早慶柔道対抗戦(早慶戦)が講道館にて開催された。19年から3年連続で慶大に敗れ、リベンジを果たすべく臨んだ早大男子部。20人の勝ち抜き方式で行われた試合は、下級生らの活躍で早大が流れを掴み、8人残しと慶大を圧倒して見事に白星を飾った。
袖釣り込み腰を決める笠井
戦いの先陣を切る先鋒を務めたのは、1年生の笠井雄太(スポ1=愛知・桜丘)。初の早慶戦にして大役を任された笠井だったが、序盤から次々と技を仕掛け、相手を攻め立てていく。そして開始約1分の場面、相手と体を密着させて左肩に背負うような姿勢を見せると、自慢の力で一気に前方へ投げた笠井。見事に袖釣り込み腰を決めて一本勝ちを収め、好スタートを切った。
次鋒の池田に思いを託した
一人抜きと一分けで終えた笠井の後には、次鋒の池田尚悟(社1=東京・早実)が登場。試合は両者技の掛け合いが続き、拮抗(きっこう)した展開を見せる。だが試合中盤、池田は組手争いの際に相手に低い姿勢から小内刈りで左足を刈られ、技ありを許してしまう。ポイントを先行された池田だったが、開始約2分の場面で高い姿勢から大外刈りを仕掛ける。これを解こうとしてバランスを崩した相手を一気に後方へ押し倒し、見事に一本勝ちを収めた。この逆転の一本勝ちに、早大柔道部は大盛り上がり。笠井に続いて、1年生が大きくチームを勢い付ける活躍を見せた。
一本勝ちを決める池田
池田の後には中野智博(スポ2=神奈川・桐蔭学園)が登場。昨年は出場がなく、今年も怪我の影響で出場が心配された中野だったが、それを全く感じさせない躍動を見せる。初戦から序盤で内股を決めて一本勝ちを収めると、そこから怒涛(どとう)の四人抜きを達成。慶大を大きくリードし、後に最優秀選手賞を獲得した中野の活躍に、長嶋勇斗主将(スポ4=山梨・東海大甲府)らは満面の笑みを見せた。
中野の活躍に笑顔を見せる長嶋主将
その後も早大は下級生らが奮闘。七人目の中島瑞貴(スポ2=福岡・西日本短大附)は得意の関節技で一本勝ちを収めて初戦を突破、続く2戦目は小内刈りで相手のバランスを崩し、そのまま一気に後方へ押し倒して二人抜きを果たした。十人目の飯田は後ろ袈裟固めで一戦目を制すと、「戦えたらいいなと思っていた」という慶大十九人目の兄(竜生、4年)とまさかの対戦。過去にも例を見ない展開に、早大、慶大ともに盛り上がりを見せる。試合は両者一歩も譲らない接戦で引き分けに終わったが、兄弟対決に「まさか対戦できるとは思わなかったが、すごく嬉しかった」と飯田は笑顔で振り返った。
最優秀選手賞を獲得した中野
その後は十二人目の横山景一(文構3=長崎南山)が奮闘の末に慶大の大将と引き分け、早大の勝利が確定。3連敗を喫してきた一戦で、慶大を圧倒しての白星を飾った。後輩や今季出場機会が少なかった選手らの活躍に、長嶋主将も「感動しましたね」と頬を緩ませ、「来年はもっと強いチームになる」と後輩たちへの期待感を示した。この言葉通りに、躍進を続けるであろう早大柔道部の活躍を、来季も願うばかりである。
今季も躍動を見せてくれた早大柔道部
(記事・写真 安齋健、宮下幸、今村奎太、湊紗希)
結果
男子 ○8人残し(20人制勝ち抜き方式)
コメント
長嶋勇斗主将(スポ4=山梨・東海大甲府)
――下級生の活躍が凄まじく、ご自身に出番が回ってくることはありませんでしたが、試合全体を振り返っていかがですか
本当に後輩のみんなが頑張ってくれて、自分が予想していたより良い結果を出してくれました。この子は負けちゃうかなって思っていた子たちが勝ったり引き分けたりと役割を果たしてくれました。感動しましたね。
――特に印象に残った後輩を挙げるなら
もちろん笠井(雄太、スポ1=愛知・桜丘)が先鋒でしっかりとってきてくれたのもそうですが、その次の池田(尚悟、社1=東京・早実)がまず勝って、次の相手の松永(蓮太郎、2年)は結構強い選手なのですが、しっかり引き分けてくれました。あとは中野(智博、スポ2=神奈川・桐蔭学園)が5人抜いてくれたりと、みんな頑張ってくれていて、普段以上の力が出せていたのかなと思います。
――早大での4年間を振り返っていかがですか
終わりよければすべてよしって感じですね。楽しかったなと思います。柔道の結果としては悔いが残る部分もありますが、自分が選んだ道に後悔は無いですし、やり切れたかなと思います。
――後輩へのメッセージをお願いします
新キャプテンの道下(新大、スポ3=東京・国士舘)のもとで、しっかり頑張ってもらいたいですね。僕よりしっかりしていますし、来年はもっと強いチームになると思います。早慶戦もそれ以外の大会でも必ず良い結果を残してくれると思うので、皆さん応援よろしくお願いします!
中島瑞貴(スポ2=福岡・西日本短大附)
――早慶戦にはどんな意気込みで臨まれましたか
早慶戦という特別な舞台に昨年は先鋒で出場しましたが、引き分けに終わってしまったので、勝ちたいなという気持ちがすごく強かったです。4年生の最後の試合ということもあり、とにかく勝ちたいという気持ちでいっぱいでした。
――ご自身の試合を振り返っていかがですか
試合前に自分たちが想定していた流れと全然違って、早稲田に追い風が吹いている状態で回ってきました。それでもやることは一緒でしたし、結果的に関節技など自分が得意なものを生かして戦えたので良かったです。ただ、最後にもう1人取り切れたらなお良かったかなと思います。
――引退される4年生への思いは
今年の4年生は人数も少なくて大変なことが多かったと思います。特に長嶋キャプテンは嫌われ役を買って出てくれたというか、自分も副キャプテンの経験があって、そういった部分がすごく理解できるので、本当にお疲れ様でしたというのと、ありがとうございましたという感謝の気持ちでいっぱいですね。尊敬する先輩です。他の先輩方も一人一人のキャラと役割がある中でこの部をつくり上げてくれたのは、いい先輩像を見ることができたなと思いますし、自分たちの代にも生かしていきたいです。
――来シーズンへの意気込み
この冬のオフシーズンで自分の課題であるフィジカルづくりに力を入れていきたいです。ワンランク上の体をつくった上で次のシーズンに臨んで、全国の大会で入賞したいです。
中野智博(スポ2=神奈川・桐蔭学園)
――自身初の早慶戦だったかと思います。どのような気持ちで試合に臨みましたか
対談通り(早慶戦直前特集にて)引き分けるつもりでいたんですけど、先鋒と次鋒の二人がすごく頑張ってくれていて、去年は外から見ていたんですけど今年は中から見て、すごい盛り上がりだなあと思って。自分も頑張らないとなと感じて、今日はいけるところまでいきたいなと思いました。
――この試合で引退される4年生の方々は、どういった存在だったのでしょうか
今年はすごく迷惑をかけて自分勝手なことばかりしてしまったので、それでも4年生の方々は僕のわがままを受け止めてくれて、優しいお兄ちゃんたちという印象ですね。
――今後へ向けた意気込みをお願いします
今年はこの試合でもう全部終わって、いろんなことがありましたけど、結局僕が一番になった試合は一つもない状態です。来年こそは一番を目指して頑張りたいですし、今年は怪我が多かったので、怪我をしない体づくりを意識していきたいと思います。いろんな問題が僕にはあるのでそういうのを全部見直して、来年は新しい中野を、「シン・中野」をお見せできるように頑張りたいと思います!
飯田健介(社2=福岡・南筑)
――どのような気持ちで試合に臨まれましたか
とにかく勝つことを目標に臨みました。あとはお兄ちゃん(慶大、竜生、4年)と戦えたらいいなと思ってましたね。
――実際に試合をすることになるとは予想されていましたか
いや、本当にまさか当たるとは思いませんでした(笑)。
――お兄さんとの2試合目を振り返ってみていかがでしたか
まさか対戦できるとは思っていなかったので、すごく嬉しかったです。勝ちたかったんですけど、やっぱり勝てないなあと思いました。お兄ちゃんは強かったですね。
――これで4年生の先輩方は引退されますが、どのような存在でしたか
本当に心強くて、柔道の技術面などわからないところは細かく教えてくれて、とても頼り甲斐のある先輩方でしたね。
――最後に来シーズンへの意気込みをお願いします
来シーズンは個人としては全国大会で優勝、団体ではベスト8入りを目指して、また最後の早慶戦でも勝てるように頑張りたいと思います!