若い力が打線を起爆 5年ぶりの全日出場を決める/専大戦

準硬式野球
決勝
専大
早大 14
(早)清水、○田中爽-吉田龍
♢(本塁打)鷲田(1裏)、新井(3裏)♢(三塁打)中村(4裏)、塚脇(5裏) ♢(二塁打)新井(2裏)、須能(3裏)

 「よくぞここまで来られたな」(池田訓久監督、昭60教卒=静岡・浜松商)。関東地区大学選手権でのコールド負け(●1-11立大)に始まり、幾度となく苦難に見舞われてきた今年の早大。全日本出場予選会(全日予選)に入っても、1次トーナメントでは東洋大に完封負けを喫し、2次トーナメント初戦でも8回2死までビハインドと、東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)序盤のような厳しい戦いを強いられてきた。しかし、この日はその鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように打線が爆発。東都大学連盟1部リーグ所属の実力校・専大を相手に大量14得点を挙げ、全日本大学選手権(全日)への切符を勝ち取った。

23日の自治医大戦とこの日それぞれのスタメン。いくつかの変更点があった

 この日の先発は清水。春季リーグ戦で最優秀防御率を獲得するなど、大崩れしない安定感のある投手だ。第1先発を務めていた久郷がここ最近立ち上がりの制球に苦しんでいたこともあり、重要な試合の先発に抜てきされた。また、打線も上図のような入れ替えが行われた。好調の1年生・鷲田を1番に起用し、指名打者には専大投手陣に左投手が多いことから右打者の竹本が入ったかたちだ。

 試合は初回から動いた。清水が表の守備を無失点で切り抜けると、先頭の鷲田が3球目を振り抜く。「とりあえず塁に出ようと思って打った」という当たりが左翼手のはるか頭上を越え、先頭打者本塁打となった。これで勢いづいた打線は続く2回、竹本の安打を皮切りに1死二、三塁の好機をつくり、新井の適時二塁打で2点を追加する。さらに3回には塚脇、中村、須能の3連打で1点を追加すると、2死後には加藤にも適時打が飛び出す。そして極め付きは新井。振り抜いた当たりはこれまた左翼手のはるか頭上を越え、3ランに。序盤終わって8-0と大きなリードを手に入れた。

先頭打者本塁打を放ち、中村(5)に迎えられる鷲田

 しかし5回、ここまで好投を続けていた清水が連打と死球で無死満塁のピンチを迎える。ここで相手2番打者を左飛に打ち取り、3番打者には三塁方向にゴロを打たせた。しかし、これを須能が本塁に悪送球。これで1点を返されると4番打者には2点適時二塁打を許し、清水はここで降板となってしまった。代わってマウンドに上がったのは田中爽稀(法2=神奈川・柏陽)。春季リーグ戦終盤から全日予選にかけて、苦しい場面での救援を繰り返してきた頼れる剛腕だ。田中爽は強力打線を相手に自慢の速球で真っ向勝負を挑み、1死二、三塁のピンチをしのぎ切った。

好救援を見せた田中爽。写真は6回

 するとその裏、早大打線がまたも火を噴いた。2つの四球や吉田龍のバスターで無死満塁の好機をつくると、新井がこの日7打点目となる2点適時打を放つ。東洋大戦でスタメン入りを果たして以降、なかなか当たりの出ていなかった新井だが、この日は「とにかくしっかりやってきた」という打撃練習の成果を遺憾なく発揮した。その後鷲田の犠飛と塚脇の右越え適時三塁打でも1点ずつを追加。取られたら取り返す理想的な攻撃で、リードは9点に広がった。

大活躍の新井(中央)。写真は3回に3ランを放ち、笑顔を見せている場面

 後半に入っても試合の主導権は早大が握る。7回には敵失や代打・関の左前打で好機をつくり、鷲田の犠飛と須能の適時打で2点を追加。投げては田中爽が無安打投球で専大打線を封じ込めた。そして迎えた9回表。最後の打者を一ゴロに抑えると、春季リーグ戦優勝時と同じように、選手たちは一斉に田中爽の元へと駆け寄っていく。14-3。理想的な試合運びで完勝し、5年ぶりの全日出場権を獲得した。

全日出場を決め、喜びを爆発させる選手たち

 春季リーグ戦から下級生の活躍が目立っていた早大だが、この全日予選では新井や鷲田といった1年生の台頭も見られた。池田監督は「(これから)新しい選手が入れ替わる可能性もまだまだある」とさらなる新戦力の出現にも期待を寄せている。8月終盤の本番へ向け、チーム内競争はますます激化していくだろう。長いようで短い約2カ月間、早大準硬式野球部はどのような進化を見せるのか。次は全国の舞台で、『覇者』の名にふさわしい快進撃を見せてほしい。

(記事 池田有輝、写真 池田有輝、西山綾乃)

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コメント

池田訓久監督(昭60教卒=静岡・浜松商)

――監督に就任されて以来初の全日本大学選手権(全日)出場が決まりました。今のお気持ちを教えてください

率直にうれしいですね。本当に学生がよく頑張ってくれました。今年のチームがスタートした(浜松)合宿の頃から考えると、よくぞここまで来れたなというのが偽らざる正直な気持ちです。まずは関東大会(関東地区大学選手権)で立教にコールド負けしたところから始まって、リーグ戦も法政が頭一つ抜けている中で、明治に連敗した後もう4連勝しか優勝の芽がないというところでそれを達成して。その後の予選会(全日本出場予選会)、これも(監督に就任してから)初めてだったのですが、初戦で東洋に勝てば(全日)というところで。総合力の差だったんでしょうね。0ー1で負けて。次の自治医科大学も途中まで本当に劣勢でっていうところで選手が頑張ってくれて。そしてきょうの試合ですね。これまでの鬱憤を全部晴らしたかのような打撃を見せてくれて。法政との第2回戦を思い出しましたね。非常に感慨深い勝利でした。

――本日は前の試合からスタメンの変更などがありました。まず、先発に清水佑樹投手(スポ2=早稲田佐賀)を起用されましたがどのような意図があったのでしょうか

基本的に久郷(太雅、創理4=静岡・沼津東)が先発をしていたのですが、立ち上がりのコントロールがどうしても定まらないというケースがこれまで多かったので。この試合は絶対に落とせないというところからすると、制球力のある清水をまずは頭にもっていって、田中(爽稀、法2=神奈川・柏陽)でつなぐという継投パターンを想定していました。もちろん先発の清水が投げ切ってくれればそれはそれで良かったのですが、きょうの継投については頭で描いていた通りでした。このような理由からですね。

――打線では、鷲田拓未選手(スポ1=神奈川・日大高)を1番で起用されました

彼は最初新人戦で代打でヒットを打ったところから始まったのですが、非常にバッティングが思い切りが良くて振りもいいと。また練習での姿勢もいいと聞いていまして、先週の自治医大戦でもそうですが打つべきところで打ってくれるイメージがあったので、思い切って(チームの)軸になるところで起用しました。うまくいけばきょうのような展開になるかもしれないなというのが少し頭にあって、それが思っていた以上の結果になりました。先頭打者ホームランは大きかったですね。あのホームランで、やっぱり鷲田を1番に起用して良かったなと思いましたね。このような経緯を踏まえての起用でした。

――指名打者には竹本周平選手(人3=鳥取・米子東)を起用されました

きょうは専修が左ピッチャーでくるというのをある程度想定していたので、であれば左の関(大輝、基理2=茨城・江戸川学園取手)、高山(幸汰、商3=佐賀西)でいくよりは右の竹本でと。竹本も非常に好調なのでね。練習では非常に当たっていますから、まずは竹本を使ってみようと。それが最初当たったなという感じがしています。そんな理由からですね。

――きょうの試合内容を改めて振り返っていかがですか

結果から見れば完勝ですよね。まずはピッチャーがやはりゲームをつくって。今までの我々の勝利のパターンというのも、まずはピッチャーがゲームをつくってロースコアでも勝ち切るというものでしたので。打線は思っていた以上の成績でした。やはり1年生の鷲田が先頭打者ホームランを打ったことが大きな起爆剤になって、それに引っ張られるように先輩たちもしっかりやってくれたという感じですね。

――これから全日に向けて2カ月ほど練習期間がありますが、チームにはどのような成長を期待されていますか

先ほども言ったように、関東大会の時から考えるといろいろな面で右肩上がりの成長を見せているチームなので、まだまだ発展途上だと思っています。残された期間、今までゲームをやってきた中で当然マイナス面もいくつかありましたので、それを補うための練習をすることですね。あとやはり新しい選手が入れ替わる可能性も見ているとまだまだあるので、そういう選手が全日までの間に出てきてほしいなという期待も持っていますね。

吉田龍平主将(スポ4=東京・小山台)

――全日出場が決まりました。感想を聞かせてください

3月の関東選手権(関東大会)でコールド負けをしたチームなので、辛い思いからのスタートでした。けれど、まだ途中ではありますが、中目標としての全日本(大学)選手権に出場が決まったので、本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。

――今日は全日出場が懸かった大一番の試合でしたが、どんなことを意識して練習されてきましたか

相手ピッチャーの特徴をしっかり全員に伝えて、バッティングピッチャーの方も相手が左のピッチャーということで左のピッチャーに頑張ってもらいました。そういった意味で打ち込みを頑張っていました。

――相手の投手の特徴を教えてください

すごく球が速いというよりは、変化球が良いピッチャーだと思っていたので、それに打たされないというように指示をずっと出していました。それを全員が上手く体現してくれたかなと思います。

――では、練習の成果が発揮できたということでしょうか

はい、そうだと思います。

――専大の印象は戦ってみていかがでしたか

バッター陣一人一人のスイングが鋭いですし、先制はしましたけど簡単に試合をひっくり返す力はあるチームだとは思っていました。なので9回まで集中して試合に臨めました。

――今日はどういうリードを心掛けられましたか

雨で清水が投げづらそうにしていたので、彼が1番コントロール出来るボールを中心に投げさせました。点数は取れていたので、あまりかわし過ぎないというか、大胆にリードすることを心がけました。

――5回無死満塁でピンチだった場面の心境を教えてください

ピンチではあったのですが、8点差もあったので、マウンドで集まった時も慌てることなく自分たちのプレーをすれば大丈夫だからという話を全員でしていました。

――1年生の活躍をご覧になっていかがでしたか

本当に素晴らしいなと思いました。その一言なのですけれど、僕も1年生からずっと出さしてもらっていて、あれだけ活躍できることは本当にすごいと思います。彼ら自身が準備や努力をしてきた結果なのかなと思います。

――試合後のミーティングではどのような話をされましたか

全日本(全日)が決まったのですけれど、ここからがスタートだということで、やはり全日本で勝たなければならないし、全日本で優勝することがチームの目標なので、全日本で勝てるようにこれからやっていこうという話をしていました。

――チームとしてまた個人として、全日に向けてこれからどのような練習をしていきたいですか

チームとしては今までずっとメンバーを絞って練習してきました。メンバーに入れなかった人たちはサポートに回るというかたちをとってきたのですが、鷲田や新井(健太、商1=東京・早大学院)のような新たな戦力がチームの力になるというのがわかりました。これからもそういった新しい戦力が出てきてくれると思います。なのでなるべく色んな人にチャンスを与えたいんですけれど、そうもいかないと思うので、お互いが競い合うような雰囲気で練習していきたいと思います。個人としてはまだまだバッティングがダメなので、チャンスメイクであったりチームが苦しい時に1本出せるような打撃を目指して頑張っていこうと思います。

須能浩太郎(商2=東京・早実)

――全日出場が決まりましたが、今のお気持ちをお願いします

先週の自治医大戦で全体的に全然打てなくて、勝つのが当たり前みたいな雰囲気があったところでああいったかたちでギリギリの試合になっていたので、きょうは理想的なかたちで勝つことができてうれしいです

――ご自身としては久々に捉えた当たりが多かったですが、調子が良かったのでしょうか

自分的にはそんなに調子は悪くないと思っていたのですが結果が付いてこなくて結構悩んでいました。ですがきょうはこういったかたちでいいところで1本出たのはすごく自信になりました。

――これから約2カ月間全日に向けて練習されていくと思うのですが、ご自身としてはどのような練習をしていきたいですか

バッティングで打つことは当然として、守備でここ2試合で2エラーしてしまっているので、守備を磨いて全日では守備でも攻撃でも貢献できるようにしていきたいです。

田中爽稀(法2=神奈川・柏陽)

――全日出場が決まりました。今のお気持ちを教えてください

法政に勝った時のあの感じが蘇ってきた感じですね。

――またも歓喜の輪の中心には田中爽選手でした

自分でも、2回連続での胴上げ投手っていうのは(運を)持っているなと思いますね(笑)。

――ピンチからの登板でしたが、投球を振り返っていかがですか

ピンチからの登板というのは先週の自治医科大戦の時もそうだったので、先週よりは楽に投げられました。

――専大打線は強力な打者が多い印象でしたが、投球の中で意識していた部分などはありましたか

いやらしい(粘り強い)打者が多かったので、小手先ではなく真っ向勝負で押しました。変化球は1球しか投げていないです。

――これから全日まであと約2カ月ありますが、どのような練習をしていきたいですか

全日は夏場なので、夏の暑さに負けないというか、ヘタレない体をつくっていきたいた思います。

新井健太(商1=東京・早大学院)

――今日の試合の感想を聞かせてください

今日は絶対に負けられない試合だったので、勝てて嬉しいです。

――今日は全日出場がかかった大一番の試合でしたが、どんなことを意識して練習されてきましたか

先週の試合もその前の試合も打ててなかったのでとにかくバッティング練習をしっかりやってきました。

――監督や先輩方から何かアドバイスを頂きましたか

とにかく楽しんでいいよと言われたので、結構楽にプレー出来ました。

――今日はバッティングが好調でした。打ったときの感想を教えてください。

(打った球が)全部抜けるというのが分かったので、それでランナーが生還するというのは分かっていました。なので嬉しかったです。

――どんなことを意識して打席に立たれていましたか

考えても仕方ないと思っていたので、とにかく来た球を打つことだけ考えていました。

――活躍の要因は何だと思いますか

今日はたまたまな部分があったと思いますが、バッティングの練習を多くさせて頂いていたので、それが結果に出たのかなと思います。

――全日に向けてこれからどのような練習をしていきたいですか

守備もバッティングも改善されていない部分があると思うので、一つ一つ課題を見つけてそれを潰しながら練習していきたいです。

――課題は今日の試合では見つかりましたか

自分の中では今日はよくできた方だなも思っています。今日のピッチャーは打てましたが、先週のピッチャーは打てなかったので、いろんなピッチャーの球を打てるようにしたいです。あとは守備を確実にすることですね。チーム全体でも高めていけたらなと思います。

――その課題を克服するためにどう練習していきたいですか

見つかった課題を一つ一つ丁寧に直していけるように練習に取り組んでいきたいと思います。

鷲田拓未(スポ1=神奈川・日大高)

――今日の試合の感想を聞かせてください

みんな全日本を目指してやって来てあと一つ勝てばという試合だったのですが、入りはみんないい雰囲気でプレーしていたので、良い緊張感の中で試合ができたと思います。

――今日から1番打者でしたが、意識したことはありますか

調子はよく、また先輩方も色々声をかけてくれてリラックスした雰囲気でプレーできるように配慮して下いました。なのでしっかり打つだけという感じではありました。

――今日は全日出場がかかった大一番の試合でしたが、どんなことを意識して練習されてきましたか

しっかり点を取れるようにという準備はチームでしてきました。自分でもたくさんバッティング練習させて頂きました。ベンチに入ってない人にも練習に付き合って頂いたということもあったので、その人たちには感謝したいなと思います。

――具体的にどんなことを手伝って頂いたのでしょうか

フリーバッティングで自分が打つ時に、ベンチ入りしていないメンバーに守備についてもらったり、バッティングピッチャーをやってもらったりしていました。本当に感謝しています。

――今日は打撃が好調でした。打った時の感想を教えてください

1回の本塁打は狙ったという訳ではなくて、とりあえず塁に出ようと思って打った球でした。ちゃんといいところに当たってくれて良かったです。あの打撃で精神面にも楽になった状態で2打席目以降にも立てたので最低限のことはできたと思います。

――どんなことを意識して打席に立たれていましたか

引っ張りに行くと良くないので、センターのバックスクリーンに入れるくらいの気持ちで打席に立っていました。

――活躍の要因は何だと思いますか

早寝早起きです。

――全日に向けてどんなを練習していきたいですか

まだまだ細かいミスとかチーム全体でもありますし、逆にそれを埋めていけばもっと強くなれるし、上位を狙えるチームだとは思います。個人やチームの課題を明確にして目標を達成できるように、1ヶ月間練習すれば自ずと結果はついてくると思います。