男女ともに優勝逃すも、次世代のエースが躍動

柔道

 早慶柔道対抗戦(早慶戦)が慶大の日吉道場で開催された。女子部は下級生中心のオーダーで4連覇を目指して戦った早慶戦。大将戦まで決着の付かない接戦となったがわずかに及ばず惜敗。男子部は怪我人の影響で慶大より3人少ない17人の勝ち抜き戦で優勝を目指して戦ったが、あと一歩及ばなかった。それでも次世代を担う選手たちの活躍や4年生の意地が見られるなど、実りのある早慶戦となった。

果敢に攻め続ける1年生の松崎渡(スポ1=埼玉栄)

 女子部からは出口華(スポ1=兵庫・夙川)、池田海実(スポ1=東京・帝京)、尾崎美玲(スポ3=愛知・大成)、下村咲乃(文2=福岡・修猷館)の4選手が出場。先鋒の出口は序盤から組手争いを優位に進める。個人戦で全国大会に出場している3年生を相手に主導権を渡さない。互いに得意技をかける展開が続くも、4分間で決着つかず引き分け。続く次鋒の池田は開始1分、背負投から寝技にすばやく移行し、そのまま押さえ込んで一本。「納得のいく形ではなかった」という池田だが、早大のポイントゲッターとしての実力を十分に発揮した。副将の尾崎は下の階級の相手に組手争いを徹底され、自分の形に持ちこむことができない。十分ではないコンディションの中で果敢に攻め続けるも終了間際に技ありを取られ、優勢負け。早慶戦の運命は大将の下村に託された。引き分け以上で勝利が決まる一戦で、相手の圧力に押される。開始1分過ぎに背負投を決められ技ありを取られる。その後も組手争いに苦戦し、勝ち切ることができず敗北。4連覇とはならなかった。

試合直前の尾崎に声をかける池田

 男子部は怪我人の影響で3人を欠く状態から始まった勝ち抜き戦。0ー1と先制された状態で迎えた3番手の飯田健介(社1=福岡・南筑)。4年生を相手に見事な背負投が決まって技ありを獲得、そのまま寝技に素早く移行し合技一本。1年生の勝利に応援席が一気に盛り上がる。続く試合も4分間を戦い抜き、価値ある引き分け。これには怪我で欠場した4年生の佐藤虎太郎(スポ4=神奈川・桐蔭学園)も「いいねぇ」と唸る。「早大の優勝に貢献したい」と臨んだ早慶戦で大仕事をやってのけた。

背負投を決める飯田

 飯田の勝利から勢いに乗りたいところだったが、その後は慶大の古澤の3人抜きなど、一気に突き放される。横山景一(文構2=長崎南山)が古澤を引き分けたところで迎えるは10番手の高山。初戦の開始早々、豪快な払い腰が決まって一本勝ち。続く2戦目の慶大の飯田は、先ほど活躍を見せた早大の飯田の実兄。飯田は相手の形にさせないしぶとい柔道を見せ、高山は苦戦を強いられる。それでも試合終盤、高山はがっちりと組んだ一瞬のチャンスをものにし、返技で技ありを獲得。そのまま4分間を戦い終えて優勢勝ち。「気持ちで勝てて良かった」(高山)と振り返った。続く3戦目、体力も限界に近いなかで迎えた開始1分過ぎ、得意の形から豪快な内股が決まり一本勝ち。続く4戦目で破れるも、高山の3連勝に会場はこの日1番の盛り上がりを見せる。

3人抜きを達成し、笑顔の高山

 その後は一進一退の攻防が続き、早大は副将の仲島聖悟(スポ4=東京・修徳)が登場。66キロ級の仲島に対するは100キロ超級の相手。試合開始から圧力に苦しみ、序盤に技ありを取られる苦しい展開。それでも、体格をはるかに上回る相手に投げ勝てるのが仲島。相手が単調な投げ技を続けていたところを見逃さず、返技で一本。4年生の意地を見せる。仲島が次の試合で引き分け、慶大が6人残したところで大将の百瀬敦也(社4=長野・松本第一)を迎える。百瀬にとって柔道人生の集大成となる試合で、序盤から積極的に攻め続ける。中盤に得意の寝技で見せ場を作るも、勝ち切ることはできず引き分けに終わる。男子部は今年も優勝を逃すことになったが、試合後の選手一人一人に充実した表情が見られた。百瀬も「今日の試合は今後に繋がっていく」と笑顔で振り返った。

優秀選手に輝いた高山(中央左)と池田(中央右)

 今年の早慶戦は悔しい結果に終わった。しかし、昨今の試合が部員や保護者が集まって応援をすることができない中で、保護者を含めたチームワセダで戦えたことに大きな意味があったはずだ。4年生の多くはここで引退となるが、次世代の柔道部を担う選手たちの活躍も見られ、来年度以降の柔道部の大進撃に期待がふくらむ早慶戦となった。

(記事 安齋健、写真 宮下幸、安齋健)

結果

女子 ●1―2(点取り方式)

男子 ●5人残し(勝ち抜き方式)

コメント

百瀬敦也(社4=長野・松本第一高)

――下級生の試合をどのように見ていたかとご自身の試合を振り返っていかがですか

僕に5人以上残ってくるのは当たり前だと思っていて、多くて10人くらいだと思っていました。しかし、前でこんなに楽しい試合をしてもらったので、最後に負けて恥ずかしい試合で終わりたくないなと思いました。結局1人も抜けずに終わってしまったのですが、自分なりの試合はできたのではないかなと思います。

――勝ち抜き戦という難しさがあったと思いますが、試合全体を振り返っていかがですか

圧倒的に不利な状況で始まったのですが、思った以上に白熱して取ったり取られたりという場面を見ることができたので楽しかったです。来年に繋がる試合を出来た子がたくさんいたのではないかなと思います。正直、結果を心配していた選手もいたのですが、そういった選手もよく頑張ってくれました。今日の試合は今後に繋がっていくと感じます。

――早稲田での4年間を振り返っていかがですか

早慶戦で言うと、負け越しているのですが、どの早慶戦も楽しむことが出来たと思っています。4年間を通して言うと、同期や仲間に恵まれたおかげというのもあって、楽しく柔道をできました。自分としては、もう少しできたのではないかなと思う場面もありましたが自分のできることはやり尽くしたと感じています。悔いはないです。

高山康太(スポ3=神奈川・桐蔭学園高)

――今日の早慶戦はどんな意気込みで臨まれましたか

オーダーを見て大体この辺が来るだろうなと思っていたのが見事に当たったので、ここは自分が抜かなくちゃいけない場面だと思っていました。本当は櫻井選手まで抜きたかったです。それでも、今まで早慶戦で活躍することがなかったので少しはチームに貢献できてよかったのかなと思います。

――試合を振り返っていかがですか

自分の中で良かったと思うのは実はあまり派手ではないのですが、2試合目です。相手の飯田選手がしぶとくて引き分けを狙いにきているなという印象でした。そういう相手を綺麗な技ではなかったですが、しっかり粘って相手の技を返してポイントを取れたというのは、気持ちで勝てていたからだと思いますし、良かったです。

――4試合目はやはり苦しかったですか

はい、きつかったですね。かなり疲れていていました。

――来シーズンに向けての意気込みをお願いします

何か役職についているわけではないですが、最高学年として、勝つ姿勢をしっかり見せて、後輩を引っ張っていけたら良いなと思います。

飯田健介(社1=福岡・南筑高)

――初めての早慶戦でしたが、どんな意気込みで臨まれましたか

4年生のほとんどが最後の試合なので、早大柔道部の優勝に貢献したいと思い、1人でも多く勝つことを意識して臨みました。

――ご自身の試合を振り返ってどうですか

1試合は相手よりも先に技を出していくことなど、普段の練習で取り組んでいることをしっかりと出し切ることを意識しました。2回戦は相手の体格が自分よりも大きいこともあって、簡単に勝てる相手ではなかったのですが、チームのために1分でも多く戦おうと思って戦いました。

――来シーズンに向けての意気込みをお願いします

個人戦でも全国大会に出場することができるように頑張ります。また、来年の早慶戦は必ず優勝できるように頑張ります。

尾崎美玲(スポ3=愛知・大成高)

――どんな意気込みで臨まれました

年明けに足の手術をする影響で、来年度は選手として試合に出ることができないので、私がみんなと戦える最後の団体戦だと思って楽しむことを意識しました。

――副将として1年生2人の戦いぶりをどう見ていたかとご自身の試合を振り返ってもらっていかがですか

後輩たちがすごく頼もしくて、自分は不甲斐ない試合をしてしまったのですが、それでも団体戦に出て良かったなと思える試合ができました。

――来シーズンに向けての意気込みお願いします

来年は私が4年生という立場になるのですが、競技に関わることができない分、まわりをサポートしたいと思います。実力十分な選手が集まっているので、日本一になれるようなサポートをしていきたいなと思います。

池田海実(スポ1=東京・帝京高)

――どんな意気込みで臨まれましたか

投げて勝ちたいというのが強くありました。

――ご自身の試合を振り返ってもらっていかがですか

前の試合がどんな結果だろうと私はポイントを取ろうと思っていたので、勝ち切れたことは良かったのですが、自分の得意な技で投げて勝つことができず、納得いく形ではなかったので、次回以降のために反省したいと思います。

――来シーズンに向けての意気込みをお願いします

団体戦では絶対に勝ち切れるポイントゲッターになりたいです。個人戦でも結果を残すことができるように毎日頑張ります。