全員でつかんだチャンス

準硬式野球
TEAM
中京大
早大 1x

 一瞬だった--。打球が左中間に落ちる。ずっと声を振り絞って声援を送り続けていたメンバーから、湧き上がる歓声。試合前よりも大きな『紺碧の空』が激戦を終えた球場に響き渡る。ピンチでも1点も与えない。ここぞというときにあと1本が出ない。試合後、「ここ(ベスト8)からは勝つのが難しくなると思っていた」と語った駒田開主将(スポ4=福岡・修猷館)。どちらも譲らない緊迫した投手戦は1x-0、早大のサヨナラ勝ちで幕を閉じた。

無失点10奪三と安定感抜群の石田

 「石田(翔太、スポ4=神奈川・川和)のために打とう」。試合中の円陣、気付けばどの選手も自然とこの言葉を口にしていた。一回戦も好投した先発・石田は、無失点10奪三振とエースの名にふさわしい投球内容。7回表、先頭打者に対しフルカウントになった後の7球目。捕手のサインに何度も首を振って投げた球で見逃し三振。さらに1点を争う8回表には、2死三塁の場面で空振り三振に抑えるなど要所を三振で締める。絶対に点を与えない、という石田の気迫が伝わってきた。

 試合が動き出したのは終盤。7回表、1死一、三塁で2番・上野雅之(スポ4=県立岐阜)が放った打球は右翼へ舞い上がる。誰もが犠飛が成立したと思い、歓声を上げた。しかし、結果はタッチアップが早く併殺に。そのような状況でも「みんな(その後も)大崩れせず冷静にプレーできた。乗り切ればチャンスが来ると思ってやっていた」と語った駒田主将。まさに言葉通りの9回裏の攻撃だった。2死一、三塁。総力で作りあげた最後の好機。打席には駒田主将。3-1からの5球目を、力強く振り抜く。打球は遊撃手の頭を越し左中間へ。瞬間、真っすぐに拳を突き上げた。ベンチから選手がどっと駆け出す。歓喜に揺れるスタンド。試合が、終わった。

劇的なサヨナラ打を放ち喜びを爆発させる駒田主将

 「誰が出ても勝てるチーム作りを意識していく」。櫻井雄祐学生コーチ(人3=神奈川・桐蔭学園)は語る。そのためには「出場している選手だけでなく、裏方の選手とも『一体感』を持ってやりたい」と続けた。また、「どんなときも必死に応援してくれていて、こいつらのために打ちたい」と駒田主将。準決勝、決勝とさらに厳しい戦いが予想される。それでも、早大はチーム一丸となってより力強い戦いぶりを見せてくれるに違いない。

(記事 高瀬早紀、写真 小川朝煕)

コメント

駒田開主将(スポ4=福岡・修猷館)

――きのうまでは快勝だったと思うのですが、一転きょうは接戦だったということでどういう気持ちで試合に臨んでいましたか

ここからは勝つのが難しくなるとは思っていたんですけど、なかなか1点が入らない試合というのは本当に久しぶりだったので自分たちの流れを感じながらやっていこうと試合前にみんなに言いました。

――7回以降タッチアップの失敗などもありましたが、ベンチはどういった雰囲気だったのでしょうか

そういうときでも大崩れせずにみんな冷静に声を掛け合ってプレーできているのを感じていたので怖さというよりはここを乗り切ったらチャンスが来るなという気持ちでやっていました。

――それが最終回の攻撃を呼んだということでしょうか

そうですね。それがワンチャンスを生かせたきっかけじゃないかと思いますね。

――最後の打席を振り返ってみると

打席に入る前は甘い球はしっかり打とうと。とにかく強く振ろうということだけを考えていました。嘉悦(崇将、人4=大分上野丘)が「気楽にやって来い。お前がアウトになっても次の回は2番から始まるし自分の納得のいくスイングをしてこい」と言ってくれました。すぐさま3ボールになって敬遠かなと思ったんですけど、1球ストライクが入ってきてそれまでの自分の打席結果を考えればここは勝負に来るだろうなと確信したので、もう一回気持ちを引き締めて打席に入りました。

――スタンドの応援は後押しになっていますか

そうですね。それが一番の後押しですね。こんなに部員数がいることは自分たちの最大の武器だと思っているので、ピンチのときもチャンスのときも上を見上げればみんなが必死に応援してくれている姿があったので、何とかこいつらのためにも打ちたいというのもありました。

櫻井雄祐学生コーチ(人3=神奈川・桐蔭学園)

――カメラを持ってる手が震えてしまうくらい白熱した試合展開だったのですが、学生コーチという立場から見てきょうの試合を振り返ってみていかがですか

好機を作りながら点を取れないのは、初戦と同じような感じだったのですが、どんなに点を取れなくてもとにかく明るくやろうときのうのミーティングでは話したのでそれができたのかなと思います。

――きのうまでと比べるときょうはスタンドからも大きな声援が球場いっぱいに響いていましたが、それもミーティングで話し合ったことでしょうか

この新チームが始まってからとにかく『一体感』を大事にしようとやってきて、きょうとかも黒須(悠至、商3=埼玉・早大本庄)とか森下(晃熙、人2=埼玉・東京農大三)を中心としたサポートっていうのが大きかったと思います。それが開さん(駒田開主将、スポ4=福岡・修猷館)の一打にもつながったのかなと。

――試合中、ベンチ前での円陣から「石田のために打とう」という声も聞こえてきましたが、自然と口から出てきたものなのでしょうか

そうですね。石田さん(翔太、スポ4=神奈川・川和)はもう僕らが2年のときからすでにチームの要だし、初戦でも良いピッチングをしてきょうもキツかったと思うんですけど、そんな石田さんの姿を見てみんな自然と口々に言ってました。

――そこであえて9回の石田さんの打席で代打を送った意図というのは

あそこはもうベンチで考えて石田さんとも木藤(俊英、スポ3=愛知・時習館)とも話していました。石田さんが少し球威が落ちていたということもありますし、控えにも良い選手がたくさんそろっているのであそこは自信を持って代打を送りました。

――無死一塁の場面で犠打ではなく打たせる機会の方が多かったですが、今の打線の調子は上向いているということでしょうか

はい、すごいいいですね。調子が上向いているから打たせたというのもありますし、無死一塁から犠打だけではなく、うちはそれ以外の機動力を生かせるというのもあります。そういった幅の広さがことしのチームの強さかなと思います。

――準決勝、決勝とまた戦い方が変わってくると思うのですが、いかかでしょうか

総力戦になってくると思うので誰が出ても勝てるチーム作りっていうのをもう一回意識していこうと思います。あとデータを取ってくれている人が多いので、そういった裏方の選手たちとも『一体感』を大切にしてやっていきたいです。