川・桐光学園)が一塁に悪送球。いきなり走者を背負うと、2死一塁から4番・佐々木勇哉(4年)に右中間への先制適時三塁打を許した。さらに4回には渡部のこの日2度目の遊ゴロ悪送球と自身の失策、バント安打で1死満塁に。この日一番のピンチを迎えた。しかし後続を抑えて追加点を阻止すると、その後も好投を披露。公式戦では自己最長となる7回を、最後まで球速を落とさずに投げ切った。

7回3安打1失点と好投した清水

 打線は序盤こそ併殺打や犠打の失敗などで攻撃のかたちをつくれなかったが、中盤以降つながりを見せる。まずは1点ビハインドの4回、中村康祐(教3=早稲田佐賀)の左前打から2死二塁の好機を演出。ここで鈴木涼馬(商4=東京・早実)の鋭いライナーはやや右に寄っていた中堅手の左を破り、同点の適時三塁打となった。続く5回には無死一塁の好機を併殺打で潰した後、清水が内野安打で出塁。すると続く1番・関の大飛球が左中間を深々と破る二塁打に。スタートを切っていた清水が一気に生還し、勝ち越しに成功した。さらに7回には鷲田拓未(スポ1=神奈川・日大高)がこの日3本目の安打を放ってチャンスメイク。その後1死一、二塁となり、打席にはまたしても関。今度は左前に飛球をうまく落とし、鷲田の生還をもたらした。

勝ち越しの二塁打を放ち、ポーズを決める関

 そのままリードを守り切って3-1で勝利した早大。試合前にも試合後にも、選手たちの口からは『楽しむ』という言葉が次々に聞かれた。このメンバーで挑む最後のリーグ戦、最後のカード。「優勝が懸かる中で勝ちを目標にするのは当然だが、その中でも最後なので楽しくのびのびとやりたい」(吉田龍平主将、スポ4=東京・小山台)。この言葉通りに全員で盛り上がることができたのが、この日の勝利につながったのだろう。あす勝てば優勝が決まり、同時にこのメンバーで戦うリーグ戦が終了する。一片の悔いをも残すことがないよう、最後まで野球を『楽しむ』。

(記事 池田有輝、写真 西山綾乃、小山亜美)

★吉田龍主将のお父様、ご友人らに特別インタビュー!

吉田龍主将

 この日の試合は最終カードということもあり、各選手のご家族やご友人もスタジアムにいらっしゃっていました。その中から吉田龍主将のお父様や小山台高時代のチームメートなど四名の方にお話を伺うことができました。

お父様・吉田明弘さん

――優勝が懸かっていますね

 東大にスタートで負けて何とか拾えそうな優勝なので、3季連続での優勝は30年ぶりですよね。ぜひ優勝してもらいたいですね。

――吉田龍選手が小さい頃の野球に関するエピソードを伺ってもよろしいですか

 近所の子が少年野球に入ったので、それに連られて小学1年生のときに入りました。少年野球のときにはピッチャーとキャッチャーとファーストをやっていましたね。キャッチャーは中学2年生のときからですかね。正捕手がけがをしてしまったので、キャッチャーをやっていたことが監督にバレて、「キャッチャーをやってみろ」と言われてやってからずっとキャッチャーを任せていただくことになりました。シニアの硬式野球のコーチで高校時代ずっとキャッチャーをされてきた方がいらっしゃって、その方に色々とご指導いただいたことがその後キャッチャーをやるきっかけになったのかなと思います。

――大学でも野球を続けられていますが、小さい頃から野球が好きというのは伝わってきますか

 好きですね。野球しかできないというか。

――吉田龍選手のご自宅での様子とか伺ってもよろしいですか

 学校もちゃんと行かなければなりませんし、部活をやっていますとお金もかかりますからアルバイトもやらなければなりませんしから、結構学校の勉強と部活とアルバイトを全て両立することが大変なようです。

――心配になることってありますか

 そんなにないですね。勝手にやってくださいと。もう大人ですからね。就職活動のときも大変でしたね。

――ご自宅では野球のお話はされますか

 自分とはあまりしませんが、弟とはたまにしていましたね。もう引退しましたが、夏まで弟に熱心にアドバイスをしていました。対戦相手に相手に対してのアドバイスですね。自分も試合の前にはVTRをちゃんと見てますけども、弟の対戦相手の高校のVTRも一緒に見て配球とか攻め方とかをアドバイスしていましたね。

――次戦に向けて選手にメッセージをお願いします

 絶対に勝ってもらいたいですね。初戦が良くないスタートでしたが(優勝できる)チャンスはもうないので、ぜひ全員で力を合わせて頑張ってもらいたいと思います。優勝してほしいです。

吉田龍主将の高校時代のチームメート・小野空朗さん、小野海朗さんとそのお母様の小野薫さん、クラスメートの高木希さん

――高校のときの印象に残っているエピソードはありますか

小野空 入学したときから全然おごる感じじゃなくてとても謙虚で。大学でもキャプテンなので、昔からそういう謙虚なところが周りから認められているんだなと思います。

小野海  バッティングが全然変わらない。

小野空 確かに。

小野海 昔は寡黙ってわけじゃなかったのですが、みんなの前で何かを言うタイプじゃなくて。今はみんなの前で意見するようになったので、そこは大学4年間で彼が一番成長したところかなとは思います。

小野薫 ピッチャーが気持ちよく投げられるようにしているって言ってたよね。投球がうまくいかないときはピッチャーの気持ちを上げるように声を掛けるとかさ。すごくそれが印象に残ってる。

小野海 ずっと言ってたんですよね。「自分はキャプテンをやるタイプじゃない」って。高校からずっとそう言ってきて、大学でもキャプテンをやっているのでキャプテンシーが溢れ出てるなと思います。

小野空 すごく周りのこと見てるよね。

小野海 きょうも守備の前にピッチャーに声を掛けていたので。キャプテンをやるためにというよりかは、チームのことを考えた色んなところにアンテナを張っているなというのは今も昔も変わらないですね。仲間のささいな変化にもよく気づくタイプだし、それに対してどうしようって悩んだりして。彼のことを悪く言う人はいないですよね。

――誰もが認める人格者みたいな感じですか

小野海  そうですね。同級生、先輩、後輩からも慕われるというタイプだね。

小野空 高校からずっとバントがうまくて。ランナー一塁のときに吉田が打席に入ったら、二盗、三盗、スクイズみたいな。

小野海 入学して最初の練習試合で、今社会人野球に進んでいる甲子園に行ったエースの人がすごく速いボールを投げていたのですが、普通に捕っていて。それを見たときにレベルが違うなというか。1つ上、2つ上を見ても小山台では飛び抜けてうまかったので。気づいたら1年生の枠から飛び出してAチームに入っていて。さっきも言ったんですけど、それを偉そうにするんじゃなくて。最近見ないねっていう話をしていたら同じグラウンドでAチームの練習試合をしていて。

小野空 本当に辞めたかと思った(笑)。

小野海 本当に謙虚。それに対して何もおごらない。すごく仲間のことを考えてピッチャーにアドバイスをしていて。きょう見ていても法政すごく強いなと思ったのですが、今早稲田が強いのは彼が引っ張っているからなのかなと思います。見ていてすごくうれしかったですね。

――吉田龍選手の最後の大会だから見に来られたのですか

小野空 そうですね。大田スタジアムが家から近いので(笑)。

小野海 大田スタジアムだったら見に行きたいなって話をしていたんですけど、最終戦が大田スタジアムであるって聞いて来ました。

小野空 同級生の中で大学野球をやっているのってひと握りで、 中でも4年のこの時期までやっているのって彼くらいかも。だからみんなの中でも期待している部分はあります。新社会人でも機会があるなら野球を続けてほしいなというのはあります。

――最後に吉田龍主将へのメッセージをお願いします

小野空 竹下(直輝、スポ4=東京・小山台)頑張れ!(笑)

小野海 吉田さんへのメッセージを求められて竹下頑張れって言うとみんながすごくよろこぶんですよ笑

髙木 悔いのないように頑張ってほしいです。大学野球を楽しんでほしいです。

小野空 吉田の胴上げをしているのを写真でもいいからみたいですね。ぜひともそれを撮影してきてください。

(取材・編集 西山綾乃)

今回取材にご協力頂いた皆様に深く御礼を申し上げます。

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【連載】法大戦直前特集『Sequel to the dream』(10/17)

コメント

鈴木涼馬(商4=東京・早実)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

初回に点を取られて流れが悪いかなと思ったのですが、追い付いてからは自分たちの野球ができたのかなと思います

――その追い付いた場面の打席にはどのような気持ちで入りましたか

ツーアウト二塁でランナーが足の速い康祐だったので、シングルヒットを打てば帰ってきてくれると思っていたので、追い込まれながらも何とか食らいついていった結果がいい結果になったと思います。

――先日の対談では『楽しむ』ことを意識したいというお話がありましたが、きょうの試合は楽しめましたか

そうですね。もうリーグ戦ができるのも多くて2試合ということで、勝つのはもちろんですが楽しむことを大事にしていて。きょうは点を取った場面とかもみんなで盛り上がれていたのかなと思います。

――あすは優勝の懸かる2回戦です。意気込みをお願いします

きょうはいいゲームができたので、あしたはきょう以上のゲームをして最高のかたちで締めくくれればなと思います。

中村康祐(教3=早稲田佐賀)

――きょうの試合振り返っていかがですか

優勝がかかった試合で、4年生と一緒に戦える試合も残り少ないので、楽しもうというのを大事にしました。結果勝つことができたので、最高の形だったのかなと思います。

――ご自身の打撃を振り返っていかがですか

慶応戦ではあまり打てなかったんですけど、明治戦から良い感じで自分のバッティングをできていたので、最後にチームに貢献することができればと思って試合に臨みました。打点は付きませんでしたが、2安打ということで、いい結果になって良かったです。

――打撃で改善された点はありますか

特にはありません。4年生と試合をするのが少ないから楽しんで打とうという思いで、ただ思い切って振りました。それが上手くいい方向に転んでくれて良かったです。

――守備でもファインプレーがありました

変なジャンプで恥ずかしいんですけど(笑)。結果的に捕れて良かったんですけど。あしたも頑張ります。

――きょうは福岡からお父様とお姉様もいらしていました

そうですね。遠いところからわざわざ、姉ちゃんは初めて、一緒に見に来てくれたので、感謝しています。結果良いところを見せることができて良かったです。

――あしたの試合への意気込みをお願いします

あしたも勝って、優勝を決めるという気持ちで臨みたいと思います。全員がしっかりと役割をこなして、いい形で勝てればなと思います。

関大輝(基理2=茨城・江戸川学園取手)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

きょうは先制点を取られたんですけど、流れはずっと早稲田だったのかなと。そんな中で、明治戦では打つことができなかったんですが、いい感じにタイムリーが打ててよかったです。チームとしても優勝に近づく勝利になりましたし、とても大きい一戦になったと思います。

――2安打2打点の活躍でしたが、ご自身の打撃を振り返っていかがですか

1、2打席目終わった時はやばいなと思って、またきょうも打てないのかなと思ってしまいました。先に清水が走ってくれたり、涼馬さんが打ってくれたりしたのもあって気楽に打つことができました。その1打席だけに集中した結果がタイムリーにつながったと思います。2本目(の安打)はラッキーでしたけど(笑)。

――3打席目から調子を上げた理由は何でしょうか

気持ちの面も大きかったですが、バットを変えたこともあると思います。バットを振れていないのかなと思って、重さを軽くしました。素振りの時も軽い方がしっくりきていたので、このバットでいこうかなと思いました。

――明大戦から改善した点はありますか

強いて言うのであれば、きのうバッティングセンターに行ってきました(笑)。あとは力まずに、ステップ幅を小さくすることを心掛けました。2ストライクで追い込まれてからノーステップというのはこの試合から辞めました。ノーステップをしっかり練習できていなかったので。今は全部同じフォームで打っています。

――バッティングセンターはよく行かれますか

いえ、1年ぶりくらいですね。法政戦に全てをかけて臨んだので、授業中に(法政の)ピッチャーのフォームを見たりとか。きのうのバッティングセンターはずっと行こうと思っていました。

――あしたの試合に向けて意気込みをお願いします

1番という打順ですけど、あしたもみんなが作ってくれたチャンスで全部打ちたいと思います。あとは4年生との試合が、勝つことができればあしたで最後のリーグ戦の試合なので、それは自分の中にずっとある思いで。悲しいですけど、4年生にいい思いで引退してもらえるように、秋のリーグ戦を優勝して、王座(関東地区大学・社会人王座決定戦)に繋げることができればなと思います。

鷲田拓未(スポ1=東京・日本大学)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

優勝が懸かった大事な試合だったので、気合いも試合前から入っていました。いいかたちで試合には入れたかなと思います。

――きょう勝てたことで優勝に近づきましたね

4年生とプレーできるのも短いですし、自分にできることは少ないですが、精一杯やろうと思って毎試合臨んでいます。

――3打数3安打と好調でしたね

対戦したことはありませんでしたが、(相手先発の尾崎海晴選手が)いいピッチャーだということは聞いていました。1打席目ファーストスイングで振れたので、その流れで2打席目、3打席目からいい意味で積極的に行けたかなと思います。

――法大の印象はいかがでしたか

個々の能力の高さを感じました。出てくるピッチャーは2番手、3番手でもレベルが下がることは無いですし、バッターも上位は当たり前ですが、下位の打順でも振れるのでレベルが高いなと改めて実感しました。

――次戦は秋季リーグ戦最後の試合となる可能性があります。意気込みをお願いします

4年生の最後を優勝で締めくくりたいですし、そこに少しでも貢献できればなと思います。