【連載】『平成29年度卒業記念特集』第8回 下田将大/柔道

柔道

「負けない柔道」でチームを勝利へ

 「負けない柔道」。今年度の早大柔道部を表す一言だ。「負けない」というと消極的な印象を受けるが、団体戦においては1つの失点が試合の勝敗を分けることになる。「負けない」ことは勝利への最低条件なのだ。昨年よりも人数も少なくなり、最初は戦力が落ちることを心配された柔道部。そんなチームを勝利へと導くために、「負けない柔道」を定着させ、部を支え続けた男がいる。今年度主将・下田将大(スポ=三重・四日市中央工)だ。

 高校時代には、部活のキャプテンや生徒会長も務めていた下田。先生の指導がしっかりしていたため、この時期には、部活の面だけでなく私生活面においても人格形成がしっかりできていた。また、高校の3つ上の入れ替わりの先輩が早大を進路として決めたこともあり、3年生になる前から進学は意識していたという。しかし、早大に入ってみると、想像以上にレベルが高く、スポーツ推薦で入った下田でも団体戦メンバーに選ばれるのは難しかった。選手が切磋琢磨(せっさたくま)する一方で、今までと変わらず上下関係などが厳しくないフラットな環境で、自分の柔道に打ち込むことができた。

主将を務めチームの力をのばした下田

  小学校から高校までずっとキャプテンをしていた下田は、主将になった時の心境を「自分でも来るかなとは思っていたが、いざ新主将に決まると心が引き締まった」と語る。主将になってからの1年間、下田は個人では納得のいく結果を出すことはできなかった。あと1つ勝てば、目標としていた全日本学生体重別選手権への出場ができたところを延長戦の末に粘り負けてしまったのだ。しかし、団体戦では、東京学生優勝大会で自身が勝ち点を取れず、内容差で敗れたものの、前年点差をつけられ、敗北した日大を相手に2-2の引き分けにまで持ちこむなど、格上の大学に僅差まで力を詰めることができていた。

 チームの力の向上を感じることはできていたものの、主将としてはまだ自分の力を発揮できないまま、下田は大学生活最後の公式戦・全日本学生体重別団体優勝大会に臨んだ。ここで下田は主将としての意地を見せたのだ。初戦の関大戦。1人がケガのために欠場し、1点ビハインドで始まった。早大側が1点を勝ち取り、他の試合は引き分け。1-1の引き分けで、試合の勝敗は代表戦に託された。くじ引きによって選ばれたのは下田の階級・81kg級。下田はそこで、ゴールデンスコアの末に技ありを勝ち取る。「自分としてもうれしかったし、キャプテンが決めたということで周りの人も喜んでくれた」。みんなが「負けない柔道」を徹底し、その上で下田が勝利を挙げたことにより関大を制することが出来た。やっと目に見えるかたちとなってことし1年間のチーム、そして主将の取り組みの成果が表れたのだった。

 そして、現役最後の試合である早慶対抗戦を迎えた。結果は大将・副将の2人を残しての優勝。自身が1年生の時の早慶対抗戦のように、キャプテン同士の戦いで優勝を決めたかったという気持ちは正直あったが、「チームが強くなった証明になってよかった」と下田は嬉しそうに語る。勝ち抜き戦の早慶戦において一人一人が1つ勝利を挙げて、その次では引き分けるという「負けない柔道」はここでも健在だった。

「早稲田大学柔道部に入って、本当に悔いなく柔道生活を終えることが出来た」。下田はワセダで学んだことを胸に、新しいステップへと歩んでいく。

(記事、写真 高橋里沙)