最終回には、1年間チームを引っ張ってきた空辰乃輔主将(スポ4=広島・崇徳)、柳川昂平副将(社4=三重・四日市中央工業)、清水祐希副将(スポ4=愛知・大成)をお招きする。新型コロナウイルスの影響で大会の中止が相次ぎ、早慶戦が今年度チームで挑む『最初で最後』の試合となる。今回は3人に自粛期間中の取り組みや早慶戦への意気込みを伺った。
※この取材は10月28日にオンラインで行われたものです。
主将として1年間チームを引っ張ってきた空選手
――お互いの印象をお聞きしたいのですが、まず柳川選手の他己紹介をお願いしてもよろしいですか
空 普段は比較的おとなしいというか、一人で物事に集中するタイプで、就活や大学の勉強とかもちゃっかしやって、柔道の練習もちゃっかしやっている人です(笑)。
清水 おとなしいというか、自分の意見をおおっぴろげにしない人ですね。真面目で、やるべきことはやる人だと思います。
――清水さんの他己紹介をお願いします
空 転勤族で、熊本や愛媛、愛知とかを転々としていたそうです。中高は小学校からずっと柔道の名門出身。実は有名人で、『レンタル次郎食べる人』としてマツコの番組にも出たことがあります。この人も静かなのですが、秘めたるエネルギーがすごい人だと思います。
柳川 清水は(高校が)同じ東海地区ということで結構知っていて、その中でも大成高校は強豪だったので、怖いという印象があったのですが、その中で清水は優しい印象で。大学に入ってから同じチームになったらやはり優しくて。おとなしいですが、しっかりしていますね。
――空選手の他己紹介をお願いします
清水 あまり家に帰りたがらない人ですね(笑)。後は好奇心があるといいますか、部屋でも英語なりスペイン語を勉強していて、僕みたいなチンパンジー校出身からするとカルチャーショックを受けます。なんでもそつなくこなす人で、コミュニケーション能力にも長けていて、主将として一年間、自分らしくチームを引っ張ってくれていました。
柳川 頭がいいなという印象です。話していてもそうですし、ひとつひとつの行動も考えながら行動していて、尊敬しています。
空 本当か?(笑)
柳川 本当だよ(笑)自分と清水はおとなしいのですが、(空選手は)コミュニケーション能力が高くて、辰がいることで同期をつないでくれているという印象があります。
空 ありがとう(笑)
――自粛期間中はどんな練習を行っていましたか
空 3月の終わりらへんは活動自体がだめということだったので、その時はトレーナーが作ってくれたランニングなどのメニューを行って、体力の維持を図っていました。
柳川 コロナの影響で実家に帰っていた部員もいたので、定期的にミーティングを行って体調を聞いたりして、部としての帰属意識を保っていました。
空 6月18日から練習再開できるようになったのですが、その時は8-9割が集まって、マスクや距離を2mあけるなど対策を行いながら、最初は体力を戻すという軽い練習から入りました。今はもうすぐ大会もあるので、がっつり練習をしていて、徐々に階段を上ってきたという感じです。
――トレーナーからはどんな指示があったのですか
空 トレーナーが動画をとってくれて、このようにやったらウエイトを使わずに身体の筋力を維持できるよ、というのをわかりやすく教えてくれて、食事に関しても、食事のメニューやどのくらい水分を取るのか、また何時に起きるのを習慣にしようというのまで、細かいところまで書かれたパンフレットをつくってくれたので、それに則って生活リズムをつくっていました。
――清水選手もそのメニューに則って自粛期間中過ごされた感じでしょうか
清水 そうですね、主に心肺系、体力の持続、筋力だったりを使える施設も限られていたので、今まで見たいに向上させること難しかったので、練習再開した時にしっかりできるように、維持させるということを目標にしていました。
――柳川選手は食事内容はどのように気をつけていましたか
柳川 運動があまりできない状況でも筋力を落とさないためにトレーナーが、どのくらいタンパク質を取ったらいいのか、水もしっかり飲むことが大事というのを聞いたので、それを徹底していました。
――結構細かいのですね
空 そうですね、でもできることがそれくらいしかないので。(自粛中でも)できる食事や生活リズム、最低限のトレーニングのメニューを(トレーナーが)作ってくださったので、感謝しています。
――柔道の練習や生活において自粛期間に意識していたことはありますか
空 感染対策は徹底していました。僕は寮にいたのですが、外出は公園にランニングする時しかしませんでしたし、あとは練習がないと、規則正しい生活をするのが難しくなってしまって、例えば、昼ごろに起きても問題ないわけですし、そういうところから崩してしまうと体調にもよくないと考えて、生活リズムには気をつけていました。
柳川 試合がないということで、柔道に対するモチベーションが落ちてきそうになることもあって。その時はYouTubeで試合の動画を見て保っていました。
清水 睡眠時間に気を付けることです。練習や授業がないとフリーな時間が長く続くので、朝昼が逆転しないように気を付けていました。
――自粛期間があけて、柔道に対する考え方や練習との向き合い方が変化した部分はありますか?
空 僕らは5-7歳から15年間ほど柔道をやっていて、その中でもこれほどまでに練習をしなかったことはなかったんです。なので、僕の場合はこんなに身体を動かさないのはつらいのだなとか、柔道は練習をやっているときついけど、やっぱり離れてみると柔道は楽しいのだなと改めて気が付きましたね。
柳川 練習再開となった時に、残されている時間はあまりないなと思って。その残されている時間は自分のペースで楽しんで柔道をしようと思って、練習に取り組んでいました。そのおかげであまりプレッシャーを感じずに練習できていて、調子よくできているなと思います。
清水 僕は自粛が明けてすぐに練習が再開したので、非常に危険な状態でないかなと思って。特に柔道は接触競技なので何を考えているのだろうと思ってしまったのですが、やはり柔道着を着ない時間を過ごしたことで、先ほど空がいったように、柔道をやっている時はいやいややっていたり、きついと感じても、(柔道は)楽しかったのだなと感じました。
――練習面で自粛期間ならではのプラス面、マイナス面はありましたか
空 プラスでいうと全く新しい経験ができたことですね。柔道をしないという経験ができたということは自分の柔道に対する見方という点で大きくプラスになったのではないかと思います。もうひとつは冷静に就活活動だったり 柔道以外の部分でしっかり考える時間ができたことがよかったと思います。やはり毎日一所懸命練習していると、一所懸命やるだけになってしまって、ゆっくり考えることがないんですけど、将来何したいなとか、柔道はこういう風に続けていきたいなというのを考えられたので、それはプラスの面だと思います。マイナスの面は一般的なのですが、15年やってきた柔道をやる最後の年に満足に練習を行うことができなかったことです。試合もないですし、やりきれない思いというのはあります。
柳川 プラスの面は、柔道から一度離れて、自分の柔道に対する考え方を考え直す機会になったことですね。マイナス面は空と同じようにこのチームで一年間試合に出ることができなかったということです。チームとしては柔道に対する思いがあふれている人ばっかりで、(試合でも)いいところを狙えるのではないかと思っていたので、そういう面での悔しさはありますね。
清水 練習が一度ストップしたことで、今まで積み上げてきたもの、体力や筋力が失われていく感覚がすごい残念だなと感じました。プラスの面は就活に集中できたことで、それは人生という観点からみたらよかったのかなと思います。
――久しぶりに組んだ時はどのような気持ちでしたか
空 気持ちよかったです。日常生活で人を投げることはないので(笑)。
柳川 久しぶりな分、やりたいという気持ちがあったので、そのメンタルと、久しぶりな分、変な癖が抜けていて、個人的には調子がいいなと感じました。
――皆さんそれぞれ役職についていると思うのですが、ご自身の役割で大変だったことがありますか
空 下(後輩)が15人くらい、上にはOBがいて、人それぞれ考え方が違うので、主将としてはそれらをまとめることが大変でした。
柳川 自分は副将と受験指導長を担当しているのですが、副将のところは辰がしっかりリーダーシップを取ってくれて自分はあまり貢献できないというのが本音のところで。受験指導長の役割で大変だったことは、早稲田柔道部は人数が少ないので、そのためにスカウトであったり、ガイダンスであったり、後は受験の手伝いをしたりするのですが、毎年あまり部員を入らすことができなくて、そういった面で大変でした。
清水 副将と寮長を務めていて、副将という職では、自分はずっと膝をけがしていて、練習に参加する期間が短かったので、あまり副将らしいことはできなかったのですが、そのぶん客観視してチームのことを見ようとしていました。でも苦労という面ではあまり苦労をしているという感じはなかったので、その面主将がうまく引っ張ってくれたなと思います。寮長としての方が苦しいところがあって、今年はイレギュラーでコロナの関係で実家に帰っていた部員が多いので、その(実家に帰っていた)日数を計算して、寮費を返還したり、あとは寮も古いので、今年になって何か所も修理をすることになって。それも大変でした。
――今のチームの状況についてどう考えられていますか
空 柔道の面ではすごく強いチームだなと思いますし、練習の観点からも僕の意見ではあるのですが、僕が下級生であった時と比べてもっと良い練習ができているのではないかと思いますね。柔道が好きな学生が多くて、自分が尻を叩かなくても自分で練習するする学生ばっかりなので。主体的に動けるチームになっていますね。
柳川 本当に自分が今まであったことないくらい柔道が好きな学生が多くて。自分で考えてトレーニングしたり、コロナ前だったら出稽古に自主的に参加したり、そういう雰囲気が今年ならではで、後輩たちが自主的に切磋琢磨して成長してしあっているようなチームかなと印象です。
清水 みんな個性的ですごく強くて、柔道も意欲的にやってくれたり、柔道以外の面でも先輩・後輩関係なく接したりしているので、これまでの早稲田柔道部とは違ったところなのかなと思います。
――今年の新入生の印象はどうでしょうか
空 二つざっくり上げると、強いというのと、真面目ですね。インターハイで優勝したり、3位に入ったりとか、それこそみんな大体県大会は優勝していたり。その中でも結構重量級の人たちが入ってきたので、そこの強さというのは戦力として充実しているなと感じますね。真面目というところでは、2・3年生が個性が強い代なのですが、その代と比べてひたむきに練習したりですとか、主将として練習を見ているとそういったところは新入生の印象としてあります。
柳川 でかくて強いです(笑)。高校だったらかぶっていないくらい年の差があるのですが、柔道だったら全然差がないくらい。将来的にも部を引っ張ってくれる代なのではないかなと思っています。
清水 おっきくて強くて、練習もすごく真面目で、指示したことをしっかりやってくれていて、そこはすごくいいなと思っています。雰囲気というのは、声出しとかもあると思うのですが、おっきくてボリューミーな人達が並んでいるのを見ると柔道部らしさを感じます。今まで早稲田は小柄な選手が多かったので。今年(もし試合があって)武道館で7人が並んだら、その風景は周りから見たら迫力があったのではないかと思います。
寮長も兼ね部員のサポートも行う清水副将
――新入生が入ってから変わったことはありますか
空 練習の雰囲気がよくなったというのはあると思います。元々(部員の)人数が少なくて、僕らも3人しかいないですし。やはり人数が少ないと活気がかけてきますし、けがとかで抜けてしまうとさらに少なくなってしまうので。人数が多い一年生が入ってきて、さらに(体格が)ボリューミーですし、雰囲気として明るい、練習しやすい雰囲気になったなと感じています。
柳川 2・3年生が個性が強くて、自分だけの練習に一生懸命になってしまう学生が多いのですが、一年生が入ったことで乱取り中にアドバイスをしたり、そういった姿を見て、一年生が入ったことで2・3年生も上級生の自覚というのが芽生えているような感じがしています。
清水 今年に限った話でない気もしますが、一年生が入ったことで、2・3年生に必死さが出てきたと感じています。一年生はおっきくて強いので、新入生に負けるわけにはいかない、という必死さが出てきたのだと思います。
――私生活で自粛期間中は何をしていましたか
空 僕はずっと就活ですね。一番大変な時期だったので、7時とか8時に起きて、それからご飯食べてトレーニングすると、あとはやることがないので、面接対策したり、企業研究を部屋にこもってしていました。
柳川 僕も4月までは就活をしていて、それが終わったら本を読んだり、料理をちょっとやってみようと思って、パンをつくりました。
清水 基本的には部屋にこもって就活してましたが、YouTubeやドラマなど普段あまり見てこなかったものを見ましたね。
――大学4年間を振り返ってどうですか
空 柔道の面でもプライベートな面でも自由にやらせてもらったなととても感謝していますね。柔道の面では、練習のメニューや試合のオーダーをどうするかというのを決めさせてもらったり、僕らが決めて僕らでやるという感じで。後は海外で語学を勉強したいという時もやらせてもらって。高校までは海外に行ったことはなかったのですが、大学からお金の補助をしてもらって5か国くらい行くことができました。柔道以外の部分でもいろいろ経験させてもらったというのは大学4年間の宝だと思います。
柳川 大学に入っていろんな価値観に出会えたなと思います。高校までは柔道の、限られたコミュニティーで過ごしていましたが、大学では一般受験で入ってきた人たちもたくさんいるので、その人たちと関わることで人間の部分で成長できたかなと思います。
清水 柔道部に入って、やりたいことをやらせてくれた環境に感謝していますし、これまでは柔道という狭い世界しか知らなかったのが、大学でいろんな人と会うことで様々な世界を知れたので、自分が成長できたなと思います。
――皆さんにとって早慶戦はどのような舞台ですか
空 柔道人生にとって最後の試合ですね。やはりオフィシャルな試合に出るのはこれが最後になるので、有終の美を飾ることもあるし、負けることもあるかもしれません。最後というのをかみしめながら行う、思い出に残る大会になるのではないかなと思います。
柳川 昨年度早慶戦で負けてしまい、その時に悔しい思いをしたので、今度は勝ちたいなという思いがあります。後は柔道人生最後の試合、またこのチームで戦える最初で最後の試合になるので、僕たちにとっては特別な試合になるのではないかと思います。
清水 6歳から柔道をやってきて、この早慶戦が本当に最後の試合になるということで、のびのびと悔いのないようにやりたいという思いがあります。また早慶戦は長い歴史があって、いろんな方が注目されている試合だと思うので、勝ちたいと強く思う、独特の緊張感のある試合ですね。
――早慶戦への意気込みをお願いします
空 最後の試合になりますし、主将としても1年間やってきて、やりきれない部分もあるのですがチームをまとめてきた立場からしたら、このチームで試合をしたいという思いがあって。まずは自分の実力を出し切りたいです。またチームとしてどう強いチームにするかというのはまだ3週間弱あるので、その期間で考えて練習していこうと思います。
柳川 優勝します!
清水 けがなく頑張りたいです!
――ありがとうございました!
(取材・編集 倉持七海、樋本岳)
柔道人生最後の試合に向けて気合は十分です!
◆空辰乃輔(そら・じんのすけ)(※写真右)
1998(平10)年6月23日生まれ。180センチ。広島・崇徳高出身。スポーツ科学部4年。柔道だけでなく、英語やスペイン語の勉強にも熱心な空選手。1年間主将として引っ張ってきたチームで、柔道人生最後の試合を戦い抜きます!
◆柳川昂平(やながわ・こうへい)(※写真中央)
1998(平10)年4月7日生まれ。175センチ。三重県・県立四日市中央工業高校出身。社会科学部4年。自粛期間中も食事にしっかり気を使っていたという柳川選手。長い間練習ができなかったことも「久しぶりな分、変な癖が抜けていた」とポジティブに捉えます。早慶戦では大学4年間の集大成を見せてくれるでしょう!
◆清水祐希(しみず・ゆうき)(※写真左)
1998(平10)年7月10日生まれ。180センチ。愛知・大成高出身。スポーツ科学部4年。『レンタル二郎食べる人』としてテレビにも出演したことがあるという清水選手。「静かだが、秘めたるエネルギーがすごい」と評される清水選手の早慶戦での活躍に注目です!