TEAM | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 計 |
大経大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
早大 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 |
(日没サスペンデッドにより8回コールド)
『紺碧の空』が球場に響き、ベンチとスタンドが一つになる。歌声と声援を前に、雷雨さえも試合開始とともにやんでしまった。ずっとこの日を待っていたのだ――。全日本大学選手権(全日本)の舞台に、このチームで立つことを。日本一という夢を叶えることを。大会規定により8回日没サスペンデッドとなった一回戦。2-0で大経大を破り、まずは最初の一歩を踏み出した。
「自分の身体ではないみたいだった」。早大の先発・石田翔太(スポ4=神奈川・川和)は、マウンドに立ったときいつもとは違う緊張を感じていた。初戦の怖さというのは、誰もが感じることなのかもしれない。後からスコアを読み返しても分からない緊張感。それは石田だけでなく、チーム全体が感じているように思えた。2年前の夏、同じ全日本の舞台で初戦敗退。個々の力では負けるはずのなかったチームで挑んだ昨年は、その舞台に上がることさえ許されなかった。悔しさを知っているからこそ、駒田開主将(スポ4=福岡・修猷館)を中心とした4年生がチームを同じ方向に引っ張ってきた。今までとは違う何か。それは、きょうの試合で明らかになっただろう。
粘り強い投球で無失点に抑えた石田
スタンドから飛んでくる大きな声援。試合に出ている選手も、出ていない選手も、全員が一緒に戦っているように見えた。9人だけではない、チームとして相手に立ち向かっていく野球が今の早大にはある。「目の前の1点にこだわっていく」。駒田主将の気持ちは、一つ一つのプレーにつながっていった。4番・嘉悦崇将(人4=大分上野丘)の適時打で先制。得点には結び付かないプレーでも、誰もが一塁まで全力疾走する。そして、マウンドに立つ石田もいつの間にか緊張は消えていた。キレのあるストレートに加え、変化球が相手の打者を翻弄(ほんろう)する。6回には、3者連続三振。8回を投げ切り、3安打無失点という要所を締める素晴らしい投球を見せた。
先制となる右前適時打を放った嘉悦
選手の脳裏を幾度となくよぎった疑問の答えは、もう見つかったはずだ。2年前に流した涙。見えない敵と戦いながら、それでも信じてここまでやって来れたのは仲間の力だった。強いチームと勝てるチームは違う。あのときは越えられなかった壁も、今の早大ならばその先に行ける力を持っている。一つになるという気持ちは、このチームを必ず頂点まで連れて行ってくれるだろう。
(記事 倉本彩絵花、写真 田中智)
コメント
駒田開主将(スポ4=福岡・修猷館)
――大事な初戦を無失点で勝利しましたが振り返ってみていかがですか
初戦はどうなるのかわからないという怖さを僕たち4年生が中心に分かっていたので、0点に抑える締まった試合ができたのはチームにとっても良かったと思います。
――春季リーグ戦のときと比べると犠打をする場面が少なかったように思えるのですが
きょうは相手が左投手ということで二盗は難しい状況で、もちろん犠打は策としてはあったのですが、なかなか走者を進められなかったのは課題だなと思います。
――夏合宿、大阪遠征を通して収穫はありましたか
関西の強豪と戦ってみて一番の収穫は、どんな点差であっても勝ち負け関係なく1点の価値は変えないということですね。自分たちは点差が開くと気を緩めるというかそういう甘さが出てしまうので。どんなにリードして勝っていても目の前の1点に執着してやっていこうと。
――そういった面をトーナメント戦である今大会(第65回全日本大学選手権)でも活かすということでしょうか
そうですね。もちろん試合の入りからリーグ戦(春季リーグ戦)と同様に3イニング区切りで目の前の1点にこだわっていくというのはトーナメントとリーグ戦関係なくみんなに浸透していると思います。
――8回途中で交代する場面で足を引きずっておりましたが大丈夫でしょうか
怪我ではないのですがつっちゃいました(笑)。ここ最近すぐつっちゃうんですよね。
――あすの二回戦に向け意気込みを
1勝したからといって慢心することなく、目標はあくまでも優勝なので、ことしこそは勝って先輩たちに恩返しをしようということでとにかく頂点だけを見つめてやっていきたいと思います。
嘉悦崇将(人4=大分上野丘)
――きょうの試合を振り返っていかがですか
やっぱり初戦だったので、みんな緊張していたと思うんですけど、そんな中で、石田をはじめとしてみんなが集中力を切らさなかったので、こういったいい結果につながったんだと思います。
――雨というコンディションの中での応援は、どのように感じましたか
ベンチにいても試合に出ていても、上からのスタンドの声っていうのはすごく聞こえたし、そういう声が間違いなく自分たちの力になっているので、ベンチ外のメンバーはじめ、応援団、保護者のみんなに本当に感謝したいですし、みんなで勝ち取った勝利だと思います。
――一塁までの全力疾走が印象的でした
普段はなかなかそういうことをする方だとは思わないんですけど、全力疾走でプレーしようということは常にチームで言ってきたことなので、自分がそれを怠るわけにはいかないなと、チームの雰囲気を悪くするわけにはいかないなと思って、自分もきょうは頑張りました。
――4年生としてこの大会に懸ける思いは
2年前に、全国大会で一回戦で負けて、本当に悔しい思いをしてきて、悔し涙を流したんで、やっぱり今回は、みんなで優勝して嬉し涙を流したいと個人的にも思ってますし、みんなそういった気持ちなので、必ず優勝して、みんなで最後に抱き合いたいなと、それだけです。
――最後に、明日への意気込みをお願いします
きょうみたいに、多分難しい試合になると思うんですけど、集中力切らさずに、スタンド、出ている選手、ベンチ一体となってきょうみたいなプレーをすれば勝てると思うので、明日もしっかり頑張ります。