最悪の幕切れ…。逆転サヨナラ被弾で5季ぶりVへ黄信号

準硬式野球
慶大1回戦 10
早大
慶大 2×
(早)●山口―吉田龍
◇(二塁打)笹井

 打球が右翼フェンスを越えた瞬間、早大に黒星が叩きつけられた。延長10回途中まで一人で投げ抜いた先発・山口将宏(スポ3=愛知・横須賀)は途方に暮れ、しばらくその場から動けなかった。両校、完全優勝を懸けて行われた伝統の早慶戦。勝ち点を取った方が秋季東京六大学リーグ戦の優勝が決まるこの大一番。勝利はあと一歩のところで早大の手からこぼれ落ちた。

 2回に先頭打者の出塁を許した後、犠打と内野ゴロで三進されると二塁内野安打で先制点を献上してしまう。追う早大は4回、吉田良平(スポ4=岐阜東)が気迫のこもったヘッドスライディングで内野安打。無死一塁で打順は中軸へ。しかし、3番・笹井健佑(社3=東京・早実)の左中間への安打性の当たりは好守に阻まれ、続く4番・鈴木夏亥(社3=東京・早実)も痛恨の併殺に倒れ、なかなか思うような野球ができない。

 5回にも1点を失った早大だったが6回、ようやくここで慶大に食らいつく。疲れから制球を乱す相手先発・猪砂雄介(慶大)を攻め、2四球と安打で満塁の好機をつくる。この場面で慶大ベンチは早々に猪砂雄をあきらめ、2番手投手にスイッチ。それでも勢い止まらずここから鈴木の適時打、徳島有樹(スポ2=早稲田佐賀)の犠飛、倉本芳郎(法3=広島・修道)の適時打で一挙3得点。中盤で試合をひっくり返した。

6回、勝ち越し打を放ち喜びをあらわにする倉本

 逆転した直後の守備、2死一、三塁の局面で重盗を決められ同点に追いつかれる。しかし、後続は山口が粘りの投球できっちり抑えた。その後はしばらくゼロ行進が続き、試合は今季初の延長戦へ突入。延長10回表、森田達貴(スポ2=埼玉・県浦和)が四球を選び、ガッツポーズで一塁へ。1番に返って池上倫平(政経2=東京・早実)が投前にしっかり犠打を決めると、これを投手がファンブルし、池上は一塁セーフ。更に一塁走者・森田が隙を突き一気に三塁まで進み、絶好の得点機を迎える。すると、次打者・吉田良への3球目が暴投に。それを見て三塁走者の森田が笑顔でホームイン。思いがけないかたちで勝ち越しに成功した。だが、後続続かずその1点のみ。そして、山口がそのまま10回のマウンドに上がった。

 球数が120球を数えたところで先頭打者に右前打を放たれ、同点の走者を出す。それでも次打者を中飛に打ち取り1死。次に迎えるは7回から登板し、10回に暴投で早大に勝ち越し点を献上した投手の高木健太郎(慶大)。簡単に2球で追い込んだ。3球目決めにいった内角への直球は狙いよりやや中へ――。金属音を響かせ高々と舞い上がった打球はそのまま右翼フェンスを越え逆転サヨナラ本塁打に。早大にとってはあまりにも残酷なかたちで優勝決定戦第1ラウンドは終末を迎えた。

山口はがっくりと肩を落とした

 両校共に感情を全面に押し出し、1点を争う好勝負になった。実に伝統の一戦らしい痺れる試合だった。しかし、それを勝利で飾れなかったのが悔やまれるところである。初戦を落としたのはこれが今季初。5季ぶりの優勝には連勝しか残されていない。崖っぷちに立たされた今こそ、早大ナインの意地を見せるときだ。

(記事 加藤耀、写真 田原遼、藤原映乃)

秋季東京六大学リーグ戦星取表
順位 慶 大 早 大 明 大 立 大 法 大 東 大 勝ち点 勝率
慶 大 ○、
10/16
○○ ○●○ ●○○ ○○ .818
早 大 ●、
10/16
○●○ ○○ ○○ ○○ .800
明 大 ●● ●○● △●○○ ●○○ ○、
10/16
.500
立 大 ●○● ●● △○●● 10/22
10/23
○○ .400
法 大 ○●● ●● ○●● 10/22
10/23
○○ .400
東 大 ●● ●● ●、
10/16
●● ●● .000
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コメント

金子祐介主将(スポ4=熊本)

――勝ち点を取れば優勝、この早慶戦どのような心持ちですか

戦い方を変えず今までやってきたことをやるのみ、とだけ考えていました。

――序盤から相手を追う展開になりましたが

緊張から硬さがあったのですが、追うと言っても序盤の1点だったので「序盤、序盤!」という声掛けをしながらとにかく塁に出ることだけを伝えていました。

――きょうは記録に残る失策だけでなく記録に残らない小さなミスが多かった印象です

今までになかったことが起きているのでそこは緊張と言ってしまえば仕方ないですけど、まあそれがあるのが早慶戦かなと思いながら見ていました。自分は。あとはそれを(他の選手が)カバーするだけですね。

――6回に3点を取って逆転しました。あの回を振り返ってください

(相手先発の)猪砂(雄介、慶大)が今まで結構放ってきていてもう肩に不安があるというのは聞いていたので、もう保たないなと思いながら(見ていました)。ボールが全然きていなかったのでここが勝負所だとベンチでも一気にいこう、というムードにはなっていました。

――代わった投手からも猪砂投手同様打つことができましたが

2番手の村石(就昭、慶大)も何度も対戦している相手なので、4、5番だったので、「任せた!」という感じで特別指示はしていなかったです。

――中3日の山口将宏投手(スポ3=愛知・横須賀)は粘りの投球だった思いますがいかがですか

水曜に(きょうの山口が)先発でいくということが決まったのですが、今まで抑えてくれていたピッチャーだったので、信頼して任せました。球もバラつきありましたけどよく粘って投げてくれたと思います。

――延長10回に勝ち越した後、守備に行く前のベンチのムードというのは

やはり表にあと1点でも取れていればという思いはあったのですが勝っている状態というのは変わらなかったので、一人一人アウトを積み重ねていくことだけをベンチもフィールドもみんな意識していたと思います。

――最終回、打球が右翼フェンスを越えてサヨナラ負けが決まったときのお気持ちは

あの選手は一発があるというのはわかっていたので、「低め、低め」とバッテリーに声を掛けていたのですが、いった瞬間は「まさか」という感じでした。

――優勝の可能性はまだ残っています。あしたからの意気込みを聞かせてください

選手たちにも伝えましたが、2勝すれば勝ち点を取れるので、またあしたピッチャーは黒須(裕太、人3=栃木・真岡)で今まで同様勝てるように準備していこうと思います。

山口将宏(スポ3=愛知・横須賀)

――きょうは優勝の懸かった早慶戦でしたが、どういった気持ちで試合に臨みましたか

いつも通り行こうとは思っていましたが、(優勝が懸かっているということもあり)プレッシャーがないといったら嘘でした。ただそういった中で先発させてもらえるというのは幸せですし、主務の菅谷(尚弘、社3=東京・成蹊)に緊張しているということを話したら、「優勝争いの中で試合に出られるのは羨ましい」と言われて、少し楽になりました。

――チーム全体として特に守備では硬さが見られましたが、ピンチの場面でのマウンドでは何を話していたのですか

特に話すことはないんですけどね(笑)。ピンチではあったので、1つずつ丁寧にいこうというのは話しました。

――ご自身今日の調子はどうでしたか

悪くはなかったんですけど、最後のサヨナラホームランや先制点を取られた場面も2ストライク簡単に追い込んだ後、甘い球がいくということはそこは自分のコントロールミス。詰めが甘かったなと思います。

――きょうは毎回のように走者を背負う苦しい投球でした

慶大打線もよく打つことはわかっていたので走者を出しても粘り強く、点が入らなければいいのでアウトカウントを1つずつ丁寧に取っていこうということをバックとも話していました。

――前回の試合では135球を投げ、今回はそこから中3日での登板となりました。そのあたりの調整はいかがでしたか

自分でも体力はあるほうだと思っていますし、相手も条件は同じなのでそこは関係ないと思っていました。

――きょうも完投でしたが、体力面では問題なかったですか

同点になった中盤からは緊迫した展開だったので、何回とかを意識することなく、目の前の打者一人ひとり丁寧にいく意識でいたので問題ありませんでした。

――最後の場面ですが、相手の6番打者は途中出場の投手でした。そのあたり少し気持ちに隙があったりしたのですか

その回の守備に入る時に、捕手の吉田龍平(スポ1=東京・小山台)と話して、6番はバッティングがいいと聞いていたので、打順は4、5、6番でしたけど投手のところも打者として考えていこうと思っていました。なので油断はなかったのですが、追い込んでからの1球が甘くなってしまって。本当にきょうはそこの部分に尽きると思います。

――やはり先頭打者をだしてしまったのもそうさせた要因の一つではあるんでしょうか

たとえ1点取られても、次の回のこっちの攻撃が簡単には終わらないだろうと思っていたので、走者を出しても慌てるということはなかったんですけど、そのあと1つアウトを取ったことで少し安心してしまったというはあったと思います。

――あすの登板はおそらくないと思われますが、まだ優勝争いは続きます。あした以降どういった気持ちで臨んでいきたいですか

これが最終カードで優勝懸かっているので、あしたもリリーフで行けと言われれば行きますし、第3戦も先発のつもりで準備していくので、あしたしっかり勝ってつないでもらいたいと思います。

鈴木夏亥(社3=東京・早実)

――きょうの試合を振り返って

序盤は苦しい展開でしたが、中盤はワンチャンスをものにしてワセダらしい野球ができていました。でも、10回でいいかたちで1点を取ったのに後続が続かなかったように追加点が取れなかったことがきょうの敗因だと思います。山口(将宏、スポ3=愛知・横須賀)が頑張ってくれたので、あしたは野手陣が奮起できるように頑張りたいと思います。

――4回、先頭打者が内野安打で出ましたがその後は相手の好プレーにも阻まれ好機が広がりませんでした

そこは本当にこのリーグを通じて上位打線でつくってきた部分があって2番の吉田さん(良平、スポ4=岐阜東)が出て、笹井(健佑、社3=東京・早実)がいい打球でつないでくれる感じだったんですが、そこをレフトの渡邊さん(勁介、慶大)の好プレーで阻まれてしまいました。その次の僕がどうにかしなきゃいけない場面だったのですがそこは相手のピッチャーに思うようにやられてしまったので反省材料ですね。

――6回は打線がつながりました

僕の前で相手の猪砂さん(雄介、慶大)が代わって、相手ピッチャーと僕はとても相性が良かったのであまり深く考えずにどんどん振っていこうと思っていて、打球も良いところに飛んでくれました(三遊塁間を抜ける左前打)。そのあと徳島(有樹、スポ2=早稲田佐賀)と倉本(芳郎、法3=広島・修道)がつないでくれたので、あの回はワセダらしいいい攻撃ができたと思います。

――その適時打ですが、打った球種は

スライダーですね

――10回表で1点勝ち越した後、1死二、三塁で回ってきました。どんな気持ちで打席に立ちましたか

その前の打席で高木さん(健太郎、慶大)からは打っていたので結構いいイメージを持って行ったのですが厳しいコースに(球が)来ていたのでそこは最低でも犠牲フライくらいは打たなければいけなかったので反省です。

――その裏にサヨナラ本塁打を打たれて敗戦となりましたがその時の気持ちはいかがでしたか

高木さんはバッティングも良いのですごい警戒はしていたんですけど、まさかあの場面でああいう打球が打たれるとは思っていませんでした。でも、打たれた時に僕はセンターだったんですけど「いっちゃったな」という感じでした。倫平(池上、政経2=東京・早実)に取って欲しいという気持ちはあったのですがそこは打ったバッターの方が上なので脱帽ですね。

――あしたへの意気込みをお願いします

きょう、こういうかたちで負けてしまったのですが、とにかく「切り替えて、切り替えて」という考えがみんなできているのであした、あさってしっかり2つ取ってリーグ戦優勝できるように頑張りたいと思います。