今回登場するのは、ワセダの4番・中村大輔(商4=東京・早大学院)と頼れる正捕手・吉田龍平(スポ3=東京・小山台)の二人だ。中村大は東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)から4番の椅子に座ると、その鮮やかな打棒でベストナインに輝いた。一方の吉田もスタメンのマスクをかぶり続け、司令塔としての役割を発揮してきた。二人の頼れる攻守の要は清瀬杯全日本大学選抜(清瀬杯)を目前に何を思っているのか、お話を伺った。
※この取材は8月3日に行われたものです。
春を終えて
取材時に差し入れをくれるなど、優しい中村大
――春には、春季リーグ戦や関東地区大学選手権(関東大会)がありました。振り返ってみていかがでしたか
吉田 関東大会をキャッチャー目線から振り返ると、失点が少なく打撃陣も打ってくれたので、すごくいい形の試合運びができたと思います。一方の春季リーグ戦では失点が多くて、(打撃陣は)打ってくれていたのですが、その得点より少ない失点で抑えるということができなかったので、キャッチャーとしての反省は春季リーグ戦では多いのかな、と思います。
中村大 僕は冬に足を骨折してしまって2月の頭ぐらいまで野球ができなかったんですよ。後1カ月ぐらいで関東大会が始まるという時期で、自分の中では関東大会でベンチに入って試合に出るという状況ではありませんでした。その関東大会はスタメンで出るということはなく、代打一本という形でやっていて、代打の役割を自分で決めて臨むというスタートでした。運良く結果も出て、関東大会は自分なりに納得のいく結果になりましたし、チームも3位といういい結果が出て、非常にいい形で終われたのかなと思います。リーグ戦に関しては、自分自身今までフルでリーグ戦に出るということがなくて初めての体験だったのですが、その中で色々経験することもできましたし、秋(東京六大学秋季リーグ戦)につながる春だったのかな、と思います。
――関東大会3位というお話がありましたが、その関東大会を通じて春季リーグ戦に向けて得られたことなどありましたか
中村大 チームとして自信が付いたというのがすごくあるのかなと思いますし、自分自身も試合に臨む上で余裕ができたというか、そういう意味では収穫があったのかなと思います。
吉田 関東大会は、ケンコーボール(ナガセケンコーボール)という飛ぶボールを使った大会なので(※1)点数を取られやすいんですけれども、その中でも失点を少なくすることができたので良かったです。また、エースの杉山(周平、教3=神奈川・山手学院)がケガをして、投手陣に不安がある中で、久郷(太雅、創理3=静岡・沼津東)が3位決定戦でいいピッチングをしてくれました。このこともあり、この調子でいけるんじゃないか、と臨んだ春季リーグ戦だったのですが、だめだったので、清瀬杯や秋に向けて頑張らないとな、と思います。
――具体的にはどのようなことが課題に挙がりましたか
中村大 (関東大会のように)トーナメント方式だと運も結構左右するので、流れがこっちに傾いてくれて3位入賞という結果になったというのもあったのかなと思います。一方のリーグ戦は自力の差が出るというか、継続して勝つにはある程度の力を付けておかないと駄目だと。そこはすごく感じましたね。ピッチャーもバッターも。
――中村大選手は、リーグ戦で4番を務められましたが、4番を背負うことにプレッシャーや緊張感は感じていましたか
中村大 自分の中ではそういうプレッシャーや緊張は全然なくて、ただ4番目に打っているだけという考え方でした。あまりプレッシャーを感じずに打席に入ることが自分の役割なのかなと思っていました。
――打撃の調子が良さそうでしたが、好調の秘訣(ひけつ)などはありましたか
中村大 結構意識していたのは、ヒットを打ちたいという欲をできるだけ消して、あまり欲張らずに1つ1つの打席に臨むという事でした。それを春季リーグ戦で継続してできたのが好調の秘訣(ひけつ)なのかなと思っています。特にチャンスの時は(欲を出さないように)意識していたのですが、芯に当てるということだけを意識して打席に入ることで、余分なことを考えずにできたのがいい結果につながったのかなと思います。「(打って)早スポに載りたい!」とか思わないようにして(笑)。
――今年から一塁の守備にも挑戦されています。こちらはいかがでしたか
中村大 元々はサードをやっていて、ケガを機にファーストに転向したのですが、自分としてはファーストの方が試合全体を見ながらプレーできるのかな、という気がして。常に送球も来ますし、試合に入り込んで集中してプレーできるのかなと思いましたね。そこは結果としてプラスになったのかなと思います。
――コンバートする上で何か特別に練習されたことはありましたか
中村大 特にないですね。でもミスをカバーできるのはファーストかなと思っていて、送球とか少しずれたくらいなら捕ってやりたいなっていう気持ちは持ってやっていました。
――リーグ戦でベストナインに選出されたことについてはいかがですか
中村大 (吉田選手の方を見て)どうですか?
吉田 ふさわしいです(笑)。
一同 (笑)。
中村大 自分の中ではチームが点を取るために打席に臨むというのがモチベーションであったりして、優勝(の可能性)が消えてからは自分の調子も下がり気味で。チームの結果とともに自分の調子も上がっていったのかなという気がしますね。その結果がベストナインにつながったのかなと思います。みんなのおかげです。
――吉田選手にお伺いします。杉山選手が不在だった春の投手陣、その中で新たな収穫はありましたか
吉田 リーグ戦の1番の収穫は江藤(健太、教3=早稲田佐賀)だと思っていて、最終的には第1先発(投手)になれるぐらい投げられるようになりました。決して速い球があるわけではないのですが、丁寧に突いていくのが彼のピッチングなので、それをしっかりとやってくれた結果、春季リーグ戦でも結構通用したのでこれ以降も期待したいです。
――やはり杉山選手のケガには危機感を感じましたか
吉田 そうですね。先発がいなくなった、と思って。第1先発は杉山で、あとは江藤と久郷でどうにか、という構想だったので、一人の先発がいなくなったことで相当きついなっていうのは自分の中でありました。
――その江藤選手や久郷選手をリードする上で心掛けたことなどありましたか
吉田 それぞれそのピッチャーの特徴があるので、その日いいボールを投げさせることを意識していました。特にこだわりはなくて、1人で1試合投げろとは思っていないので、他にもピッチャーいますし。いけるところまでいってほしいというのが僕の思いだったので。
――今、調子のいい投手はいますか
吉田 前田(直輝、スポ3=熊本)ですかね。
中村大 前田いいね。
吉田 リーグ戦ではそこまで投げる機会はなかったんですけれども。
中村大 あとは大津(杜都、文構2=東京・宝仙学園)が法政戦(春季リーグ戦法大2回線)で投げて良かったかな、っていう気がするけど。調子が良いって言ったら前田かな。
吉田 前田ですね、期待するのは。
――加藤大選手(人3=大分上野丘)が投手を始められましたが、こちらはいかがですか
吉田 試合では2回ぐらいしか(バッテリーを)組んだことがないのですが、意外と投げられていて。コントロールも良くてテンポもすごく良いので、僕としてはすごく良いな、と思っています。リードしやすいです。
トレンドはメジャーリーグ
吉田の入部以来ずっと親しいという二人
――お互いの第一印象を教えてください
中村大 吉田は小山台高校(東京)という名門高校出身なのですが、僕と同じ代に諏訪(健太、スポ4=東京・小山台)という人がいまして。彼とは日頃から非常に仲良くさせていただいているのですが、(吉田選手は)諏訪の後輩なんですよ。そしてもう1人、竹下(直輝、スポ3=東京・小山台)というかわいいやつがいるんですけど。そんなこともあったりして、入部初日から結構話し掛けに行ったりして。最初の頃は受験で太っちゃって、こいつ動けねえなっていうのが第一印象でした(笑)。そんなところですね。だから第一印象は1年のかわいい後輩でした。今でもかわいいですけど。
吉田 面白い人だなあ、と思いました。やっぱりなんか変わった人ですかね(笑)。これあんまり良くないですかね(笑)。
中村大 いや、まあいいけど(笑)。
吉田 話しかけてくれたのを、結構覚えているので。
中村大 1番最初に話しかけたよね。
――今年の1年生の印象はどうですか。仲の良い1年生はいますか
中村大 僕は1年生でよく話すといったら、小此木(諒太、社1=埼玉・早大本庄)とか関(大輝、基理1=茨城・江戸川学園取手)とか。(Aチームの)練習試合のベンチにも入ったりしているので、よく話したりします。
吉田 僕はまだ仲良くなれてないんですよ。時間かけるタイプなので。
――清瀬杯は北海道で開催ですが、試合以外に楽しみにしていることはありますか
吉田 食べ物ですかね。
――何を食べたいですか
中村大 ジンギスカンとかじゃないの。
吉田 うーん。北海道行ったことないので、全てが楽しみなんですよ。
中村大 俺の楽しみは涼しいことですかね。
吉田 普通に暑いらしいですよ。
中村大 涼しくないの!?じゃあ楽しみなんだろう。楽しみなくなっちゃった(笑)。涼しいことだけが唯一の楽しみだったのに。そうだな、みんなで行く遠征も最後なので、それは楽しみですね。
――吉田選手は、今年母校が全国高校野球選手権の東東京大会決勝まで進みましたが、刺激になっていますか
吉田 はい。相当なっています。自分の弟(吉田大晟、東京・小山台、2年)も試合に出ていたので。弟の頑張っている姿や母校の選手が決勝に行けることなんて、そうそうないことなので。自分自身、応援も行かせてもらって、改めて高校生が思いっきり野球をやる姿を見て、自分もまだまだ何か足りないというか。高校時代を思い出せたので、すごくいい刺激になりました。
――弟さんに試合前何か声をかけましたか
吉田 そうですね。相手(二松学舎大付高)のビデオを見て一緒にリードのことを考えたりしましたね。普段あまり野球のことを話さないんですけど、それだけはやりました。
――最近何かハマっていることはありますか
中村大 メジャーリーグ。二人ともメジャーリーグにハマっています。今年僕は(アトランタ・)ブレーブスを推しています。若い選手が良いんです。彼(吉田)は(ヒューストン・)アストロズ好きです。
吉田 まあ、まだミーハーなので(笑)。今年からメジャーにハマりました。とりあえず選手を覚えようという段階です。
中村大 結構、メジャーの話で盛り上がったりしますね。
吉田 そうですね。盛り上がれないので、他の人とは。
――日本のプロ野球や高校野球はあまり見ないのでしょうか
吉田 僕はプロ野球よりは高校野球の方が好きですね。甲子園とか好きです。プロ野球はあんまり。まあ見る時もあるんですけど、熱狂的なファンというわけではないです。
――小山台高以外で応援している高校はありますか
吉田 どこっていうのはないんですけど、甲子園を見て、「このチーム、好きだなあ」みたいなのはあります。だいたい毎年出てくるので、そこに注目して今年も楽しみにしています。
中村大 あんまり高校野球とかは見ないです。プロ野球もたまに見るくらいで。メジャーが今は(好きです)。
攻守の要として
1年生の頃から試合に出場している吉田
――今の調子はいかがですか
中村大 春のリーグ戦で試合を通して自分が経験した事をうまく反省点として、課題として、それをつぶしていく事を練習での課題にしていて。具体的には、まだ打ち損じる事とかが春は多かったと思うので、そういった細かい感覚とかをできるだけ意識してやっていて。あとは、メンタル面というか、打席での心の持ち様などを考えたりしていて、最後はそこ(心)だと思うので、打撃面ではそういったことを意識しています。ファーストの守備の方もまだ、守り始めてから半年も経っていないので細かいところを覚えたりだとかを、今はしています。
吉田 調子、と言われると分からないんですが、春前から中村(大)さんにバッティングをずっと教えてもらっていて、今までよりは、すごいいい結果が出ました。しかし、まだまだ(打率)3割には乗り切れなかったので、春季リーグ戦が終わってからまた新しい打撃フォームに挑戦しています。色々と改善点を教えてもらっていて、今は試しているという状況なので、調子を気にするよりも、今はそれに取り組んで結果がどう出るかな、という感じです。
中村大 秋には(吉田選手が)3割打つと思うので期待してください。
吉田 (笑)。
――現状、ご自身の課題はどこにあると思いますか
中村大 さっきとちょっと(内容が)かぶってしまうのですが、やっぱり打撃だとまだ少しムラがあるのかな、と。ここで1本欲しいという場面で、まだまだ打たなければいけなかった場面も春にはあったと思いますし、そこをクリアしないと優勝は見えてこないと思うので。そういった点で自分からしっかり引っ張っていけるように、頑張りたいなと思います。守備面ではまだファーストに慣れていないこともありますが、ピッチャーが下級生(が主体)なので、自分が余裕を持ってそういった下級生のバッテリーをうまく支えられるか、声を掛けられるか、というのも大事だと思います。なので、そのへんのコミュニケーションをもっと密に取る事をやっていきたいと思います。
吉田 春は後ろに(ボールを)逸らすという事がありました。キャッチャーとしてそれは絶対にやってはいけないことなので、まずはそれをなくすことと、何よりピッチャーを第一に考えてやりたいです。もっと引き出せるものがあると思うので、うまくリードしていきたいです。普段から球をいっぱい受けて引き出せるようにして、それを試合で生かせたら良いな、と思います。
――清瀬杯にプレッシャーや緊張を感じていますか
中村大 少しずつ周りの人や、監督さん、OBの方からの期待が高いのかな、とひしひしと感じるところがあって。自分の中ではその期待を力に変えたいなと思っていて、できるだけ長く北海道で試合をできるようにしたいですね。ダブルヘッダーとかもあって、きついとは思うんですけど、1個でも多く勝って、(秋季)リーグ戦も最後まで戦って、残りの野球人生を少しでも長くやりたいと思っています。
吉田 全国大会というのは自分の中で初めですし、チームもそれに向けて動いているので、やっぱり特別なんだな、と思います。いい相手と試合をできると思うので、とても短い期間できつい日程ではあるのですが、何とか勝って優勝したいな、と思います。
――秋季リーグ戦についてもお伺いします。秋のライバルはやはり法大や慶大といったところでしょうか
中村大 そうですね。やはり法大、慶大には(春季リーグ戦で)勝ち点を落としていますし、力のあるチームなので、彼らに勝ってこそのリーグ戦なのかなと思っています。自分が日頃から思っているのは、リーグ戦は優勝以外、2位から6位は一緒だと思っているので、優勝という一つの形を成し遂げたいという強い気持ちはありますね。
――吉田選手は捕手という立場から見て、手ごわいチームはどこでしょうか
吉田 手ごわいのはやはり法大ですかね。打撃がいいチームなので、そこをどう抑えるかというところはこれからもっと考えなければいけないのかな、と思います。何とか抑えて勝ちたいと思うので、少しでも少ない失点に封じたいと思います。
――秋、浮上に向けて何が必要だと思いますか
吉田 (失点を)少なく抑えることです。そこはキャッチャーとしてまず僕がやらなければいけないことだと思うので。
中村大 全部ですね(笑)。1つ挙げるとするならば、できるだけ失点を少なく抑えることですけど、そうはいっても点は取られるものだと思っているので、得点に貢献する事が自分の役割なのかな、と。4年生はバッテリーが少なく野手が多いので、得点をどれだけ挙げられるかという事が4年生に課せられた使命だと思っています。失点を抑えることは後輩たちに任せて、僕ら4年生は点をしっかり取れるように頑張りたいと思います。
――中村大選手は4年生ということで、チームで過ごす時間も少なくなってきています。これについてはどうでしょうか
中村大 あと2カ月半で(秋季)リーグ戦も終わってしまうと思うと、本当に残された時間は短いなと思います。(最後のシーズンは)これまでの野球人生の集大成だということもあるので、とにかくやれることはしっかりやって後悔のないように頑張りたいと思いますし、後輩たちに少しでもいいものを残していけたらな、と思います。
――最後に、今後への意気込みを一言ずつお願します
吉田 さっきも言ったのですが、まずはピッチャーをしっかりリードして、バッテリーでチームの勝利に貢献するということ。そして、バッティングでもそろそろ打たないといけないと思うので、チャンスで1本打てるようにこれから頑張っていきたいと思います。
中村大 とにかく(残りの)2カ月半後悔のないようにしっかり練習し、みんな野球できる時間が短いので、しっかりと1日1日充実して過ごせるようにしたいです。あとは龍平(吉田選手)がしっかり3割打てるように(笑)。毎日一緒に練習しているので、お互いに頑張っていきたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 石﨑開 瀧上恵利)
(※1)早大の所属する東京六大学リーグでは、ナイガイベースボールという、ナガセケンコーボールよりも低反発のものが統一球として用いられています。
秋は二人で高打率を残し、平成最後のリーグ戦にワセダの名を刻みます
◆吉田龍平(よしだ・りゅうへい)(※写真左)
1997(平9)年5月6日生まれ。173センチ、75キロ。A型。東京・小山台高出身。スポーツ科学部3年。捕手。右投右打。自身の母校に通う弟さんの活躍が刺激になっているという吉田選手。実は、高校時代に正捕手として第86回選抜高校野球大会に出場し、甲子園球場の舞台に立っています。秋季リーグ戦では『打率3割』を目標に掲げ、リードだけではなく打撃でも、チームの勝利に貢献します!
◆中村大輔(なかむら・だいすけ)(※写真右)
1996(平8)年11月20日生まれ。172センチ、65キロ。A型。東京・早大学院出身。商学部4年。内野手。右投右打。吉田選手によく打撃のアドバイスを送るという中村大選手。後輩思いの優しい一面が伝わってきました。「(引退まで)しっかりと一日一日充実して過ごせるように」と語るチームの4番は、ラストイヤーに向けて気合十分です!