全日本学生柔道体重別団体優勝大会 10月19、20日 兵庫・ベイコム総合体育館
兵庫・尼崎の地にて学生団体柔道日本一を決定する、全日本学生柔道体重別団体優勝大会(以下、尼崎)が開催された。今年の早大は女子部が3年ぶりに出場権を獲得し男子部女子部揃っての尼崎入りとなった。女子部は初戦で岡山商科大に快勝するが、次に臨んだ桐蔭横浜大に1-3で敗退。男子部は初日に近畿大、鹿屋体育大と争い4-1、3-1でそれぞれ破る奮闘を見せる。二日目に桐蔭横浜大と対峙し熱戦を繰り広げたが、1-2で惜しくも敗れた。共に成績はベスト16で表彰台を逃し、早大は早慶戦前に団体戦の課題を見つけた。
3年ぶりの尼崎へ挑んだ女子柔道部
3年ぶりの尼崎の舞台に挑んだ女子部、初戦で岡山商科大と激突する。「すごく内容のある試合ができた」と西田清二監督(平14第一文卒=岡山白陵)が語るように、好調な試合展開であった。西田監督からも「先鋒向けの、信頼できる選手」と評される木村優花(スポ1=徳島・生光学園)は先鋒戦に臨み、開始1分足らずで縦四方固で一本収める。その勢いのまま次鋒・高木由有(スポ2=東京・淑徳)が技あり、中堅・大森恵花(スポ3=東京・渋谷学園渋谷)も一本奪う快進撃を見せる。副将戦で技ありを奪われるが大将戦に挑んだ植山晴花(スポ1=大分・柳ヶ浦)が激しい攻防の中、背負落で一本。4-1で岡山商科大に快勝した。駒を進めた女子部が二回戦で挑んだのは強豪・桐蔭横浜大。強豪相手に次鋒・五将戦共に一本を取られ辛酸を舐める展開が続く。そんな中で中堅・大森がポイントゲッターとしての意地を見せた。監督の「リスクを冒してでも投げに行く気概を持っている」の言葉通り、積極的な攻めを演じ、試合開始約2分10秒、相手の隙を突き大内刈で技ありを奪取。本試合早大唯一のポイントを獲得した。1-3で桐蔭横浜大に敗北したものの、女子部は3年ぶりの出場でベスト16入りを果たした。
大森は桐蔭横浜大戦で唯一の得点を奪った
上位進出を狙う男子部、初戦の相手は近畿大。近畿大戦では、今大会が団体戦最後となる4年生が実力を示す。次鋒・中島瑞貴(スポ4=福岡・西日本短大付)と五将・中野智博(スポ4=神奈川・桐蔭学園)が共に合わせ技で一本、早大の勢いを示す。三将戦では主将・飯田健介(社4=福岡・南筑)が試合開始約30秒に袖釣込腰で一本、大将戦では笠井雄太(スポ3=愛知・桜丘)が支釣込腰で技ありを奪取し、4-1の快勝で駒を進めた。次に挑んだのは鹿島体育大、先鋒は中島竜(文構3=東京・早実)。果敢に攻めを見せ、合わせ技一本で相手の間隙を突き勝利を収める。その後引き分けが続くが三将戦に臨んだ飯田が相手の反則負けを引き出し一本勝ち。その後副将戦で一本取られるが笠井が大外刈を決め一本奪い返す。3-1で鹿島体育大に勝利し、初日の試合を終えた。
桐蔭横浜大戦で大外刈で一本収める笠井
上位入賞を懸けた三回戦、 二日目の相手は女子部と同じく難敵・桐蔭横浜大だ。先鋒が引き分けとなり、次鋒で挑んだのは笠井。激しい攻防を展開し、試合終了残り15秒前で大外刈で一本収め、早大で今大会唯一の全勝の結果を示した。しかしその後は、厳しい展開に追い込まれる。中堅戦で激戦を繰り広げた飯田が試合残り5秒の所で技ありを奪われ敗北、その後の副将戦でも攻勢を強めるが中島瑞が一本取られる結果となる。1-2で桐蔭横浜大に接戦の末惜敗した早大は目標を逃したものの、ベスト16となった。
にこやかな笑顔で大会を終える早大柔道部
男子部・女子部共にベスト16の結果を残すも、激戦を交わした末の惜敗は悔しさが残った。桐蔭横浜大で特に悔しさをにじませた飯田と中島瑞の二人は、出場が決まっている来月初旬の講道館杯全日本柔道体重別選手権大会(以下、講道館杯)で捲土重来を期してくれるであろう。早大の集大成となる早慶戦の開幕まで残り一か月だ。「結果は結果として受け止めるが、チーム心ひとつで挑めた」と語った飯田。今回の尼崎での想いを飛躍させ、早慶戦で圧巻の優勝を講道館へ掲げる。
(記事 今村奎太 写真 今村奎太、湊紗希)
結果
女子部 ベスト16
男子部 ベスト16
コメント
西田清二 女子部監督(平14第一文卒=岡山白陵)
――まず初戦を振り返ってみていかがでしたか
取りたいと思っていた選手がしっかり得点してくれて、負けてしまった選手は1人出たんですけど、そこでも一本負けしませんでした。一本負けと技あり負けではチームとしての勢いや次逆転しやすいという意味でも違いますし、団体戦でチームのために戦うということを理解して、負けた選手も一生懸命戦ってくれたことは、初戦はすごく内容のある試合ができたと思います。
――二戦目を振り返ってみていかがでしたか
桐蔭横浜大さんは結果ベスト4に残った程なのですごく強豪でした。ですがやっぱりここを取りたいなっていうところで取れたのが、ポイントゲッターの大森のみでした。先鋒の木村も物凄く期待して送り出したんですけど、そこで取り切れなかったっていうのはしんどかったなと思います。ただ、彼女は1年生ですし、気迫を前面に押し出して、自分が取らなきゃダメなんだと思って試合をしてくれているので、それはチームにすごく勇気を与えてくれたかと思うので良かったです。
――今回の大会で印象的だった選手をおしえてください
まずは大森ですね。大森はポイントゲッターです。去年には全国大会で3位になってますし、マークもされているので大森と当たるところは団体戦では相手の大学も絶対に引き分けを狙いに来るんです。大森はそれでも自分がポイントゲッターだということを理解して、リスクを冒してでも投げに行くっていうことをやろうとするんです。そういった所を一緒に話して一生懸命取り組みました。その上で男子と練習する量を増やしたりして、実際に二試合取り切ってってくれたなっていうのはすごく評価してます。 あと木村は試合向きの選手だと思います。大きな舞台も高校生の時に経験してますし、団体戦が好きだって本人も言いますので。 やっぱりみんなで戦うっていうことに対してすごく思い入れが強いので、先鋒向きだなと思っていました。彼女の階級が先鋒だったので、迷うことなく彼女を使おうと考えました。二試合目も試合の流れの中で真ん中2分ぐらいまで、かなり惜しい技も出ましたし、リスクを犯しても投げに行け、取りに行け、抑えに行けっていう指示を出したんですが、それをわかって真剣にやろうとしてくれました。凄く信頼できる選手です。 そして主将の出口(出口華、スポ4=兵庫・夙川)も戸惑いなど悩みもあったと思うんですけど、ミーティングをする機会を増やしたり、ざっくばらんに色々な話をするような機会を持ったりするように一緒にしたので、コミュニケーションをよく取って一生懸命頑張ってくれたなと感謝してます。
――今後に向けてのチームの目標、意気込みを教えてください
今年は人数も少ないので、個人の強化を行いそれが結局チーム力に繋がる、といった手応えもありました。次はチームとして、5月・6月の都や全国大会、尼崎で更に躍進できるようにしていきます。「チームのために」という事を今までも言ってきましたけど、より一層チームのために頑張ろうという所を結束して、チームでレベルアップしていきます。しっかりコミュニケーションを取り良いムード作りをして、一緒に学生と頑張っていければと思います。
呉世鎭 男子部監督(平20教卒=千葉・成東)
――今大会の振り返りをお願いします
悔しいの一言に尽きますが、出せるものは出し切ったと思います。運だとか、いろんなものが積み重なって結果につながらなかった部分があるので、しょうがないかなというところですね。全力を出し切っても勝ち切れなかった、桐蔭さんが強かったです。
――今大会のチームの状態はいかがでしたか
すごく上がってきていて、良かったと思います。特に重量級2人、中野と笠井は個人戦で負けて全国大会に出られなかったのですが、それを盛り返すもの、鬼気迫るものがありました。その点、チームが勢い付いた部分はあったのかなと思いますね。
――最後の桐蔭横浜大戦には、どのような勝算で臨まれたのでしょうか
最初の4人で2点リードするという作戦でした。実際には笠井がとって、中野がうまく抑ええ込まれたなと。あと飯田は、あれはもう事故ですね。とりに行こうと攻めて、指導が2つ向こうに来ていて、飯田が3回連続で技をかけていたので。あと1回かければ指導、というところで少し雑になったのかなと思います。そこで相手の技がうまくハマってしまったという、運がなかった感じですね。
――試合前には、選手にどんな声を掛けられましたか
「ここで全てを出し切るつもりでいけ」と。会場がすごく沸いていたので、そこは一回忘れて自分たちのことに集中して、出せるものを出し切って、今のことだけに集中しようと話しました。
――敗れた後、選手たちの様子をどのようにご覧になっていましたか
飯田は信頼されているキャプテンなので、彼が負けてもしょうがないというか、「チームのためだ」というのはみんな理解しているなと思います。最初はみんな泣いていましたが、その後は次に向けてと切り替えていました。
――今後の講道館杯、早慶戦で選手たちに何を期待されますか
飯田はこれが本当に最後の試合になると思うので、大学4年間、さらに柔道人生の集大成として頑張ってほしいです。中島瑞はこれから実業団で戦っていく選手なので、今大会でうまくいかなかった部分を調整して、実業団でいいスタートができるような試合をしてほしいです。早慶戦はもう、ただチーム一丸となって戦ってもらえればと思いますね。
主将・飯田健介(社4=福岡・南筑)
――今回の大会の全体を振り返ってみていかがでしたか
みんながこれまでの練習で1年間やってきたことを全て出し切って、その上で今回の結果だったのかなと思っています。
――初日と二日目の感想をそれぞれ
チームとしては取るべき人がしっかり勝って、引き分けるところはしっかり引き分けてポイントを相手に与えなかったところは、一人一人自分の役割を持ってやれていたのでその部分はすごく良かったかなと思います。個人としては、初日の二試合両方とも練習通りの試合展開で運ぶことができました。ですが二日目は自分が取らないとチームが負けてしまうという中で、勝負に行って返されたっていうのはすごく悔しいです。ですが、あそこで勝負に行かずに終わると、結局後悔していたであろう部分が自分にあったと思うので結果は結果としてしっかり受け止めています。
――今回が4年生として尼崎は最後ですが振り返ってみていかがですか
主将としてチームを引っ張っていく中で、副将の中島瑞や中野始め多くのメンバーが4年生中心に支えてくれて最後はチーム心ひとつで戦えたので物凄く良かったです。
――今後に向けての意気込みをお願いします!
早慶戦では慶應に勝って絶対に優勝します。その中で1人1人が満足な試合をしてもらえればと考えています。講道館杯はまずベスト4を目指します。ベスト4になれば全日本柔道体重別選手権大会というシニアの8人までしか出れない大会に出場できて、その大会が福岡であるので、その地元開催での大会で活躍できるよう頑張ります!
笠井雄太(スポ3=愛知・桜丘)
――今大会の振り返りをお願いします
良くも悪くも、早稲田らしさが出た試合でしたね。戦い方として主軸が4年生である中で、いかに3年生がサポートできるかが大事だと思っていました。4年生を主力で考えていた分、先輩たちに頼りすぎて、それが裏目に出たなと思います。もっと3年生がリーダーシップをとれる部分があったのかなという感じですね。
――桐蔭横浜大戦において、早大が勝利するために、笠井選手の得点が期待されていたと思います。どのような思いで試合に臨んだのでしょうか
萎縮して自分の良さが出せないことが、結果よりも良くないなと思っていました。まずは自分を出し切ることを意識していて、正直なところ、勝ち負けはあまり考えていなかったです。チームが準々決勝、準決勝を見ていたからこそ、勝敗を気にするタイミングではないなと思っていました。萎縮せずにやれたからこその勝ちだったと思います。
――特にプレッシャーは感じなかったのでしょうか
ない訳ではなかったんですが、「ここでとれたら美味しいだろうな」と思っていた場面でとれたので、チームの期待を裏切らなくてよかったなと思います。
――最後に、早慶戦への意気込みをお願いします
もう『圧勝』ですね(笑)。引退試合で4年生に花を持たせてあげたいので、僕ら後輩が引っ張っていって、いい思いをさせてあげられるように頑張りたいと思います。