光ったピンチでの集中力。連勝を収め、悲願の連覇を果たす/法大2回戦

準硬式野球
2回戦
早大
法大
(早)清水、前田、○田中爽-吉田
♢(本塁打)関1号2ラン(3表)、中村1号2ラン(9表)♢(二塁打)塚脇(4表)

 「今まで頑張ってきて良かった」(吉田龍平主将、スポ4=東京・小山台)。苦しい場面の連続だった今年の東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)。明大戦での連敗後は、もう1敗もできない状況にまで追い込まれた。しかし、誰一人として諦める者はいなかった。慶大戦で連勝を飾り、迎えた法大との最終決戦。1回戦でワンチャンスをものにし逆転勝利を飾ると、2回戦でもその集中力を遺憾なく発揮。幾度となく迎えたピンチを全員で乗り切り、相手に流れを渡さなかった。そして迎えた歓喜の瞬間。『覇者』の名にふさわしい、2季連続48回目の栄冠を手にしたのだった。

 前日の逆転勝利で勢いに乗る早大は2回、1死三塁から吉田龍主将のスクイズで幸先よく1点を先制する。しかしその裏、先発の清水佑樹(スポ2=早稲田佐賀)が2本の安打と死球で1死満塁のピンチを迎えてしまった。ここで次打者の打球は二直に。二塁手の塚脇太陽(人3=千葉・市川)は落ち着いて捕球し、飛び出していた一塁走者を刺殺した――はずだった。なんと1度は一塁審がアウトを宣告したものの、審判団の協議の結果判定が覆り、一塁手・中村康祐(教3=早稲田佐賀)の足がベースから離れていたため2死満塁から再開となったのだ。このイレギュラーな事態、集中力を保つのは容易ではなかったはず。流れは法大に傾きかけていただろう。しかし、清水は続く打者を一ゴロに打ち取った。今季、プレッシャーの掛かる場面で粘りの投球を続けてきた2年生右腕が、ここでもチームに流れを引き寄せたのだ。

2回のピンチを切り抜け、ベンチ前で祝福を受ける清水(中央奥)

 そして3回、稲穂打線が爆発する。先頭の加藤大(人4=大分上野丘)が死球で出塁すると、塚脇の内野安打と中村の犠打で1死二、三塁と絶好の好機に。ここで、4番・須能に中前2点適時打が飛び出した。それまで3割越えの打率を残していながら、ここぞというところで1本を出せていなかった須能。この大一番で、早大の主砲たるゆえんを示した。さらにこれだけでは終わらない。続く打者は5番の関。授業の関係で満足な練習時間を確保できない中、結果を残し続けてきた文武両道の男だ。2球目、振り抜いた打球はぐんぐん伸びて右中間スタンドへと突き刺さる2ランに。5-0。強敵相手に大量リードを奪い、試合の主導権を握った。

値千金の2ランを放った関

 しかし、「やはり法政は強い」(清水)。直後の3回裏、すぐさま反撃に転じられる。3連打で無死満塁とされ、5番・土倉徳の犠飛で1点を返されたのだ。ここで清水は降板し、2番手の前田直輝副将(スポ4=熊本)がマウンドへ。一気に同点、逆転にもつなげられかねないピンチだったが、前田副将は追加点を1点に抑え、救援の役割をしっかりと果たした。すると4回表、2死三塁から塚脇の中越え適時二塁打で追加点を獲得。取られたらすぐ取り返す、理想的な攻撃で相手の流れを断ち切った。

 4回裏からは3番手・田中爽稀(法2=神奈川・柏陽)が登板。観客から感嘆の声が漏れるほどの剛速球で、4、5、6回を3人ずつで抑える。7回は1死満塁、8回は無死一、二塁とピンチも迎えたが、左翼手・鈴木涼馬(商4=東京・早実)の連日の好守もあって無失点で切り抜けた。その好投に応えたい打線は9回表、途中出場の石田直惇(人4=広島城北)が内野安打で好機を演出。その後2死二塁となり、前日殊勲打を放った中村へと打順が巡ってきた。そして迎えた4球目、捉えた当たりは自身初だという本塁打に。貴重な2点を獲得し、勝利を決定づけた。その裏田中爽は3連打で1点を失うが、後続を抑えてゲームセット。逆転優勝を決めた選手たちは、グラウンドで喜びを爆発させた。

勝利を決定づける2ランを放った中村

 「本当に学生が良くやってくれた」(池田訓久監督、昭60教卒=静岡・浜松商)。神がかり的な勝負強さで慶大戦から4連勝を果たした早大。関東地区大学選手権で立大にコールド負けを喫した時、そして開幕戦で東大に負けた時、誰がこんな結末を予想していただろうか。この快進撃について、内野手リーダーを務める石田は『若さ』がカギになったと振り返る。今年の早大は内野手の須能、渡部椋雅(商2=神奈川・桐光学園)をはじめ、清水、関、田中爽と2年生が主力に多く名を連ねる。こういった若いチームは、勢いに乗ったら止まらないのだ。その分未完成な部分も多いが、逆に言えば伸びしろがまだまだあるということ。これから全日本出場予選会、そしてその先の全国大会へ進んでいくであろう早大ナイン。彼らがこれからどんな成長を見せてくれるのか、楽しみだ。

(記事 池田有輝 写真 池田有輝、望月清香)

喜びを爆発させる選手たち

★連載「Today’s Feature」第4回 『覇者早稲田』のマネジャーたち

チームを支えるマネジャーたち

 敗北が許されない状況から4連勝し、劇的な優勝を飾った早大。その4戦全てのベンチに、とある『ラッキーガール』の存在があったことをご存じだろうか。

 早大には現在7人のマネジャーが在籍しているが、スコアラーとして公式戦のベンチに入れるのは各試合1人のみ。そのため全員が平等にベンチ入りするのが通例で、4試合連続で同じマネジャーが入るというのは異例のことだ。特に4年生の岡田真季(教4=東京・文京学院大女)、橋本理華子(社4=東京・郁文館)両マネジャーにとってはこれが最後の東京六大学春季リーグ戦であり、優勝決定戦のベンチに入りたい気持ちは強かったはず。それでも二人は、後輩の板倉里紗マネジャー(教3=神奈川・鎌倉女学院)にスコアラーを託した。

『ラッキーガール』となった板倉

 「チームが勝つために、(ベンチ入りした時の)勝率が高い板倉に入ってほしい」(岡田)。そう、いつだってマネジャーは、チームの勝利を願ってきた。選手たちを間近で支え、共に努力を続けてきた。もちろん誰が入るかで選手のプレーが変わったりはしない。運気を呼び寄せるための小さなゲン担ぎではあったが、そこにはチームの勝利に懸ける、強い思いが表れていた。

 そしてこの日、その思いが通じ、歓喜の瞬間が訪れた。選手だけでなく、チーム全体が『一致団結』できていたからこそ、成し遂げられたものだろう。これから選手たちは全日本大学選手権出場に向けて、さらなる努力を積んでいく。そしてそこには、マネジャーの存在が不可欠だ。「選手が野球だけに打ち込めるようにするために」(後藤彩花マネジャー、文3=東京・三輪田学園)。これからも、『覇者早稲田』を支え続ける。

(記事 池田有輝 写真 望月清香、池田有輝)

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